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ついに披露されたANAのエアバス A380型機「FLYING HONU」を写真で紹介。エアバスにとっても「大きなチャレンジ」な機体

2018年12月13日(現地時間)ロールアウト

ドイツ・ハンブルクにあるエアバスの工場でANAに納入予定のA380型機初号機がロールアウトした

 既報のとおり(関連記事「“空飛ぶウミガメ”誕生。エアバス、ANAのA380型機『FLYING HONU』初号機の塗装を終え、独ハンブルクでロールアウト」)、エアバスは12月13日(現地時間)、ドイツ・ハンブルクにある同社工場でANA(全日本空輸)に納入予定のエアバス A380型機の初号機をロールアウトした。本稿では披露された機体の写真を中心に、ロールアウト式典の模様をお伝えする。

 ANAが2019年5月24日から成田~ハワイ・ホノルル線に投入予定のエアバス A380型機については、納入予定の3機すべてが異なるカラーリングの特別塗装機となる。“空飛ぶウミガメ”を意味する「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」と名付けられており、今回お披露目された初号機はハワイの海をイメージしたANAブルーの機体となる。

ロールアウト式典ではFLYING HONUへの塗装作業をまとめた動画が上映された

 ロールアウト式典では、お披露目を前にAirbus Executive Vice President, Head of Programmes ディディエ・エブラール(Didier Evrard)氏と、ANA 取締役 常務執行役員 CS&プロダクト・サービス室・調達部・貨物事業室担当 伊東裕氏があいさつ。

 エブラール氏は、ANAのエアバス A380型機を、同機のなかでも特別な存在であるとし、「青い空の色に溶け込み、海にもピッタリ。海の色に溶け込んだA380型機が空を飛ぶ」とデザインの美しさを評したほか、「過去最大の動物を描いた飛行機で、ギネスブックに載るのでは。申請するかは分からないが」と笑いを誘った。

 また、ホノルル線で初めてファーストクラスを用意する点や、家族連れにフォーカスしたANAのハワイ路線サービスにも触れ、「こうしたユニークなキャビンや機体のデザインは、新しいスピリットを表わすものでもある」と話した。

 そして、ANAのエアバス A380型機は、「私たちにとっても創造性を求められたデザインであり、今回は大きなチャレンジだった」とコメント。関連記事「“空飛ぶウミガメ”誕生。エアバス、ANAのA380型機『FLYING HONU』初号機の塗装を終え、独ハンブルクでロールアウト」でもお伝えしているが、本機の塗装については、通常は多くても150枚程度のステンシル(型紙)であるのに対し、930枚のステンシルを使用。

 担当者は「作業は細かいステンシルを切り貼りする非常にディテールの細かい工程があった」と説明。プライマーとシーラーコートを塗布した上にメインカラーをペイント。そこからステンシルを施して塗っていくが、ここでステンシルとペイントの繰り返し作業が発生する。使われた塗料は16色、600kg。

 作業には21日間を要したといい、特に「準備段階が非常に大変だった」と説明。塗装作業そのものに要する時間は全体の工程のなかの10%程度であるという。

Airbus Executive Vice President, Head of Programmes ディディエ・エブラール(Didier Evrard)氏

 ANAの伊東氏は、日本で初めてのエアバス A380型機導入に際し、エアバスの関係者に感謝の意を示し、「エアバス A380型機を購入するというプレスリリースを出してから、これまで2年間、両社は緊密に協力してきた。ANAと同様にエアバスもお客さまの高い満足を求めており、職業観を共有できていることがパートナーシップの成功となった。今後もコラボレーションがうまくいく、道筋を作ることができた」と両社の良好な関係について述べた。

 A380型機導入については、「トップレベルのフライトのフィーチャー、新たなラグジュアリーのレベルを体現することになる。乗客には大きな感銘をもたらすと思う。航空機ならではのホスピタリティを体現した、ほかに類を見ないものになった」と評し、ハワイ線サービスの概要を紹介。

 併せて、今回のロールアウト式典には、報道陣を含む多くの欧州在住者が出席していたことから、欧州でのANAのアピールも交え、「将来的に、我々はヨーロッパからのお客さまの皆さまにも、日本を経由してハワイに行っていただきたいと願っている。また、世界中の乗客にそのような旅を楽しんでもらいたい」との希望を明かした。

 ANAはロールアウト式典に先立って行なわれたプレス向け説明会のなかで、「欧州から日本に来てもらい、日本を経由してハワイに行っていただく可能性を考えている」と説明。通常、欧州からは大西洋を渡り、アメリカ大陸を経由してハワイに行くのが一般的だというが、「あえて日本を経由してもらい、日本とハワイの両方を楽しんでもらいたい」という。ANAの日本国内路線の充実についても触れ、スキーや温泉を楽しめる場所、沖縄といった観光地へ「国内路線を活用して気軽に足を運べる」とアピールした。

全日本空輸株式会社 取締役 常務執行役員 CS&プロダクト・サービス室・調達部・貨物事業室担当 伊東裕氏

 ロールアウトは、両氏が壇上のスイッチを押して格納庫のドアオープンがスタート。それに併せて、エアバスとANAの旗を持った人たちが行進を始め、格納庫前に整列。ANAブルーのスモークが出たのに合わせて、格納庫内にあるA380型機の垂直尾翼に描かれた「ANA」が見え始めた。

 その後、格納庫前に姿を現わしたパーカッションチームが演奏を開始。彼らの前進に合わせて、機体もプッシュバッシュが始まり、徐々にその姿を現わしてくる。プッシュバックが完全に終わるころには、先ほどのフラッグチームや、横断幕を持ったANAのCA(客室乗務員)とエアバスのスタッフも加わって整列。その背後に、空飛ぶウミガメとなったエアバス A380型機が駐機し、セレモニーを終えた。

 実はこの日は朝から雲の多い空模様だったのだが、ロールアウト式典を迎えるころには青空が広がってきていた。エブラール氏は「素晴らしい空に恵まれた。これはロールアウト用に特別に用意した空だ」とジョークを飛ばすほど。しかしながら式典が終わってからは再び雲が広がり、ロールアウトの時間だけの特別な空だったことは現実となった。

ハンガーのドアが開き始めるとともに、エアバスとANAの旗を持ったチームが登場
ANAブルーのスモークの奥に、「ANA」と描かれた垂直尾翼が姿を現わした
ハンガー前にパーカッションチームが搭乗。演奏しながら前に進むのに合わせ、FLYING HONUもプッシュバックを開始。徐々にハンガーから姿を見せる
プッシュバックされて姿を見せるFLYING HONU
FLYING HONUが前進して定位置に向かうのと同時に、ANAのCAとエアバススタッフが横断幕を持って登場。記念撮影へ

写真で見るANAのエアバス A380型機「FLYING HONU」

 2017年3月のデザイン発表から2年9か月あまりを経て、初号機の塗装が完了した「FLYING HONU」。その外観の特徴を写真で紹介する。

 塗装を終えた今後は、引き続きハンブルク工場で客室の艤装作業が行なわれたのち、仏トゥールーズで最終のテストなどが行なわれる。ANAへは2019年3月ごろを目途に引き渡し、その後、5月24日に成田~ホノルル線に就航。まずは週3便から運航がスタートする予定となっている。

公募で選ばれた“空飛ぶウミガメ”をモチーフにしたデザイン
機体前方部分に顔が描かれ、コックピットの窓の脇に目、ノーズの下に口のラインが描かれている
ウィングチップの両面に「ANA」ロゴがあしらわれている
主翼など。左舷側主翼の下面に「JA381A」の文字。これがANAへ引き渡し後の登録記号になる予定と考えてよいだろう
後方から
機体左右後方には亀の親子。ハワイの海をイメージした亀の名前は「ラニ(Lani)」
フェアリング部分の塗装
機体の下面には「ANA」ロゴ
ロールスロイスの「Trent 900」エンジン。日本の航空会社では、2014年3月にジャンボことボーイング 747-400型機が退役して以来、久々の4発機導入となる
ノーズギア。このカバーにも「381」の文字があり、登録記号が「JA381A」になることを裏付けている
メインギアは20本のタイヤを使用
垂直尾翼
機内インターネット用の衛星通信アンテナ
いずれも機体左側のドアで、写真左から順にメインデッキ(1階)の最前方、メインデッキの前から2番目、2階席の前方に位置するドアとなる。搭乗用として用いられるこれらの3つのドアに「ANA Wi-Fi Service 2」のロゴマークが貼られている