ニュース
平成最後の初日の出を上空約4000mから望む。30分で完売したANAの「初日の出フライト2019」
2019年1月1日 13:57
- 2019年1月1日 実施
ANA(全日本空輸)は1月1日、機上から初日の出と富士山を鑑賞する恒例の「初日の出フライト」を実施した。2001年に初めて実施して、2019年で19回目となる。
2019年の初日の出フライトはANAマイレージクラブ会員限定で2018年11月29日に発売。羽田発便は、ボーイング 787-8型機による運航。4時15分に集合後、5時35分ごろに出発し、初日の出と富士山を鑑賞して8時ごろに羽田空港に戻るスケジュールが提示されていた。
窓側席を含む場合は2名で10万円、窓側の席を含まない場合は2名で7万円の代金ながら毎年人気を集め、2019年分も発売から30分ほどで完売したという。
搭乗口には2019年の初日の出フライトの思い出になるよう、お正月飾りに彩られたフォトスポットを用意。振り袖姿の地上旅客スタッフも参加して華やかな雰囲気に包まれた。
CA(客室乗務員)は10名で、多くは同社の接客コンテスト「OMOTENASHIの達人コンテスト」のファイナリストが務める。胸ポケットには桜のような色と形が特徴の愛媛県産デルフィニウム「さくらひめ」のコサージュを飾った。
ANA 代表取締役社長 平子裕志氏は、「皆さま、あけましておめでとうございます。2019年、ANAの初日の出フライトにご搭乗いただき、まことにありがとうございます。このフライトは2001年から開始し、今年で晴れて19回目を迎えることになりました。平成最後のフライト。『一年の計は元旦にあり』と言います。こうして皆さまとこのフライトでご一緒できますことを、そして、この年をスタートできますことを心からお慶び申し上げます」と、まずは新年のあいさつ。
続いて、昨秋発生した飲酒問題について、「ANAグループは運航乗務員の飲酒によりフライトを遅延させるという事態を引き起こしました。皆さまには多大なるご迷惑、ご不安、そしてご不快の念をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。皆さまからの信頼を回復するため、私どもANAグループ全職員一同が一丸となって、この飲酒問題をはじめとする安全運航の確立に取り組んでいきますので、引き続きご愛顧のほどをよろしくお願いいたします」と述べた。
平成最後の年を迎えるにあたっては、「2019年は30年続きました平成の時代が終わりを告げ、新しい元号に変わっていきます。私どもの機内誌『翼の王国』がございますが、毎年1月号は十二支の占いを特集しています。私は戌年生まれで、先ほどチェックしてまいりましたが、今年はおおむね安定しておりまして、人間関係に恵まれ、仕事も財運も好調と、素晴らしい年なんですね。素晴らしい出来事が待っているということに加えて、恋愛運がすこぶる好調と、こう出ました。ただし健康には気を付けよというメッセージで、私も今さら恋愛はないわけでございますが、『信ずる者は救われる』という気持ちでこの1年を乗り切っていきたいと考えています」と笑いを交えて2019年にかける意気込みを語り、「今日は富士山の近くまで行くのに少しお時間がございますので、皆さんもぜひ機内誌をお楽しみいただければ」と呼びかけた。
そして、予定の飛行ルートなどを紹介し、「今日の天候は良好でございます。このフライトが皆さまの2019年の素晴らしい門出にふさわしいものになりますようお祈りしております。約2時間半のフライトですが、ごゆっくりお過ごしください」とあいさつを締めた。
その後、搭乗口では初日の出フライト「ANA2019便」への搭乗がスタート。平子社長と振り袖姿の地上旅客スタッフがゲートで出迎え、お土産をプレゼント。お土産は、富士山の湧き水で染色した糸を使用している「富士山染めのタオル」と、ANAの初日の出フライトオリジナルデザインを施したコロンバンのクッキー、そしてお年玉のポチ袋と、「さくらひめ」デザインのしおり。
さらに、この日の初日の出フライトに使用された、登録記号「JA874A」のボーイング 787-8型機は国際線用機材で、「ANA WiFi Service 2」に対応していることから、機内インターネットサービスで利用できるバウチャーコードを記したアクセスカードもプレゼントされた。
機内に入ると、ギャレーが折り紙などで華やかに飾り付けられていた。いずれも手作りの品だという。さらに、ラバトリーにもCAみんなで手作りしたという折り紙の富士山が置かれ、初日の出フライト気分を盛り上げてくれる。
出発に際してはCAが「上空から見る幻想的な地平線と初日の出をお楽しみください」と一言添えてアナウンス。12月1日から国内線で上映を始めた、歌舞伎風の新しい機内安全ビデオが流れるなか、5時40分にプッシュバックを開始。まだ暗いなか、大勢のグランドハンドリングが手を振って出発を見送る。そして、5時56分にD滑走路から離陸し、フライトがスタートした。
離陸後、神奈川県の三浦半島を通過したころに平塚機長がアナウンス。「現在高度は1万8000フィート、約6000mで飛行しています。この先、富士山を右手に見ながら、富士山の西側、長野県駒ヶ根市付近上空の『TENRYU(天竜)』というポイントで旋回しながら日の出を待つ予定でございます。本日は富士山の標高、3776mとほぼ同じ高さの1万3000フィートまで高度を下げて飛行しますので、富士山と初日の出ができる限り美しくご覧いただけるものと予想しています」と、この日の飛行予定を紹介した。
富士山と初日の出を望む旋回ポイントまでの時間に、機内ではおせち料理とドリンクのサービスが行なわれた。おせちは子持ち昆布や金箔をまぶした黒豆、紅白なますなど縁起物が幕の内弁当風に詰め込まれたもの。パッケージも2019年の初日の出フライトだけのオリジナルだ。
おせち料理のサービスと並行して、同乗したANA社長の平子氏が「搭乗証明証」を乗客1人1人に配布。平子氏はその後も客室をまわり、朝焼けをバックにした乗客の写真を撮ったり、リクエストに応えて一緒に写真に収まったりと、乗客と一緒にフライトを楽しむ様子が窺えた。
そうこうしているうちに、飛行機が伊豆半島を通過するころは空が白みはじめ、富士山の南側を通って旋回ポイントの長野県駒ヶ根市付近上空へ。パイロットからのアナウンスで左右両方の人が楽しめるように小さく旋回するとのお知らせとともに、日の出時刻が近づいたことが告げられた。
そして2度目の旋回のときにいよいよ日の出を迎え、機長アナウンスで予告があったとおり富士山と初日の出の競演が見事に実現。多くの乗客がデジカメやスマホで写真や動画を撮影していたが、一瞬一瞬の異なる初日の出を撮影できる。
お日様は顔を見せるとあっという間に地平線から離れ、飛行機も動いているので、富士山とも組み合わせもさまざまな情景を見せるのだ。また、初日の出に合わせて照明が落とされた機内にご来光が射し込み、神秘的な空間が生まれていた。
フライトはその後、浅間山を眼下に見下ろしつつ日光の北側から南へ回り込み、すっかり昇った太陽に照らされた霞ヶ浦や成田国際空港などを眺めながら、羽田空港へ。その間、5月に就航するエアバス A380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」が描かれた手書きのメッセージを乗客にプレゼント。
そして、房総半島で北向きへ舵を取り、羽田空港のA滑走路に7時52分に着陸した。地上走行ののち、予定どおり、8時ぴったりにターミナルへと帰着し、先に降機した社長の平子氏と、乗客の帰りを待っていた東京空港支店長の南日隆男氏や振り袖姿の地上旅客スタッフが、この日の初日の出フライトに搭乗した109名を最後まで見送った。