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ANA定例社長会見。ホノルル線就航のエアバス A380型機はファーストクラスを考えつつ「500席を少し超えたところが有力」

ピーチやバニラエアを含めた「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」

2018年2月23日 開催

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

 ANAHD(ANAホールディングス)とANA(全日本空輸)は本社において定例社長会見を開いた。

 ANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏、ANA 代表取締役社長の平子裕志氏、ANAHD グループ広報部長の髙柳直明氏が出席し、2月1日に公開している「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」(関連記事「ANAグループ、2020年度を目処にLCCの中距離国際線開設、2018~2022年度中期経営戦略発表」)などについて説明した。

ホノルル線に就航予定のエアバス A380型機の席数は「500席を少し超えたところが有力」

 会見でANAHDの片野坂氏はまず、平昌オリンピックでANA所属の羽生結弦選手がフィギュアスケート男子個人で金メダルを獲得、冬季オリンピックで2連覇を成し遂げたことに触れ、「挫折を乗り越えて、たゆまぬ努力の成果が活かされる姿には、大きな感動とともに企業経営にも数多くのヒントを与えてくれると思います。世界中のアスリートの活躍に勇気づけられながらANAグループも努力と挑戦を続けたい」と述べた。

「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」については、「お客さま満足度と価値創造で、世界のリーディングエアライングループを目指すという経営ビジョンを2020年度までに達成し、その先の未来へ向かう5年間の成長戦略」であるとし、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、首都圏空港の発着枠拡大をはじめとしたビジネスチャンスを確実につかみ、さらに2020年以降の社会経済、航空業界の変化を着実にとらえ、未来に向かって今から動く必要がある」と述べて、各項目について補足説明を行なった。

「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」の全体像

 グループ会社のLCCのバニラエアとピーチ(Peach Aviation)については、国内線、国際線の短距離路線を拡充させるとともに、さらなる航空需要の拡大が期待されるアジアマーケットにおいて、2020年を目処に中距離路線へ進出。機材については効率的な乗員訓練効果などを考慮に入れながら、「現行保有機であるエアバス A320型機の派生型で航続距離の長い機材」の導入を検討しているという。

 ANA路線とLCC2社の路線の関係につい片野坂氏は、「国内線については一部路線に競争があって、LCCのほうがお客さまが集まるとしたら、ANAは路線を撤退するといったことはあるかもしれません。LCCはANAがなかなかやらないような地方発の国際線のように、国内線というより国内から海外にという視点で、地方創成に貢献できるのではと思っている」と述べた。

「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」について説明する片野坂氏

 貨物事業については、中長期に需要拡大が見込まれるアジア各国~日本~北米において大型品、危険品、特殊品を大量輸送できる、大型フレイターをあらたに導入する予定。2月1日の会見では明言しなかった機材については、「ボーイング 777型機フレイター」の2機導入に向けて最終調整中だと説明した。

 中期経営戦略にある「オープンイノベーションとICT技術の活用」の項目については、日本の人口減少や人手不足からさまざまな課題が今後顕在化することが予想される状況で、AI、IoT、ロボティクス、ビッグデータなどの新技術を活用した新たなビジネスモデルが次々と生まれており、ANAグループでも、オープンイノベーションとICT技術を積極的に活用し、商品サービスの品質を高め、生産性の向上を図っていくとした(関連記事「【無人自動運転映像掲載】ANAとSBドライブ、羽田空港新整備場地区でレベル4相当自動運転の実証実験に成功」)。

 設備投資計画については、航空機の投資はもとより、将来の成長に向けた戦略的な設備投資を5年で計1兆7000億円規模で行なうとのこと。内訳は2017年度が3530億円(その内航空機関連2060億円/その他1470億円)、2018年度が3900億円(同2350億円/1550億円)、2019年度と20年度の平均が3550億円(同2300億円/1250億円)、2021年度と22年度の平均が3100億円(1900億円/1200億円)で、2017~2018年度の「その他」が高いのは人的投資や2020年3月供用開始予定の「総合トレーニングセンター(仮称)」によるものだという。

 2019年にホノルル線に就航予定のエアバス A380型機の席数については、これまで500~600席としていたところを、ファーストクラスを考えつつ「500席を少し超えたところが有力。席数の確定はまだ」であると説明した。

 中期経営戦略のタイトルにある「足元をしっかり固め、未来へ動く」は片野坂氏のこだわりで入れた文言であり、「未来を作ることは1人ではできませんが、動くことはできます。足元をしっかり固めたうえで、今動いていきたいと考えます。ANAグループの職場で受け継がれてきた『あんしん、あったか、あかるく元気!』という社内向けのメッセージを、社外も含めたANAグループのコーポレートブランドを発信するメッセージとして宣言しました。一丸となって、戦略の実行に向けて努力してまいります」と述べて説明を締めくくった。

4月から国内線機内Wi-Fiインターネット接続の無料化。シートモニタを装着した機材を順次展開

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 続いてANAの平子氏はまず、2017年1月19日に発生したNH1831便(秋田~新千歳)が新千歳空港着陸時に滑走路端を超えて停止した事象が国土交通省 航空局から「重大インシデント」に認定され、運輸安全委員会の調査が進み、最終報告書が公表されたことに触れ、「当該便搭乗のお客さま、関係者に多大なるご不安とご迷惑をおかけしましたことを、あらためてお詫び申し上げます」と謝罪し、「ANAグループは事象発生後、再発防止策として運航乗務員に対する注意喚起や関連規定の改定、訓練の実施を行なってきました。最終報告書を受けて、あらためて再発防止に全力を挙げて取り組むこと、これまで以上に安全運航の堅持に努めてまいります」と述べた。

 中期経営戦略については「1. 基本品質を徹底的に追求すること」「2. 持続的成長による収益拡大」「3. 人材とデジタルの融合」の3つの柱からなるとし、各項目について説明した。

「1. 基本品質を徹底的に追求すること」については、特に2018年度は、円滑な成長を可能にする「人づくり」「物づくり」に徹し、徹底的に基本品質を追求する姿勢を明確にしていくという。具体的には人材の確保と育成、運航を支える空港、訓練設備などを強化。例えば総合トレーニングセンターをはじめとする育成、訓練環境の整備、人的資源の適正配置や働く環境の整備、イレギュラー時の遅延回復に向けたダイヤ設定上の工夫などを行ない、「ダントツ品質」を追求していく。

「2. 持続的成長による収益拡大」では、国際線を成長の柱とし、路線ネットワークを拡大するとともに、競争力のあるプロダクトを順次展開していくという。来年度下期には最新のボーイング 787-10型機、エアバス A380型機を受領予定であり、今後5年間で未就航エリアへの路線拡大や、スターアライアンスメンバーとの提携の強化なども目指していく。

 また、国内線機内Wi-Fiインターネット接続の無料化、機内エンタテイメントコンテンツの拡充などの新サービスが4月から始まるほか(関連記事「ANAのCA姿で綾瀬はるかさん登場。機内Wi-Fiインターネット無料化など『FEEL THE NEW SKY』発表会」)、一部機種にはシートモニタを装着した機材を順次展開していく。

「3. 人材とデジタルの融合」では、人の力とAI、IoTなどデジタルの技術を掛け合わせて、一人一人が持つ可能性を引き出すとともに、人がやるべきことに注力できる環境を整備していく。これは例えば空港での自動走行化、コールセンターでのAIを使った案内など、デジタル技術を積極的に活用することで、働き方やサービス品質の向上を図っていくとした。