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ANA、ハワイ路線の“一気のばん回”を狙ってエアバス A380型機を2019年春就航へ

2016年3月期第3四半期の連結業績は過去最高の営業/経常利益

2016年1月29日 発表

ANAホールディングス株式会社 取締役執行役員 長峯豊之氏

 ANAホールディングスは、1月29日にANA(全日本空輸)グループ今後5年間の経営戦略である「2016年~2020年度ANAグループ中期経営戦略」を発表した。その概要はニュース記事「ANA、首都圏~ホノルル線向けにエアバス A380型機3機を2018年度~2019年度に導入」でお伝えしたとおりだ。本記事では、同日行なわれた記者会見の内容から、質問も多く出たエアバス A380型機購入に関する内容を中心に紹介する。併せて、同日発表された2016年3月期(2015年4月~2016年3月)第3四半期の連結業績についてもお伝えする。

 エアバス A380型機購入については、首都圏~ホノルル線へ投入するためのものとなる。同社によれば、日本~ハワイ線の旅客数シェアが2014年実績でANAが約8%、JAL(日本航空)が約36%、そのほかの航空会社が約56%と、競合に対して圧倒的に劣後になっているという点。一方、日本からのアウトバウンド1700万人のうち、ハワイへの渡航者が年間150万人と約9%で、ANAのホノルル線の平均搭乗率(ロードファクター)は約94%と年間通じて安定した高い需要があるという点。この2点から、ファーストクラスを備えて他社との差別化が図れ、大量一括輸送が可能、そして地理的に1機でデイリー運航が可能という首都圏~ホノルル間の路線特性を考慮した結果、3機のエアバス A380型機を導入し、“市場シェアの一気のばん回を図っていく”というのが今回の決定の経緯であるとした。

 購入にあたっては、2015年1月に発表した長期戦略構想の時点で、リゾート市場への取り組みが手薄であるとの認識があり、この中期経営計画の策定でもリゾート路線強化を検討した。最大の市場であるハワイ路線について2015年に成田~ホノルル線の増便やボーイング 787型機を投入するなど強化したものの、座席の供給量が競合に対して劣後であることに変わりはなく、2015年春頃からエアバス A380型機について技術検証や経済性についてエアバスと協議を重ねたという。

 一方、エアバス A380型機を購入する予定であったスカイマークの再生計画において、ANAホールディングスらの支援による再生計画であるスカイマーク案への協力依頼のなかで、ANAとエアバスとの取引実績や協力関係、将来の機材取引について言及したのも事実としたほか、スカイマークの案件がエアバス A380型機を使ったリゾート展開の検討を加速したことについて否定はできないとしたものの、直接の関係は否定したほか、スカイマークが購入予定であった機材ではなく新たな機材の導入であるとした。

 具体的な運航について、具体的な座席のレイアウトなどはこれからの検討としたうえで、発表どおりファーストクラスは少なくとも用意したいとした。また、発着時刻については、接続需要も含めて利用できる時間帯である、日本の夜出発を中心に検討することになるとの考え。検討時点では羽田空港のアメリカ便の発着枠が不透明であることから成田空港発着を2便というシミュレーションを行なっているとはしたが、羽田空港発着便を除外して考えてはいないという。

 また、今回のエアバス A380型機の導入は、ANAのネットワーク上の必要機材ではなく、ハワイ路線の特性に合わせた機材導入であることから、同路線に特化して投入。ほかの路線での運航は考えていないとした。シミュレータや重整備などは外部に委託することで、効率性を高める予定。2019年の春に運航を開始する予定で準備を進めるとした。

 このエアバス A380型機の導入で、現在約10%のシェアとなっている同路線の座席供給力は24%ほどまでに拡大する見込みとし、運賃についても現在よりも安価な運賃で経済性をシミュレーションしているという。一方、価格競争になるのではないかという懸念に対しては、日本~ハワイ線の座席供給のピーク時を100としたときの2015年の供給量指数が“82”で、ANAの試算ではエアバス A380型機を3機投入したときの指数が“98”と、ピークよりも少し低い水準となる。一定程度、こうした指数を考慮すれば大きな値崩れリスクはないとの考えを示した。

 併せて、同機の導入でリゾート路線でも競合と互角に戦えるステージを整え、ANAセールスの旅行事業などグループ内で連鎖できることは全体で取り組んでいきたいとした。

2016年3月期第3四半期の連結業績は過去最高水準

ANAホールディングス株式会社 取締役執行役員 平子裕志氏

 ANAホールディングスは同日、2016年3月期(2015年4月~2016年3月)第3四半期の連結業績を発表した。

 第3四半期まで(2015年4月~12月)の累積営業収益(売上高)は、前年同期比5.5%増、717億円増収となる1兆3960億円。営業費用は事業規模拡大や円安の影響で増加したものの、燃油市況の下落やコスト構造改革の取り組みで、前年同期比3.7%増となる443億円増に抑制。

 この結果、営業利益は前年同期30.8%の1167億円、経常利益は同50.5%増の1121億円、純利益は同40%増の733億円となり、同期累計で過去最高の営業収益、営業利益、経常利益を達成した。

 セグメント別では、航空事業が前年同期から599億円増収、403億円増益となったほか、空港免税店販売などが好調だった商社事業が同134億円増収、11億円増益。

 航空事業は、国内線では北陸新幹線開業や7月に発生した台風による欠航の影響により旅客数が前年同期比1%減となったが、羽田~沖縄線の増便や需要の取り込み、各種運賃設定などに努め、単価は同2.1%増、収入は同1.1%増となった。

 国際線はパリで発生したテロの影響などもあって日本発の一部路線で需要が減退したが、北米路線のビジネス需要が相変わらず好調なほか、訪日需要も旺盛であることから旅客数は前年同期比12.9%増、収入は同10.5%増となった。

 今第3四半期の業績を踏まえ、2015年4月に発表していた2016年3月期の連結業績について、営業利益を1150億から1250億円へ、経常利益を900億円から1100億円へ、純利益を520億円から650億円へと上方修正した。

(編集部:多和田新也)