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ANA、エアバス A380型機「FLYING HONU」による遊覧飛行実施。定員の約150倍が応募した激レアフライトに
2020年8月22日 21:16
- 2020年8月22日 実施
ANA(全日本空輸)は8月22日、エアバス A380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ:空飛ぶウミガメ)」によるチャーターフライトを実施した。
ハワイ・ホノルル路線のみで運航している同社のA380型機だが、新型コロナウイルス感染症の影響で海外旅行をするのが難しいなか、夏休みの思い出作りにと、成田発着の遊覧飛行が企画されたもの。
ファーストクラス5万円、ビジネスクラス3万5000円(窓側)/3万円(通路側)、プレミアムエコノミー2万5000円(窓側)/2万円(通路側)、エコノミークラス1万9000円(窓側)/1万7000円(窓側翼上)/1万4000円(通路側)の代金で7月22日~27日に申し込みを受け付けた。
販売数は国内線施設でエアバス A380型機を使用する通常とは異なる運用となることから座席数を制限したそうだが、申し込みは全クラス合わせて約150倍に達したという。その抽選をくぐり抜けた参加者334名(幼児11名含む)が北は北海道、南は九州から集合。8月22日11時からチェックインを開始。アロハシャツに身を包んだスタッフが受け付けを行ない、クラス別に記念品もプレゼントした。
記念品は搭乗証明書のほか、HONUリュック、ANA HAWAiiのバゲージタグ、ハワイ州観光局協賛のエコセット(木製のカトラリーなど)を用意。
さらにファーストクラスの参加者にはモデルプレーンや「グローブ・トロッターのアメニティポーチ」「Hydro Flask ANA HAWAiiボトル&キャップセット」、ビジネスクラスの参加者には「フレッドシーガルコラボレーションアメニティキット」と「Thermo mug FLYING HONUアンブレラボトル」、プレミアムエコノミーの参加者には「FLYING HONUデザインのエコバッグ」も配られた。
子供やアロハシャツを着用した参加者には、「FLYING HONU飛行機風船」も、搭乗口前でプレゼントされている。
チェックイン後は、定刻14時00分の出発に向け、搭乗口へ移動。搭乗にあたってANA 代表取締役 専務執行役員の井上慎一氏がマイクを持ち、「本日のフライトは成田空港を飛び立ったあと、日本のどこかを周遊して帰ってくる遊覧飛行。行き先はパイロットにお任せしている。ハワイには行かないが、飛行機、乗務員、サービスでハワイの雰囲気を味わっていただけるような工夫をたくさんしているので、ご期待いただきたい。私も本日、すでにアロハシャツを着用して、ハワイに行った気分になっている」とあいさつ。
また、「本日ご搭乗いただく皆さまは、100倍を超える倍率をくぐり抜けて当選された約300名の方たち。ご応募いただき、ありがとうございます。また本当におめでとうございます」とあいさつすると、搭乗口の参加者から拍手が沸き起こった。
加えて、「実はチャーターフライトはお客さまのご提案で実現したもの」と明かし、「ANAは1952年の創業以来、お客さまのお声、思いを大切にしたいというDNAを受け継いできた。今回お客さまから頂戴した思いが、私たちのDNAに火を付けてくださり『よし、やるか』と実現した」と背景を紹介。
FLYING HONUのホヌが、ハワイ語でウミガメを意味し、ハワイでは幸せを運ぶ海の守り神、幸せのシンボルであることに触れ、「本日はANA FLYING HONUで最高に幸せな、楽しいひとときをお過ごしいただければ」と述べた。
その後、密を避けるため搭乗客は6グループに分かれて搭乗ゲートを通過。さらにその6つのグループ内でも複数のバスに分かれて飛行機へと移動した。オープンスポットということもあり、エアバス A380型機の巨体を目の前にほとんどの人が写真を撮っていたが、事前に「手短かに」とアナウンスでお願いされていたこともあり、定刻の14時ジャストに搭乗を完了。14時6分にはプッシュバックを開始する、非常にスムーズな搭乗だった。
ちなみに、今回の遊覧飛行の便名はNH2030便。富士山と、ハワイらしい三原山を中心に遊覧するルートで、14時27分離陸、15時52分着と90分弱を飛行。到着もほぼ定刻の16時02分に、再びオープンスポットへと帰ってきた。
遊覧飛行にはANAブルーの1号機「JA381A」が使用されたが、隣にはエメラルドグリーンの2号機「JA382A」も駐機。特に到着時は、降機時に目の前に2号機が駐まっているというシチュエーションだったことから、再び多くの人がその姿を写真に収めていた。
機内外で“ハワイ感”を演出。機内ではチーフパーサーのあいさつに拍手も
先述の井上氏のあいさつに、今回の遊覧飛行は消費者からの提案で実現したものとあったが、EメールでANAに提案した佐藤さん親子、工藤さん親子が報道陣のインタビューに応えた。両名とも、きっかけは、旅客、貨物を乗せず、整備を回避するために6月22日に成田発着のフェリーフライトが行なわれたことを各社の報道(関連記事「ANAのエアバス A380型機『フライング・ホヌ』が約3か月ぶりに空へ。成田空港発着で26分間フライト」)で知ったことで、それなら旅客を乗せてはどうかと提案したという。
両家族ともFLYING HONUには初搭乗で、子供2人は「広く、乗り心地がよかった」と感想を話した。
その提案を実現し、チャーターフライトのツアーとして企画したANAセールス 国内旅行事業部 事業サポート部の大森いづみ氏は、「コロナ禍のなかで夏休みが短かったり、海外旅行に行けなかったりするお客さまに、短い遊覧飛行のなかでハワイ感をどれだけ出せるか。また、安心してツアーに参加いただけるように、感染防止対策を徹底しながら、いかに楽しんでいただけるイベント内容にしていくかを考えながら企画した」と、ツアー内容を決めていくうえでのポイントを紹介。
ファーストクラス5万円といった価格については、「短い夏休みの楽しい思い出作りの一つとしてご家族連れに参加いただきたいのと、遠方のお客さまにも気軽にご参加いただきたいと考えて価格を設定した」と話した。
また、今回は定員の約150倍と申し込みが殺到した格好になったが、「先ほどお客さまをお見送りしたときに、また2回目をやってほしいとおしゃっていただいたので、2回目、3回目ができるよう、企画などは考えていきたい。成田発着だけでなく、できるところで実施することを考えていきたい」と、さらなる実施の可能性も示唆した。
チャーターフライトに乗務したCA(客室乗務員)2名もインタビューに応じた。機内では、搭乗時にハワイアンミュージックを流したほか、ドリンクサービスでハワイ路線限定のパイナップルジュース、オリジナルカクテル「ザ・バーテンダー・モヒート(グリーンモヒート)」などを提供。安全ビデオもFLYING HONU限定のものを使用するなどハワイ感を演出。
さらに、機長のあいさつも「アロハ!」から始まり、ハワイの現地時間を盛り込むなどの内容だったという。インタビューに応じたANA客室センター オペレーション品質推進部の渡部佳哉子氏は「事前のブリーフィングでも『ワクワク感をクルー一同伝えていこう』と話したので、そういったアナウンスにつながったのではないかと思う」といった背景も紹介した。
また、到着時のチーフパーサーのあいさつでは、参加者から元気な気持ちをもらったことへの感謝の言葉を述べたうえで、「またハワイでお会いしましょう」とあいさつを締め、乗客から拍手が送られたという。2階席で乗務していたANA客室センター 客室乗務三部の佐々木笑巳氏は「拍手が沸き起こってちょっと涙が……」とそのときの感動を語った。
今回のフライトに乗務した感想として、渡部氏は「お客さまが楽しんでくださっている姿を見てうれしく思った。お子さまからは今日が夏休み最後の思い出になったというお声も頂戴し、短い時間だったが、なかなか飛行機にお乗りいただけない昨今の状況下では、今回の機会がお客さまにとって楽しい、ワクワクしたフライトになったのではないかと感じている」とコメント。
佐々木氏は、「このプロジェクト自体がANAグループにしかできない日本を元気にする企画ということで、お客さまのアイディアからプランが誕生し、そこから企画実現までに尽力した関係スタッフの気持ちを胸に乗務した。また、日本を元気にするというより、私たちANAスタッフはじめ、クルー全員が、お客さまの笑顔で元気にしていただけたような気がしていて、感動で一杯のフライトだった」と感謝の言葉を述べた。