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【JA2018】エアバス、A380型機の座席を増やす新アイディアを模型展示。ANAのFLYING HONUにも一部導入
東京大学 大学院 工学系研究科とのパートナーシップも発表
2018年11月29日 00:00
- 2018年11月28日~30日 実施
東京ビッグサイトで11月28日~30日に開かれている「国際航空宇宙展2018東京(JA2018:Japan International Aerospace Exhibition 2018 Tokyo)」(日本航空宇宙工業会/東京ビッグサイト主催)に出展したエアバスは、11月28日に報道関係者向けの説明会を実施した。
このなかで、将来のエンジニアとなる優秀な才能を、エアバスと世界の大学が協力して育てる「エアバス・グローバル・ユニバーシティ・パートナーシップ・プログラム(AGUPP)」を、東京大学 大学院 工学系研究科と提携。調印式を行なった。
マサチューセッツ工科大学やシドニー大学など、これまでに25大学とAGUPPを締結。エアバスの専門家による大学キャンパスでのレクチャーやワークショップ、同じAGUPPを締結している世界の大学生を集めてのサマーキャンプなどを行なう。
エアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏は「日本の最高学府である東京大学 大学院 工学系研究科が、AGUPPの仲間入りをしたことをうれしく思う。私としても、日本の大学が選ばれることを長い間待ち望んでいた」とするとともに、「100か国籍以上の人が働くエアバスで、日本とそのようなつながりがなかったことが不自然なこと。どこと組むかとなれば、当然、東京大学という選択しかないと思っていた」と、待望の締結であったことをうかがわせた。
また、東京大学に対しては、「航空宇宙業界はもはや設計や製造に関わるだけでなく、デジタライゼーションやAI技術、ロボティクスやVR、IoT、ビッグデータといった幅広い知識や技術を必要としている。エアバスと東京大学 大学院 工学系研究科が協力することで、将来の宇宙業界を背負う若者を育てるだけでなく、新たな分野からも若い才能が参加し、イノベーションをもたらす技術開発につなげられれば」と期待を述べた。
東京大学 大学院 工学系研究科長・工学部長の大久保達也氏は、2017年に東京大学が創立140年を迎え、指定国立大学として新たなスタートを切ったタイミングでの締結となったことに喜びを示し、「学生にとって、世界の航空宇宙業界のリーダーと直接会話をする機会や、また、航空宇宙分野で必要とされる技術を知る機会、エアバスの専門性やリソース、インフラを利用する機会を得ることになり、学生自身の知識を深め、能力を高めるうえでたいへん重要なこと」と締結の意義を示した。
さらに、「すでにAGUPPに参加している知のネットワークを通じて、学生が共同活動や交流することで、国際性や多様性を培うことにもつながっていく」「学生が国際的規模で自分の能力を試す機会を設けてもらえる。こういったパートナーシップを通じて、各地のプログラムに参加した学生が、将来の世界の航空宇宙産業界を牽引し、リーダー的存在になることに期待」と、AGUPPによる学生への効果に言及。
一方で、「航空宇宙業界は、総合工学であり、AIやビッグデータ解析など、幅広い分野の技術が必要」として、「東京大学 大学院 工学系研究科は18の専攻があり、あらゆる分野をカバーしている」と紹介。「エアバスの技術シーズと、我々の技術シーズを交換するなかで、非常に近い将来、エアバスと東京大学が共同研究や共同開発を行ない、航空宇宙分野のさらなる発展に展開できれば」と期待を示した。
大久保氏に、エアバスで貢献できることについて尋ねると、「情報分野や、一見関係ないと思われるような基本的な物理の分野、化学分野などにも強いメンバーがいるので、こういった分野で今までとは違った視点から新しい展開が出てくるのではないか。性能を5%や10%上げるためには、今までの分野を深めることが重要だと思うが、ガラッと……例えば5倍、10倍にするには発想をまったく変えないといけないことが出てくると思う。そういうところで我々がぜひ貢献していきながら、新しいイノベーションを作っていくパートナーとして進めていければと考えている」との展開を述べた。
日本市場で5割のシェアを狙うエアバス・ジャパン
説明会では、エアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏がJA2018でのブース展開や、日本市場への取り組みについて説明を行なった。
このなかで、エアバス A380型機をANA(全日本空輸)、エアバス A350XWB型機をJAL(日本航空)に2019年に引き渡しを開始することに触れ、現在、競合のボーイングよりも多いというバックログ(受注残)をすべて納入すると、日本のシェアが3割に達することを説明。「長期的に世界と同じ50%を目指したい」と意気込みを示した。
また、「日本の航空宇宙産業との関わりを深めたい」とし、定期的に開催しているセミナーには500名近くが参加していることや、「2017年に結ばれた経済産業省とフランス航空局の連携強化に関するMOUにより、定期的にエアバスのワークショップが開かれ、毎回100社以上が参加。ビジネス展開に日本企業の関心が非常に高いことがうかがえる」と紹介。「これまで日本の航空宇宙産業は競合(記者注:ボーイング)とのつながりが強かったと思うが、最近はバランスが変わり、エアバスとの結び付きが強くなっている」として、先進的技術を持った日本企業とのジョイント・プロジェクトなどに期待を示した。
ギャレーや階段の見直しでエアバス A380型機の座席数を増やす模型展示
ブースでは、エアバス A350XWB型機の最新客室である「AirSpace」実物大客室や、エアバス A330neo型機のVR体験コーナーなどを設置。
さらに、小型モデルではあるがエアバス A380型機の客室レイアウトを紹介する模型も展示されていた。このエアバス A380型機の模型にはギミックが仕込まれており、従来のギャレーや階段のレイアウトを見直すことで、座席数を増やすことができるというデモンストレーションを行なっている。
例えば、最後部にある階段の形状を見直すことでギャレーを拡張。これによりメインデッキ(1階)の機体後方寄りにあるギャレーを撤去して座席に転換。
さらに、前方にある階段も撤去し、2番ドアの位置へ移動。ここの地下にはCA(客室乗務員)の休憩室(クルーレスト)が設けられており、そのための階段のスペースがあるので、1~2階を往来する階段を設置しても無駄になるスペースを減らせるという。これにより前方で撤去した階段のスペース分を座席に充てられるようになる。
エアバスによると、現在エアバス A380型機が就航している空港の96%にはアッパーデッキへ直接アクセスできるPBB(旅客搭乗橋)があり、乗客が階段を必要とするケースが減っていることも、この前方の階段を見直す背景にあるという。
この階段の設置でアッパーデッキ(2階)の2番ドアの場所には新たな階段のスペースが必要になるが、アッパーデッキ最前方の階段がなくなったことでギャレーに転換できるので、アッパーデッキの2番ドアの場所はギャレースペースを狭くし、さらに客席も増やせるようになる。
エアバスでは、高効率化や座席数を増加させた「エアバス A380 Plus」の計画を発表しているが、このレイアウトの見直しはその一部を先取りしたような格好となっており、すでに新造機については、新しい階段、ギャレーレイアウトを採用しているものがあるという。
例えば、ANAが導入するエアバス A380型機は、機体最後部の階段とギャレーに新レイアウトを採用しており、メインデッキの後方寄りにあるギャレーを撤去。バーカウンターと客席に充当している。