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JALのエアバス A350は座席スペースを最大限に確保するレイアウト。地上走行中も機内インターネットサービスを利用可能

2019年6月20日 実施

JALがエアバス A350-900型機の客室仕様を発表。座席以外の特徴を紹介する

 JAL(日本航空)は6月20日、6月14日に日本に到着した新規導入機材、エアバス A350-900型機の機内仕様お披露目会を、羽田空港の同社格納庫で実施した。幹線向けの新機材として、新たなコンセプトで客室などを開発したことは別記事「JAL、エアバス A350型機の機内お披露目セレモニー実施。赤坂社長『今後の国内線サービスは新仕様をベースに』」でもお伝えしたとおり。本稿では座席以外の面での機内仕様の特徴を紹介する。

 前提として、すでに発表されていた客室の基本仕様についておさらいしておくと、国内線で使用するJALのエアバス A350-900型機はファーストクラス12席、クラスJ 94席、普通席263席の計369席を持つ。

JALの国内線向けエアバス A350-900型機シートマップ

大型のオーバーヘッドコンパートメントを簡単に閉じられる機構を装備

 エアバス A350型機の特徴の一つとして、座席上部にあるオーバーヘッドコンパートメントが大型であることが挙げられる。機内持ち込み可能なスーツケースを縦に収納できる奥行きがあることからも、その大きさが分かる。

 一方で、大型になることで重量が増し、乗客やCA(客室乗務員)が閉じるのに苦労する事態も起こりがち。これを避けるために、JALが導入したエアバス A350型機は、閉じる際に上向きの力が働く機構を組み込んでいる。

 仕組みは、常に閉じる方向へ力がかかっており、開いた状態ではロックがかかっているとイメージするとよい。開いた状態で、さらに下向きに力をかけ、「カチッ」と小さな音が鳴ったら上向き(閉じる方向)への力が働く。荷物が入っていない状態であれば勝手に閉じるほどの力で、さすがに荷物が満載の状態では人の手が必要にはなるものの、かなりラクに閉じることができる。

 ちなみに、オーバーヘッドコンパートメントが大型であることから、他社のエアバス A350型機ではビジネスクラス以上で中央部のコンパートメントを外して天井スペースを広くする仕様が目立っているが、JAL機はファーストクラス、クラスJ、普通席ともに全エリアで中央部にもコンパートメントを備えている。

大型のオーバーヘッドコンパートメント。閉じる際のサポート機構を組み込んでいる

エアバス A350-900型機で可能な限りの座席用スペースを確保

 ギャレーは最前方、2エリアあるクラスJの中央(前から2番目のドアの列)、最後方の3か所。実はこの最後方のギャレーはエアバスの最新レイアウトを採用している点で特筆できる。

 これまでのエアバス A350型機では、最後方に「コの字」状の広いギャレースペースを設けていたが、JAL機ではエアバスが客室をより広く使うために考案した新たなレイアウトを採用している。これにより座席後方にあったラバトリーを、従来はギャレーがあった場所に移動することでラバトリーの数は確保しつつ、客席を1列分増やすことができるようになる。ちなみにJAL機の場合、最後方のラバトリーは3か所設けられている。

 さらにいえば、国際線で運用する機材では最後方の上部にクルーレスト(クルーバンクとも。CAの休憩スペース)が設けられており、その出入り口のための設備が設置される。JAL機は国内線用として導入していることから、その設備は必要ない。

 つまり、この最後方部は、エアバス A350-900型機の現時点で考え得る最大限の座席スペースを確保するレイアウトを採用しているといってよいわけだ。

 ちなみに、クルーレストがある場合は最後部中央のオーバーヘッドコンパートメントを設置できなくなるが、クルーレストがないJAL機の場合はそのような心配もなく、ほかのエリアと同じコンパートメントを備えている。

最後方エリア。中央に通路上のギャレー、左右にラバトリー各1か所を設置することで、座席後方にあったラバトリーを削減できるレイアウトを採用。クルーレストもないことから、最大限に客室の座席スペースを確保
最後部のギャレー
最前方のギャレー
最前方ギャレーのこのエリアは、搭乗時はカーテンで閉められる
クラスJのギャレー。奥に見えるのがL2ドア
ラバトリー
ラバトリーは設置場所によってさまざまなレイアウトがある
コックピット
サイドスティックが特徴のコックピット

機内Wi-Fi/インターネットはPanasonic Avionics。地上でも使えるように!

 機内Wi-Fi/インターネットについては、仏トゥールーズで行なわれたデリバリー(引き渡し)式典のレポート(関連記事「『挑戦』を表わす赤いA350ロゴ。JALが新規導入するエアバス A350-900初号機を写真で紹介 機内Wi-Fi&インターネットは国内線向け従来機からシステムを変更か」)において、従来機からのレドーム形状の変化を指摘したが、従来の国内線機材で使用していたGogoではなく、Panasonic Avionics(パナソニック・アビオニクス)を採用したことが発表された。

 無料で利用できる点はこれまで同様。ただ、Gogoを使用した機材では、衛星通信を介したインターネットを使用できるのが高度1万フィート以上に限られているが、今回JALのエアバス A350型機が導入したPanasonic Avionicsのソリューションでは地上でも利用できる点が大きなメリットとなる。

衛星通信用のアンテナが収納されたレドーム
ドア横の「Wi-Fi」ロゴ
機内バルクヘッドのWi-Fiロゴ

機内エンタメも拡充。機外カメラや月替わりの映画を提供

 機内エンタテイメントサービスもPanasonic Avionics製。全座席に個人用シートモニターが設置され、サイズはファーストクラスが15.6インチ、クラスJが11.6インチ、普通席が10インチとなる。

 JAL国内線では、機内Wi-FiとJALアプリを利用した国内線ビデオプログラムを提供してきたが、A350型機では、これに加えて月替わりで話題の映画も提供。就航月の9月は、ディズニー映画の「アラジン」や「X-MEN:ダーク・フェニックス」を配信する。

 映画の時間をざっくり2時間前後とすると、国内線の片道で見られる路線が限られるため、途中で中断しても次回搭乗時に続きを見られる機能も提供する。往復で1本を見るようなシチュエーションが一般的になるかも知れない。

 このほか、電子書籍48タイトル、ビデオプログラム70チャンネル、2018年から開始したライブTVは2チャンネル、オーディオ28チャンネルを提供。

 さらに、2か所に取り付けられた機外カメラの映像も提供。1つは機体下部に、もう1つは垂直尾翼前方に取り付けられている。

プログラムはサンプルとなっているが、機内エンタテイメントサービスの画面はこのようなレイアウト
機体下部に取り付けられた前方カメラ。上空では下方を映すランドスケープカメラになるという
垂直尾翼に取り付けられたカメラの映像