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JAL、2018年度から機内衛星テレビ、2019年度からA350と787に国内線個人モニター導入。顔認証チェックインも検討
「2017~2020年度 中期経営計画ローリングプラン2018」策定
2018年3月2日 13:34
- 2018年2月28日 実施
JAL(日本航空)は2月28日、「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2018」を発表、東京の本社で会見を開いた。
同社は2017年4月に発表した「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画」において、自らの将来像を「世界のJAL」「一歩先を行く価値」「常に成長し続ける」という3つの柱を掲げた「JAL Vision」を明らかにしていたが(関連記事「JAL、2017年3月期連結業績は減収も、営業利益率は5年連続10%超えで目標達成」)、今回のローリングプラン2018では10年後(2027年度)のより具体的な姿を、数値目標を含めて「グランドデザイン」(事業計画の全体構想)として公開している。
その例として、2027年度までに世界主要500都市へ乗り入れ(現在は343都市)、国際線旅客の海外販売比率で50%を目指す(現在は30%強)としており、営業利益率10%以上の収益性にこだわりつつ、売上2兆円、営業利益2500億円、時価総額3兆円(現在は1.5兆円)の実現を目指すとした。
4月1日以降の役員体制を発表
会見冒頭では、代表取締役社長の植木義晴氏が2017年度を振り返り、ハワイ・コナ線やオーストラリア・メルボルン線などの新路線開設、世界各社との提携拡充、PSS(Passenger Service System:旅客サービスシステム)の刷新などで「世界のJAL」になるための取り組みを進め、国内線機内Wi-Fiの無料化、フィンテック会社の設立、超音速旅客機Boom Technologyへの出資などで、「一歩先を行く価値」の取り組みにも着手したと説明。
さらに、3月1日から4月27日までの間に、200億円を上限として自己株式を取得すると発表。取得した株は全株償却し、資本効率の向上を目的としていると話した。
続いて、4月1日以降の役員体制についても言及。現 常務執行役員 整備本部長の赤坂祐二氏が新社長に就任することはすでに発表済みのため(関連記事「『安全運航こそがJALグループの存立基盤』、整備部門出身の赤坂新社長が会見」)、副社長以下の体制ということになるが、大きなところでは代表取締役専務執行役員の大川順子氏が4月1日付で取締役副会長となり、6月の定時株主総会では新たに常務執行役員の清水新一郎氏の新任を予定している。
2019年度にエアバス A350-900型機とボーイング 787型機で国内線でも個人モニターと電源を導入
常務執行役員 経営企画本部長の西尾忠男氏は、前述したグランドデザインの詳細について説明。「世界主要500都市へ乗り入れ」と「国際線旅客の海外販売比率50%」の実現に向けて、自社運航便では世界自然遺産の登録を目指す奄美群島と沖縄間の新路線を開設、2019年度に北米西海岸に新規就航を検討、2020年の羽田空港発着枠拡大に向けて国際線を拡充するといった具体例を示した。また、JALが参画するワンワールドアライアンス以外にも、2018年度からはハワイアン航空やビスタラ、ベトジェットエアなどとの提携が実際に始まり、この両輪で目標達成に取り組んでいくとした。
移動中のストレスフリーの実現としては、2018年度から国内線SKY NEXT対応機材で、無料の機内Wi-Fiを使って衛星テレビの視聴を行なえるようにする。2019年度からエアバス A350-900型機を国内線に導入する、という点は本紙でもたびたびお伝えしているとおりだが、同年度からA350-900型機とボーイング 787型機では、国内線でも個人モニターと電源を配備する。
また、2018年度中にはアプリを活用して利用者一人一人に遅延・欠航などの情報をタイムリーに通知するサービスの開始が決まっており(関連記事「LINE、JALやANAも参画する新サービス『通知メッセージ』。搭乗便の遅延/欠航など電力・ガス・航空・運輸の領域で重要な情報が届く」)、将来的には空港での搭乗手続きなどに顔認証を導入してスムーズなチェックイン・搭乗を実現していくという。
こうした取り組みによって、2018年度に設定した目標は、売上1兆4550億円、営業利益1670億円、営業利益率11.5%。ASK(有効座席キロ)は2016年度を100としたときに国内103%、国際109%、全体では107%とした。また、2020年度の目標は売上が1兆6000億円、営業利益が1800億円、営業利益率が11.3%、ASK(対2016年度)は国内105%、国際125%、全体で117%とした。
財務戦略は取締役専務執行役員 財務・経理本部長の斉藤典和氏が説明を担当し、2018~2020年度の設備投資は総額6600億円で、そのうち新路線や増便、運行効率向上のための航空機導入などに充てる「成長投資」が4400億円、老朽化した設備の更新や航空機の更新など「更新投資」が2200億円であるとして、目的別の内訳も開示した。さらに“飛躍的な成長を目指すための投資”として「特別成長投資枠」を500億円を別途設定した。
経営資源の配分についても開示した。安定的経営のための適正な手元現預金水準は年間売上の2.6カ月分であるとして、2017年度末の時点では3000億円。成長投資によってフリーキャッシュフロー(純現金収支)を創出、有利子負債も活用して、企業年金基金の基盤強化、前述の特別成長枠、株主への還元に充てるという。
会見後半の質疑応答で、「世界主要500都市への乗り入れなど事業拡大に際し、パイロット不足が起こるのでは」との指摘については、「JALとANAには自社養成の仕組みがあり、毎年の応募も多いので心配していない。日本の航空会社をこの2社でリードしていきたい」と植木氏。
「世界主要500都市への就航で、そのうちどの程度を自社便で運航したいか」との質問には、基本的にはコードシェアでの拡大を考えているが、これは日本の旅行者が(特にアジアに)行きやすくなるだけでなく、今後成長してくるアジアの旅行者が成田を経由して北米へ向かうといった逆方面の効果も出てくる、と回答した。
会見には次期社長の常務執行役員 整備本部長 赤坂祐二氏も同席しており、「世界のJALを実現するために今何が足りないか」と問われた赤坂氏は、「海外ではJALの認知度がまだ不足しており、日本人の利用者が中心。もっと多くの外国人利用者を増やさなければならないし、海外での販売を強化していきたい」とコメントした。