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JALのエアバス A350訓練飛行を紹介。パイロットにとっても「操縦しやすい飛行機」

セントレアでは整備中の第2ターミナル前に駐機

2019年9月1日 就航

9月1日の就航に向けたJALのエアバス A350型機の訓練飛行。荒木隆裕氏(機長席)、後藤弘太郎氏(副操縦士席)、杉本恒氏(オブザーバー席)の3名による訓練飛行に搭乗した

 JAL(日本航空)は9月1日の就航に向け、エアバス A350-900型機の訓練飛行を継続的に実施している。この訓練飛行に搭乗し、エアバス A350型機のシートなどを体験した。機内の体験については別記事「新シートと静かな機内を体験。就航目前のJAL エアバス A350に乗ってみた」でお伝えしたが、本稿ではその訓練飛行の内容やパイロットの感想などをお伝えしたい。

 先述の記事でも記したとおり今回の訓練飛行は、成田空港を出発し、新千歳空港、セントレア(中部国際空港)へ離着陸して、羽田空港へ向かう内容だった。JALはエアバス A350-900型機の初号機を受領後、基本的に1日6区間の訓練飛行を実施。搭乗した8月27日は羽田~関空、関空~新千歳、新千歳~成田、成田~新千歳、新千歳~セントレア、セントレア~羽田の6区間を飛行し、記者が搭乗したのはこのうちの後半3区間となっている。

 成田空港を14時58分に出発した機体は、滑走路の混雑で離陸に多少時間がかかったものの、一路、新千歳空港へ。17時03分に新千歳空港のオープンスポットに到着した。ここで新千歳空港の整備士による確認や、荷物の積み下ろしを行なうカーゴローダーの接続を実施。ここで給油作業も行なわれた。今回の記者の立場は旅客ではないので特殊な条件ではあるものの、機内にいる状態で給油作業が行なわれるというのは貴重な経験だった。今回の訓練飛行の際も、給油作業の開始前には機長から、いつでも動ける状態にしておいてほしいとの注意があり、給油作業だけは作業終了時に告知があった。

 余談ながら、過去、旅客とした搭乗している状態での給油作業を1度だけ経験がある。その際は駐機場から離れたあとに機体トラブルがあったそうで、旅客を乗せたまま整備作業が行なわれ、そのまま給油も行なうというシチュエーションだった。このとき旅客がするのは「シートベルトを外す」こと。安全への配慮がなされているとはいえ、可燃物の高い物質を扱う場面ではあるので、万が一の際にすぐに脱出できる体勢でいることが重要というわけだ。

 その後、空が夕焼けに染まりつつある18時09分に新千歳空港を出発。19時56分に雨が降るセントレアへと到着した。セントレアでは「74A」と書かれたスポットの前に駐機。セントレアを利用したことのある人は違和感を覚えたかも知れないが、9月20日に供用が開始される予定の第2ターミナル前である。すなわち第2ターミナルには70番台の搭乗口番号があるということだろう。

 ここでは給油は行なわれず、整備士による機体確認が行なわれ、20時54分にセントレアを出発。距離も短いので1時間程度のフライトかと思いきや、東北の方へ大きく迂回するような経路で飛行。訓練飛行なので羽田空港が空いている時間帯にしか着陸できないのだという。2時間ほどの時間をかけ、22時42分にJALの格納庫前に到着した。

成田空港を出発
新千歳空港へ。着陸前に前方の機外カメラを見ているとノーズギアが降りてくる様子が見られて楽しい
新千歳空港に到着。オープンスポットに駐機して給油作業などが行なわれた
新千歳空港を出発
雨のセントレアに到着。到着したのは「74A」スポットの前
LCC向けのセントレア第2ターミナルでは屋根付きのエプロンルーフとタラップを使って飛行機にアクセス。準備が着々と進んでいる様子がうかがえる
セントレアを出発して羽田空港へ。機内エンタテイメントサービスにあるフライトマップでは出発地、到着地それぞれとの距離を表示する機能があるのだが、東北の方へと大きく迂回してのフライトだったので興味深い数字になっていた
湾岸地域の夜景を望みつつ、D滑走路へ着陸した

パイロットにとっても「操縦しやすい」というエアバス A350型機

成田空港のJALオペレーションセンター

 上記の訓練飛行の前には、訓練を行なった機長3名、荒木隆裕氏、後藤弘太郎氏、杉本恒氏による出発前ブリーフィングが、成田空港のJALオペレーションセンターで行なわれた。天候やルートのチェックのほか、前半の3区間で訓練を終えた3名の機長も立ち寄り、整備状況などを伝達していた。

 前半の3区間で訓練飛行した南雲恒昌氏、野澤祥大氏、宮澤憲一郎氏の3機長や、後半3区間でオブザーバーとして訓練に参加した杉本恒氏に、エアバス A350型機の印象などを聞くことができた。

 エアバス A350型機の印象については、各機長とも操縦がしやすい飛行機と口をそろえる。JALのパイロットはこれまでボーイング機を操縦してきたパイロットがほとんどで、操縦桿がボーイングのコントロールハンドルタイプから、エアバスのサイドスティックへと大きく変わる。この違いはシミュレータで慣れることができ、シミュレータから実機への移行ではあまり違和感はないという。

 このほかにボーイング機とエアバス機の違いとしては、一般的な用語を除いては、ほとんどの用語が異なっているそうで、その違いは覚える必要があったという。また頭上などにあるスイッチ類もすべてオン/オフの向きが逆なのだという。この点について杉本氏は「すべてのスイッチが反対なので、頭を完全に切り替えれば大丈夫。1個か2個が反対だとかえって難しい」との感想を語った。

 また、各機長とも「安定感」「静かさ」を特徴として挙げる。このうち静かさの一例では、コンディションにもよるものの、逆噴射時の最大出力となるいわゆるフルリバースにしなければならないことが少ない設計とのことで、エンジン出力が上がる離着陸時の騒音についてはかなり抑えられている。

 ちなみに、JALでは初期のメンバーとして36名の機長が選任され、9月1日からの商業運航に乗務するパイロットはおおむね30~40時間を飛行しているという。初期メンバーはエアバス本社のあるフランスのトゥールーズで座学やシミュレータ訓練を実施、日本での訓練飛行を行なってきている。エアバス A350型機の資格のほか、日本で旅客を乗せて運航するための資格が必要になり、航空局からのライセンス認可のためには最低でも25時間以上は実機での飛行が必要だという。

出発前ブリーフィングを行なう(手前から)後藤弘太郎氏、荒木隆裕氏、杉本恒氏
前半3区間で訓練を終えた機長から引き継ぎ
前半3区間で訓練飛行した(右から)南雲恒昌氏、野澤祥大氏、宮澤憲一郎氏
成田空港で出発を控えるエアバス A350型機
荷物を積み下ろしするベルトローダー
出発前点検を行なう荒木機長
離着陸ごとに3名の機長が飛行内容などを確認
コックピット
ヘッドアップディスプレイ。駐機中は収納していることが多いそうだ
この日の訓練飛行を終えた機体