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エアバス A350型機の最終組立工場にJAL向け3号機。植木会長「毎月のように受領すると聞いている」
エアバスのA350製造は月産10機。270機以上を納入済み
2019年6月17日 17:37
JAL(日本航空)がエアバス A350-900初号機を受領し、フェリーフライトを経て日本に到着したことは別記事でお伝えしたとおり。フランス・トゥールーズで行なわれたデリバリー(引き渡し)式典を取材した折に、エアバス A350型機の最終組立工場を見学した。
エアバスはトゥールーズにおいて7万8000m 2 という広大な敷地を有しており、そのなかにエアバス A350の最終組立工場がある。L字型のレイアウトで長い方が300m、短い方が150m。350~400名が9時間ずつの2交代、1日18時間体制で製造を進めている。
A350型機のパーツはイギリス、フランス、ドイツ、スペインといった地域で製造され、専用の輸送機「ベルーガ」で空輸。7度のフライトで1機分のパーツを輸送している。ただ、現在のベルーガはエアバス A300型機をベースとしたものだが、新たにA330型機をベースとした「ベルーガ XL」を開発中で、現在飛行試験が行なわれている。このベルーガ XLが導入されると、6度の飛行でA350型機1機分のパーツを輸送できるようになるという。
最終組立工場内は大きく「ステーション59」「ステーション50」「ステーション40」に分かれ、それぞれの工程が進められる。
ステーション59は胴体パーツの受け入れを行なうところで、複合材を用いた前方、中央、後方の3つに分かれた胴体パーツが並べられる。胴体パーツ製造の段階で電気系統などはすべて設置済みで、ここではフロアのパネル保護材や、専門用語で「モニュメント」と呼ばれるギュレーやラバトリーなどの大型機内パーツを取り付ける。
1機分で3個の胴体パーツがあり、9か所の設置スペースがあるので3機分を同時に作業できることになる。このパーツ3つという構成は-900型機も-1000型機も同じだという。このステーション59での作業は3日間かけて行なわれる。
その次にステーション50へと進む。ここは胴体の接合を行なうエリア。同時に3機を作業可能で、7日間で作業が進められる。
複合材を用いた前方、中央、後方の胴体パーツのほか、アルミ合金を用いた最前方のパーツもここで取り付ける。接合はレーザーで接合部を検出し、穴を開けてボルトで固定し、シーリング材を入れていくという手法となる。複合材同士の接合と、アルミと複合材の接合は基本的に同じ手法だというが、複合材同士の接合の方が高速にできるそうだ。ちなみにロボットなどは使わず、すべて人の手で作業が行なわれている。
残るステーション40では、主翼、垂直尾翼、水平尾翼、主翼の下のエンジンパイロン、ランディングギアなどを取り付けるほか、機内のシートなどもここで設置される。
ステーション40での組み立て作業は9日間。すなわち最終組立工場においては、19日間で1機分のパーツの納入から機体の完成までが進められることになる。ちなみに、ステーション59と50は3機分の同時作業が可能だが、ステーション40は期間も長いことから4機を同時に作業できる。ただし、2機分のスペースは-900型機専用となっている。
このステーション40の工程を終了して機体構造がほぼ完成したあとは、別の施設へと移動し、塗装作業が行なわれる。そして、各種地上テスト、テスト飛行(基本的には6時間)、電源や電子機器のテストなどが行なわれて完成となる。
JALの機体については6月12日時点で、2号機がペイント待ちで屋外に置かれ、3号機が最終組立工場のステーション40で作業が進められていることを確認できた。引き渡しが行なわれた初号機(JA01XJ)は「挑戦」を表わす「レッド」の「AIRBUS A350」ロゴが描かれるが、2号機(JA02XJ)はイノベーションによる「革新」を表わす「シルバー」、3号機(JA03XJ)は地球環境に配慮し持続的な成長を目指す“エコ”を表わす「グリーン」のロゴを描く。シルバーのロゴを入れた塗装済みの2号機が、そう遠くない将来に登場することになる。
ちなみに、JAL 代表取締役会長の植木義晴氏は報道関係者向けの質疑応答のなかで、「正確な納入の日は分からない」と前置きしたうえで「ほぼ毎月のように1機ずつ届くと聞いている」と話しており、特別塗装機となる3機は就航日の9月1日までにJALに納入されることになりそうだ。
国内幹線への新造機導入。6年間かけて大型機を刷新
JALはこのエアバス A350型機を31機発注しており、うち-900型機が18機、-1000型機が13機となる。JALではA350導入にあたり2018年10月にトゥールーズに支社を開設。現在5名のスタッフが配属されており、トゥールーズの工場はもちろん、欧州各地で製造されるパーツの工場へも検査に行っているという。
すでにお伝えしたとおり、6月14日に日本に到着したA350-900型機については、国内線に導入され、国内線への導入に対応すべく最大離陸重量の見直しと、ランディングギアの耐久性再テストが行なわれている。JALが国内線の幹線に大型機の新造機を導入するのは珍しく、ボーイング 777型機も787型機もまずは国際線で運用して実績を重ねた。今回のエアバス A350型機導入により、ボーイング 777型機の置き換えを図るとともに、国内線機材は大型機の比率を高める計画にしている。国内線への導入を進めたのち、2023年を目途に国際線の長距離路線にも導入していく。
機内仕様はファーストクラス12席、クラスJ 94席、普通席263席の計369席。現在のボーイング 777-200型機が375席(ファーストクラス14席、クラスJ 82席、普通席279席)なので、やや座席数は減るが、クラスJの比率が高まっているのが特徴となる。また、各席にシートモニターを備え、機外カメラによる映像の視聴も可能な機内エンタテイメントサービスや、各席へのACコンセント、USB電源ポートなどの提供が発表されている。
先述のとおり、エアバスでは月産10機体制でエアバス A350型機の製造を進めており、2019年5月末時点で20社以上の航空会社へ、278機を納入済み。615機の受注残を抱える状況となっている。
特にアジアの航空会社への導入が多いのが特徴となっており、東南アジアを発着地とする欧州路線や太平洋路線に多く利用されている。また、航続距離を延長したエアバス A350-900ULR型機を導入したシンガポール航空が、シンガポール~ニューヨーク路線を開設した。
このような実績をもとに、JALのような国内線から、超長距離まで広いレンジに対応できることや、これまでに導入した航空会社での運航率が99.3%と高いレートを維持していることをアピールしている。