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JAL、エアバス A350型機の機内お披露目セレモニー実施。赤坂社長「今後の国内線サービスは新仕様をベースに」
2019年6月20日 17:43
- 2019年6月20日 実施
JAL(日本航空)は6月20日、6月14日に日本に到着したエアバス A350-900型機の客室仕様お披露目会を実施した。本稿では、JAL、エアバス、ロールス・ロイスの代表者が臨席したセレモニーの様子をお伝えする。機内や客室の仕様、機内エンタテイメントサービスなどについては別記事でお伝えする。
お披露目会は羽田空港の同社格納庫に駐機したJALにとってのエアバス A350-900初号機「JA01XJ(登録記号)」をバックに行なわれた。
JAL 代表取締役社長 赤坂祐二氏は「約20年にわたってJALを支えてきた大型機、ボーイング 777型機の後継機。これからのJALのフラッグシップとして長く日本の空で活躍する次世代の航空機」と同機を紹介。
この日明らかになった客室仕様については、「新たな時代を担うフラッグシップとしてどのようなものがふさわしいか社内で多くの議論を重ねた。特に次世代を担う若手社員、彼らが思いを込め、細部にこだわってエアバスと一緒に作り上げてきた。私も自信を持って、この飛行機を送り出すことができる」と話し、「機内へ一歩踏み入れていただくと、その瞬間に、JALから皆さまへの歓迎の気持ちと、これから始まるJALの旅の安心感を感じていただけるような、しつらえを施している。エントランスやファーストクラスの空間全体からこうした印象を感じ取っていただきたい」とアピールした。
そして、別記事(JAL、エアバス A350型機の客室仕様を発表。全席モニター/コンセント/USB完備。無料Wi-Fiインターネットも提供)で概要を紹介している各クラスの特徴を紹介したうえで、「多くの皆さまに、このA350の空の旅をお楽しみいただきたい。JALはA350とともに、日本の空の旅を変え、この飛行機が持つ印象である、明るく、おだやかな新しい時代を作っていきたい」とあいさつを締めた。
式典後に行なわれた赤坂氏への質疑応答では、エアバス機を導入した理由についての質問に対し、「飛行機の性能、あるいは今回の場合はタイミングが我々に極めてマッチした」と述べ、ボーイング 777型機の機齢から判断した更新のタイミングが決断の大きな理由になったことを強調した。
また、性能面では「国際線でも国内線でも適用できる」とその柔軟性を評価したほか、燃費効率についても「国内線で1機を1年間飛ばすと2億円ぐらいのコスト削減ができる試算。仮に10機飛ばすと燃油費だけで1年で20億円の削減ができる」と具体的なコスト削減例を示して、そのメリットを強調した。
これまでJALの国内線機内は「JAL SKY NEXT」のブランドで展開をしてきたが、新たなコンセプトで作られたエアバス A350型機の客室の他機種への展開について尋ねると、「今回のA350はフラッグシップで特にファーストクラスを備えた飛行機なので、ある意味、スペシャルな(幹線向けの)仕様。ただ、このコンセプトやサービスは、これ(A350で導入したもの)をベースに、順次新しいものに変えていきたい。JAL SKY NEXTはご好評いただいているが、今後はこれをベースにした国内線の仕様あるいはサービスを作っていくことになるだろうと思っている」との展望を述べた。
来賓としてあいさつしたエアバス 日本担当セールス シニア・バイス・プレジデント ジャン=ピエール・スタイナック氏は、セレモニーに出席するため、パリ航空ショーから同日朝に帰国したことを明かしつつ、「エアバス50年の歴史で初めてJALから受注し、引き渡しした。鶴丸とエアバス A350の特別塗装をこの場で拝見できて本当にうれしく思う。私たちにとって決して忘れることができない歴史的な日となった」と喜びを語った。
エアバス A350型機については、「将来の日本の空を変える飛行機。A350の運航性能が役に立てると確信している」と自信を見せ、「エアバスとJALの新たな章が幕開けしたことをうれしく思う」と話した。
エアバス A350型機に搭載されている「Trent XWB」を製造する、ロールス・ロイスからは、ロールス・ロイス ジャパン 代表取締役社長の露久保治彦氏が隣席。まず、「ロールス・ロイスは年間約10億ドル相当、約20万個の部品を日本から調達しており、日本は当社のグローバルサプライチェーンとして重要な一角を占めている。例えば、川崎重工業、三菱重工業、IHIをはじめとする日本のパートナー企業と緊密に連携し、中核部品およびシステムの開発、製造に深く関与していただいている」と日本企業との関係の深さを紹介。
エアバス A350型機に搭載されるTrent XWBについては、「先進的技術により、騒音を大幅に削減、燃費を大幅に改善した。CO2排出削減においては業界トップクラスのエンジン。JALの『FLY INTO TOMORROW』という哲学、ロールス・ロイスの『Pioneering the Power that Matters(世界を変えるパワーを生み出す)』という哲学にマッチしたエンジン」と自信を見せた。
そして、JAL機に搭載されることについて、「A350型機を福岡など観光地として人気のある地域に導入すると聞いている。9月からは12会場で行なわれるラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、国内外の多くのお客さまがTrent XWBの快適なフライトで日本各地の観光をお楽しみいただくことになると思う。ロールス・ロイスはJALのお客さまに最高の空の旅をお楽しみいただけるようA350型機導入の成功に貢献していく」と話した。
ロールス・ロイスからJALへは、Trent XWBのファンブレードに、鶴とロールス・ロイスのロゴをデザインした「ファンブレードトロフィー」が贈呈された。
客室仕様のコンセプトは「日本の空に、新しい快適を」
その後、これまで布でカバーされていた新シートをアンベール。客室の開発を行なったJAL 商品サービス企画本部の大久保隆弘氏が客室仕様を説明。
位置付けについて「ボーイング 777型機の置き換えということで、国内線では約20年振りの大きなできごと。どのようなふさわしいか検討を重ねた。このなかで、どのような価値を皆さまに提供するか、座席の機能の追求はもちろん、座り心地や快適性の追求、『日本の空に、新しい快適を提供しよう』を開発のテーマに定めた」とコンセプトを説明。
機内デザインについては、「イギリスのtangerine(タンジェリン)社と新たに契約し、日本の伝統美、美意識をテーマに、インテリアとシートを開発した」と説明。機内では「プライベート空間を保ちつつ、外部と調和するデザインに注目を。仕切りながらもゆるやかにつながる日本の伝統美を表現している」「さまざまな素材を使用したシートが織りなす視覚的な広がりを創出する配色にこだわったシート」「JALのコーポレートカラーでもあり、日本の伝統色でもある赤が織りなすモダンなインテリアデザイン」の3点をデザインのテーマとして紹介した。
そして、各クラスごとに、ファーストクラスは「新たなる最上級」、クラスJは「一つ上のくつろぎ」、普通席は「思い思いの過ごし方でより快適に」をテーマにしたという。
デザインを担った英tangerineの石原祐一氏は、赤とグレーを基調としつつも、グレーをほんの少し青みがかった色にするなど、さまざまな色を使って色を表現しているほか、これまでのJAL国内線では不織布を使ったヘッドレストカバーを使用しているのに対し、本機では各クラスのシート色にマッチした合皮のヘッドレストカバーを使っている点をこだわりとして紹介。
また、クラスJと普通席は座面やヘッドレストに本革、背もたれにファブリックを使用しているのもこだわりで、さらに背もたれはアームレスト部分を境に色を分けている。2色にすることで背もたれが横に長く錯覚することを狙ったものだという。
このほか、機内照明についてもエアバス A350型機では24ビットフルカラーでの表現が可能だが、ボーディングから出発、到着など6パターンに変化する。
350名の社員が集合。折り紙ヒコーキで祝福
セレモニーにはエアバス A350型機の導入に携わった各部門のスタッフも登壇。
パイロットの教官を務める和田尚氏は「エアバス A350型機はサイドスティックで操縦、運転するが、機敏に反応する。コックピットには6枚の大きなディスプレイがあり、いろいろな情報を活用できる。また、パイロットの訓練にも新しいコンセプトを取り入れた。教官はインストラクターというよりはサポート役として、訓練生に体験、気付きを与えるコンセプトにしている。訓練生もだが、教官も挑戦している」と説明。
CA(客室乗務員)の高橋亜弓氏は「革新的なポイントは全席装備のタッチパネル式モニター。先日試したが、タッチパネルの反応もよく、短い国内線においてはストレスを感じることはなかった。国内線は短いので番組を見終えることができないと思うが、次回搭乗時に続きを見られる機能がある。充実したコンテンツで私どもCAとしてはお客さまとお話する時間が少なくなるのではないかと心配している。もう1つのポイントは全席装備のUSB電源、PC電源。お仕事なさるお客さまには移動時間も無駄なく使用していただける」とアピールした。
整備士の波多野雅美氏は、「JAL初採用のロールス・ロイスのTrent XWBはコンパクトで整備性も優れている。いつもハンドリングしていて思うことだが音が静か。とにかく静かなので、機内での快適な空間を提供できることをお約束できる。またA350型機は複合材料が多く使われている。複合材料は軽量で強度があるという特徴があり、コンパクトなエンジンと、軽量化された機体で、非常に燃費のよい航空機となっている」と紹介した。
空港オペレーションを担っている相澤範幸氏は、「新しい飛行機を空港に迎え入れるに際しては、お客さまの搭乗や地上作業などをしっかり確認し、安全が担保されたことを確認。(一例として)A350はほかの機体よりも翼が長い。羽田空港では駐機スポットによってサイズを大きくしなければならないなどの課題がある。一つ一つクリアしながら進めたい。この機体への搭乗を心待ちにしてくださっているお客さまも多いと聞いているので、期待に応えるためにも万全の体制で9月のサービスインを迎えたい」と話した。
そして、セレモニーの最後に、JALグループスタッフ350名が機体の前に集合し、「A350」の人文字を作成。折り紙ヒコーキを飛ばして導入を祝った。