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エアバスとJAL、仏トゥールーズでA350初号機のデリバリー式典。パイロット目線で導入を決めたJAL植木会長「正しい判断をした」

2019年6月13日(現地時間)実施

エアバスとJALは、JALのエアバス A350-900型機の初号機引き渡しを祝う式典を実施した

 エアバスとJAL(日本航空)は6月13日(現地時間)、フランス・トゥールーズにおいてJALにとってのエアバス A350初号機(登録記号:JA01XJ)のデリバリー(引き渡し)式典を実施した。

 別記事(JAL、エアバス A350初号機を受領。国内航空会社初の導入。14日朝に羽田到着予定)でもお伝えしているとおり、6月11日にエアバスからJALへと引き渡され、13日の式典を行なったのち、日本に向けてフェリーフライトに飛び立った。

 デリバリー式典はエアバスがホストとなって開かれ、会場は赤を基調に、鶴のオブジェが置かれるなど、JALへの納入に対する喜びが感じられるものとなった。

司会は以前にGoogleマップのナビボイスを務めていたことでも知られるバイリンガルMCの野口美穂さん
メーカー間で贈呈しあう記念品
鶴のオブジェも

 冒頭にあいさつしたエアバス Chief Commercial Officerのクリスチャン・シェーラー氏(Christian Scherer)氏は、「今日皆さまをお迎えしたのは歴史的な出来事を紹介するため。JALに初めてA350をお届けする」と英語で述べ、「オメデトウゴザイマス」と日本語でもメッセージ。そして、「エアバス50年の歴史で初めてJALに届ける航空機。私たちの気持ちを想像してみてください」との言葉で喜びを表現した。

 また、エアバス A350型機の特徴などを述べるなかで、特にJALが国内線で同機を運用することについて言及。長距離から短距離まで適用できるワイドボディ機としての優位性を語るとともに、「航空会社としての競争力を高めるもの」と自負を見せた。

 そして今回の納入を、「JALにとってだけではない、日本とヨーロッパの航空宇宙業界全体にとっての画期的な出来事」とした。

エアバス Chief Commercial Officerのクリスチャン・シェーラー氏(Christian Scherer)氏

 続いて、登壇したロールスロイスのChief Commercial Officer ドミニク・ホーウッド(Dominic Horwood)氏も、JALにエンジンを供給できることへの喜びを語るとともに、同氏自身が日本を担当したこともあることから、なおのこと誇りと謝意を感じていることを述べた。

 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにも言及し、「日本に行くためには航空機とエンジンが必要で、Trent XWBを選んだJALは勝者であることを約束する。仮にエンジンのオリンピックがあったら間違いなく金メダルを獲得している。短距離走、マラソン、エアバスのための高跳びに必要なエンジンを届け、開発する。オリンピックにとって素晴らしいエンジンになると信じているし、国内線に利用されることを見られるのも素晴らしいこと」と話した。

 そして、「今日は最初の日だが、一緒に祝うのはこれが最後ではないだろう。ロールスロイスとJALの長く、そして発展的な関係の一歩にすぎない」とし、今後の関係強化にも期待を示した。

 このほか、エアバスが2019年に創立50周年を迎えたことにも触れ、「今日のパートナーであることを誇りに思う。航空業界をリードし続けることを私たちは知っている」と期待の言葉をのべた。

ロールスロイス Chief Commercial Officer ドミニク・ホーウッド(Dominic Horwood)氏

 続いて、在フランス日本国大使館 次席公使 広報文化部長の樋口義広氏がマイクの前に立ち、今回のJALへのA350型機引き渡しについて「欧州、フランスを代表するエアバスの製品が日本に輸出されることは、現在よい関係にある日仏、日欧の経済関係を象徴するもの」と表現。

 また、観光交流人口についても触れ、「フランスからのインバウンドが2018年に30万人を超え、ここ数年で右肩上がり。日本に関心がありながら行ったことのないフランス人も多く、この傾向は今後も続くと思われる」とし、逆に日本からフランスへの渡航者については、「一時は減少したが、両国の観光業界の努力などもあり、回復基調にある」と紹介した。

 さらに、スポーツイベントについても、女子サッカーのワールドカップがパリで始まり日本のなでしこも参加していること、2019年に日本で行なわれるラグビーワールドカップも次の2023年大会はフランスが開催地となること、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの次に行なわれる2024年の夏季大会はパリが開催地となること、「日本とフランスはさまざまなスポーツイベントを通じて協力し、友好を深める機会に恵まれている」とした。

 そして最後に、「A350はまずは日本の国内線で導入されると聞いているが、個人的な希望としては、将来的にこの飛行機が日本とフランスを直行便で結び、それによって日本とフランスの友好の証となることを願っている」としてあいさつを締めた。

在フランス日本国大使館 次席公使 広報文化部長 樋口義広氏

 続いて、スペシャルゲストとしてJAL 代表取締役会長の植木義晴氏が登壇。2012年にボーイング 777型機の後継機を検討し始め、「7年経ち、我々はついにここに立った」とコメント。登壇した各位への謝意のほかに、エアバスのキーパーソンとして2名を紹介。

 1名はエアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏。そして、もう1名がテストパイロットのロイ機長で、植木氏がトゥールーズでエアバス A380型機のシミュレータを体験した際のサポートを受けたことや、2014年にデモフライトでロイ機長が日本を訪れた際にコックピットへ案内して長時間滞在させてもらったことなどに感謝を述べ、「(A380型機のシミュレータ体験をしてから)3か月後に契約が成立し、その経験が私の選択にいかに需要な要素であったかが分かる」としたほか、ロイ機長との交流を紹介したうえで「私は正しい決断ができた」と話した。

 今回納入された初号機については、登録記号の「JA01XJ」をフォネティックコードで読み上げ「Juliet、Alpha、Zero、One、X-Ray、Juliet。とてもクールだ」とコメント。

 セレモニー後に東京へ向かうフェリーフライトについては、「私は操縦桿を持つことを希望している」としたが、機長の立花氏を探し、「彼はとてもわるい男だ。彼は、私はサイドスティックを使うことができないと言った。だから今回、私はキャビンに静かに座って楽しむことにした。しかし秘密のトレーニングを行なって、(立花氏の言葉が)間違っていることをいつか証明する」と笑いを誘った。

日本航空株式会社 代表取締役会長 植木義晴氏

 植木氏はセレモニーに前後して行なわれた報道関係者の質疑応答の場で、A350型機を選択した理由について「安全性、経済性、静寂性、環境性などをトータルに勘案してA350に決めた。といったことは、普通の航空会社のCEOがおっしゃることだと思う。私は、トレーニングを合わせて18歳から57歳まで実際に飛行機に乗ってきた人間なので、その観点としてもう1つ答えたい。エアバスのすべての飛行機に一貫した考え方、信念が取り入れられている。そこに一番惚れた」とコメント。

 植木氏は2013年10月にエアバスとの契約を結んだ際に社長を務めており、契約当時の記者会見でエアバスに決めた理由については先のロイ機長を紹介した内容にもあったとおり、「トゥールーズに行って、A380のシミュレータを操縦し、実機を見せてもらった。そのなかで35年のパイロット経験がエアバスを選ぶべきだと私に教えてくれた」と回答。そこから6年を経ての初号機受領にあたり、「真新しいJALのロゴが入ったA350型機を見て、6年前の決断は正しかったんだと確信を得た」と話した。

 また、隣席した各位のスピーチで特に言及が続いた国内線での導入に関し、国内線から導入する理由について「JALの国内線市場は世界3位のレベルで、国際線、国内線の規模も半々。国内線から入れた方がトレーニングなど、さまざまな面で優位性がある」とコメント。

 国内線での導入にあたっては、エアバスに対して「ボーイング 777型機を置き換えていく。国内線の777は3クラスで運航しているが、それと同じイメージで作ってもらえないかオーダーした」と話した。

 さらに、国内線での運航では飛行距離が短いために燃料が多く残っていると目的地に到着する際に最大着陸重量を上まわってしまう可能性があることから、仕様上は最大離陸重量を引き下げた形で登録を行なっているという。また、国内線での高頻度運航となるためにランディングギアへの負担が大きくなることから、エアバスにおいては着陸回数の耐久性テストを改めて実施し、従来の仕様を超えた着陸回数の耐久性認定を行なったという。

報道関係者からの質疑に答えるJAL 代表取締役会長の植木義晴氏

 セレモニーはその後、エアバス、ロールスロイス、JAL、在フランス日本国大使館の各代表者による記念品の交換や、写真撮影が行なわれた。

 そして、ダンサー2名による「鶴」をイメージしたパフォーマンスが披露されたあと、奥に駐機するJALのエアバス A350初号機をアンベール。会場は拍手に包まれてセレモニーの幕を閉じた。

 その後もフェリーフライトのための出発準備が行なわれる間、初号機を送り出すエアバス、初めてのA350を迎えるJALの関係者ともに笑顔を見せ、思い思いに記念撮影を行なっていた。

記念品贈呈。エアバスからJALへ
エアバスから在フランス日本国大使館へ
ロールスロイスからJALへ
JALからエアバスへ
JALからロールスロイスへ
フォトセッション
鶴をイメージした舞が披露されたあと、JALのエアバス A350型機がアンベールされた
JALのA350デリバリー式典でエアバスが上映したビデオ
JALのA350初号機デリバリー式典でのパフォーマンス
屋外へ出ての記念撮影。植木氏が手にしているのはJAL Agriportが初収穫した芋から作られた焼酎「鶴空」
植木氏がスピーチで感謝を伝えたエアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏(左)と握手
見送りの横断幕とともに
フェリーフライトの操縦桿を握る立花機長(各写真中央)
フェリーフライトへ乗り込む植木氏
PBB(旅客搭乗橋)が外されプッシュバック
横断幕を持って見送るJALスタッフら