旅レポ
新シートと静かな機内を体験。就航目前のJAL エアバス A350に乗ってみた
2019年8月29日 18:47
- 2019年9月1日 就航
JAL(日本航空)は9月1日の就航に向け、エアバス A350-900型機の訓練飛行を継続的に実施している。この訓練飛行に搭乗し、エアバス A350型機のシートなどを体験した。本稿では実際に体験した新シートのフィーリングなどをお伝えしたい。訓練飛行の内容やパイロットへのインタビューなどは別記事でお伝えする。
今回の訓練飛行への搭乗は、成田空港を出発し、新千歳空港、セントレア(中部国際空港)へ離着陸して、羽田空港へ向かう内容となっている。
機内については既報のとおり(関連記事「JALのエアバス A350機内は『日本の伝統美』がテーマ。全クラスを一挙刷新したシートの特徴を紹介」)、JALではエアバス A350型機を新たなフラッグシップ機として国内線に導入。ファーストクラス12席、クラスJ 94席、普通席263席の計369席仕様で運航する。
機内へは、L1ドア(機体左側最前方のドア)に接続されたタラップから搭乗。JALの大きな鶴丸ロゴと、赤を基調とした和風な壁が出迎えてくれる。通常の運航であれば、CA(客室乗務員)の出迎えもあるはずだ。
機内の第一印象はとにかく開放的であることのインパクトが大きい。ボーイング 787型機に初めて乗ったときも窓の大きさが印象的で、最近では787以外の飛行機に乗ると窓が小さく感じるようになってしまったが、エアバス A350型機はこの大きな窓からの外光の入射に加えて、大きな胴体ということもあって、開放感が強く印象に残る。
ファーストクラスはとても静か。体を包み込むような柔らかなクッション
ファーストクラスは2-2-2の6アブレストで、計12席を用意。本革張りのシートで、ファーストクラスのエリアは黒を中心とした配色となる。シートピッチは53インチ(約135cm)という仕様だが、余裕で足を伸ばせるスペースがある、という程度の認識でよいように思う。
とくに印象的だったのはその静かさ。エンジンより前方に位置することもあって、飛行中もノイズが気になるほどではなく、人との会話も容易だった。エアバス A350型機はその静寂性がよくアピールされるが、ファーストクラスはその特徴をもっとも享受できるクラスでもあるようだ。
シートは本革張りが特徴として挙げられているが、実際に座ってみると、革の質感云々よりもクッション性の高さが印象に残った。やや大げさではあるが、体というかお尻を包み込むような感覚があり、ふんわりしつつも、不安定な感じのない絶妙のクッション性だった。座面が広いこともあってアームレストなどに体を預けにくく、ただ柔らかいだけではないクッション性はより意味がある。
リクライニングとフットレストは電動。それぞれのスイッチを押し続けることで動作する。シェルタイプなのでリクライニングしても後席は影響を受けないのはメリットだが、通常時はシェルの壁とシートの背もたれの間に隙間があるので物を落とさないよう注意は必要だろう。また、背もたれとフットレストにはマッサージ機能があり、これは押すたびにオン/オフが切り替わる仕組み。
ちなみに各席は頭部をシェルが覆うほか、2列席の間にはディバイダも装備。ディバイダは前後に手動で移動するもので、通常姿勢ではもう少し前まで出てくれるとうれしく感じる長さだが、リクライニングした状態ならばしっかりしたアームレストの存在もあってプライバシー感はかなり高い。
シートモニターは15.6インチ。タッチ対応だが、いかんせんモニターまでの距離が遠いので、手元にあるハンドコントローラを活用するのが便利だ。
ちなみに、このハンドコントローラの脇にはペットボトルなどを入れるのにちょうどよさそうな小物の収納ポケットと、AC電源、USB電源を備える。ただ収納ポケットにペットボトルのような高さのあるものを入れると、電源やヘッドフォン端子と干渉するので注意を要する。なお、他クラスではUSB電源をシートモニター近くに設置しているが、ファーストクラスのみは異なる配置となっているのは、やはりシートモニターまでの距離を意識したものだと思われる。
各シートのテーブルはアームレストから取り出すタイプ。かなり広めで、シート幅(約51cm)の横幅に広がる。とはいえ、中央で折りたためるので、座席を立つために収納する必要はない。
PCで仕事をしたい人に特にお勧めできる高い機能性のクラスJ
クラスJは2-4-2の8アブレストで計94席。これまでの国内線機材と比較して、クラスJの提供座席数が多めなのも同機の特徴の一つだ。シートは赤を基調としたデザインで、赤がコーポレートカラーのJALらしい雰囲気でもある。
シートピッチは38インチ(約97cm)で、これまでのクラスJと大きな違いはなく、背もたれがファブリック素材になったほか、これまでほど艶やかではない。見た目からして“ワンランク上”な感じがあった従来のクラスJに比べると、やや普通席に違い見た目になったことは否めないが、実際に体験してみると高機能というか、非常に高い実用性を持つシートであると感じられた。
座り心地については、レザー調の座面でありながらツルツルした感じはなく、座面はやや硬めの印象。硬めと言っても腰にダメージを与えるような硬さではなく、誤解を恐れず大げさに表現すると硬めの低反発クッションのようであり座り心地がよい。
リクライニングに加えて、レッグレストを装備したのも特徴となっている。作動はいずれも手動。シェルタイプではないので前席のリクライニングの影響を受けるが、そもそもシートピッチに余裕があることから、前席がフルリクライニングでも圧迫感はあまりない。レッグレストは角度がちょうどよく、その存在はありがたい。ただ、収納するのにちょっと力が必要だったのは気になった。
ヘッドレストは従来のクラスJも可動するものだったが、新シートは可動する左右部分の縦方向が長くなり、自分の肩にも力を逃がすことで、より首をリラックスできるようになった。
シートモニターは11.6インチ。そのモニターの下にUSB電源を備える。充電しながらスマホやタブレットを使うなら1m程度のケーブルではやや不足。1.5m以上は必要だ。ただし最前列席だけはUSB電源の位置がことなり、シート手前側にあるAC電源とともに設置されている。AC電源は2席ごとに2個ずつ備わる。2列目以降の席ではあまり問題にならないが、最前列席はコンセントが近接しすぎているのは気になった。
シートテーブルはアームレストに収納されている。同じ片側で支えるファーストクラスに比べると安定感は低いが、面積は十分にある。また、二つ折りができるので出入りに便利なことや、前後の移動量も大きめで好印象を受けるテーブルだ。
ちなみにテーブルをもっとも奥にした状態で、前席がフルリクライニングすると12.5型ノートPCが干渉。膝の上に紙の資料を置きつつノートPCで作業、といったシチュエーションではちょっと注意したいところだが、ノートPCの使い勝手という点だけでいえば、もう少しテーブルを近付けても窮屈な感じはなかった。シートピッチに余裕のあるクラスJならではの使い心地だ。
新・間隔がさらに広がった感覚の普通席。座り心地に高い満足感
普通席は3-3-3の9アブレストで263席。グレーを基調としたシートで、各席にシートモニターを備えていることもあり、よい意味でこれまでのJAL国内線機内とはガラリと雰囲気が変わった。
シートピッチは31インチ(約79cm)だが、シートが変わったおかげか足下まわりのスペースは従来機よりも広く感じられる。また、リクライニング角も浅めで、シートの後方下部の形状の妙か、前席がリクライニングしても極端に窮屈な感じはしなかった。
また、ヘッドレストを備えたのも大きな特徴で、形状はクラスJのように大きめ。足下のスペースとヘッドレストのおかげで、記者個人としてはリクライニングをしなくても十分にリラックスできる姿勢で過ごせると感じた。また、背もたれがファブリックになったことや、レザー調シートの座り心地はクラスJと同様だ。
シートモニターは10インチ。クラスJより一回り小さいサイズとなるが、距離が近いぶん没入感の違いはあまりないように思えた。ただハンドコントローラは最前列席のみで、2列目以降の席には備えていないのでタッチ操作が基本となる。
シートモニターのすぐ下にUSB電源を備える点や、最前列席は手前側の足下にAC電源とUSB電源をまとめて設置している点はクラスJと同じ。2列目以降の席についてはAC電源がシートテーブルの上に付いているのが特徴となる。
このAC電源のレイアウトは見た目には使いやすく、隣席に気を遣わないよい位置だと思っていたのだが、実際に利用してみると善し悪しを感じる点もあった。それはノートPCのディスプレイとの干渉が起こることだ。テーブルに乗せてノートPCを利用する場合、前席がリクライニングしなければ十分なスペースを取れる印象だが、前席がリクライニングした場合はテーブルを手前にスライドさせてもディスプレイが垂直に近くなり、スペースもやや窮屈。そして、AC電源とノートPCの液晶部分は前席のリクライニングに関わらず干渉してしまう。このあたりを考えると、普通席でノートPCを利用する場合はひざ上に乗せて利用するのがよさそうだ。
地上で使える機内インターネット。国内線で一層便利な“動画の続き”を見られる機能も
さて、エアバス A350型機の特徴の一つであるシートモニター。そこで提供される機内エンタテイメントシステムのコンテンツも充実しており、利用頻度の高い人も飽きることはなさそうだ。タッチ操作に特化したUI(ユーザーインターフェース)なので使い勝手も直感的で、細かなカテゴリ分けでコンテンツも探しやすいよう工夫されている印象を受ける。
また、国際線に比べて飛行時間が短いことから“続きを見る”機能を用意しているのも便利。これは「映画」「TV番組・動画」に対して用意される機能だ。再生中の動画を停める際に数字8桁の「レジュームコード」が表示されるのでメモするなりスマホで撮影するなりして控えておき、次回搭乗時にメニューの「続きから再生」を選び、レジュームコードを入力すれば、見ていたコンテンツを停止させた位置から再開させられる。特に「映画」が提供されるだけに積極的に活用したい機能だ。
もう一つ特筆しておきたいのが動画のピクチャ・イン・ピクチャ表示機能。再生中の動画や機外カメラの映像を子画面として表示する機能だ。ただ、この機能を利用できるのは、メニュー画面や文字ニュース画面に限られるのが惜しいところ。例えばマップ表示と機外カメラを同時に表示したり、映画とライブTVのニュース映像を同時に表示したり、といったことができるとさらに便利なように思えるが欲張り過ぎだろうか。
機内環境でもう一つ大きく変わったのがWi-Fiを利用したインターネット機能。従来の国内線機材ではGogoのシステムを採用していたが、エアバス A350型機ではPanasonic Avionics(パナソニック・アビオニクス)を採用した。これにより地上でもインターネット接続が可能になった。
これに伴い、接続先のアクセスポイントも「gogoinflight」から「Japan Airlines」に変更。乗り慣れている人には違和感があるかも知れないが、むしろ直感的になったようにも思う。また、7月から国内線で無料Wi-Fiインターネット接続を利用する際のパスワード入力が不要になっており、これはエアバス A350型機でも同様だった。