旅レポ

JALのエアバス A350初便に乗ってみた。植木会長がパイロット目線で語る導入秘話「最高の飛行機」

2019年9月1日 就航

JALが羽田~福岡線で就航したエアバス A350-900型機初便に搭乗した

 JAL(日本航空)は9月1日、エアバス A350-900型機の運航を開始した。

 羽田空港では、初便となる福岡行きJL317便(定刻12時40分発)の出発に先駆けて10時から第1ターミナル 中央マーケットプレイスにて就航記念セレモニーが行なわれ、多くのファンや報道陣が集まった。

「6年準備した」エアバス A350-900型機が就航

 セレモニーの冒頭でJAL 代表取締役会長の植木義晴氏は自身が社長を務めていた2013年の10月に導入を決めたエアバス A350型機が約6年の準備期間を経て運航を開始すること、そしてセレモニーであいさつできることに「感慨もひとしお」だと語った。また、今後札幌や沖縄へ路線を拡大していく新型機で新しい日本の空の旅を堪能してほしいとアピールした。

JALはエアバス A350-900型機の初便運航に先だち羽田空港にて就航記念セレモニーが行なわれた
日本航空株式会社 代表取締役会長 植木義晴氏

 植木氏のあいさつに続き来賓として、国土交通省 東京航空局 東京国際空港長の森本園子氏、日本空港ビルデング 取締役副社長の宮内豊久氏、エアバスからはChief Commercial Officerのクリスチャン・シェーラー氏、新型機のエンジンを供給するロールス・ロイス ジャパン 代表取締役社長の露久保治彦氏が登壇し祝辞を述べ、植木会長とともにテープカットを行なった。

国土交通省 東京航空局 東京国際空港長 森本園子氏
日本空港ビルデング株式会社 取締役副社長 宮内豊久氏
Airbus Chief Commercial Officer クリスチャン・シェーラー氏
ロールス・ロイス ジャパン株式会社 代表取締役社長 露久保治彦氏
多くの関係者やファンが見守るなかテープカットが行なわれた
セレモニー終了後はJAL植木会長と記念写真を撮ろうするファンで行列ができた

 なおセレモニーの会場となった中央マーケットプレイスでは9月4日まで今回導入されたエアバス A350-900機のシートが展示された。

今回導入されたA350-900型機に採用されているシートを展示
A350のファーストクラス
A350のクラスJ
A350のエコノミークラス

 就航記念セレモニー終了後、出発直前の9番ゲートでは搭乗を待つ乗客に向けて、11時30分から再びセレモニーが行なわれ、植木会長、初便の機長を務める野沢祥大氏と和田尚氏、整備士の牧内光明氏があいさつを行なった。

 長い期間をかけこの日のために準備を重ねてきたという機長の野沢氏は、A350でのフライトをする日を本当に楽しみにしていたとその喜びを語り、今までボーイング機の整備が多かったという牧内氏は、A350の導入にあたりすでに導入をすませていた同じアライアンスのカタール航空の機材で、ドーハにて現地の整備士とともに訓練を行なってきたとのエピソードを披露した。

出発直前の9番ゲートでは搭乗を待つ乗客に向け11時30分より再びセレモニーが行なわれた
初便の機長を務めた野沢祥大氏、和田尚氏
整備士の牧内光明氏
9番ゲートではファンから贈られたケーキ屋や花束も展示された

元パイロット目線で植木会長が語ったA350導入秘話

 実はこのゲートでのセレモニーの開始前にも、植木会長が飛び入りして予定外のあいさつを行なっていた。

 2012年に初めてフランス・トゥールーズのエアバス本社にて当時すでに就航していたA380のフライトシミュレータを体験したという植木会長は、自身が慣れ親しんだコントロールホイールを使うボーイングの操縦と、サイドスティックで操縦を行なうエアバスの違いや、各スイッチのON/OFFの位置の違いなど少々マニアックな話に触れ、初めてだったエアバス機の操縦にもかかわらず違和感がなかったところに感銘を受け、この体験からエアバスとボーイング、どちらも世界の超一流の航空機メーカーであり、双方ともに信頼できると確信したと笑顔で語った。

 この前説のようトークは長い間機長を務めてきた元操縦士の植木会長らしいもので、両社から航空機を導入することで本当の意味ですべてのエアクラフトを我々が理解できると語った。また、今回導入したA350機について「最高の飛行機ですから、皆さんお乗りになって旅してみてください」と締め、これから初便に搭乗する乗客を沸かせた。

セレモニー前に飛び入りで植木会長があいさつ。こちらは「会長」ではなく「元操縦士」の顔を覗かせメガネを外し終始笑顔でA350について語った

満席の初便に搭乗。個人モニターで読める機内誌「SKYWARD」紙版は希望者に配布する形に

 2つのセレモニーを経ていよいよ初便の出発だ。4月4日に運航ダイヤが発表されるとすぐに席が埋まってしまったというJL317便は満席。搭乗時に369名の乗客一人一人に搭乗証明書やモデルプレーンなどの記念品が手渡され、定刻より若干遅れて12時26分に羽田を出発した。

搭乗者一人一人に記念品が手渡された
ボーディングブリッジでは横断幕を掲げた関係者が搭乗者を迎えた
ボーディングブリッジの窓から見える特徴的なA350の顔にワクワクする。トーイングカーと連結されるトーバーは同じエアバスのA340やA330と共通のようだ
搭乗者に配布された記念品
初便の搭乗証明書
炭素繊維複合素材がA350の骨格部品に採用されたという帝人のロゴ入り記念バゲージタグ
福岡到着時に配布された就航記念折り紙

 搭乗後、座席に着くとまずは自分の座席番号が表示されている大型モニターが目に入る。国内線ではちょっと新鮮な風景だ。

 機内でのイベントなどは特に行なわれず、初便を祝うファンの搭乗も多いためか少々にぎやかな印象だったが、それでもこの新型機の最大とも言える静粛性は十分に感じられた。また今回利用したエコノミーシートの出来も秀逸。形は平板ながら柔らかさと張りのバランスがとてもよく、滑りにくいファブリックの生地も相まってとても快適だ。中身のアンコがぎっしり詰まったようなシートとでも言えば伝わるだろうか。短時間のフライトでもその差は歴然であった。

満席の機内
席についてまず目に入るのは座席番号が表示された大型モニターだ
真新しい安全のしおりにすらワクワクする
高さ調整機能を備えたヘッドレスト
この日より新しくなった機内安全ビデオは、非常時の危険な行為を具体的に示すものでとても分かりやすい

 植木会長がお勧めポイントの一つとして挙げていた機外カメラの映像も楽しく、テイクオフ時の風景や着陸前に眺める福岡の街は、窓から見る風景とはまた違った魅力もあり、なにより通路側や中央席でも誰でも楽しめるのがよいところ。

垂直尾翼に設置された機外カメラで楽しむ離陸シーン
下部に設置されたカメラの映像
羽田空港D滑走路へ向かうA350の映像
福岡空港が見えてきた

 ちなみに機外カメラの映像や各種エンタテイメントのほか、JALグループの機内誌「SKYWARD」もこのモニターで楽しめる。これに伴い今後シートポケットに機内誌は常備されなくなるとのことだが、機内には搭載されているので、今までどおり本という形で読みたい人や、持ち帰って滞在先や自宅で読みたいという人にはCA(客室乗務員)に申し出てくれれば今までどおり提供するとのことだ。

JALグループの機内誌「SKYWARD」もモニターで楽しめる
モニターは拡大表示も可能で読みやすい。これに伴いA350型機ではシートポケットに紙版の機内誌が備わっていないがCAに申し出れば入手できる
機内サービスを行なうCA
この日を楽しみにしていた乗客も多かったであろう機内は終始明るい雰囲気
操縦のみならずギャレーなどの操作方法など新型機ではいろいろと違うところも多いとのことで客室乗務員も十分な訓練を続けてこの日を迎えたとのことだ

 14時7分、定刻から若干遅れて福岡空港に到着し、初便のフライト体験は終了。JALがその準備に6年の歳月を費やし投入したというエアバス A350-900型機は静粛性、シートの出来、高精細なモニターによるエンタテイメントなど、どれをとっても既存の国内向け大型機より大幅なレベルアップを果たしていて、国内の空の旅をより快適なものとなることが十分確認できた。国内線でも比較的長いフライトとなる羽田・沖縄線などではさらにその恩恵は大きくなるだろう。

JL317便は福岡到着後、JL318便として再び羽田へ。こちらも福岡発の初便としてセレモニーが行なわれ多くの人に見送られ飛び立った

【お詫びと訂正】初出時、牧内氏のお名前に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。仕事柄、国内外へ出かける機会が多く、滞在先では空いた時間に街を散歩するのが楽しみ。国内の温泉地から東南アジアの山岳地帯やジャングルまで様々なフィールドで目にした感動をお届けしたいと思っています。