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ANA、パラリンピック2年前イベントでブラインドサッカー体験会など実施。北澤豪氏「難しいと思うが、大事なのはチャレンジすること」
家族で楽しめるモコモコペンアートのワークショップも
2018年8月19日 16:18
- 2018年8月19日 実施
ANA(全日本空輸)は8月19日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開幕2年前を祝うイベントを羽田空港 国内線第2旅客ターミナルで実施した。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の2年前を祝うとともに、その機運を醸成するために7月24日~9月6日の期間で「2 Years to Go!」のスローガンを掲げて、キャンペーンを展開している。
オフィシャルエアラインパートナーであるANAでも、同期間に羽田空港の国内線第2旅客ターミナル2階出発ロビーに、開幕2年前を記念した特別装飾を実施。ANA所属またはANAがサポートする競泳の瀬戸大也選手や、車椅子テニスの国枝慎吾選手が躍動するポスターを掲示している。
また、7月28日には東京オリンピック開幕2年前イベントを開催。そして、8月19日にはそれに続くイベントが行なわれ、2020年8月25日の東京パラリンピックの開幕2年前をテーマに、ブラインドサッカー体験やモコモコペンアートのワークショップといった、視覚障がいのある人でも楽しめる内容となった。
12時からスタートするイベントを前に、11時30分からはオープニングセレモニーを実施。冒頭であいさつしたANA 代表取締役専務 執行役員の清水信三氏は、今回のイベントの主旨を述べたうえで、「ANAは2020年に向けて、障がいのある方ない方、国籍、性別、年齢を問わず、すべての方が共生できる世界を目指すということで、ユニバーサルなサービスを提供し、すべての方が安心、快適に飛行機に搭乗いただけることを目指している」と同社の取り組みを紹介。
そして、集まった人に向けて「夏の繁忙期、お盆明けで非常に混んでいるが、出発前、到着された方のわずかな時間でも構わないので、ぜひ体験会をとおしてパラリンピックに対しての意識を皆さんと一緒に高めていければと思っている」と呼びかけた。
続いて、体験会が行なわれるブラインドサッカーを紹介すべく、日本障がい者サッカー連盟会長で元サッカー日本代表の北澤豪氏、ブラインドサッカーチーム 埼玉T.Wingsの駒崎広幸選手、日本ブラインドサッカー協会の大坪英太氏が登壇。
ちなみに、日本障がい者サッカー連盟は、日本ブラインドサッカー協会を含め7団体などを統轄して活動している。ブラインドサッカーは東京パラリンピックの競技種目の一つであり、日本ブラインドサッカー協会はANAとパートナーシップ契約も結んでいる。
北澤氏は「まさか空港で2年前イベントをやれるなんて。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ここが国際舞台の入り口になるので、ふさわしい場所だと思う」とコメント。
今回のイベントについては、「盛り上げていくためにはパラリンピックの競技を知っていくことが大切になるのではと思っている。目が見えないとなるとサッカーをするのは難しいのではないか……当然難しいと思うが、スポーツで大事なのはチャレンジすること。皆さんもぜひチャレンジして、その難しさ、面白さを感じていただいて、ともに2020年に向かっていければと思っている」と語った。
その後、駒崎選手と大坪氏がブラインドサッカーと体験会について紹介。音の鳴るボールや、まわりの声を聞いてボールの位置やゴールの方向を把握してプレーするなどの説明があり、大坪氏は「まわりのコミュニケーションと、ボールの音が大切なスポーツ。ぜひ参加いただいて、空港の奥の方まで聞こえるような声を出していただければ」と呼びかけた。
ちなみに、司会者から体験会に北澤氏も参加することが伝えられると、北澤氏は「僕は何回もやってるのでうまいですけど大丈夫ですか?」とコメントしつつ、「最初は全然できなかった。アイマスクをするとふらふらしたが、やっていると慣れていく」と話し、集まった人への参加を促した。
次に、ノーマライゼーションを推進し、世界各地で障がいのある人のためのアートイベントを開催しているアーティストのSatolyさんが登壇。東京2020オリンピック・パラリンピックは、スポーツだけでなく、文化・芸術の祭典でもあるというビジョンが掲げられており、今回のイベントではSatoly氏のレッスンでモコモコペンを使って絵を描くワークショップが行なわれる。モコモコペンは名前のとおり、インクを乗せた部分を熱すると膨らむ絵具で、点字のように凹凸があるので、なにが書かれているか分かるというもの。
Satoly氏は、「障がいは環境が作り出すものかなと、海外のワークショップを通じて思っている。障がいがあるからなにかができないではなくて、2020年オリンピック・パラリンピックのときはスポーツに参加できない子も、世界中の支援学校をまわってみんなでアートを制作できたらよいなと思っている」とコメント。2020年までに世界中の盲学校の生徒と力を合わせて、一枚の大きな絵を作る構想を進めているという。
そして、最後に第16代R-1グランプリ王者で、視覚障がいをもつお笑い芸人の濱田祐太郎さんが登場し、“視覚障がい者あるある”な漫談を披露。パラリンピックについては、「スポーツ苦手、興味ないと言っているが、障がいあるというだけで全員が全員パラリンピックに興味があると思いすぎ!」とネタに。
そんな濱田さんも、オープニングセレモニー後にはブラインドサッカーを体験。障がい者サッカー連盟会長の北澤氏、日本ブラインドサッカー協会の大坪氏、埼玉T.Wingsの駒崎選手と並び、
大坪氏: スポーツに興味がないとおっしゃっていたが心境は?
濱田さん: やったこともないですし、正直ルールもあまり知らない。普通のサッカーもルールを知らないのに、それをひねったブラインドサッカーはなおさら。
北澤氏: サッカーのルールはゴールにボールを入れるだけ。それとほとんど変わらない。
濱田さん: ブラインドサッカーもちょっとぶつかったら大げさに痛がったりするんですか?
北澤氏: それはやるよね?(と駒崎選手に)。
駒崎選手: (微妙に頷く)
北澤氏: やるんだ(笑)。
大坪氏: (見えてないので)蹴りたくなくても蹴ってしまったり、蹴られたりもする。蹴られても、誰に蹴られたか分からないので、怒りたくでも怒る相手がいなくて、自分で発散するしかないことが試合中に結構ある。
北澤氏: 普通のサッカーは無言でボールを取りにいくが、ブラインドサッカーは「ボイ!」という声をかけてボールを取りにいく。
といった笑いと競技紹介を交えたトークを展開。濱田さんはパスもトラップもシュートも一発で決め、大坪氏から「お世辞抜きにすごい」と太鼓判が押された。
濱田さんと北澤氏は、モコモコペンアートのワークショップも体験。特製の麻のバッグにモコモコペンで絵が描き、温めて浮かび上がらせる工程となる。絵はテンプレートになるものが用意されており、麻のバッグの内側に敷くことで絵が透けて見えるので、それをトレースして描くこともできる。
濱田さんは魚と名前をチョイス。北澤氏は飛行機とサッカーをイメージした絵を制作。ワークショップに参加していたまわりの子供たちとも言葉を交わしながら作業を進めた。
ブラインドサッカー体験、モコモコペンアートのワークショップともに、ひっきりなしに人が並んでいる状態。家族連れや子供の参加が非常に多く見られ、まさに“誰でも”楽しめるイベントとなっていた。