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発達障がいを持つ子供たちがJリーグ「川崎フロンターレ 対 大分トリニータ」を試合観戦・サッカー教室に参加。ANAも移動などサポート
2019年7月31日 12:22
- 2019年7月27日~28日 実施
ANA(全日本空輸)、JTB、富士通、川崎市は7月27日と28日、川崎市と大分市に在住する発達障がいのある子供たちを対象に「川崎フロンターレ対大分トリニータ戦」のサッカー観戦交流イベントを開催した。
3社は2017年12月に川崎市で開催された発達障がいをテーマとした「心のバリアフリー・シンポジウム」に参加しており、政府が進める「ユニバーサルデザイン 2020 行動計画」で掲げられている「心のバリアフリー」を推進するため、今回はJリーグ(日本プロサッカーリーグ)、川崎フロンターレの協力を得て、具体的な取り組みとして企画された。
イベントツアーは2日間の日程で、子供たちは初日は川崎フロンターレのホームスタジアムである等々力陸上競技場(神奈川県川崎市)での試合観戦と交流、2日目は川崎フロンターレの麻生グラウンドにおいてサッカー教室を体験した。
4者の役割
JTB: イベント実施前および当日の「心のバリアフリー」研修の実施
ANA: 発達障がいに関する教育を事前に受けたスタッフが空港や機内で移動のサポート
富士通: 達障がいのある子供たちの気持ちを表わす「きもち日記」の提供、発達障がいに対する理解を深めるVR映像コンテンツの制作、提供と「心のバリアフリー」研修の支援
川崎市: 観戦ツアーの企画、ツアー参加者の移動のための福祉バスを用意、センサリールームの設置
発達障がいを持つ子供たちは感覚過敏であることも多く、人混みや喧騒などが苦手であり、外出などを控えるケースが多いという。今回のツアーでは、その障壁となる移動とスタジアムの観戦時のサポートをANAのボランティアが行なった。
とくに遠隔地の旅行に欠かせない飛行機による移動は、人が多い空港での過ごし方、搭乗前の保安検査、機内においてのルール、突発な揺れに対する対処、到着してから別交通機関への乗り換えなどハードルが高い。今回は事前に研修を受けたボランティアスタッフが搭乗後の機内にも同行し、子供たちや家族をサポートした。
大分空港から羽田空港まではANA796便を使い移動したが、27日は台風6号が紀伊半島から東海地方にかけて接近するというあいにくの空模様。飛行機の揺れによる影響が心配されたが、同行したスタッフによるケアと搭乗前に操縦するパイロットに会えたのが大きな安心につながったようで、元気な姿で到着ゲートに現われた。
その後の貸切バスまでの移動では、「あと200m先の横断歩道を渡ります」といったように、これからすることを伝えて誘導する姿が見られた。突発的な出来事が苦手な子が多いそうで、前もってこれから行なうこと、起きることなどを説明しておくと不安が軽減されるので、ていねいな説明が重要なポイントであるとのことだ。
試合会場である等々力陸上競技場では、試合を観戦してもらうためにスタンドの一部を「センサリールーム」として川崎市が用意。このセンサリールームは大音量が苦手な子供でも観戦できるようにガラス張りの部屋になっており、スヌーズレン機器(コス・インターナショナル)を設置したカーミングエリアも併設されている。スヌーズレン機器とは、乳幼児から備えている「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」を適切に刺激することで緊張状態を解消するもので、試合や会場の雰囲気に動揺してしまった子供を落ち着かせるのに役立つという。プレミアリーグの強豪サッカーチームであるアーセナルFCがホームスタジアムにセンサリールームを設置したところ、発達障がいを持つ子供や親から大変な好評をいただいているとのことで、そちらを参考に川崎市も一時設置を決めた。
このほか、スタジアムには「ANAアバター」も3台ほど設置されており、大分市の学校と回線を結ぶことで今回参加しなかった子供たちにもライブ感を楽しんでもらう取り組みも行なわれた。事前に子供たちへの接し方がレクチャーされていたこともあり、試合開始前や合間にもトラブルなく、選手やサポーターと子供たちは交流を深めていた。
ツアー2日目は川崎フロンターレの麻生グラウンドでサッカー教室が開催された。事前に旅のしおりで紹介されていたこともあって指導してくれるコーチともスムーズに対面が進み、簡単な運動からボールを使ったドリブルやシュートまでを教わっていた。
練習中はANAのボランティアスタッフも近くに立ち、温かい声援を送って子供たちと交流を深めていた。最初は緊張した面持ちをしていた子供も笑顔で応えていた。
練習後はミニゲームを楽しみ、最後は川崎フロンターレの選手も登場。もちろん、子供たちからは歓声が沸き起こり、記念撮影やサインをもらうなど、普段できない交流に満足している姿が見られた。
今回のツアーを企画した「えがお共創プロジェクト」の主要メンバーであり、元・日本発達障がいネットワーク事務局長である橋口亜希子氏に話を聞いた。自身も発達障がいを持つ子供の母親であることから各地で啓蒙活動を行なっているそうで、行く先々で親から聞くのは「旅行に行きたくてもいけない」という言葉だった。自身の経験からも公共の乗り物で移動するのは本人にも家族にも多大な負担をかけるのがネックだったと語る。「今回はANAさんの多大なる支援のおかげで飛行機を使った移動も無事にクリアできました。参加してくれた親御さんからは『今まで見たことがない表情で楽しんでくれた』という声が聞けてうれしい思いで一杯です。この成功体験を苦しんでいる人たちにもっと共有していければと考えています」と話してくれた。