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JAL、「2017~2020年度 中期経営計画ローリングプラン2019」を赤坂祐二社長が説明

成田/羽田を顔認証のスマート空港へ

2019年2月25日 実施

日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏

 JAL(日本航空)は2月25日、「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2019」を発表、東京の本社で会見を開いた。登壇したのは代表取締役社長の赤坂祐二氏、取締役専務執行役員 財務・経理本部長の斉藤典和氏、常務執行役員 経営企画本部長の西尾忠男氏の3人。

 現在の中期経営計画はちょうど折り返し地点で、自身の将来像を「世界のJAL」「一歩先を行く価値」「常に成長し続ける」という3本柱で「JAL Vision」として掲げてきた。

 2018年2月に明らかにした2018年度の改訂(ローリングプラン2018)では、JALの10年後(2027年度)の姿を、数値目標を含めた事業計画の構想「グランドデザイン」として公開。世界主要500都市への乗り入れや、国際線旅客の海外販売比率50%、営業利益率10%以上にこだわりつつ売上2兆円、営業利益2500億円、時価総額3兆円を目指す、といった目標を見据えた(関連記事「JAL、2018年度から機内衛星テレビ、2019年度からA350と787に国内線個人モニター導入。顔認証チェックインも検討」)。

 会見の冒頭、赤坂氏は2018年に発生した乗務員による飲酒事例を振り返り、2019年度の改訂に「安全・安心の再構築」を加えたという。「不祥事により、お客さまの信頼を大きく損なった。失った信頼を取り戻すために、何をすればよいか、どうすれば再び期待に応えうる航空会社になれるか検討を重ねてきた」と述べ、事業改善命令を受けた再発防止策を徹底的・継続的に実施し、信頼回復に努めると説明した。

ローリングプラン2019の3つのポイント

 今回の改訂には3つのポイントがあるという。まずは、2020年に予定されている羽田空港の発着枠拡大を活用した東京オリンピック・パラリンピックの成功、さらなる訪日外国人の誘致など「首都圏空港の機能強化への対応」。

 羽田発着枠の配分について赤坂氏は「まだ何も決まっていないので」と前置きしつつ、「希望としてはまた羽田からホノルル線を飛ばしたいが、計画としてあるわけではない」「訪日外国人がたくさん来るような、地方の活性化につながるような路線を張りたい。JALだけでなく、航空業界全体で枠をどう使うのがよいか。きれいごとではなく本気でそう思っている」と表現した。

 第2に「サービスの進化・アドバンス(前進)」。利用者を待たせないスマート空港の実現に向けて、国内線(羽田、新千歳、伊丹、福岡、那覇)と国際線(羽田、成田)で、2020年度から新自動チェックイン機の増設とセルフバゲージドロップの導入、さらに国際線ではチェックインから搭乗までを顔認証で管理してファストトラベルを促進する。まずは国内線の羽田、国際線は羽田と成田から配備していき、東京オリンピック・パラリンピック開催前の実現を目指すという。

 最後は「社会課題の解決に向けた貢献」として、2030年のSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて、JALが取り組むべき重点課題を特定し、2019年度からは赤坂氏が先頭に立ってSDGsを進めていくとした。

中期経営計画ローリングプラン2019

 2017~2018年度のローリングプランは「想定どおり進捗」(西尾氏)しており、2019~2020年度では新規路線開設や増便、パートナー各社とのコードシェアや共同事業、2020年度上期に予定している中長距離LCCへの参入で「500都市乗り入れ」を引き続き目指していく。

国内線ボーイング 767/737型機にUSB電源

 利用者の快適さに直結する新機材・客室については、すでに明らかにしているようにエアバス A350-900型機を9月に羽田~福岡線から導入、個人用モニターと電源を設ける。10月からは国内線仕様のボーイング 787-8型機を投入、羽田~伊丹(大阪)線で運航を開始する。こちらも個人用モニターと電源を装備する。

 さらに、すでに運用しているボーイング 767/737型機についても、個人用の電源(USB充電ポート)を順次配備していくことを明らかにした。国際線では、欧米豪全路線のビジネスクラスをフルフラットシート化すべく、成田~バンクーバー/サンディエゴ線、関空(大阪)~ロサンゼルス線を「JAL SKY SUITE」仕様機材に6月から入れ換えていく。なお、導入予定のエアバス A350-1000型機についてはボーイング 777-300ER型機の後継機という位置付けであり、2020年度以降で検討を進めていると述べるに止めた。

 JALの現在の中期経営計画は2017~2020年度の4か年のもので、首都圏空港の機能強化や東京オリンピック・パラリンピックが実施される再来年度(2020年度)を最終年度に定めている。しかし、中期経営計画で定めた営業利益1800億円が2019年度に前倒しで達成できる見込みがあること、羽田発着枠の割り当てなどが具体的に進捗することなどを受けて、次は「2020年度を初年度とする中期経営計画」を策定することに改めたという。

日本航空株式会社 取締役専務執行役員 財務・経理本部長 斉藤典和氏
日本航空株式会社 常務執行役員 経営企画本部長 西尾忠男氏