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JALが国内線で導入したUSB電源搭載機に乗ってみた。より早く充電できるType-Cコネクタも装備
2019年7月19日 07:00
JAL(日本航空)は、国内線で運航しているボーイング 767-300型機と737-800型機にUSB電源を導入することを6月20日に発表した。航空機に限らず、“USB電源搭載”となるとType A(Standard A)コネクタを装備するのが一般的だが、JALが今回装備するUSB電源にはType-Aに加えて、Type-Cコネクタも装備する点で特徴がある。実際に同機に搭乗して試してみた。
ちなみに、JALの発表によるとボーイング 767型機は6月から順次、737型機は2019年度第2四半期から順次導入を開始し、2021年度末の完了を目途に対象機材への装備を進めるとしている(関連記事「JAL、国内線のボーイング 767型機でUSB電源の導入を開始」)。より具体的な導入スケジュールは公開されていないが、現時点ではボーイング 767型機への導入がスタートした段階にある。ただ、どの便に導入機が使われているかの情報はWebサイトなどでも確認できない。
今回搭乗したのは登録記号「JA623J」のボーイング 767-300ER型機で、ファーストクラス5席、クラスJ 42席、普通席205席の計252席仕様。ファーストクラスを備えることからも分かるとおり、羽田空港を発着する新千歳(札幌)、伊丹、福岡、那覇(沖縄)の各路線で利用されることが多い機材だ。
実際に装備されているのは、USB Type-AとType-Cの電源出力を1口ずつ備えるユニット。ファーストクラスとクラスJは各席1ユニットずつ。ここはアームレストの下、座席側に付いている。
普通席は2席並びの席は1席につき1ユニット、3席並びの席は3席につき2ユニットを備えている。JALのボーイング 767型機は窓寄りの両サイドが2席並び席となる。普通席は最前列を除いて座席の前方に付いている。また、2席並び席も、それぞれの座席の窓寄り、通路寄りに離れて設置されている。接続口が見やすく、隣の人にも干渉しにくいので、うれしい配置だ。
実際に記者が持っているスマートフォン(NTTドコモのAQUOS R2 SH-03K)に接続し、アプリ「Ampere」を利用して電流値を確認してみた。このアプリに表示される電流は絶対値としては信用していないのだが、電力量が多い少ないといった大ざっぱな相対評価や、差し込み口やケーブルの接触不良などを簡単に見られるアプリとして便利に使っている。
記者所有のスマホでこれまでに試した範囲では、USB ACアダプタやモバイルバッテリのType-Aから接続する場合、QC(Quick Charge)2.0/3.0に対応した製品とつなぐと1500mA強、QC非対応で5V/2.4A対応などとされている製品とつなぐと1300mA強。Type-C接続の場合はPD(Power Delivery)対応/非対応に関わらず5V/3A対応製品と組み合わせた場合は、Type-A+QC3.0の場合と同程度の1500mA強となる(この結果を見ても、大ざっぱな評価にしか使えないことはお分かりいただけるかと思う)。
そして、搭乗機のUSB Type-A、Type-Cそれぞれに接続した結果を見ると、Type-Aから接続した場合は1300mA強、Type-Cから接続した場合は1500mA強という結果になった。ちなみにType-Cに対しては、PD対応を確認するためのテスターも試してみたが、こちらは非対応という結果になった。
こうした結果やUSBの仕様を踏まえると、おそらくType-A側の出力は5V/2~2.4A程度でQCなどのプロトコルには非対応、Type-Cは5V/3A出力に対応したものと想像される。この具体的な電力供給量は予測ではあるが、少なくともType-Cの方が供給電力が大きいことは間違いなさそうである。
羽田と沖縄を結ぶ路線でも最大3時間ほどで、多くの路線が2時間以下のフライトとなる国内線であることを考えると、単純により早く充電できることはありがたい。おそらくスマートフォンやタブレットについては使いながら充電することが多いと思うが、100%充電の状態を維持する場合はともかく、使いながら充電していくようなシチュエーションではより供給側の余裕が生まれることには意味がある。個人的には最近、モバイルバッテリをType-C充電対応品をメインに据えたところで、これをより早く充電できるのがうれしいところ。
もう1つ、改めて感じたのはType-Cの抜き差しの向きを問わない仕様の利点だ。普通席では足下にコネクタがあるため、LEDライトで照らされているとはいえ向きを間違えやすい。飛行機のように広くないスペースに固定されている差し込み口での装着では、やはり向きを考えずに挿せるType-Cは便利だ。
課題は、Type-C to Type-C(またはType-C to Lightning)のケーブルを持ち歩いていない、あるいは飛行機に乗るときにはType-Aのケーブルしか出しておかない、というのがまだまだ一般的だと思われることだ。今後、機数が増えれば、JALのボーイング 767型機に乗るときにはType-Cケーブルも用意しておきましょう、と提案しやすいが、対応機が少ない現状では無駄骨になる可能性の方が高いところが悩ましい。
ただ、それでも普通席の3席並びの席に乗るならば、使わない結果になることを覚悟のうえでType-Cケーブルを用意しておくのがお勧めだ。これは単純に差し込み口の取り合いを避けられるからである。3席並びの席は3席につき2ユニットを備えると先に記したが、USB電源ポート数で表現すると3席につき4口を備えることになる。Type-AとType-Cのどちらも使える体制を整えておけば、隣の人と1口ずつ分け合うことが容易になる。
JALの国内線機材では、J-AIRが運航するエンブラエル 190型機にAC電源が用意されているが、そのほかの機材には電源を備えていない。とはいえ、秋から導入するエアバス A350-900型機や、ボーイング 787-8型機(国内線仕様)にはPC電源(AC電源)やUSB電源を装備することが発表されているほか、今回紹介したボーイング 767型機と並行して、737型機へのUSB電源搭載も順次進められる。
また、JALでは本件のニュースリリースに、2019年7月以降に国内線機内Wi-Fiサービスのインターネット接続方法を変更することもアナウンスしている。「より簡易になる」という以上の具体的な変更内容は明らかにされておらず、USB電源を試すために搭乗した際にはまだ従来どおりの接続方法だったが、この夏から秋はJAL国内線の機内での過ごし方がより快適に変わっていく第一歩を踏み出す時期といえそうだ。