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JAL、2017年3月期連結業績は減収も、営業利益率は5年連続10%超えで目標達成

今年度も先を見据えた先行投資続く

2017年4月28日 発表

写真左から、会見を行なった日本航空株式会社 取締役専務執行役員 財務・経理本部長の斉藤典和氏、同社代表取締役社長の植木義晴氏、同社常務執行役員 経営企画本部長 事業創造戦略部担当 西尾忠男氏

 JAL(日本航空)は4月28日、2017年3月期(2016年4月1日~2017年3月31日)の連結業績を発表した。

 営業収益は、国際線における燃油サーチャージの収入の減少や円高による減収に加え、国内線における他社との価格競争などにより前年比3.6%減の1兆2889億円となった。営業費用は燃油市況の下落、円高に伴う燃油費の減少はあったものの、エンジン整備費および人件費が増加し前年比0.8%減の1兆1186億円。

 その結果、営業利益は1703億円、経常利益が1650億円、営業利益率は13.2%となり、前中期経営計画での目標であった5年連続営業利益率10%以上を達成した。また、自己資本比率においても、2016年度末の自己資本比率50%以上という目標を上回り、56.2%となった。2017年度の配当金は、昨年度に引き続き、純利益から法人税など調整額の影響を除いた額の25%程度を株主への配当に充てる方針とし、1株あたり94円になると発表した。

 2018年3月期の連結業績予想は、売上高が3.9%増の1兆3390億円、営業利益は16.6%減の1420億円、経常利益は17%減の1370億円を見込んでいる。配当金については、2017年3月期から配当性向を5%引き上げ、親会社株主に帰属する当期純利益から法人税等調整額の影響を除いた額の30%程度とすると発表した。また今年から中間配当を導入し、今年度は年度配当予想額90円の半額の45円を中間配当とする予定とした。

 国際線は、旅客収入が2017年3月期は4152億円で7.5%の減収。ASK(有効座席キロ)は前年比から0.1%の増加、RPK(有償旅客キロ)は前年比0.8%増加。有償座席利用率は前年比で0.6%増加で80.3%になった。

 国内線は、旅客収入が4986億円で前年比0.5%の減少。ASKは前年比で1.2%の減少だがRPKが0.9%の増加となり、その結果、有償座席利用率は1.4%の上昇で69.3%となった。旅客数については、平成28年熊本地震による観光需要の減少もあったが、一方で特便割引や先得割引などの需要喚起型運賃を中心とした個人需要が増加したことで、有償旅客数は前年比で1.4%の増加となった。単価は、他社との価格競争、シルバーウィークなどの日並びの影響により前年比1.9%の減少となった。

日本航空株式会社 取締役専務執行役員 財務・経理本部長の斉藤典和氏
日本航空株式会社 代表取締役社長の植木義晴氏

 2016年度の人件費やエンジン整備費などの費用が増大したことに関してJAL 取締役専務執行役員 財務・経理本部長の斉藤典和氏は、「将来の基盤を強化するための成長投資、人材への成長投資と位置付けている。退職給付の見直しなど、おもに各職種にあたる賃金制度の改定が大きかった」と説明。

 さらにJAL 代表取締役社長の植木義晴氏が「この5年間を平均しても、営業利益は1800億円台、営業利益率としても14%強で、航空会社としても非常に高い数値だったと自負している。2015年度から比較すると我々の強みは、非常に高い収益性を兼ね備えながら着実に成長していくというところにあると思っている。一定時間、時期に必要な先行投資、支出は必要だと思っており、2016年~2017年は身をかがめるべきときであり、これが2020年以降に必ず結果が出ると信じている」と述べた。

 また「2016年度は為替の影響もあるが、全部合わせると250億円で大きな値ではあった。しかし経営破綻後、非常に大きく落とした人件費をこれだけの利益を上げながら残すのは正しくないという判断から2016年度は人件費の見直しを行なった。そして2017年度はさまざまな先行支出を行なっていく」とした。

2017-2020年中期経営計画はフルサービスキャリア事業を磨き上げる

日本航空株式会社 常務執行役員 経営企画本部長 事業創造戦略部担当の西尾忠男氏

 続いて、2017年~2020年JALグループの中期経営計画についてJAL 常務執行役員 経営企画本部長 事業創造戦略部担当の西尾忠男氏が説明。

 JALは東京オリンピック・パラリンピックが開催され、首都圏空港の発着枠拡張が見込まれる2020年を一つの節目として「挑戦、そして成長へ」をテーマに「2017-2020年JALグループ中期経営計画」を策定したと発表した。

JALがこれまで行なってきた取り組みと、今後の想定される環境

 西尾氏は「本中期計画では、『世界のJALに』『一歩先を行く価値を創る』『常に成長し続ける』というJALビジョンの実現に向けフルサービス事業を磨き上げることに取り組み、安全/サービス/強化に向けた将来投資を行ないつつ、グローバルな変化に対応し、お客さまに選ばれるエアラインを目指す」と目標を語った。

 今後の取り組みとしては、2017年~2020年もコア領域である国際旅客・国内旅客・貨物郵便を従来の1.1倍に増やすこと、また新領域ではグラウンドハンドリング受託やカード事業、旅行事業などの航空関連事業と、ビジネスジェット、ファンジャパンなどの航空周辺ではない部分を含め1.3倍に増やし、売り上げとしては1兆5000億円規模を目指したいと語った。

取り組みと事業ポートフォリオ
成長のステップ

 将来投資については、品質・安全・サービスに不可欠な投資を積極的に行ない、高品質とコスト競争力の両立を図りながら、両方に沿った状況で2021年度以降の利益を上げていくとした。

 国際線では、成長の見込める東南アジア・北米のASKの伸びを123%にすることや、首都圏空港発着枠の積極的活用によるネットワーク強化、東南アジア線のビジネスクラスのフルフラット化や中距離路線の「新・間隔エコノミー」の設置を2020年度までに8割強まで増やしたいとした。また、新たな需要獲得としては、海外のプロモーションに力を入れていきたいと語った。

 国内線では新機材として2019年にエアバス A350-900型機を順次導入していく予定とした。また機内Wi-Fiの無料化を順次展開していくほか、ラウンジのリニューアル、高付加価値の設備で利用者が満足のいくサービスを提供していきたいと語った。また、現在のJALにおける外国人の国内線搭乗割合は2%だが、増大する訪日需要を取り込んで、倍の数字を目標にしたいとした。

 機材については、国際線・国内線合わせて2017年末で226機(国際線85機、国内線141機)を保有しているが、2020年には231機(国際線92機、国内線139機)を保有予定としている。国際線は市場成長に合わせてボーイング 787型機を導入していく。国内線が減っている理由として現在飛んでいるボンバルディア DHC-8-Q400CC型機、SAAB 340型機といったリージョナルジェットが退役し、その代わりにエンブラエル 170型機への置き換えを行なっているためと説明した。

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