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JAL、第69期定時株主総会。中長距離LCCの設立は「JALの将来にとって必要」

2018年6月19日 開催

JALが第69期定時株主総会を開催した

 JAL(日本航空)は6月19日、第69期定時株主総会をTKPガーデンシティ品川(東京都品川区)で開催した。代表取締役会長の植木義晴氏が議長を務め、株主の出席者は1255名(12時閉会時点)、議決権を行使した株主数は4万1651名(議決権数は207万6064個)。なお、3月31日時点の株主総数は12万3474名で、株式発行数は3億5371万5800株、議決権を有する株主は12万1891名、議決権数は265万1917個となっている。

議長を務めた日本航空株式会社 代表取締役会長 植木義晴氏

 総会では、株主に対して2017年度の事業報告を行なうとともに、2018年度以降の事業計画を説明した。その詳細はすでに本誌でお伝えしているが、2017年度のグループ売上高は1兆3832億円、営業利益は1745億円、営業利益率は12.6%であったこと(関連記事「JAL、2017年度連結業績は増収減益も、旅客収入好調&座席利用率は過去最高水準」)、また「世界のJAL×一歩先を行く価値の創造×常に成長する」という3つの柱を掲げた「JAL Vision」に加えて、「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2018」では、10年後(2027年度)の姿を具体的な数値目標を含めたグランドデザインとして公開したことなどを、映像を交えて報告した(関連記事「JAL、2018年度から機内衛星テレビ、2019年度からA350と787に国内線個人モニター導入。顔認証チェックインも検討」)。

 続いて、4月1日に社長執行役員に就任した赤坂祐二氏が登壇(本総会をもって代表取締役社長に選任)。「入社以来、整備と安全推進の部門で過ごしてきた。安全運航こそがJALグループの存立基盤であり、今後も揺るぎない安全をお届けしていく」としながらも、5月24日に発生した熊本空港発ボーイング 767型機のエンジン損傷と、それに伴う部品の落下について陳謝した。

 また、中期経営計画のグランドデザインで掲げた「営業利益率10%以上の高い収益性」にこだわり、「売り上げ2兆円、営業利益2500億円、時価総額3兆円」を目指していくと株主に宣言。「社員一人一人が個性を発揮し、責任と誇りを持って自らの思いを実現していく会社を作っていきたい」と、赤坂氏の描くJAL像を述べた。

 さらに、5月に発表した「国際線の中長距離LCCの設立」にも言及し、高度な技術と経験がなければ実現できないもので、「新たなチャレンジ」と位置付けた(関連記事「JAL、新LCC設立会見。中長距離路線でジェットスターと差別化、マイレージ利用は検討」)。

質疑応答抜粋

 総会に上程された議題は3つで、剰余金処分については、株主への配当を1株につき57円50銭とする(第1号議案)、取締役10名の選任(第2号議案)、監査役1名の選任(第3号議案)。1株あたりの配当は、中間配当52円50銭と合わせて110円とした。

 質疑応答は総会終了時刻の12時過ぎまでに14名が指名された。以下、主な質疑を抜粋する。

 目立った質問の1つは、5月24日に発生した熊本発JL632便のエンジントラブルと、2017年9月5日に発生した羽田発JL006便のエンジン火災にまつわるもの。どちらも国土交通省 航空局から重大インシデントに認定されており運輸安全委員会で調査中だが、「定例的に行なっている内視鏡の検査を従来の半分の期間で実施するようにした」と改善点を示した。また、整備を海外に委託したことが原因ではという指摘に対しては、「直前まで整備部門にいたので熟知しているが、どうしても海外の整備というと安かろうわるかろうというイメージがあるが、決してそんなことはない。手を取り合って事業を行なっている。しかし、前整備本部長であり、2件の重大インシデントは私の責任。必要なことにお金をかけて、万全の品質、万全の安全を確保する」と赤坂氏が補足した。

 業績が上向いているなら破綻の前後に整理した子会社をグループに戻せないかという質問に対しては、JALUXはまだ主要な株主であり、ホテル日航(ニッコー・ホテルズ)やホテルJALシティなどを運営するオークラ ニッコー ホテルマネジメントとは営業協力という形になっているとしつつ、「JALという名前が付けば皆さんはJALが運営していると思うはず。これからも責任を持っていきたい」と説明した。また、「HAC(北海道エアシステム)は北海道に株を売却したが、2014年に株を買い戻している。こういう事例もある」と議長の植木氏が補足した。

 6月18日に大阪府北部で発生した地震に直面したという株主は、ANA(全日本空輸)より欠航が多かったと指摘。伊丹空港(大阪国際空港)ではANAが14便、JALが60便を欠航しており、これについては「昨日の場合は伊丹周辺の地上交通も寸断されており、JRの復旧状況も不透明だった。昨日に限らず、ギリギリまで判断を延ばして、最後の最後に『飛べません』となる方がお客さまには望ましくない」と理解を求めた。

 中長距離LCCの設立について改めて説明を求められると、「事業領域を広げることを目的にしている」と回答。現状、日本には長距離のLCCがなく、今後成田の発着枠が4万回増えるため、フルサービスキャリア(JAL本体)とLCCの両輪で成長を目指したいと説明した。また、投入予定の機材がボーイング 787-8型機であることに触れ、植木氏は「ボストンやニューヨーク、ロンドンなど、学生が若いうちに行ってみたいと考える旅行先は、LCCなら(フルサービスキャリアの)半額で行ける。その経験をした人が、将来会社に入って、今度はビジネスクラスで行くかもしれない。(設立するLCCは)JALの将来にとって必要」と補足した。

 2010年の破綻時に整理解雇した職員の復帰を求める声も上がったが、前述のLCCは「事業領域を広げて挑戦する。どうやって人材を確保するかは重大な問題で、これまでにJALを辞めた人たちも募集の対象としていく」と説明した。この件には、赤坂氏が「1万6000名を超える人たちが会社を去っていった。彼らの苦労があって今日があると感じている。未来志向で、諸先輩の苦労に報いる方法がないかとこれから考えていきたい」と付け加えた。

 なお、3つの議案はすべて原案どおり可決され、総会は閉幕した。