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ANAグループ、2020年度を目処にLCCの中距離国際線開設、2018~2022年度中期経営戦略発表

2017年度第3四半期連結決算は、純利益76.7%増など過去最高の成績

2018年2月1日 実施

ANAが2018~2022年度の中期経営戦略を発表。左から2番目が説明にあたったANAホールディングス株式会社 上席執行役員 グループ経営戦略室長 兼 グローバル事業開発部長 芝田浩二氏。登壇者は全日本空輸株式会社 企画室 企画部長 平澤寿一氏(左)、ANAホールディングス株式会社 グループ経営戦略室 経営企画部長 峯口秀喜氏(中央右)、ANAホールディングス株式会社 グループ広報部長 髙柳直明氏(右)

 ANAHD(ANAホールディングス)は2月1日、2018年度から2022年度にわたる新たな中期経営戦略ならびに、2017年度(2018年3月期)第3四半期の連結業績を発表した。

 新たな経営戦略では、2017年度の売上高見込み1兆9250億円に対し、2022年に2兆4500億円規模への拡大を目標に掲げ、ANA国際線事業で約150%、貨物事業で約140%、ピーチ(Peach Aviation)とバニラエアというLCC事業で約200%、旅行や商社などそのほかの事業で約120%の成長を図る。営業利益は2017年度の1600億円に対して、2022年度に2200億円、利益率9%を目標とする。

事業別の成長率

 航空事業は「エアライン収益基盤の拡充と最適ポートフォリオの追求」を掲げ、同社の収益基盤となっている国内線事業はサービス・プロダクトの強化や機材小型化による需要適合を促進。すでに発表があったとおり、4月からは国内線のWi-Fiインターネットサービスを無料化するほか、2019年度下期以降はボーイング 777/787型機へシートモニターを導入する。

 国際線事業では路線を就航していない空白領域(ホワイトスポット)への新規路線開設などを図る。路線は、新たに導入するボーイング 777-9X型機などの超長距離機材による直行便だけでなく、海外航空会社との連携によるシームレスな乗り継ぎ利便性の確保による空白領域のカバーも検討されている。

国際線ネットワーク拡大のイメージ図

 LCCのピーチとバニラについては、新たに航続距離の長い小型機による中距離路線へ2020年度を目処に進出する計画を明かした。説明にあたったANAHD 上席執行役員 グループ経営戦略室長 兼 グローバル事業開発部長 芝田浩二氏によれば、「中距離は片道9時間が目安となるが、小型機の航続距離でいくと7時間半から8時間の範囲が当初の範囲。将来的には中型機で9時間圏内を目指したい」と中距離路線に対する考え方を説明。就航先については、現在マーケットの需要予測を進めており、ANAを含めた3社の協議で決定する予定としている。

 その中距離国際線向け小型機の具体的な機種などについては明言を避けたが、ピーチ、バニラがエアバス A320型機を運用していることから、「そこにコモナリティ(共通性)のある機材」(同氏)と述べている。2020年時点では5機程度を導入する。

LCCによる中距離国際線のイメージ図

 航空機材については、ANAがエアバス A380型機、ボーイング 787-10型機、ボーイング 777-9X型機の導入するは既報のとおりで、これらにより国際線の事業規模拡大と、国内線の需要適合を促進。省燃費機材のシェアは2022年度に約80%へと向上させる。

 また、貨物事業においても、現在はボーイング 767型機の貨物仕様機を12機運用しているが、これに加えて、北米との航空機エンジンや自動車部品などの輸送用に大型フレイターを2機程度導入する予定。大型フレイターの機種については明言を避けた。

 これらを総合し、ANAが2017年度時点の247機から約280機へ、LCCの2社が2017年度時点の35機から55機へ、合わせて294機から約335機へと機材を増加させる。

2022年度の機材計画

 航空事業関連以外では、「既存事業の選択・集中と新たな事業ドメインの創造」「革新的技術とオープンイノベーションによる『超スマート社会』の実現」の2点を掲げる。

 前者は、成長が見込まれる領域への投資を拡大する一方、タイ・バンコクで展開している運航乗務員訓練会社の売却の検討を進めるなど、不採算事業の整理を行なうことで、収益の拡大を図る。

 その中心に据えられたのが、2016年度に設立した顧客資産会社であるANA Xを中心に、ANAグループ共通顧客情報基盤の構築。同グループが持つビッグデータを活用して潜在需要を掘り起こすことによる新たな事業ドメインの展開や、ブランド、ノウハウ、技術などの資産やデータと、新技術の融合を図ることで、航空事業以外の分野でも収益拡大を図る。顧客情報基盤には30~50億円程度を投資。個人情報保護法などの対応にも注意しつつ、2020年度を目処に構築したいとしている。

 後者は、ICT技術など新しい技術の活用によりプロダクトやサービスを向上させ、顧客満足度向上を図る。また、これによる従業員の生産性向上も見据えている。

第3四半期連結決算は過去最高、通期予測は変更なし

中央は決算概要を発表したANAホールディングス株式会社 執行役員 グループ経理・財務室長 福澤一郎氏。左は同 財務企画・IR部リーダー 築舘宏治氏、右は同 グループ広報部長 髙柳直明氏

 同日発表された、ANAグループの2017年度第3四半期の累計連結売上高は前年同期比11.9%増の1兆4908億円、営業利益は同27.4%増の1659億円、経常利益は同31.9%増の1638億円、四半期純利益は同76.7%増の1529億円と、いずれも過去最高の決算となった。

 国内線旅客収入は、前年同期比2.4%増の5326億円、旅客数は同3.5%増の3379万9000人、利用率は3.4pt増(69.1%)。割引運賃の柔軟な設定や、広島空港の運用時間延長に伴う羽田~広島線の最終時間帯増便などでの需要取り込みなどが奏功。

 国際線旅客収入は前年同期比15.2%増の4474億円、旅客数は同7.2%増の7238人、利用率は0.5pt増の76.1%。8月からの羽田~ジャカルタ線、10月からの成田~ロサンゼルス線をそれぞれ増便するなど日本発のビジネス需要を取り込んだほか、8月以降に中国路線が前年比プラスに転じるなど、旺盛な訪日需要に支えられた。

 ピーチ、バニラエアなどを含む、航空事業のそのほかの収益も増収となり、航空事業全体では1505億増の1兆3081億円、営業利益は337億円増の1554億円増となった。なお、これには第2四半期までに計上したピーチ連結化による338億円の特別利益が含まれる。

 旅行事業は、パンフレット商品の販売が伸び悩んだことから国内旅行は減収となったが、海外旅行は販売を強化しているハワイの取り扱いが増えたことや、北米方面が好調だったことで前期並みの売上高となった。

 第4四半期に新たな整備委託プログラムに加入するための投資が検討されていることから、通期業績は前期予測から変更していない。この点についてANAHD 執行役員 グループ経理・財務室長 福澤一郎氏は、「将来的にプラスに影響するプログラム。整備コストの管理は課題であり、整備の平準化を図っていく検討は進めてきており、確度が高まった。まだ協議中だが、相応の営業費用が第4四半期に出る」と説明。第3四半期時点で、当初計画に対して160億円を超す利益水準となっており、「少し余力があるとき」(同氏)に、課題となっていた整備関連に投資をする考えであることを説明した。