ニュース
JATA、環境税を徴収するパラオのオーバーツーリズム対策は「日本の手本になる」。観光客を絞りつつ消費総額を維持する取り組み
2026年5月28日 18:39
- 2026年5月28日 発表
JATA(日本旅行業協会)は5月28日、霞が関の本部で定例会見を開催。オーストラリア・パラオにおいて「サステナブルな旅」を推進するアウトバウンド拡大施策を発表した。
会見にはアウトバウンド促進協議会(JOTC)オセアニア・大洋州部会 部会長の秋山秀之氏と、海外旅行推進部 副部長の大久保英男氏が登壇。
2025年度から実施しているサステナブル旅行提案の成果を報告するとともに、2026年度はオーストラリアでの施策拡充に加え、新たなデスティネーションとしてパラオでの取り組みを開始することを明らかにした。
オーストラリアは寄付付きツアーの対象拡充と、CO2を埋め合わせる仕組みを導入
オーストラリアに関する施策は、主に「個人向け企画商品」と「団体向け旅行」の2軸で展開。個人向けの企画商品では、2025年度に開始した自然保護団体へのドネーション(寄付)付きツアーを継続・拡充する。
対象方面は、これまでのグレートバリアリーフ(ケアンズ)、ブルーマウンテンズ(シドニー)、ロットネスト島(パース)に加え、今年度からは動物保護の観点も追加。
コアラなどの保護を行なうカランビン・ワイルドライフ自然保護区(ゴールドコースト)と、ペンギンの保護で有名なフィリップ島自然公園(メルボルン)が新たに対象となる。
共通のロゴマークを掲示した商品を販売し、参加者の旅行代金から一定額を保護施設へ寄付する仕組み。対象期間は2026年10月1日~2028年3月31日と、年度をまたいで長期的に展開する。
一方、団体旅行向けには新たに、オーストラリアで植林などを通じた気候変動対策に取り組む企業「Reforest」と連携。
法人や教育旅行などの団体旅行を対象に、飛行機やホテルなどで排出されるCO2の量を算出し、オーストラリア国内の森林再生プロジェクト(植樹)へ資金協力することで、旅行で出たCO2を「埋め合わせる」仕組みを提案していく。
企業や学校のSDGs・CSR活動としての価値向上を狙い、2026年度は約1000トンのCO2削減を目標に掲げた。これは、ケアンズに3泊5日(エコノミークラス利用)で旅行した場合の、約500名分のCO2排出量に相当するという。
パラオで環境保護の最前線を体験。日本の「お手本」になる成功例
2026年度からの新規エリアとして発表されたパラオについて、大久保氏は「環境保護と観光の両立を目指す、サステナブル・ツーリズムの最前線を肌で感じられる国」と紹介した。
パラオでは、入国時に航空券に組み込まれる形で、100ドルの「プリスティン・パラダイス環境税」を徴収しているほか、パスポートに自然環境保護の誓約書「パラオ・プレッジ」のスタンプを押して署名を求めるなど、国を挙げたユニークな取り組みを行なっている。
会見では、2025年10月からユナイテッド航空が成田〜パラオ線の直行便(週2便)を就航したことでアクセスが向上し、注目が集まっていることにも触れた。今後、JATAはパラオ政府観光局と共同で、「自然・環境保護」および「文化・平和」をテーマにした独自の旅行コンテンツを開発していく方針だという。
質疑応答において秋山部会長は、パラオの現状について「日本の自治体がお手本にすべき点がある」と言及。
日本国内でも宿泊税(観光税)の導入・検討が進むなか、「パラオは観光客数をコロナ前より絞りつつも、1人あたりの消費額を上げることで、総額では当時と同等の消費額まで戻しており、集めた環境税でゴミ問題や海の浄化をバランスよく進めている。オーバーツーリズムからの脱却や、持続可能な投資への好例になるのではないか」と指摘した。
安さだけでなく、未来の観光地を守る旅行を
記者から「環境に優しいツアーは、一般の旅行者にとって魅力的なものとして受け入れられているのか?」という質問が出ると、秋山部会長は「正直なところ、まだ旅行者がツアーを選ぶ際の決定打にはなっていない」と明かす。
続けて「それでも安さだけでツアーを作るのではなく、持続可能な旅行にしていくことは、旅行業界が果たすべき責任だ」と強調した。
学校の修学旅行や企業の社員旅行といった分野では「社会によいことをしている」と評価されるため、すでに需要が高まっているという。
今後は、一般の旅行者にも「環境に配慮していること」がツアーの価値として伝わるような雰囲気づくりを進め、業界全体で「責任ある観光」を推し進めていく姿勢を見せた。


























