旅レポ
春を迎えたシドニーに到着! オペラハウスが突き抜けるような青空に映える
2023年11月14日 06:00
オーストラリア政府観光局によるプレスツアーに参加してきた。
羽田空港発のカンタス航空でシドニー国際空港へ。夜便での移動で、日本との時差は1時間のため、休んでいる間にシドニーにたどり着くことができた(10月~3月は夏時間で2時間差)。
50周年を迎えたシドニー・オペラハウス
滞在1日目は、オペラハウスを訪れた。世界遺産にも登録されている壮大な近代建築物で、ヨットの帆のようなユニークな形の屋根が特徴的だ。シドニーのシンボルの1つと言えるだろう。
筆者自身も、貝殻が重なっているかのようなオペラハウスの形状については、建築物としてどのように支え合っているのだろう……という疑問をかねてより抱いていた。今回、「ジョーン・サザーランド劇場」が入っている敷地内で2番目に大きい建物を案内してもらう機会を得たので、その様子をレポートしていく。
1973年の開業以来、世界中から多くの芸術家や作品が訪れ、さまざまな催しが行なわれてきた。オペラハウスには、2つの大きなオペラ劇場とコンサートホールに加え、下の階の4つの劇場を合わせた合計6つの劇場がある。毎日どこかの劇場でパフォーマンスが行なわれており、公演数は年間1800を超えるのだという。
オペラハウスを建築したのは、ヨーン・ウツソンとピーター・ホールという2人の建築家だ。デンマーク出身のウツソンは、コンクリートと針金だけで作り上げる柱のない芸術的な建物を考案し、オーストラリア人のピーター・ホールが建物の内部を建築した。廊下で天井を見上げると気がつくのだが、コンクリートと木の壁がつながっていないのだ。外側のコンクリートの建物の中にさらに劇場がある2重構造となっている。ウツソンが考案した外側の建物は、コンクリートブロックを積み木のように組み立て、中にワイヤーを入れて引っ張り圧力をかけることで止めている。柱のない建物なので、日本のように地震の多い地域では建てられない。
オペラハウスは突出した岬のような場所に建っているが、ここは何千年にもわたりこの地域の先住民アボリジナルの人々の集いの場だったそうだ。ウツソンが提案したデザインは、シドニーの絶壁やヨットの帆をイメージさせる独創的なもので、その立地における建築物として込められた意味合いについてもコンペ応募作品のなかで際立っていたという。オペラハウスといえば主に屋根部分に重なるシェル構造で知られているが、マヤ文明の遺跡のような大階段や、円形競技場を模したホールの座席など、古代建築の影響が感じられる点も見どころだと思う。
当初、ウツソンの作品は構想の域を出ないもので、実現するのは非常に困難だと考えられていたそう。しかし、最終的にウツソンのデザインが採用され、元のデザインを活かしつつ建設可能とするための構造が長い時間をかけて考えられた。結果的に多くの時間と予算がかけられることになったが、オペラハウスはオーストラリアの人々が夢を実現させた結晶であり、芸術に対する前向きな価値観を感じられるようなエピソードといえる。
そして気になるシェルの下は、ホワイエになっていた。観客が休憩時間に海を眺めながらお酒を飲んだりすることができるスペースで、貸出も行なわれている。足を踏み入れるとまず気づくのは、大きく傾いている窓ガラスだ。高層ビルから夜景を眺めたり、写真を撮影したりするとき、建物内にいる人の姿が映る経験をしたことがある人も多いだろう。だがオペラハウスのホワイエでは、周囲の窓ガラスが45度にせり出しているため、自分の姿が反射することなく絶景を楽しめる。ちなみに、このホワイエは日当たりのよい北を向いているため、日中はガラスが膨張してしまうのだそう。窓ガラスの間に挟まっているシリコンのクッションが膨張を受け止めているほか、頭上の鉄の枠組みもガラスに合わせて伸縮するようになっている。
「ジョーン・サザーランド劇場」の中も見学することができた。地図でオペラ劇場の建物を上から見てもわかるように、劇場は縦に長く、舞台の脇に舞台袖が設けられていない。このため、地下の倉庫で舞台セットを組み立てておき、床をそのままリフトのように持ち上げる仕組みがとられている。客席の前には、半地下部分にオーケストラピットがあり、オペラやクラシックバレエでは生演奏が行なわれる。また、ステージの天井と壁には人間の口の中を模した突起が配され、喉から口の外に音が広がるような構造になっている。
この後、オペラハウスの外壁にも間近で触れた。オペラハウスを日中に遠くから見ると眩しいほどの白さを感じるが、実は屋根のタイルは白1色ではないのだという。白色と光の反射を抑えるクリーム色の2色のスウェーデン製タイルで組み合わされていることで、天気や時間によって見え方が異なる。さらにこのタイルは、汚れが雨と一緒に落ち、溝から海に流れていく。なんと、ほとんどのタイルが50年間オリジナルから変わっていないのだという。同じタイルを一般購入することもできるそうだ。
ハーバーブリッジを一望するオープンテラスレストラン
オペラハウスを見学した後は、オペラハウス内にあるオープンテラスレストラン「Midden By Mark Olive Restaurant(ミッデン バイ マーク オリーブ)」でランチを楽しんだ。シドニーでは、新鮮な牡蠣を食べることが可能で、滞在中に訪れたさまざまなレストランで提供されていた。また、大型の肉食魚「バラマンディ」も名物だ。あっさりした白身魚なのだが、非常に肉厚でワインとのペアリングも楽しい。ほろほろと崩れていく感覚が心地よく、分厚く骨がないため食べ応えも抜群だった。
観光スポットへのアクセス抜群なキンプトン マーゴット シドニーに宿泊
シドニーでは、市内中心部に位置する「キンプトン マーゴット シドニー」に宿泊した。目の前に地下鉄のタウンホール駅があり、オペラハウスへもクルマで5分と、抜群のアクセスを誇る5つ星ホテルだ。最寄りの空港であるシドニー空港までの距離も9kmと、空の旅の後もクルマや電車でアクセスしやすい。
かつて水道局だった建物をラグジュアリーなホテルに改装し、2022年2月にオープンしたばかりだという。ロビーの吹き抜けには大理石の柱がいくつもそびえ立ち、ゴージャスな雰囲気で満ちているが、建物のレトロな雰囲気と重厚感のある家具に落ち着きを覚えた。館内には、ロビーバーやレストラン、ルーフトッププール&バーなどが設けられている。
今回宿泊した客室は、キングベッドが1つ置かれているタイプ。オーストラリア産のヘアケアブランド「MR.SMITH」の天然アメニティや、無料でエスプレッソを淹れられるマシンなどが用意されている。観光から戻った後にリラックスするための環境としては、非常に上質といえるだろう。なお、バスルームの中のシャワースペースには扉がなく、シャワーを浴びる際に水が洗面所へ出てしまうことがあるため、独立した浴室やユニットバスに慣れている人は注意が必要かもしれない。それでも、周囲に観光資源が豊富で、日中はアクティブに動き回ることが多いシドニーへの旅行客にとって、快適に過ごすための工夫とエコフレンドリーな姿勢の両立が感じられる同ホテルを選択したい理由は多そうだ。
海外旅行の準備では、電源プラグの変換も気になる点だろう。オーストラリアはOタイプ(海外ではIタイプ)なので、ハの字型で使える変換プラグを用意しておきたい。ただキンプトン マーゴット シドニーの客室では、デスクとベッドサイドにUSB Type-Aを挿すことができるコンセントが2つずつ配されていた。スマホなどの充電はこれで済む可能性があるため、大量に変換プラグを用意する必要はないかもしれない。ちなみに筆者は、持参する機材が多かったため、全世界対応の変換プラグを1つだけ用意している。一眼レフのバッテリーにのみこの変換プラグを使い、スマホとGoPro、MacBook Pro、ヘアアイロン(ReFa BEAUTECH FINGER IRON)、スマートリングなどはType-Aから充電する形で落ち着いた。なお、オーストラリアの電圧は240Vと日本より高めになっているが、最近の電化製品には電圧のカバー範囲が広いものが多いようで、今回は変圧器は不要だった。