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「万博が海外旅行の機運醸成につながった」と髙橋会長。JATA新春会見で旅行業界の現状と展望を説明

2026年1月8日 実施
一般社団法人日本旅行業協会 会長 髙橋広行氏

 JATA(日本旅行業協会)は1月8日、都内本部で新春会見を開き、会長の髙橋広行氏が今後の取り組みなどについて説明した。以下、髙橋会長のコメントを抜粋する。

会見抜粋

 昨年は大きなイベントとして、2005年の愛知万博以来20年ぶりとなる「大阪・関西万博」(2025年日本国際博覧会)が開催された。入場者数は当初目標の2820万人には若干及ばなかったものの、最終的には2558万人で終了しており、観光業界にも一定の効果をもたらしたと受け止めている。

 特に来場者の9割が日本人だったことを考えると、多くの人が世界各国のパビリオンを見たことで、少なからず海外旅行の機運醸成にもつながったのではないだろうか。学校単位での来場もかなりあり、生徒や学生が各国のパビリオンで異文化に触れて、外国人と交流することで、彼らの視野を広げるよい経験になったのではないかと捉えている。

 そしてもう1つのEXPO、我々が主催する「ツーリズムEXPOジャパン2025 愛知・中部北陸」は、昨年の9月に初めて愛知県で開催した。商談回数(6071件)、出展者数(1350企業・団体)、来場者数(12万7000人)において当初目標を大きく上回ることができた。

 また、1日あたりの来場者数は4万人を超え、会場のAichi Sky Expoにおける1日の来場者数記録を大幅に更新する活況ぶりであった。

 あらためて昨年の旅行業界を総括すると、一言でいえば「まだら模様であった」。訪日外国人旅行者数はまだ確定数値が出ていないものの、過去最高であった2024年を大幅に上回る4000万人の大台に達しており、旅行消費額も2024年を上回る見込み。

 海外旅行は、人数ベースでは2024年度比で10%以上の伸びを示しているが、コロナ前の2019年度比では7割台となり、大きな課題として引き続き残っている。

 これらの状況を受けて、2026年は「変革の年」にしたい。円安や旅行費用の高騰は要件として受け止めて、「価格」ではなく「価値」で選ばれる産業への変革を進めていく必要がある。

 最大の課題である海外旅行について、具体例を紹介すると、2024年・2025年は韓国観光公社と連携し、釜山から1時間半ほど離れた街・咸安(ハマン)にて、伝統的な火祭り「落火ノリ」の日本人旅行者限定イベント「ジャパンデー」を設定。JATAの会員各社で共同販売を行ない、たった1日のイベントにもかかわらず、2025年は日本から1000名の旅行客が参加した。

 韓国旅行はどちらかといえば低価格志向が主流のなか、「価格」から「価値」に変革できた非常に画期的な事例であったと思う。

 また、2026年は米国建国250周年の年にあたり、サッカーの「FIFAワールドカップ2026」がカナダ・メキシコ・アメリカの北米3か国で開催されるほか、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)もアメリカで開催される。これらをフックとして、付加価値の高い旅行を提案していきたい。

 若者の海外渡航促進についても、パスポート取得支援などをはじめ、双方向交流の拡大に向けた政策提言や、環境整備において、関係組織や他団体との連携を進めていく。

 取り組みの一例として、「若者に海外経験を積んでもらい日本の未来をつくってほしい」という同じ想いを持つ、渋谷未来デザインとの連携プロジェクト「Go Global Project」の立ち上げを2025年に発表したが、2026年はこの連携をさらに具体的に進めたいと考えている。

 また、パスポート(10年旅券)発給申請の手数料については、現行の約1万6000円から約9000円へと引き下げる検討がされている。パスポートの保有率が約17%まで落ち込んでいる現状から、取得促進につなげる施策を国へ要請してきたことが、今回のようなかたちで実現するのであれば、極めて朗報だと受け止めている。

 一方で、国際観光旅客税(出国税)は現行1000円から3000円への引き上げが検討されており、この件だけを捉えると、海外旅行が回復していないなかで少しネガティブな影響があるのではないかともいえる。

 全体として「痛し痒し」の部分はたしかにあるものの、旅客税の引き上げによって大きな観光財源が生まれるので、新たな財源はぜひ海外旅行の拡大促進につながるよう有効活用していただきたく、国にも提言していく。

 それから、日本のクルーズ人口は2024年が22万4000人。ピーク時の2019年の35万6000人には及んでおらず、欧米と比較してもまだまだ未成熟なマーケットであり、大きな成長可能性を秘めている。

 2025年には、国土交通省の「日本のクルーズ市場の持続的発展に向けた有識者検討会」で、「2030年までに日本人クルーズ人口を100万人にする」という新たな目標が掲げられた。

 外国クルーズ会社によるクルーズ船の新規投入あるいは新たなクルーズ船のデビューといった話題性もあって、これまではシニア層が中心だったが、若い世代にもクルーズの魅力を知っていただくことで、さらにマーケットが発生するものと期待している。

 ほかでは、日本外航客船協会(JOPA)、日本国際クルーズ協議会(JICC)と協働して、「Let’s CRUISE 1M(Million)~100万人で行こうよ!船旅へ~」をキャッチフレーズに、クルーズマーケットの拡大に努める。

 活況を呈している訪日旅行(インバウンド)は、地方分散が喫緊の課題となっている。現在は、インバウンドの宿泊の約7割が東京・大阪・京都などの大首都圏(ゴールデンルート)に集中し、一部の観光地ではオーバーツーリズムが深刻化している。

 2030年の目標である旅行者6000万人、消費額約15兆円を達成するためにも、新たな周遊ルートの開発が必要で、ここは我々旅行会社の腕の見せどころ。地域の魅力を発掘し、観光資源として磨き上げ、新たな価値を提供するというのは、まさに地域を知り尽くし、地域と深い関わりを持つ、旅行会社の出番である。

 また、特定の周遊ルートを複数年、集中的にプロモーションをする「訪日版・デスティネーションキャンペーン」も極めて効果的であると考えており、国にも提言をしているところ。高付加価値旅行の造成や観光DX化の推進、地方空港のさらなる国際化なども含めて、持続可能な観光に向けた取り組みを進めていく。

 中国の今の状況は、JATA会員各社にヒアリングしたところ、中国から日本行きの団体旅行(インバウンド)はほぼ中止に近いような状態。一方で個人旅行者はそれほど大きな影響を受けていない。日本から中国行き(アウトバウンド)に関しては、修学旅行の行き先変更や団体旅行などの中止といった動きがある。

 これから最大の需要期・春節(2026年は2月17日~3月3日)がどうなるか。中国系の航空会社が減便・運休している影響は、団体はもちろん個人旅行者にも大きく出てくるので、注視していきたい。

 次に、人口減少で縮小が懸念される国内旅行も大きな課題であり、日本人1人あたりの年間平均宿泊数は2.4泊、旅行回数は1.4回という状況がなかなか続いている。国内旅行の拡大に向けては、旅行需要の平準化を進めるべく、平日に休みが取れる環境をつくることが不可欠である。

 全国知事会が主導する休み方改革「ラーケーション」(子供の学習&平日の休暇)は着実に広がっており、学校単独での導入、あるいは休みの日数を拡大する自治体も徐々に増えている。なかには休みの日数を5日間とする自治体もあり、5日連続で平日の休みが取れれば、海外旅行への利用も視野に入るのではないか。

 九州観光機構では、ラーケーションに特化したモデルコースを提案するサイト「Let’sラーケーション 学びの九州」を設けるなど、受け入れ側の取り組みも始まっている。

 JATA独自の取り組みとしては、「平日に泊まろう!」キャンペーンを2026年も引き続き実施。国が進めようとしている「ポジティブ・オフ運動」とも連携をし、さらなる旅行需要の平準化に取り組む。

 2026年は、愛知・名古屋で「第20回アジア競技大会」「第5回アジアパラ競技大会」が開催される。このアジア大会は、経済誘発額が日本全体で約2兆円と見込まれており、大きな経済効果と国際交流が期待できる。

 また、横浜市で開催される「GREEN×EXPO2027」(2027年国際園芸博覧会)の開幕まであと400日あまりとなった。この国際園芸博は、参加者1500万人が想定されている、非常に規模の大きな博覧会である。我々旅行業界は、大阪・関西万博の流れを生かし観光活性化につなげたい。

 ツーリズムEXPOジャパン2026は、東京ビッグサイトで開催。「進化する旅のかたち」をテーマに、未来に向けて旅を進化させることで持続可能な観光を目指す。

 最後に、本年は国の「第5次観光立国推進基本計画」が4月から施行される節目の年。その内容の検討が佳境に入っているが、インバウンドの地方分散や国内旅行の活性化はもちろん、初めて「海外旅行の拡大」が検討されており、柱の1つになるだろうかという動きがある。

 海外・国内・訪日旅行の三位一体でのバランスのとれた成長こそが、持続可能な観光であることから、官民の連携を一層強化をし、変革を通じて次の飛躍に繋がる年にしたい。