【イベントレポート】

【JA2016】迫力あるスバルのヘリ模型や、ヤマハの無人ヘリコプターなど多彩な展示物

IHIは国産初の実用ターボジェットエンジン「ネ20」を展示

2016年10月12日~15日 開催

IHIブースに展示された国産初の実用ターボジェットエンジン「ネ20」

 東京ビッグサイトで10月12日~15日に開催されている「2016年国際航空宇宙展(JA2016:Japan Aerospace 2016)」の会場には、航空・宇宙業界のさまざまな企業が出展している。そのなかから、いくつかの注目トピックスをまとめて紹介する。

三菱航空機「MRJ」

 日本時間の9月29日に、飛行試験初号機が米国のテスト拠点となるモーゼスレイク空港へのフェリーフライトを完了した「MRJ」。三菱重工業がブースを展示し、その一角にMRJのコーナーが設けられた。

 展示されているのはMRJのモデルプレーンのほか、客室のモックアップ、プラット&ホイットニーのギアード・ターボファンエンジンの特徴をプレゼンテーションするディスプレイなど。客室モックアップは実際に座って体験することも可能だ。

MRJのモデルプレーン
体験も可能なMRJの客室モックアップのほか、タッチパネルでギアード・ターボファンエンジンの特徴を説明するディスプレイ展示を実施
三菱重工業が関わる航空機エンジンのパーツなども展示している

富士重工業(スバル)

 富士重工業(スバル)は、「SUBARU」のロゴが入った民間向けヘリコプター「412EPI 発展型(412+)」のモデルが一際目立っている。同機は国際共同開発事業として、富士重工、米ベル・ヘリコプター・テキストロン(Bell Helicopter Textron)、日本の防衛省が共同で開発を進めているもので、40%スケールと迫力ある大きさで展示。2017年に社名変更するスバルを象徴するモデルであることを強くアピールするものとなっている。

 その2017年は、1917年の中島飛行機の創設から100周年迎える年でもあり、ブースでは中島飛行機、富士重工業が携わった航空機の年譜も展示されている。

富士重工業のブースで展示された40%スケールの「412EPI 発展型(421+)」(左)と、防衛省向け「UH-X」(右)
民間向けに開発が進められる「412EPI 発展型(421+)」には「SUBARU」ロゴが入る
1917年の中島飛行機創設から100周年。これまで携わった航空機の年譜が掲示されている
ボーイングと国際共同開発したボーイング 787型機の中央翼(1/10スケール)
ペイロード100kgの無人ヘリコプターとして開発が進められている「RPH-X」(1/5スケールモデル)

ヤマハ発動機

 ヤマハ発動機では、同社が約35年携わっているという産業用無人ヘリコプターの新モデルを展示。1機は農業分野での薬剤散布用として販売されてきた「FAZER」の後継モデル「FAZER R」。そしてもう1機は、「FAZER R」をベースに、非農業用に自動航行機能などを備える「FAZER R G2」となる。

 農薬散布が主用途のFAZER Rは、従来モデルと同じ水平対向2気筒/390ccのレシプロエンジンを採用しつつ出力を向上させ、積載可能なタンクを従来モデル24Lから32Lへと向上させたのが主な特徴。こちらはプロポを用いて操縦することを前提としており、その無線周波数も7波から10波へと拡張することで混信を発生しにくくした。

 自動航行機能を備えるFAZER R G2は、このFAZER Rに自動航行のためのコンピュータや地磁気センサー、GPS、カメラなどを備えたモデル。操縦システムとは常に無線接続されており、自動航行から手動操縦ですぐに切り替えることもできる。

 パワーユニットにはFAZERから実績のある水平対向2気筒/390ccのレシプロエンジンを採用しており、信頼性の高さも特徴に挙げている。

 ペイロードは最大35kg。運用高度は2800mで、ヤマハ発動機の自動航行可能な無人ヘリコプターとして従来モデルから大幅に拡張したという。操縦部との無線接続は2.4GHz帯で、接続範囲はおよそ3km圏内とのことだが、日本国内での使用を考える限り、この範囲で十分と判断しているという。一方で、衛星通信ユニットの搭載も可能で、こちらを用いると接続範囲の制限がほぼなくなり、航続距離は最大90kmとなる。

 産業用無人ヘリコプターとしての用途拡大を見据え、4K撮影なども想定したカメラ用のジンバルや、ウィンチ、地形測定などに使えるレーザースキャナーなどのオプションも提供する。

 ブーススタッフの説明では、本機そのものを販売するビジネスももちろんだが、まずはレンタルや受託事業などが中心に展開することを見込んでいるとのこと。提供は2017年4月からを予定している。

ヤマハ発動機のブース
自動航行システムを備える産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」
ローターの駆動には農薬散布用機で多数の実績がある水平対向2気筒/390ccのレシプロエンジンを搭載
自動航行や通信制御などを行なうコンピュータユニットボックス
GPSと地磁気センサー
前方にはカメラを標準搭載している
操縦のためのユニット。標準仕様では、本体と2.4GHz帯で無線接続した状態で使用する
オプションとして提案しているウィンチ。本体重量は現時点の仕様で5kgほどとのこと
4Kの空撮用途などを想定してカメラジンバルも提供
地形測定などに用いるレーザースキャナー
可用エリアを大幅に広げることができる衛星通信ユニット
こちらは農薬散布を主用途とする「FAZER R」。従来モデルからタンク容量拡張などが施された

IHI

 IHIは、石川島重工業時代から国産ジェットエンジンに携わってきたことをアピールするブース展示を実施。国内に1機のみ保管されている国産初の実用ターボジェットエンジン「ネ20」を始め、他社から借り受けた「J3」「XF3」「FJR710」といった国産ジェットエンジンを展示。

 ボーイング 787型機に採用されているGE Aviationの「GEnx」や、次世代ビジネスジェット向けエンジン「GE Passport 20」といったIHIが部品などを提供している最新のエンジンの小型スケールモデルも展示されている。

「ネ20」からの取り組みの歴史を表わしたIHIブース
「ネ20」
ネ20の説明
ネ2の銘板
ボーイング 787型機で仕様されている「GEnx」
次世代ビジネスジェット向けエンジンとして2016年に型式認証を取得したばかりの「GE Passport 20」

 このほか、IHIグループの明星電気は、災害などで官制システムが使用できなくなった際の非常管制塔システム「Compact Tower(CVA-14)」のパネル展示も行なった。東日本大震災時の仙台空港や、熊本地震時の熊本空港のようなケースもあり、国土交通省の航空局ではすでに採用されているという。

 リフトアップしてのタワー官制を行なう機能や、電源、制御システムなどを備え、必要な通信は独立した無線通信で行なえるので、通信インフラにダメージを受けた状況でも使用できる点などを特徴として挙げた。ただし、レーダーなどの一部は、次項で紹介するNECのソリューションと組み合わせて利用しているそうだ。

明星電気の非常用管制塔システムのパネル展示

NEC

 NECは航空分野で提供している商品・技術として「空港ソリューション」の展示を行なった。同社では、空港に設置されるレーダー設備などから、ターミナルビルでの認証システム、防犯につながる技術などを空港ソリューションとして展開している。

 そのなかでデモ展示を実施していたのが顔認証システムで、顔の特徴を独自のアルゴリズムで解析して判定するもの。認識した顔を登録しておくことで、個人の同定も可能。同社では顔認証や指紋認証などの生体認証を、税関や空港の保安エリアの立ち入りの認証などへ提案しており、顔認証は海外空港での採用事例もあるという。

 また、群衆行動把握のシステムや、監視カメラで捉えた映像から異常行動を検出してアラートを出すシステムなども紹介していた。

NECブースでは空港ソリューションを紹介するディスプレイ展示などを行なった
海外空港での採用事例もあるという顔認証システムの説明とデモ
監視カメラの映像から異常行動を検知するデモの紹介ビデオ
空港のインフラも提供している