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夜のにぎわいをライティングで彩るパナソニックの新照明演出「宵まかせ」。実は大阪・関西万博で知らずにみんな見てた?

2025年11月1日 提供
クラウドを使った照明演出サービス「街演出クラウド 宵まかせ」について聞いてみた

 建物やランドスケープのライティングをパナソニックが手掛けていると聞いて、即座にピンと来る人は少ないかもしれないが、新築やリフォームで内装工事を(発注側を含めて)経験していると、パナソニックがどれほど大きなシェアも持っているかは、すぐ理解できる。特に壁面にある照明スイッチなどはほとんどがパナソニック製なのは、分かりやすい例だろう。

 パナソニック エレクトリックワークス社(EW社)は、パナソニックの事業会社として、照明・電設資材事業を主に手掛けている。そんな同社が、クラウドを駆使した照明演出サービス「街演出クラウド 宵まかせ」を11月1日に提供開始した。照明演出のサブスクとも言える初期導入費用不要というこの新サービスについて、東京のパナソニック本社で詳しく聞いてみた。

パナソニック東京汐留ビルにて
パナソニック本社エントランス
ビルにはショールームや美術館も入っている
パナソニック エレクトリックワークス社 ソリューションエンジニアリング本部の位置づけ

 この「宵まかせ」は、照明・電設資材事業を行なうパナソニックEW社のなかでも、物販だけではない、ライティングを含めニーズに合った課題解決を提供するソリューション事業のソリューションエンジニアリング本部が扱っている。システムなどのハード納入はもとより、メンテナンス、データ分析、コンサルティングなどをトータルで提供している。

 このソリューションエンジニアリング本部 ソリューション事業統括部 パブリックエンターテインメントカテゴリー 商品・サービス企画部 街演出サービス企画課の佐藤智則氏と、同 商品・サービス企画部 営業企画課 主務の宮本千琴氏に詳しくうかがった。

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ソリューションエンジニアリング本部 ソリューション事業統括部 パブリックエンターテインメントカテゴリー 商品・サービス企画部 街演出サービス企画課 佐藤智則氏

季節イベントや建造物のライトアップをサブスク感覚で

 パナソニックEW社は、この「宵まかせ」のサービス開始以前に、「YOI-en(ヨイエン)」というクラウドを使ったライトアップ演出サービスを2022年10月に開始している。この「YOI-en」を導入しやすく初期費用ゼロに抑え、サブスクリプションのような契約形態にした照明演出サービスが「宵まかせ」だととらえると分かりやすいだろう。

 地域のナイトタイム演出などを行ないたいが、費用面で躊躇しているケースを後押しするサービスとして「宵まかせ」を提供する。月額料金は、設置機器台数と調整費用で定額の基本料金と、点灯時間や演出シーンに応じた従量課金の利用料に分かれるが、期間中一定した運用方法なら定額プラン契約にしてしまうこともできるとのこと。

 しかも単に導入するだけでなく、スケジュール設定など演出の運用、月1での運用見直しや異常のモニタリング、月次レポートといったマネジメントも、パナソニックEW社に代行してもらうことが可能だ。こちらは「マネージド・サービス」として定額制の別料金にはなるが、包括的に「夜のライティング演出をおまかせ」してしまうのが、「宵まかせ」のサービスの全体像となっている。

「宵まかせ」導入の流れ図。「YOI-en」が使われている
「宵まかせ」の月額料金内訳。演出を一定にして定額にすることも可能

「宵まかせ」は、システムとして「YOI-en」を活用している。この「YOI-en」というネーミングは、日の入り時の「宵」と「縁」でつながるイメージを組み合わせていて、「良い縁」がクラウドでつながってほしいという願いも込めたと言う。

 佐藤氏は、「街の魅力をライトアップで引き出していきたいと考えています。クラウドサービスにしたことで、ライティング演出を継続的にアップデートできるので、訪れるたびに変化のある、何度でも訪れたくなるような感動を生む街づくりをすることができます。季節など、要望に応じて特別な演出を気軽に導入してもらえるのが『宵まかせ』の大きなメリットです」と言う。

 照明を常設する前のお試しや、シーズンの特定イベント期間といった用途向けで、長期間ではなく基本的には1年単位契約、長くても2年程度の期間と、区切っての利用を想定している。とはいえ、長期で使えないわけではなく、再契約で延長は可能とのこと。短期契約も可能で、契約は比較的柔軟だが、もし常設に移行する場合には、機材はまったく別に新規導入ということになる。

実は大阪・関西万博で使われていた「YOI-en」

 実はこの「YOI-en」だが、もう多くの人がすでに目にしているのではないかと思われる。直近の代表的な導入例として、大阪・関西万博のパナソニックパビリオン「ノモの国」と「大屋根リング」がある。

 大屋根リングの2段屋根の構造体を美しく照らしだしたり、2階「スカイウォーク」の足元を照らすライティングは、多くの人が見入ったはずだ。ほかにも、大阪駅前うめきた地区のグラングリーン大阪の一部、長崎グラバー園、京都の平安神宮、埼玉の大宮盆栽美術館が挙げられる。残念ながら、どれも現在は終了してしまっているが、「あのキレイな照明のことか」と思い当たる人は多いだろう。

「YOI-en」導入例。大阪・関西万博のパナソニックパビリオン「ノモの国」ライティング
「YOI-en」導入例。大阪・関西万博の「大屋根リング」ライティング
「大屋根リング」ライティングの詳細
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ソリューションエンジニアリング本部 ソリューション事業統括部 パブリックエンターテインメントカテゴリー 商品・サービス企画部 商品・サービス企画部 営業企画課 主務 宮本千琴氏。「YOI-en」と導入事例について詳しく解説してくれた

「YOI-en」はクラウドサービスのため、遠隔で演出操作を行なえることも特徴だ。データを可視化して、利用者の行動とにぎわっているかどうかをチェックもできる。ライティングしている現場のシステムは有線でつながっているが、その先は無線でクラウドに接続する。そのため、離れている複数の拠点(照明)を連動させて遠隔制御することも問題ない。

 また、ライティングに動きをつけて、人の向かってほしい方向を働きかける「アフォーダンス・ライティング」という仕組みも利用することができる。

人に動いてほしい方向を、光の動きで働きかける「アフォーダンス・ライティング」

 さらに、API利用で外部システムと連携することも可能だ。例えば、気温や天候、人流などのセンサーと連携させることが考えられる。実際に大阪・関西万博の「大屋根リング」のライティングシステムでは、全体で2kmにおよぶ多拠点をクラウドでつなぐことで連携した演出をしつつ、APIを使って外部の人検知システムと連動、ライトの色を変化させるという演出を行なっていた。

 ライトアップというと粒状のLEDを多数使ったイルミネーションを連想する人も多いと思うが、「YOI-en」は建物などの“面”をライトアップするタイプになる。LEDのイルミネーションと連携させることも技術的には可能とのことで、演出の自由度はかなり高い。

大阪・関西万博の「大屋根リング」のライティングシステムのポイント
APIを使って外部の人検知システムと連動させている

 本サービスはほかにも、アプリなどからユーザーが指示することでライティングを変化させる体験型コンテンツ「YOI-iro」も含まれている。以下の動画はグラングリーン大阪で行なわれた「YOI-en」を使ったイベント紹介なのだが、そのなかで実際の動きが紹介されている。

ライトアップ×街づくりの導入ハードルを下げる

「YOI-en」を使った「宵まかせ」のコストメリットについてだが、一般的な購入を伴うライティングの導入では、やはり機材の初期導入費用がガツンとかかってしまう。その初期導入費用を数年かけて償却していくイメージだが、「宵まかせ」の場合は最初の負担を抑えられる。ほぼ定額の平準化した月額利用料を予算として考えればよいことになり、導入のハードルは格段に低くなる。

 また、年間4回で各回20日間の仮設イベント時のみにライトアップするケースと比較しても、「宵まかせ」は費用削減効果があるという。仮設イベントでは、その期間だけのライトアップになるが、「宵まかせ」はイベント開催時にも照明以外の追加費用で済み、イベント用カラーへの変更も簡単だ。イベント期間以外の期間も常にライトアップを継続できるというメリットもある。

30台程度の機材でお城のライトアップ行なった場合の「宵まかせ」と購入での1年間コスト比較例
年間4回の仮設イベントと「宵まかせ」と比較した場合でも、じゃっかんだが費用を抑えられる

 佐藤氏は、「ライトアップ実施による人流への効果が分からないということもあると思います。『宵まかせ』はそういったケースの“お試し”にも適しています。街に住む人、訪れる人、双方が見て楽しくなることを目指していて、住んでいる人にとっては街に愛着がわき、訪れた人々はまた来たいと思ってもらえるようなライトアップになればと思います。街のランドマークとなる施設などのライトアップに気軽にサービスを活用していただければ」と思いを語った。

「宵まかせ」はすでに活用が始まっていて、大阪府箕面市の「勝尾寺」(大阪府箕面市粟生間谷2914-1)で、錦秋の宵詣り(秋の特別ライトアップ)と年末年始の特別ライトアップ(2026年1月まで)を行なうほか、そのほかの地域でもすでに導入の決まっている施設があるとのことだ。

「宵まかせ」大阪府箕面市勝尾寺での活用事例

 解説の終盤、パナソニックEW社はライティング単体だけではなく、総合力でさまざまな悩みに対応できる企業、と言っていたのが印象的だった。

 照明演出運用を“おまかせ”できる「宵まかせ」だが、現場によって細かな要望は多様で、難題にあたることもあるだろう。まず、先頭に困っていることを聞きだして解決するソリューションサービス部がいて、ライティングやネットワークのハードウェア機材、照明デザイン、演出のエンターテインメント、運用を行なうソフトウェア、クラウドサービス、今回は別分野になるがセキュリティなど含めて、トータルで揃えて対応できる企業は実際あまりない。これらを気軽に頼ることのできるこのサービスは、ありがたい存在ではないかと感じた。

 実体験として、地方の文化施設や遺跡を夜間に通りかかったり、観光地で遅い時間の滞在になってしまい、ここが明るくライトアップされていればもっと楽しめそうだな、と思うシーンは確かによく遭遇する。観光資源としてちょっともったいないと感じるのだ。

 暗い夜、人は明るいところに自然と目がいき集まってくる。計算されたライトアップは美しく、動きが加わればより魅了される。日本の秋から冬は、特に夜が長い。建物やランドスケープのライティングで魅力ある演出をすれば、この長めの夜を楽しく過ごすことができるはず。旅行先の観光地で、「宵まかせ」を活用した明るい街やエリアが、今後増えそうな予感がする。