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ウミガメの背中に乗ってホノルルから日本へ。ANAのA380型機2階席、プレミアムエコノミーで専用機内食など体験
チェックイン機やシャトルバスなどダニエル・K・イノウエ国際空港でのサービスも強化
2019年5月29日 16:58
- 2019年5月26~27日 搭乗
ANA(全日本空輸)が5月24日に就航したエアバス A380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ:空飛ぶウミガメ)」。成田発の初便でエコノミークラスに搭乗したレポートは別記事でお届けしたとおり(関連記事「ウミガメに乗ってホノルルに行ってみた。ANAのエアバス A380型機初便で500名以上が一挙ハワイへ」)。本稿では、ホノルル発のNH183便(ホノルル11時30分発~成田翌14時55分着)のプレミアムエコノミーに搭乗したレポートをお届けする。
帰国便の搭乗にあたって、まずはダニエル・K・イノウエ国際空港のチェックインカウンターへ向かう。リニューアルして波をイメージした壁をバックにしたほか、エアバス A380型機の就航に合わせ、ユナイテッド航空とともに預け入れ手荷物のタグ発行が可能な自動チェックイン機を導入した。
チェックイン開始は出発時刻の3時間前から。現在のNH183便は11時30分発なので、8時30分にチェックイン開始となる。預け入れ手荷物がない場合は、それ以前でも自動チェックイン機で搭乗券を発行することはできる。早速、導入されたばかりの自動チェックイン機を試してみた。使い方は簡単で、利用航空会社、パスポートスキャンなどの搭乗券発券は、昨今増えた自動チェックイン機と同じ手順。続いて手荷物の有無や数を入力すると、タグが発行されるので自身で取り付けることになる。
ちなみに、ANA国内線で基幹空港の一部に導入されているANA Baggage Dropは剥離紙のないタグだが、ダニエル・K・イノウエ国際空港で使われている機械では、剥離紙のあるタグが出力される。もっとも、剥離紙と預かりの控えがひとまとまりに剥がれるようになっており、その場でゴミの対処をする必要はない。そのまま、専用の有人カウンターへと進み、荷物を預け入れれば手続きは完了となる。
ところで、ANAのハワイ線は今回就航したエアバス A380型機と、ボーイング 787型機が便によって使い分けられる。その利用コンコースについて、少し補足しておきたい。便宜上、G1~G6搭乗口があるダイヤモンドヘッド・コンコースをGコンコース、C1~C9搭乗口があるエバ・コンコースをCコンコースと表記する。
エアバスA380型機は2階席に接続できるPBB(旅客搭乗橋)のあるC4スポットとC9スポットが発着ともに優先的に割り当てられるが、これまでANA便はGコンコースから発着するのが通常のオペレーションだった。
しかし、エアバスA380型機就航に合わせ、C4搭乗口付近にラウンジを整備したこともあり、ボーイング 787型機による運航便も出発はCコンコースの搭乗口を利用することになる。ただし、到着については、これまでどおりGコンコースに到着し、出発時刻に合わせて飛行機をCコンコース側のスポットに移動することになるという。ただ、5月26日に到着した羽田発のNH186便はC5スポットに到着しており、到着時の使用スポットについては、そのときの空き具合によって柔軟に対応していくものと見られる。
出発が基本的にCコンコースからとなることで悩みの種となるのが、チェックインカウンターからの距離。ラウンジのレポート(関連記事「ANA、ホノルル ダニエル・K・イノウエ国際空港の新ラウンジを公開。エアバス A380型機の2階席に直結」)でもお伝えしたとおり、チェックインカウンターはターミナルビルの東寄り(Gコンコース寄りのロビー8)、Cコンコースはターミナルビルの西寄りと、ちょっと距離がある。
保安検査場はチェックインカウンター近くの東側のほか、中央付近、西側と3か所あり、ANA便のチェックインを終えた搭乗客は西側の保安検査場に集中しがちなので、1便あたりの搭乗者数が多いエアバス A380型機運航便の出発前はより混雑することになるだろう。5月26日も列が長くなった際には、保安検査場のスタッフが中央付近の保安検査場へ誘導する場面も見られた。
ちなみに、東側の保安検査場には近々、爆発物探知犬の導入が予定されているとのことで、導入後の検査は現在よりも簡素化し、1人あたりの通過に要する時間が短縮する見込みだという。
さらに、エアバスA380型機の就航に合わせて、ANAはラウンジ利用者向けのターミナル内連絡シャトルバスの運行を開始した。東側の保安検査場を抜けたすぐ脇にあるエスカレータで3階に上がるとある、ターミナル連絡シャトルバス「Wiki-Wiki Shuttle」の乗り場から出発し、C6搭乗口前の停留所までバス移動できる。乗車時に搭乗券のチェックがあり、ANA SUITE LOUNGEまたはANA LOUNGEの利用資格がある人のみ乗ることができる仕組みとなっている。
早速利用してみたが、真新しいバスで、(周知されていないのか、買い物などでの徒歩移動のニーズが高いのか)乗車する人も少なく、クーラーの冷気に包まれて快適にラウンジへと進むことができた。Cコンコースまで直行するので、免税店で買い物などしつつラウンジやゲートに行きたい人には不向きだが、早めにラウンジに行ってゆっくりしたい人などに便利だ。
ラウンジについては、内覧会のレポートをお届けしているので、ラウンジ設備などの詳細は関連記事をご参照いただきたいが、エスカレータで3階へ上がれば左手すぐに入り口がある。ホノルル発はプレミアムエコノミーへの搭乗なので、受付を済ませてANA LOUNGEへと向かった。
ANAのホノルル発便は、11時30分発の成田行きNH183、12時45分発の成田行きNH181便、13時55分発の羽田行きNH185便の3便が続くわけだが、エアバス A380型機が導入されているNH183便はもっとも早い時刻の出発となる。9時過ぎに入った時点では窓側がかなり埋まっていたものの余裕。そのあと続々と利用者が入ってきたが、しばらくは少し混雑しているかな……程度の印象だった。
ただ、10時30分を過ぎるころにはNH181便の利用者も多くなってきたのか、かなりの人で混雑していた。それでもまだカウンタータイプの席や、奥のキッズルーム付近の席などには空きがある状態だったが、NH181便にもエアバス A380型機が導入される7月1日以降の火・金・日曜はわりと混雑する可能性がありそうだ。
ANAがホノルル ダニエル・K・イノウエ国際空港にオープンする新ラウンジ紹介
さて、5月26日のNH183便は、当初10時45分の搭乗開始が予定されていたが、機内の準備に時間がかかったとのことで、11時05分からの搭乗開始へと遅れた。2階席のファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミーの利用者はラウンジから直接機内へと向かえるので、ラウンジ内の搭乗口に列が作られる。
ANA LOUNGE側にはビジネスクラスとプレミアムエコノミーの列が作られ、ANA SUITE LOUGNEからの搭乗が終わってからの案内となり、まずビジネスクラス、続いてプレミアムエコノミーの順に機内への案内が行なわれる。パネルに記載はなかったが、スターアライアンスゴールド会員はビジネスクラス搭乗時に併せて案内があった。ただ、1階へアクセスするPBBとはつながっていないので、スターアライアンスゴールド会員で、かつプレミアムエコノミー利用者であればビジネスクラス案内時に搭乗が可能となることになる。
2階席は3クラス併せても137席と、1階のエコノミークラス383席の半分以下しかなく、搭乗はすいすいと進む。ラウンジから2階席への直接搭乗では、1階席の状況がまったく分からないが、そのことが余計に2階席の特別感を高めているように思う。
実際に乗ってみて気になったのはオーバーヘッドコンパートメント。窓寄りのオーバーヘッドコンパートメントはやや小さく、最大荷重も35kgとなっている。ボーイング 737型機/767型機の(カバー部分のみが開閉する)古いタイプのオーバーヘッドコンパートメントをイメージするとよいと思う。機内持ち込み可能なスーツケースがギリギリ横に収まるサイズで、特に高さ方向のスペースが小さいことに注意を要する。中央側のオーバーヘッドコンパートメントは広く、最大荷重の50kgなので、窓寄り席の人もこちらをうまく活用することをお勧めする。また、機内のレポートでも紹介したとおり、2階席の窓側には収納ボックスもあるので、窓側席の人はこちらも併せて利用するとよいだろう。
さて、プレミアムエコノミーでは、アメニティグッズも付く。耐水性や耐久性に優れるデュポンタイベック素材を使用したエコバッグのほか、スリッパが各席に置かれている。また、マスクや歯ブラシ、耳せんなども用意があり、出発前後にCAが配布した。
本機らしさといえばエコバッグのデザインとなる。同様の素材を用いたエコバッグはビジネスクラスでも提供されるが、プレミアムエコノミーとはデザインが異なる。耐水性の点では、ハワイに行くときにゲットしたいところではあるが、帰国後もその強さから使い道は多そうだ。
シートは、以前に紹介したとおり(関連記事「豪華な機内食にエコバッグのプレゼント。2階席でゆったり過ごせるANA A380型機のプレミアムエコノミー」)。レッグレスト、フットレストが付き、アームレストも各席それぞれ左右に設けるなど、短距離路線で使われる小型機のビジネスクラス並みの装備を備える。
ただ、実際に搭乗してみると、シート幅、そして頭部を含めてディバイダが一切ない点など、さすがにそうしたビジネスクラスと比べても隣席の人との距離感は近い印象が残った。
シート単体としては、前後左右のゆとりあるスペースや大型のシートモニター、フレキシブルアームの読書灯といったスペックから分かる部分だけでなく、背もたれの形状やクッション性なども心地よく、非常に快適に過ごすことができ、エコノミークラスとは一線を画す。エコノミークラスからのプラスアルファはかなり大きい。
先述のとおり、搭乗開始は20分ほど遅れたが、プッシュバックは11時39分にスタートし、スムーズな搭乗で遅れをかなり取り戻した。その後、08滑走路へと向かい、12時3分にテイクオフ。通路側席だったので機内エンタテイメントサービスの機外カメラを中心に離陸のときを過ごしたが、08R滑走路は右手に海が広がっており、窓越しに見えるエメラルドグリーンの海が美しい。
機内では、FLYING HONU搭乗を楽しめる齋藤機長のアナウンスも。「大きな翼はテニスコートよりも大きく、なかには10個の燃料タンクにたくさんの燃料が入っています」などのエアバス A380型機の特徴を紹介しつつ、「さて、ANAではこのエアバス A380型機、FLYING HONUの定員を520名として運航しておりますが、設計上の最大の人数は何名だと思いますでしょうか。1番が753人、2番が853人、3番が953人」とクイズを出題。同じ問題を英語で紹介する間が乗客の思考時間として用意され、「正解は2番の853名です。世界最大の旅客機と言われるゆえんでもあります」と発表。
さらに、「ハワイを感じていただけるように、機内の壁は海や雲が浮かぶ空を演出、照明も自然のように変化するグラデーションとなっております。このFLYING HONUで、もう少しハワイを感じながら、どうぞゆっくりお過ごしくださいますようご案内申し上げます」と機内の乗客に伝えた。
離陸後はすぐにドリンクサービスが始まる。さらりと書いたが、このサービスは日本発の往路にはないもの。夜出発する往路では、最初の機内食とドリンクのサービスを1度に行なうことでサービスをコンパクトにしており、機内食提供の前にアペリティフサービスを行なうのはホノルル発の復路のみとなる。
その間に搭乗証明書も配布された。5月26日に搭乗したNH813便はホノルル発の2便目となるが、期間限定で日付などが記入された搭乗証明書が配布され、のちは日付などが空欄になった搭乗証明書が用意されるという。飛行高度などは機長アナウンスス、機内エンタテイメントシステムのフライトデータで確認できる。
メニューカードも要チェック。メインだけでなく前菜もリッチな機内食
そして機内食。既報のとおり、ANAとして初めてプレミアムエコノミー専用メニューを導入しているのも、ANAのハワイ新サービスの特徴。メニューカードもハワイアンデザインで、裏面の日付は「190524-190831」となっている。実は、この日付もポイント。
ほかのクラスで他路線との共通メニューを提供している場合は、6月1日から3か月ごとの機内食のタームが切り替わるタイミングとなるので、5月24日~5月31日と6月1日以降でメニューが変わる。一方、この路線限定でクラス専用機内食を出すプレミアムエコノミーや、フォーシーズンズ・ホテルズ&リゾーツ(Four Seasons Resort Oahu at Ko Olina)内にあるイタリアンレストラン「Noe」とのコラボレーションメニューを提供する復路のファーストクラス、billsとのコラボレーションメニューを提供する往路のエコノミークラスは、次のタームも継続し、その次のターム(9月1日以降)でメニューを切り替えることになっている。細かいところだが、メニューカードの日付も就航間もない時期限定で特別感を楽しめるポイントなのだ。
そんな8月31日までの提供メニューは洋食が「ハンバーグステーキとハワイアンソーセージ マッシュルームソース」、和食が「鰆西京焼き」となっている。和食の方がヘルシーそうなメニュー名だが、実は洋食の方がカロリーが低い。そんなわけで、記者は洋食をチョイスしてみた。
トレーはエコノミークラスと変わらないが、メインと前菜は陶器の食器に盛り付けられ、見た目からしてひと味違う。メインはもちろんだが、前菜もエコノミークラスらしくなく、特に「マグロとアボカドのポキ」などはビジネスクラスでの提供メニューのような雰囲気を醸し出している。
メインの洋食「ハンバーグステーキとハワイアンソーセージ マッシュルームソース」は、少々味が濃いめ。海外発の機内食というと昨今はかなり雰囲気が変わってきたものの、まだまだ大味な料理が多い印象があるなか、味は濃いもののお肉の風味も感じられるハンバーグで、ソースの量で味の濃さを調整しながら美味しくいただいた。記者は積極的にはお酒を嗜まないのだが、それでもビールのお供にもとても合うように感じられる料理だった。
この機内食の提供が終わったタイミングで、プレミアムエコノミーを担当したCAの三田村さんに、エアバス A380型機の乗務について話を聞いた。三田村さんは5月24日の成田発初便に乗務し、この復路が2回目の乗務。旅客対応のトレーニングなどには参加しておらず、「初便はぶっつけ本番だったのですごく緊張して、何日も前から事前準備をした」という。
ただ、1度乗務をした経験は大きいそうで、「(機内の品々の)搭載を把握できると動きが違ってくる。カートをこう動かせばよい、ここにスペースを作ればなど、初便で反省した部分を話し合った」と改善につなげている。それでも復路は往路とは異なりドリンクサービスが別にあるが、「サービスは少し重くなるが、慣れてきているのでコンパクトにまとまってきたと思う」と、その影響は小さい様子。陶器を使ったサービスについても「担当CAはビジネスクラスなども担当しているので慣れている。トレーが少し重くなることに注意するぐらいで、それほど戸惑いはない」という。
このほか、エアバス A380型機に乗務するCAのコミュニケーション用に活用を始めたヒアラブルデバイス「BONX Grip」の使い勝手については、「プレミアムエコノミーはCAが3名で、キャビンも短いので、着けてはいるものの使う機会はなく、普段の感じで対応できた」と話す。逆に活躍しそうな場面としては、実際に三田村さんが乗務しているわけではないという前提のうえで、「ビジネスクラスはリクエストも多く、(A380の)キャビンは前後に長くて最後方にギャレーがないので、一度出たら戻るのに時間がかかる。そのときにヒアラブル端末を使えたらギャレーの人とコミュニケーションを取りやすそう」との感想を持ったそうだ。
さて、復路は昼食としてボックスランチが2回目の機内食として提供される。それがちょうど着陸2時間前からのサービススタート。
サンドイッチに、マカダミアナッツのチョコレート、フルーツとシンプルだが、1食目から4時間足らずでの提供なので、ボリューム感としてはちょうどよいように思う。ついでに言うと、クロワッサン風のパンを使ったサンドイッチが美味しくて、個人的には味もストライクな食事だった。
2度目の食事が終わると、あとは着陸を待つばかり。この日は南寄りの風で、A(16R)滑走路に着陸。定刻の14時55分よりも早い、14時42分に第1ターミナルの45番スポットに到着し、出発時の遅れを完全に取り戻して、この日の運航を終えた。