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ANAとパナソニック、成田空港で「パーソナルモビリティ」(自動追従車椅子)の実証実験
スタッフ1名で同時に3台の移動を可能に
2019年5月20日 13:28
- 2019年5月16日 実施
ANA(全日本空輸)は5月16日、成田国際空港においてパーソナルモビリティ(自動追従電動車椅子)の実証実験を行なった。
シニア世代の旅行における空港内での移動をサポートするため、ANAとパナソニックが共同で取り組んでいるもので、パーソナルモビリティ3台を使い実証実験が行なわれた。
ANAグループは中期計画において、ユニバーサルなサービスを強化し、世界的なエアラインとしてトップレベルのサービスを目指すことを掲げている。実験を始めるにあたり、ANA 執行役員 企画室長/東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局長の平澤寿一氏は、「ANAでは2018年にイノベーション戦略を策定し、新しいサービスの開発に取り組んでいます。ご利用されるお客さまの声、現場のスタッフの声を取り入れ、今までにない価値を創造していきます。そのなかで今回は、空港を利用するお客さまに向けて車椅子を使った新しいサービスを導入できないか検証することにしました」と概略を説明した。
実証実験の詳細については、ANA 企画室イノベーション・KAIZEN部担当部長の鈴木謙次氏が説明した。パーソナルモビリティを使ったサービスが検討されることになった背景としては、成田空港で乗り継ぎをする利用客から車椅子を希望する声が年々増加しており、その理由を利用客にインタビューして分析したことを紹介。その際、高齢の利用客からは、身体、手荷物、乗り継ぎ動線、言語などが理由として挙げられ、確実に乗り継げるか不安という声が集まった。実際に車椅子の利用の希望が多く見られたケースとしては、ベトナムから北米への乗り継ぎの際に1便あたり、30人ほどがリクエストしたとのことだ。
現状では、車椅子の利用を希望すると、地上スタッフがそれぞれの希望者を押して案内することが多い。ニーズが増えると対応に時間がかかってしまうことも考えられる。今回のパーソナルモビリティは3台1組で移動する構成になっており、先頭の1台をスタッフが操作し、残りの2台はそれを追従する形で一緒に移動する。
実証実験に用いられるパーソナルモビリティは、パナソニックと電動車椅子を手掛けるWHILLが共同開発したものだ。高い走破性能を持つWHILLの電動車椅子に、パナソニックがこれまで培ってきた自動認識技術を搭載している。特徴としては、自動で追従走行することと、障害物や人を認識すると自動で停止するようになっている。パーソナルモビリティの左右足元には追従と障害物検出用のセンサーが搭載されており、パーソナルモビリティの後方に設置されている反射板を認識して自動的に追従、もしくは障害物を探知して自動停止する。これにより、前方車両の軌跡を確実にトレースし、人混みの中でも追従走行が可能になっていることが紹介された。
報道陣に公開されたのは、国際線出発ゲート前の移動シーン。実際には、国際線到着ゲートから乗り継ぎ検査場に向かい、乗り継ぎ検査場でチェックを受けたのち、国際線出発ゲートに向かうまでをテストしている。実証実験では、利用客にとっての安全性と快適性、サービスを提供するANA側からのサービス品質、操作性、運用性の5つの観点から検証して評価を行なう。また、今回の実証実験は2回目であり、1月に行なわれた1回目の実証実験で課題になった部分も改善されているかどうかチェックされた。
今後も引き続き実証実験を行なう予定であり、正式導入をするかどうか、年度内を目途に判断したいと話していた。今のところは社員が利用客役をしており、今後は一般の方に乗ってもらって評価してもらうことも考えているそうだ。また、もし導入が決まったとしても、利用客それぞれのニーズに応えるべく、成田空港内に保有している車椅子をすべてパーソナルモビリティに置き換えることはない旨も話していた。