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ソラシドエア、長崎県波佐見町のPR機「陶器のまちHASAMI号」就航。波佐見高生が機体デザイン考案
2018年11月9日 17:40
- 2018年11月9日 就航
ソラシドエアと長崎県東彼杵郡波佐見町は11月9日、ソラシドエアによる地域振興を目的とした機体活用プロジェクト「空恋~空で街と恋をする~」の第24弾となる「陶器のまちHASAMI号」(登録記号:JA809X)を就航。長崎空港で記念セレモニーを行なった。
空恋プロジェクトは、ソラシドエアの1日11路線、74便の運航便を利用し、九州や沖縄の自治体を全国にPRする目的で実施しており、長崎県では過去に南島原市、大村市で実施。2017年にコラボした南島原市とは、11月8日に包括的連携協定を締結している。
この空恋プロジェクトの地域PRでは、機体外観に自治体をPRするラッピングを施すほか、シートポケットに自治体の観光ガイドを用意したり、CA(客室乗務員)がコラボエプロンを着用したりと、飛行機を活用して地域プロモーションを行なう。
今回コラボレーションする波佐見町は、長崎県のほぼ中央に位置し、長崎県内で唯一の海に面していない町。17世紀初めから約400年の歴史を持つ陶磁器「波佐見焼」で知られており、全国の一般家庭で使われる日用器の約13%が波佐見町で作られているというように生活のなかで使われる焼き物であることが特徴で、それぞれの時代のトレンドや生活者のニーズをいち早く取り入れ、近年も若い女性から人気を集めている。
波佐見町ではそんな陶器の窯元巡りや体験観光などを推進し、2017年1月~12月には、目標としていた観光入込客数100万人を超え、111万人を達成。近隣の有田焼に比べると、若い年齢層の観光客が多く、観光振興についても30~40代女性を主要ターゲットにしているという。
体験観光は単なる窯焼き体験などに留まらず、田植えのため、収穫のため、そのお米で作られたお酒を飲むお猪口を制作するため、と波佐見町を3回訪れて完結する「ザ・酒塾」など、複数回の訪問で農業体験と窯焼き体験の両方を楽しめるユニークな体験ツアーを提供している。そのほかにも「はさみ温泉」や豊かな自然、伝統芸能などの観光資源もあり、1年を通じて体験観光やイベントを楽しめる。
そんな波佐見町とソラシドエアとのコラボ機「陶器のまちHASAMI号」は、空恋プロジェクトの通例どおり、機体に波佐見町をPRするデカールを貼付。今回のデザインは、長崎県で唯一、美術・工芸科を持つ地元の波佐見高校の生徒が考案。生徒1人1人が機体名のほか、飛行機の乗り降りに使うL1ドア脇、機体後方上部、同下部、CA(客室乗務員)が着用するエプロンのデザインを制作した。
そうして作られた29点の作品のなかから、3年生の中尾百花さんが考案したデザインを採用。決定を聞いたときは「ほんとうにビックリしました」という中尾さんが考案したデザインは、「波佐見町がもっといろいろな人に知られてほしいと思いながら作りました。白色は陶磁器をイメージし、青色は絵付けで使われている呉須の色の2色で波佐見らしさをイメージしてみました」というもの。
機体後方上部には機体名となった「陶器のまちHASAMI号」を青地に白抜き文字でデザイン。下部には青色で表現した波佐見焼の陶磁器とともに、波佐見町公式マスコットキャラクターの「はちゃまる」をレイアウト。はちゃまるはL1ドア脇のデカールにも描かれている。
はちゃまるは、波佐見町がねこの形に似ていることから、波佐見焼のお茶碗に入った猫を基本デザインにしたキャラクターで、頭にはさみ温泉、尻尾に生産量が多いアスパラガスを取り入れ、波佐見町の魅力を凝縮している。中尾さんが考案したデザインでは、はちゃまるも青と白のみだったが、最終的にはオリジナルカラーのはちゃまるを組み合わた。
「陶器のまちHASAMI号」の機内では、シートポケットに波佐見町の観光情報誌が置かれるほか、CAが機内サービス時に着用するエプロンもはちゃまるデザイン。さらにエプロンにはソラシドエアのコーポレートカラーを配した波佐見焼のボタンも付けられるなど、機内外に波佐見町の魅力を詰め込んで全国を飛びまわる。
ソラシド髙橋社長「ほかの地域にない空恋号。機体のデザインも含めて魅力をアピールしたい」
11月9日には長崎空港の出発ロビーで、「陶器のまちHASAMI号」の就航セレモニーを実施した。
主催者として冒頭にあいさつにたった波佐見町長の一瀬政太氏は、波佐見焼の人気上昇とともに観光客が増加し、2017年に100万人を突破したことに触れ、「新たな観光地としてスタートを切ったところ。このようななか、空恋プロジェクトの提案をいただいたときは、まさにこれからの観光地として売り出していく本町にとって、飛行機が離陸するように上昇していくタイミングでもあり、波佐見町や波佐見焼の素晴らしさを全国に広げる絶好の機会と捉えた」と取り組みの好機であることを説明。「今後1年間、多くのお客さまを波佐見町の情報であふれる『陶器のまちHASAMI号』で、より多くの皆さまに波佐見町を知っていただき、足を運んでいただくことを期待している」と語った。
また、「波佐見町はアートやデザインなど完成あふれる町でもある」とし、セレモニーに駆けつけた、今回のデザインを応募した波佐見高校の生徒の皆さんを見て、「若いエネルギーに勇気と可能性を感じている」と述べた。
ソラシドエア 代表取締役社長の髙橋宏輔氏は、まず空恋プロジェクトの目的などを説明。波佐見町について、「全国的には波佐見焼の町、陶器の町として知られている。『肥前波佐見陶磁器窯跡』などの文化財や、『やきもの公園』など、陶器のメッカとして知られている。アートやデザインも関連していると思うが、観光に来て面白いものがたくさんある。新しいホテルや、新しいお店もあり、陶器の観光の町としてこれから伸びていくのではないか」と期待を述べた。
コラボ機については、中尾百花さんのデザインであることを紹介したうえで、セレモニー会場にすべての作品が展示されていることにも触れ、「29点全部ハイレベルな作品ばかり。こういう土壌があって、こういうデザインが生まれて、機体に素晴らしいデザインが施されるのは素晴らしい取り組みで、ほかの地域にない空恋号になった」と評し、「波佐見町の魅力と、『陶器のまちHASAMI号』自体のデザインを含めた魅力を使って波佐見町を全国にアピールしていきたい」との意気込みを示した。
セレモニー後にソラシドエアの長崎路線について尋ねると、「好調」の一言。繁忙期には臨時便を運航するほど盛況な路線の一つになっている。7月には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されているが、もともと搭乗率のよい路線であるうえに、繁忙期(夏休み)前のタイミングで登録されたため、その直接的な効果を量ることが難しい状況だったという。
ちなみに前夜は波佐見町に宿泊したとのことで、波佐見町は長崎空港からの二次交通に課題があることを指摘すると、「今日も波佐見町から空港までクルマで40分。OKだと思う」とコメント。九州のほかの空港と観光地とのアクセスに比べても著しく難があるわけではないそうだ。
セレモニーではその後、一瀬町長からデザインを制作した中尾さんへ東京~長崎間のソラシドエアペア航空券の目録贈呈のほか、関係者が集まってのテープカットも行なわれた。
セレモニー終了後は、一瀬町長と髙橋社長、中尾さんが搭乗ゲートへと向かい、搭乗客へ記念品をプレゼント。搭乗証明書や波佐見町の観光情報誌のほか、波佐見町の観光名所の一つである鬼木棚田で栽培されたお米を含めて作られる「鬼木みそ」の味噌汁「鬼木の台所」、ソラシドエアの機体をモチーフにした波佐見焼の箸置きを提供した。
出発するころになると、一瀬町長や髙橋社長らは地上へ。中尾さんも地上に向かったが、機体デザインの制作に参加した波佐見高校 美術・工芸科の生徒らも展望デッキに集合し、171名(幼児7名含む)を乗せて東京・羽田へ向かう飛行機を、地上と展望デッキそれぞれから見送った。