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ソラシドエア、地域PR飛行機の第22弾「うんまか!つけあげ いちき串木野号」就航。鹿児島空港でセレモニー
鹿児島~セントレア線について「名古屋、攻めます!」と髙橋社長
2018年9月1日 23:27
- 2018年9月1日 就航
ソラシドエアと鹿児島県いちき串木野市は9月1日、ソラシドエアによる地域振興・機体活用プロジェクト「空恋~空で街と恋をする~」の第22弾となるいちき串木野市のPR機「うんまか!つけあげ いちき串木野号」(登録記号:JA805X)の運航を開始。就航を記念して、鹿児島空港でセレモニーを行なった。
空恋プロジェクトは、ソラシドエアの1日10路線、68便の運航便を利用して、九州・沖縄をアピールする目的で実施しているもの。機体に自治体をPRするラッピングを施すだけでなく、機内でもシートポケットにコラボレーションする自治体の観光ガイドを用意したり、CA(客室乗務員)がコラボエプロンを着用したりしてPRする。
鹿児島県の自治体を取り上げるのは4回目で、過去には下記のような機体を運航している。
・鹿児島県錦江町「元気ファクトリー」(2013年7月1日就航)
・鹿児島県さつま町「ひっ翔べ!さつま号」(2016年3月19日就航)
・鹿児島県曽於市「ギリギリ鹿児島 そお市号」(2017年9月1日就航)
今回コラボレーションする鹿児島県いちき串木野市は、鹿児島空港からクルマで約1時間、薩摩半島の西側に位置する自治体。日本一の隻数となる34隻の遠洋まぐろ漁船によって水揚げされるマグロのほか、旧市来町のエリアではちりめんなど、食の魅力が多い街だという。
また、中国の秦の時代に不老不死の霊薬を求めて東方へ旅立った徐福の伝説が残る冠岳、幕末に五代友厚ら薩摩藩の留学生、いわゆる薩摩スチューデントがイギリスへ旅立った際の出発の地に建つ「薩摩藩英国留学生記念館」などが主要な観光スポット。2017年度の観光入れ込み客数は約99万2000人で、前年の100万人超えからはやや下まわったというが、コンスタントに100万人前後の観光客が訪問している。
ラッピング機の名前になっている「つけあげ」とは「さつまあげ」を表わす鹿児島の方言。鹿児島を代表するグルメである「さつまあげ」は、いちき串木野市が発祥の地と言われていることから、この名前を冠した。これも同市の売りだ。
機体には、機体後方下部に「薩摩藩英国留学生記念館」のイメージ画をラッピング。いちき串木野市の観光課によると、このデカールのデザインはベースとなったイラストはあったものの、今回の機体のために新たにデザインしたものだという。
さらに、同市が2017年に明治維新150周年をPRするためのロゴマークを市内の高校生から募集。12名の候補生がデザインしたロゴマークのなかから選ばれた、神村学園 高等部の1年生(選定当時、現在は2年生)の榎田尚人さんが制作したロゴマークも機体にラッピング。機体後部上方のほか、利用者が乗降するL1ドアの脇にあしらわれている。
ロゴマークに描かれた若者は薩摩藩英国留学生のなかの最年少者である長沢鼎(かなえ)と自分自身とを重ねた姿をイメージしたもので、輝いてほしいの願いから金色に。波のデザインは薩摩スチューデントが旅立った羽鳥の海とこれから待ち受ける困難を、赤丸は乗り越えた先にある明るい未来や希望を表現した。
就航セレモニーにはデザイン制作者の榎田尚人さんも参列し、自身が描いたロゴマークが機体に描かれることについては、「すごすぎて実感がわかない。緊張しないぐらい(実感がない)」と話した。
9月1日の羽田行き12時20分発のSNA76便の出発前に行なわれた就航セレモニーでは、最初に、いちき串木野市長の田畑誠一氏があいさつ。セレモニー直前に急激に雨脚が強くなった状況のなか、「鹿児島では、ご慶事の前に降る雨は島津雨と称し、出陣の前に雨に見舞われると必ず勝利したという歴史がある。その島津雨に恵まれた」と話を切り出した。
そして、今回就航する「うんまか!つけあげ いちき串木野号」について説明。まずネーミングについて、「いちき串木野市はさつまあげ発祥の地と言われているが、地酒や豆腐を使用していることから、他市のものより甘い味付けでふわふわとした食感が特徴。一度食べると病みつきになる。多くの方々に食べていただきたいという想いから、このネーミングにした」と紹介。この日のSNA76便搭乗客には、記念品としてプレゼントすることになっていたことから、「本市の“うんまか、つけあげ”を用意したのでご賞味いただきたい」と呼びかけた。
続いて、デカールのデザインについて説明。「機体後方下部のイラストは、本市の観光拠点である薩摩藩英国留学生記念館。4年前に建設したが、16万人を超えるお客さまにご来館いただいている。目の前に広がる東シナ海は圧巻で、彼らの生きざまに想いを馳せられる記念館では、現在、150周年を記念した特別企画展を開催中」とPR。
先述の明治維新150周年ロゴマークについては、「未来を担う若者の可能性を引き出そうと、本市の高校生から募集し、選定されたもの。薩摩スチューデントの長沢鼎と自分を重ね、これから降りかかる試練を乗り越え、その先にある明るい未来を手に入れたい、たぐり寄せたいという想いを表現したと聞いている」と紹介した。
最後に、「明治維新150周年、大河ドラマ『西郷どん』で鹿児島が上昇気流にあるなかで、本日から1年間『うんまか!つけあげ いちき串木野号』が運航されることは、いちき串木野市を広く発信し、交流人口の拡大や、地域振興に大きく貢献するものと思っている。飛行機の機体に大きな期待をしている」と述べた。
引き続いてソラシドエア 代表取締役社長の髙橋宏輔氏があいさつ。「空恋~空で街と恋をする~」のプロジェクトの概要を説明したあと、「私は高校まで鹿児島にいたが、7月に久しぶりにいちき串木野市を訪問した。吹上浜の北の方に串木野金山があって、つけあげが美味しいという昔からのイメージがあった。今回、薩摩藩英国留学生記念館をご案内いただき、素晴らしい記念館ができているし、歴史の非常に大きなポイントになった場所だと改めて痛感し、また違った魅力を発見した」と、同市を訪問した折の感想を述べた。
今回の機体については、「ネーミングが『うんまか!つけあげ』で、『つけあげ』をアピールする一方で、機体には『薩摩藩英国留学生記念館』の絵が貼られ、そしてなんといっても地元の未来ある榎田君の作品が貼られており、非常にいろんな魅力が表現された素晴らしい機体になった」との印象を述べた。
さらに、「シートポケットのパンフレットやCAのエプロンだけではなく、もっと地域をアピールできるような、旅行や機内販売品などもいちき串木野市の方と企画できればと思うし、ご搭乗のお客さまにもそのようなことを楽しんでいただければ」とさらなる取り組みにも意欲を示した
その後、テープカットや記念撮影などが行なわれてセレモニーは閉幕。セレモニー参列者は、その後スタートしたSNA76便に搭乗する乗客に記念品を配布。「ICHIKI KUSHIKINO CITY」と書かれたトートバッグに、機体名にもなっている「つけあげ」や、観光関連パンフレット、ソラシドエアからの搭乗証明書などをプレゼントした。
先述のとおりセレモニー前には豪雨に見舞われた鹿児島空港だったが、SNA76便の出発を迎えるころには小雨になっており、定刻よりやや遅れた12時36分にプッシュバックを開始。178名(幼児12名含む)を乗せた「うんまか!つけあげ いちき串木野号」は、田畑市長や髙橋社長、榎田さん、いちきの串木野PRレディー、ソラシドエアのCAが見送るなか12時45分に離陸し、羽田空港へ向かった。
【お詫びと訂正】初出時、「つけあげ」の表記が誤っている箇所がありましたので修正いたしました。お詫びして訂正いたします。
鹿児島~セントレア線に10月28日就航。「名古屋、攻めます!」
ちなみに、今回のセレモニーの場となった鹿児島空港について、ソラシドエアでは10月28日の冬期スケジュールから鹿児島空港~セントレア(中部国際空港)を結ぶ路線を1日2便で運航することを発表している。髙橋氏はあいさつのなかで、このことも紹介し、「鹿児島からの行き先が広がるので、名古屋便もぜひご利用を」をアピール。
ソラシドエアでは、10月28日に鹿児島~セントレア線を1日2便、那覇(沖縄)~セントレア線を1日1便から2便へ増便することになっており、下記のとおりダイヤも発表している。
ソラシドエアの鹿児島~セントレア線(2018年10月28日~)
SNA19便: セントレア(07時30分)発~鹿児島(09時05分)着
SNA20便: 鹿児島(09時35分)発~セントレア(10時50分)着
SNA27便: セントレア(18時20分)発~鹿児島(19時55分)着
SNA28便: 鹿児島(20時45分)発~セントレア(22時00分)着
ソラシドエアの那覇~セントレア線(2018年10月28日~)
SNA65便: セントレア(11時25分)発~那覇(13時50分)着
SNA66便: 那覇(12時10分)発~セントレア(14時15分)着
SNA69便: セントレア(14時55分)発~那覇(17時15分)着
SNA70便: 那覇(15時35分)発~セントレア(17時40分)着
この新路線について髙橋氏は、「『今回の新路線戦略は名古屋に行きましたね』と見えると思うが、そのとおり。あちこちに飛んでみたいところがあるが、空港が空いていない(発着枠がない)という問題がある。名古屋(セントレア)はよい時間に枠を取れる。また、名古屋にはすでに沖縄線1日1本(1往復)という非効率な路線があり、どうしようかと考えていた」と、セントレア線強化の理由を話す。
そのセントレア新路線の就航先が鹿児島になったことについては、「ソラシドエアの本社は宮崎にあるが、鹿児島は重要拠点。宮崎県の南西部や熊本県の南部の方も使っているので旅客数も規模も大きい」と理由を挙げた。これまで、“東京・羽田と九州・沖縄を結ぶ翼”の方向性に沿った路線が中心だった同社だが、地元からは名古屋地域や関西地域が手薄という声もあったとのことで、「総合的に勘案して決めた。名古屋、攻めます!」と力を込めた。