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「帝国ホテル 京都」に名称決定、2026年春開業。祇園の文化財“弥栄会館”を保存・活用した全55室、約90年前の風景復活へ

2025年1月29日 発表

2026年春開業予定の京都新規ホテル、正式名称は「帝国ホテル 京都」に決定

 帝国ホテルは、2026年春開業に向けて推進中の京都新規ホテルについて、正式名称を「帝国ホテル 京都」に決定した。1936年(昭和11年)に竣工し、京都・祇園の美しい景観を形成する建物のひとつとして親しまれてきた国登録有形文化財「弥栄会館(やさかかいかん)」を一部保存・活用するプロジェクトで、所在地は京都府京都市東山区祇園町南側(京都・祇園甲部歌舞練場敷地内)。

 帝国ホテルブランドとしては、東京、上高地、大阪に次いで4軒目となり、1996年の「帝国ホテル 大阪」のオープン以来、30年ぶりの新規開業となる。

 同社は1月29日「帝国ホテル 東京」で発表会を開き、プロジェクト推進部 京都開業準備室長 坂田玲子氏らがコンセプトや概要を説明。また、ホテル建設を担い、当時の弥栄会館竣工にも携わった大林組から設計者・井上雅祐氏が出席し、難しい工事の技術的詳細や弥栄会館の貴重な外観・意匠を未来へ継承していく想いなどを語った。

 建物の老化や耐震性の問題により本来の用途である劇場を含む大部分が使用されなくなった弥栄会館だが、外壁や構造体の保存、外壁タイル・テラコッタの保存と再利用、銅板屋根や飾り金物の復元などによって、約90年前の風景を蘇らせるとともに、現代のニーズに合ったホテルへと再生する。

 コンセプトは、「次は、寛ぎの舞台へ」。“京都のレガシー”と“伝統ある日本のホテルの最高のおもてなし”を掛け合わせた、唯一無二の時間を過ごせる場所という意味を込めて定められた。

 敷地面積3623.17m2、地下2階・地上7階建に、全55室の客室、レストラン、バー、ウェルネス施設(スパ、プール、フィットネスジム)などを設ける予定。総事業費(概算)は約124億円程度を見込んでいる。

 なお、客室タイプやランク、料金、および総支配人や料理長などの人事、具体的な開業日、予約開始スケジュールについては現在最終調整中で、後日改めての発表となる。

帝国ホテル 京都

敷地面積: 3623.17m2
延床面積: 1万804.24m2
階数: 地上7階、地下2階
高さ: 31.50m
構造: 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造
施設・設備: 客室(55室)、レストラン、バー、ウェルネス施設(スパ、プール、フィットネスジム)ほか
着工時期: 2022年4月
竣工時期: 2025年10月
開業: 2026年春
※2025年1月29日時点

 ロゴマークには、コーポレートカラーである「インペリアルブルー」を使ったライオンマークを採用。同ホテルが建つのは高さ制限がある地域であり、景観継承の観点からも南西面の壁を残す必要があり、耐震補強を施しながら保存することに至った。「保存・補強・新築という異なる工程を同時進行で行なう、極めて難易度の高い工事」を進めている。また、緑色が特徴的な銅板瓦葺き屋根は、損傷が大きく保存できないため復元を行なう。新品の状態では綺麗な金色、次第に茶色から黒っぽくなり、最終的に本来の緑色の姿になっていくという。

 保存する外壁でさらに重要なのがタイルで、こちらも当時のままが活かされる。剥落防止措置を行ない一部はそのまま残すほか、既存の材料に損傷を与えないよう職人が1枚1枚丁寧に剥がして再利用する“生け捕り”という作業を行なっており、全体の10.6%にあたる1万6387枚の生け捕りに成功。新たなホテルの外壁の一部として受け継がれる。

 もうひとつの特徴は、壁面の装飾部分である「テラコッタレリーフ」を保存したこと。状態のよいものはそのまま固定して使用するが、破損しているものは修復して再利用する作業を行なっている。自然や和を感じさせる唐草文様の一種「宝相華」の美しい意匠にも注目という。

ロゴはインペリアルブルーのライオンマーク
花街文化で愛された劇場が「次は、寛ぎの舞台へ」
建築真っ只中の「帝国ホテル 京都」。弥栄会館という劇場建築を、ホテルとして生まれ変わらせる
緑色が特徴的な銅板瓦葺き屋根は、損傷が大きく保存できないため復元を行なう。軒丸の「歌」の刻印も復元
壁面の装飾部分である「テラコッタレリーフ」も保存。文様は、自然や和を感じさせる唐草文様の一種「宝相華」
弥栄会館の設計者である大林組の木村得三郎
1936年(昭和11年)竣工当時の弥栄会館
南西面の壁を耐震補強しながら保存する
保存する外壁には元々のタイルを活用
職人がタイルを1枚1枚丁寧に剥がして再利用する「生け捕り」作業。全体の10.6%にあたる1万6387枚を残した
剥落防止措置を行ないそのまま残したタイルと“生け捕り”したタイルを活用
木村得三郎が建築した「弥栄会館」設計図。“原点に立ち返りたい”と井上氏

 大林組 設計本部 担任副本部長 営業総本部 伝統建築・ヘリテージプロジェクトチーム リーダー 井上雅祐氏は、「新規ホテル計画が開始した2018年春ごろ、話を聞いて“ついに来たか”と思った。この仕事に出会うために、大林組に入ったと個人的な運命を感じた」と振り返り、「祇園のど真ん中で、絶対に失敗できないという緊張感がある。我々の大先輩である設計者・木村得三郎が建築した弥栄会館を引き継ぐこともあり、より強い想い」。劇場時代から未来へ「皆さんの物語が重層し、つながっていくホテル」であるとの魅力を語った。

株式会社大林組 設計統括 設計本部 担任副本部長 営業総本部 伝統建築・ヘリテージプロジェクトチーム リーダー 井上雅祐氏
株式会社帝国ホテル 帝国ホテル 東京 プロジェクト推進部 京都開業準備室長 坂田玲子氏。「地域の皆さまに愛されてきた弥栄会館を一部保存・活用し、ホテルとして新たな息吹を与え、過去から現在、未来へと紡いでいくという想いを込めた事業」
株式会社帝国ホテル 帝国ホテル 東京 総支配人室 次長兼広報課長 山田純平氏