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ソラシドエア、“本物の空気と水がある”熊本県水上村のPR機「水上スカイヴィレッジ号」就航

機体活用プロジェクト“空恋”第21弾

2018年8月1日 就航

ソラシドエアが熊本県水上村のPRラッピング機「水上スカイヴィレッジ号」の運航を開始

 ソラシドエアと熊本県球磨(くま)郡水上村は8月1日、ソラシドエアによる地域振興・機体活用プロジェクト「空恋~空で街と恋をする~」の第21弾として、水上村をPRするラッピング機「水上スカイヴィレッジ号」の運航を開始した。

 空恋プロジェクトは、2017年9月29日に就航した長崎県南島原市のPR機まで20機のラッピング機を運航してきたが、熊本県の自治体を取り上げるのは、2013年3月に就航した熊本県のPR機「くまモンGO!」、2015年4月に就航した熊本県天草地域のPR機「VISITあまくさ号」に続いて3回目。熊本県内では県や地域を広域的にPRしてきており、熊本県の市町村単位でのコラボレーションは今回が初めてとなる。もっとも、平成28年熊本地震からの九州復興支援機として「がんばるけん!くまモンGO」を2016年7月に就航し、現在も運航を続けているなど、熊本県関連の取り組みは幅広く展開している。

 今回就航する「水上スカイヴィレッジ号」で取り上げる水上村は、きれいな水と澄んだ空気が自慢の人口2000名強の自治体。司馬遼太郎がエッセイ「街道をゆく」のなかで「日本でもっとも豊かな隠れ里」と称した人吉球磨地域の最深部、球磨川最上流部の霊峰「市房山」に抱かれる。

 水上村は市房ダム湖畔に咲き誇る「一万本桜」が県内有数の桜の名所として知られるほか、ダム湖でのアクティビティや、自然に恵まれた市房山神宮の参道、市房山の麓にある湯山温泉郷など多くの観光スポットがある。また、医学的にリラックス効果が証明され、関連施設などの社会条件、自然条件が一定水準を満たしている地域を対象に森林セラピーソサエティが認定する「森林セラピー基地」にも熊本県で唯一認定されている。

 今回のPR機の名称となっている「水上スカイヴィレッジ(SKY VILLAGE)」は、ハーフマラソン大会「公認奥球磨ロードレース大会」の舞台となっている水上村の標高1000m付近に整備された、全長2kmのクロスカントリーコースと300mの全天候型トラックを備える村営の施設。2017年5月14日にオープンした。真夏でも平均気温は22℃程度で、麓には湯山温泉郷もあることから高地トレーニングの長期合宿なども可能という。

 ちなみに、2017年度の水上村の観光入れ込み客数は17万人ほどで、桜や紅葉の季節を中心に、県内からの観光客が多いとのこと。水上スカイヴィレッジは5月のオープン以来、約7000名が訪れ、うち約2500名が湯山温泉などへ宿泊しているという。

「水上スカイヴィレッジ号」の機体後方
乗降するL1ドア脇のロゴマーク。市房ダムの「一万本桜」をイメージしたロゴマーク
機体後方下部のデカール。「本物の空気がある 熊本県みずかみ村」
機体後方上部に機体名称の由来でもある「水上スカヴィレッジ」のロゴ

 そのPR機である「水上スカイヴィレッジ号」は、登録記号「JA806X」の機体を使用。後方下部に「本物の空気がある 熊本県みずかみ村」、同上部に「MIZUKAMI SKY VILLAGE」、旅客が乗降するL1ドア脇にも一万本桜をイメージして作られたロゴがあしらわれている。いずれもパステル調の色合いで、ソラシドエアのピスタチオグリーンにマッチしている。

 さらに、同機に乗務するCA(客室乗務員)が機内サービス時にオリジナルエプロンを着用するほか、シートポケットには水上村の地域情報紙を設置。機内外で水上村をPR。運航は約1年間を予定している。

機内でCAが着用するエプロンは桜をイメージしたロゴマークを胸元に配するデザイン
機内シートポケットで提供する水上村の情報誌

 8月1日には、この就航を記念して熊本空港でセレモニーが行なわれた。水上村長 中嶽弘継氏は水上村について、「水上村は熊本県の一番東南端に位置し、宮崎県とも県境を接している地域。熊本県で2番目に高い市房山は非常に眺望がきき、日向灘、雲仙、霧島、そして天気がよければ阿蘇も眺望できる。最上川、富士川に並ぶ日本三急流球流の一つである球磨川の水源で、非常に清冽な水というか、冷たくて清らかな水を配しており、本当に自然が豊か」とアピール。

 PR機でフォーカスしている水上スカイヴィレッジについては、「奥球磨ロードレースという、箱根駅伝に出場するような有名大学や実業団を招いてハーフマラソンを行なっている。そのなかで『練習環境がないか?』という監督の声を聞いて、標高1000mの20ヘクタールの土地があったので活用して作ったのが『水上スカイヴィレッジ』。スポーツ交流、スポーツ観光を推進していこうという思いから、機体活用プロジェクトに参加させていただくことになった。地域にいろんな人においでいただき、地元との交流、にぎわいの創出をやっていきたい」と、今回の取り組みと併せて説明した。

 そして最後に、「機内誌を見ていただき、水上村のよさを知っていただき、ぜひ足を運んでいただきたい」と搭乗者に呼びかけた。

水上村長 中嶽弘継氏

 ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏は、今回のプロジェクトの取り組みについて紹介したあとに水上村について触れ、「“本物の空気と水がある”というキャッチフレーズだが、まさしく標高1000mの水上スカイビレッジは素晴らしい環境。水上村がクロスカントリー、高地トレーニングの聖地になるのではないかと期待している。それだけでなく、実際に訪れてみると、湯山温泉や春の桜の名所など魅力が一杯」と感想を述べ、「これから1年間、水上村の方々と私どもでコラボして、水上村の魅力を使った機内サービスや旅行造成などにもアイディアを膨らませていければ」と話した。

 また、8月1日で羽田~熊本線が就航15周年を迎えることに触れ、現在は羽田~熊本線で1日5往復、全体で1日に10路線68便を運航することを紹介。そのうえで、「今年度と来年度に2機増やし、国内ネットワーク増強、あるいは国際線へのチャレンジに使いたい。9月には熊本~台北線では初めてとなる国際チャーターに取り組みたいと思っている。ぜひ県民の皆さまにもお乗りいただきたい」とアピールした。

株式会社ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏

 セレモニーが行なわれたSNA16便(熊本14時40分発~羽田16時20分着)の搭乗客には、水上村からの「みずかみ村の水」や同村で作られたお米「ひとしずく」、ソラシドエアからの搭乗証明書など記念品をプレゼント。

 148名(幼児3名を含む)を乗せた「水上スカイヴィレッジ号」は、ほぼ定刻どおりの14時41分にプッシュバックを開始し、14時51分に離陸。駐機場から手を振る中嶽氏や髙橋氏らに見送られ、東京へと旅立った。

参列者によるテープカット
セレモニーへの参列者。左より順にソラシドエアCA、熊本空港ビルディング株式会社 代表取締役社長 村田信一氏、株式会社ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏、水上村長 中嶽弘継氏、水上村商工会 会長 山崎隆浩氏、国土交通省 大阪航空局 熊本空港事務所 空港長 森島隆広氏
搭乗客への記念品。「みずかみ村の水」や水上村で作られたお米「ひとしずく」。ソラシドエアの搭乗証明書や「ひみつメモ」など
関係者が搭乗客に記念品をプレゼント
水上村長 中嶽弘継氏、水上村商工会 会長 山崎隆浩氏、株式会社ソラシドエア 代表取締役社長 髙橋宏輔氏、同社CAが駐機場から手を振ってお見送り
148名の乗客を乗せた「水上スカイヴィレッジ号」がテイクオフ

 セレモニー後に髙橋氏の囲み取材が行なわれた。まず、ANA(全日本空輸)がボーイング 787型機に搭載しているロールスロイス製エンジンの点検に伴い、8月は羽田~宮崎線、羽田~大分線でそれぞれ月間58便が欠航する予定となっている影響について尋ねると、一般論として「あれだけの(大きさの)機材が欠航になっていて、計画欠航数をファミリー企業だけで埋め切れていないと思う。そのぶん提供座席数は減っているということなので、混雑度は増す」と説明。ソラシドエアでは8月1日~29日に両路線に1日1往復の臨時便を設定してカバーする。

 また、熊本就航15周年を迎え、2019~2020年度に順次民営化することも含めた今後の熊本空港に対しての思いを尋ねると、「我々はとにかく地域とともに成長する、が基本方針なので、熊本の空港が震災を経て、これから民営化で大きく空港の運営が大きく変わるのであれば、我々としてはチャンスでもあると思う。創造的復興と熊本県知事(蒲島郁夫氏)がおっしゃっているが、空港もさらにスケールを増していただきたい」との期待を述べた。

 他方、セレモニーで言及のあった2018年度と2019年度に1機ずつ、計2機を導入することについては、同社の2020年度までの中期経営戦略に沿ったものだが、その際の説明会では国際線仕様機の導入の意向を示していた(関連記事「ソラシドエア、国際線仕様のボーイング 737-800型機導入について言及」参照)。この点について尋ねると、この仕様の導入計画は進んでおり、従来どおりのソラシドエアの機材のコンセプトを踏襲したうえで、機内食提供の可能性を踏まえたオーブンなどのギャレー設備の変更や、USB電源の装備、シートカバー変更など、国際線を意識した機能面での強化が中心になるとのこと。

 同社が運航した、あるいは今後運航する国際線は、これまでもチャーター便で運航している台湾や韓国などのアジア圏と、九州・沖縄を結ぶ、ボーイング 737-800型機で運航できる距離となる。「チャーター便では南九州から北海道(宮崎~旭川線など)に飛んでいるが、それよりも近いかもしれないぐらいの距離なので、基本は従来機のコンセプトに沿ったもので、国際線だからということでガラリと大きく変わるということはない」(髙橋氏)との方向性を示した。

 その国際線チャーターについては、熊本~台北・桃園便の発表時に示されているとおり(関連記事「ソラシドエア、9月21日/24日に熊本~台北・桃園チャーター運航。熊本発は旅行会社3社が販売」参照)、年末年始から2019年2月上旬の春節の季節に合わせ、九州各地から10往復程度の国際線チャーター便の運航を計画。2018年度は6月に長崎~台北、7月に大分~台北、そして9月に熊本~台北とハイペースで実績を重ねている。

 その先には国際線定期便を見据えるが、髙橋氏は「チャーターで実績を重ねて、チャンスがあったときに参入できるような環境を作るのが大切だと思っている。時期を決めて、そこに合わせて飛ばすのではなく、準備が万端に整うまでは飛ばさない。だからこそ、(その準備のために)チャーター便をどんどん運航する」と述べ、国際線定期便よりも、まずはチャーター便運航での実績作りを重視する姿勢を示した。