旅レポ

食事・文化・寄港地を満喫、“動くリゾートホテル”ダイヤモンド・プリンセスの旅(その4)

【360度画像あり】船内を満喫するため、通常見られない場所やサービス・料理をまとめて紹介

 ダイヤモンド・プリンセスの設備やサービスは10日間のクルーズでも使いこなせないほど盛りだくさん。最終日にクルーズ仲間から聞いて「え! それ知らなかった!」ということ設備やサービスがよくあるようだ。この回では、さまざまなタイプの部屋や有料のスペシャリティ・レストランの様子、普段は見られないバックヤードなどについてまとめて紹介する。

 ちなみに、個人的に一番後悔しているのが、ルームサービスの使いこなしが十分でなかったことだ。24時間利用でき、飲み物やフルーツの用意はもちろん、食事の無料メニューも多数ある。朝早く行動するときや、わざわざビュッフェまで行きたくないときは部屋でも十分ゆったり過ごせる。

部屋に朝食やフルーツの用意も依頼できる

バルコニー付きもある! さまざまなタイプの部屋が見たい

 部屋のタイプは、主に5タイプ。スイート、ジュニア・スイート、海側バルコニー、海側、内側だ。面積には部屋ごとに幅がある。内側も狭さはそれほど感じず、過ごすには十分だが、外の天気が知りたいと思うことはよくあった。また、バルコニーがあれば入港・出港のセレモニーを自室で楽しめるのも利点だ。

 個人的に値段と内容のバランスがもっともよく見えたのは海側バルコニー。家族4人など大人数なら、ジュニア・スイート以上で同室「3・4人目無料キャンペーン」を利用するとお得。ジュニア・スイート以上であれば部屋にバスタブがあるので、そこにこだわる人も多いようだ。

内側客室

ダイヤモンド・プリンセス 客室 内側 #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
内側、面積約16~17m2。窓はないが大型の鏡がある

海側客室

ダイヤモンド・プリンセス 客室 海側 #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
海側、面積約17~19m2。窓があり時間や天気がわかりやすい

海側バルコニー客室

ダイヤモンド・プリンセス 客室 海側バルコニー #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
海側バルコニー、面積約22~29m2。バルコニーで入港・出港をゆったり楽しめる

ジュニア・スイート

ダイヤモンド・プリンセス 客室 ジュニア・スイート #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
ジュニア・スイート、面積約33m2。バルコニーがあり、ソファとテーブルのあるリビングがある。バスタブ付き

あこがれの「スイート」でデラックスブレックファストを

 意外に手が届く価格のジュニア・スイートと違い、スイートは部屋の広さも設備もランクが上のあこがれの部屋だ。バスルームも広く、アメニティも充実している。ただ、なかにはジュニア・スイートと値段がほぼ同じ「ファミリー・スイート」というタイプもあり(日本発着のダイヤモンド・プリンセスでは2部屋用意)、意外にも手が届かない値段というわけではない。

 スイートの広いバルコニーで試してみたいのが、終日航海日のみのサービス「デラックスブレックファスト」(2人分で45ドル、約4680円)や「バルコニーディナー」(2人分で100ドル、約1万400円)だ。非日常すぎて現実感がない光景だが、一生忘れない記憶になりそうだ。ちなみにこのサービスはバルコニーがある部屋ならスイート以外でも利用できる。記念日などに最適だ。

「ヴィスタ・スイート」の部屋
広さも設備も申し分なし
バルコニーには船尾のすばらしいパノラマが広がる
スパークリングワイン付きの華麗な朝食
記念日など特別な日のイベントとして最適

タオルアートの実演! 複雑な工程がよく分かる

 海外の高級リゾートホテルでときどき見かける、タオルで作った「タオルアート」。プレス向けに客室係が実演をしてくれた。普段のクルーズでも、このタオルアートをアクティビティの一つとしてアトリウムで実演したり、教室を開いたりすることもあるという。

 一つはシロクマで、もう一つはカメ。どちらもテープで留め、目玉を貼り付けるという凝った作りで、一度見た程度では再現できない複雑な作り。シロクマやカメが部屋に戻ってベッドにあったら子供は大喜びしそうだ。

シロクマのタオルアートの工程。大小2枚で作成
カメのタオルアートの工程。大1枚、小2枚で作成。どちらもかわいい

約3700人の食を支えるギャレー

 ダイヤモンド・プリンセスの乗客約2700人、クルー約1100人の食を支えるのが、バックヤードにあるギャレー(調理室)だ。プレス向けにフェエスタ・デッキ6の調理場が公開されたのでご紹介したい。普段は乗客が入れるエリアではないが、終日航海日などに行なわれるクッキングショーには、このギャレー見学ツアーも含まれている。

 ダイヤモンド・プリンセスの中にある大型の調理室は主に2カ所。そのほかにも有料のスペシャリティ・レストラン用の調理場や、ビュッフェ用の調理室がある。乗客、クルー3700人分の3食を支えるとなると、やはり規模がすごい。

 シェフは全部で150人おり、食器などの洗浄でさらに50人。主な食材は主に航海初日に積み込むが、新鮮な食材を寄港地で調達する場合もあるそうだ。ちなみに1回のクルーズで約110~115トンの食材が搬入されるとのこと。

 1日平均の消費量は、魚の切り身1400切れ、鶏肉450kg、牛肉700kg、豚肉550kg、野菜1000kg、フルーツ1350kg、コーヒー1400Lなど。パンは毎日船内で小麦から手作りで焼き上げられ、小麦粉550kg分を使用するそうだ。クルーズ中、どこで食べてもパンは美味しいと感じていたので、船内で毎日焼き上げていると聞いて納得した。

 見学して驚いたのは調理室がとにかく隅々までピカピカなこと。一般的な飲食店の調理室とは違って、とにかく清潔。まるで精密機器の工場のようだ。

総料理長のパオロ・メリオ氏
当日のメニューの味は必ず責任者がチェック
広く清潔な調理室
調理室のスタッフまで明るい
肉、魚、野菜などそれぞれ専門を持っている
膨大な数の皿が出番を待つ
アルコールは専用の倉庫で管理
ウェイターがこのダイニングへの扉を通って運んでいく

プリンセス・シアターのステージ裏へ

 ダイヤモンド・プリンセスのショータイムに、日替わりで見応えのあるオペラやミュージカルが演じられるプリンセス・シアター。そのバックヤードがプレス向けに公開された。座席数は700席程度で、クルーズ中、夜の公演時には毎回満席で立ち見もでるほどのシアターだ。

 このステージに使われているシステムは、シルク・ドゥ・ソレイユの舞台にも使われている最新のシステムだそうだ。地上と違って海上では壊れたときすぐに修理スタッフが来ることはできないので、修理用の備品が常にストックされているという。

 舞台衣装も専任のスタッフが船内で作る。狭い船内で大量の衣装を効率よく管理できるよう、システム化されているとのことだった。

デッキ6、デッキ7の船首近くに、2層吹き抜けで作られているプリンセス・シアター
舞台上には奈落も。照明や音響などさまざまなプロフェッショナルが作業
ステージ衣装を管理する部門。アーティストが入れ替わる度に衣装も作り替えられる

心からゆったりできる有料の大浴場「泉の湯」

 ダイヤモンド・プリンセスの目玉施設の一つがこの「泉の湯」だ。場所はサン・デッキ15。大型客船が一気に温泉旅館になるようだ。これだけクオリティの高い大型の日本式浴場が船内にあることに本当に驚く。

 1回90分15ドル(約1560円)の有料サービスで、受け付けで直接、あるいは内線電話による予約制。タオルなどの利用料は値段に含まれている。複数の乗客に話を聞いたところ、非日常の光景と開放感があり、部屋にバスタブがなくてもここに来ればゆったり湯に浸かれるという安心感もあってクルーズ中何度も来たという人もいた。

 大浴場は「糸杉の湯」と「岩の湯」で構成され、どちらにも屋内、半屋外の広々した浴槽がある。2つの湯はミストサウナや打たせ湯など設備に違いがあるが、男性側・女性側が日によって入れ替わるので日を選べばどちらの湯も利用可能だ。そのほか水着着用で入浴する屋外のハイドロテラピー・プールも用意されている。

 広々とした浴場はとても人気で、時間帯によっては予約でいっぱいな場合もあるそうだ。大浴場から見える景色は航海中でも停泊中でも抜群。実際に一度利用してみたが、朝、夜と何度か通いたくなる開放感で、15ドルの値段にも納得できる。ぜひ時間いっぱい、ゆったり過ごしたい。

泉の湯へ入るには、右側の受け付けで手続き
「糸杉の湯」ラウンジ
「糸杉の湯」半屋外の浴槽
「糸杉の湯」シャワーブース
「糸杉の湯」ミストサウナ
「糸杉の湯」屋内の浴槽とサウナ
大浴槽からの眺めは最高
「糸杉の湯」パウダールーム
「岩の湯」ラウンジ
体を洗うシャワーブース
「岩の湯」半屋外の浴槽
「岩の湯」打たせ湯
「岩の湯」屋内の浴槽とサウナ
「岩の湯」パウダールーム
両浴場から屋外のスパプールへつながるレストルーム
出入り口にはドリンクも用意されている
屋外のスパプールは水着着用で利用する男女共用エリア
目の前に船尾からのパノラマが広がる
1階下には小型のプールも見える
足湯、シャワーブース、ゆったりしたデッキも用意されている

忘れられない味に出合えるスペシャリティ・レストラン

 ダイヤモンド・プリンセスの場合、基本的に食事は3食とも無料なのだが、さらに高品質な料理を求める場合は、有料で利用できるレストランも用意されている。

 うち2カ所はプロムナード・デッキ7に並んである。向かって右側の「海(Kai)寿司」は普通のレストランのようにメニューでオーダーする方式。「にぎり寿司メニュー」(17ドル、約1770円)や「海鮮丼メニュー」(19ドル、約1980円)のほか、単品のにぎり寿司や刺身もある。

プロムナード・デッキ7に2件のスペシャリティ・レストランが並ぶ
にぎり寿司が食べられる「海(Kai)寿司」
店内はカウンター席とテーブル席がある
カウンターの中で手際よく寿司が握られていく
新鮮なネタがカウンターの中に並ぶ
「にぎり寿司メニュー」。小うどんとみそ汁がセット

 向かって左側はイタリアンの「サバティーニ」。こちらはカバーチャージ(席料)が1人29ドル(約3020円)のみ。アルコールは別料金だが、料理はメニューのなかから何をいくつ食べても料金内だ。オリーブオイルやチーズ、パスタ、ロブスターなどどれを食べても「うーん、美味しい!」と言ってしまう美味しさ。クルーズ中、ビュッフェやメインダイニングでのディナーも十分美味しいと思って過ごしてきたが、さすがにスペシャリティ・レストランはレベルの違う美味しさだった。

 ちなみに、個人的にはここで食べたモッツァレラがこのクルーズで出合った食べ物のなかで一番美味しかった。もし個人的に乗っていたクルーズなら、あのチーズを食べるためだけに何度かサバティーニに通っていたかもしれない。サバティーニではプリンセス・クルーズオリジナルのオリーブオイルが販売されていたのだが、ぜひあのチーズの方を買って帰りたかった。

 デザートは有名シェフ「ノーマン・ラブ」がプロデュースした「チョコレート・ジャーニー」と名付けられたティラミスをチョイス。こちらもチョコレートが濃厚でエスプレッソの風味が抜群だ。

高級イタリアンが食べられる「サバティーニ」
壁には壁画が描かれた明るい雰囲気
盛り付けはオープンキッチンで行なわれている
高級ワインのラインアップも豊富
メニューのどれをいくつ頼んでもカバーチャージのみ
もともと美味しいパンがオリーブオイルでさらに美味しく
絶品のモッツァレラ「トマトのカルパッチョ 手で形を整えたクリーミーな牛のチーズとバルサミコソースをのせて」
料理ごとにシェフがペッパーをかけにくる
シェフのスペシャルパスタの数々
ロブスタープレート。サーブされたあと、ウェイターが殻から取り出してくれる
約300gのショートロインステーキ
ドルチェ専用のメニュー。通常のドルチェのほか特別メニューの「チョコレート・ジャーニー」もメニューに並ぶ
忘れられない美味しさだった「チョコレート・ジャーニー」のチョコレートティラミス

 また、常設のレストランではないが、リド・デッキ14のビュッフェ、「ホライゾンコート」の一部を区切ることで、ディナータイムだけ2軒のスペシャリティ・レストランが開かれている。

 一つは「スターリング・ステーキハウス」。サバティーニと同じくカバーチャージの29ドル(約3020円)でメニューの料理を食べ放題。入り口に「フィレ・ミニョン 170g」から「リブアイ 400g」「ポーターハウス 620g」までさまざまな肉の見本が並ぶ。日本に20年以上住んでいるという日本語が堪能なシェフによると、スターリング・ステーキハウスのステーキは赤身が中心で、和牛と比べると歯ごたえのあるタイプが多いので、あまり焼きすぎずにミディアムレア程度にしたほうが美味しく食べられるとのこと。620gの巨大なポーターハウスが人気だが、リブアイやフィレミニョンの方がお勧めとのことだ。

 前菜、スープ、サラダ、シーフードなどのメニューもあり、こちらにも「チョコレート・ジャーニー」のデザートがある。この日はミルクチョコレートとピーナツの風味が抜群の、これまた美味しいデザートだった。あまりの美味しさに、チョコレート・ジャーニーだけ24時間食べられるスイーツショップを作ってもらいたいと感じたほどだ。

ホライゾンコートの船尾の一角が区切られ、スターリング・ステーキハウスが出現する
入り口に並ぶ肉の見本。どれも巨大ステーキだ
メニューのどれをいくつ頼んでも料金内
400gのリブアイ、ビスクスープ、グリルサラダ
220gのフィレミニョン
ミルクチョコレートとピーナッツバターのバー。「チョコレート・ジャーニー」のドルチェはほかのメニューとはレベルの違うおいしさで超お勧めです!

 また、ホライゾンコートの別の一角を区切って「オーシャンビューしゃぶしゃぶ」が実施される日もある。こちらはカバーチャージ25ドル(約2600円)。各テーブルに用意された鍋で高級肉のしゃぶしゃぶが楽しめる。

 最初は、もともと料理が3食料金に含まれているのに、さらにお金を出してまで食べるのもどうか、と思っていたが、一般的にレストランで食事とワインで1人1万円と考えれば決して高くない。3000円程度出すだけでそれ以上の価値がある忘れられない味に出合えるなら惜しくない、とあらためて思わされた。個人でクルーズに行く際は、スペシャリティ・レストランも必ずチェックしようと心に決めた体験だった。

海を見ながら高級肉と野菜のしゃぶしゃぶが楽しめる

赤池淳子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。Watchシリーズでは西村敦子のペンネームでInternet Watchでのお得サイトの紹介や、家電 Watchでの製品レビュー等を執筆していた。現在は5歳男児の子育てに、仕事以上の忍耐力を試される日々を送る。