旅レポ

食事・文化・寄港地を満喫、“動くリゾートホテル”ダイヤモンド・プリンセスの旅(その1)

日本発着クルーズの旅がスタート。まずは船内を探検

ダイヤモンド・プリンセス

「クルーズ船の旅」には、定年退職後に夫婦でちょっと贅沢して行くもの、というようなイメージがある。しかしここ数年、外国船の日本発着クルーズが一気に増え、1泊1万円台から利用できる手頃なクルーズも多数登場。ファミリー層からも人気を集めている。そんなクルーズのなかでも、プレミアム日本発着客船で、ファミリーまで幅広い層が楽しめる「プリンセス・クルーズ」のクルーズを体験。“動くリゾートホテル”の実際をレポートする。

乗客定員は2706人、全長290mの動く大型リゾートホテル

港から見えるダイヤモンド・プリンセス。乗客の皆さんが続々と下船していた
ダイヤモンド・プリンセス

乗客定員:2706人
乗組員数:1100人
総トン数:11万5875トン
巡航速度:22ノット(41km/h)
全長:290m
全幅:37.5m
船籍:英国
建造年(改装年):2004年(2014年)

 ダイヤモンド・プリンセスは、2013年から日本発着クルーズを運航するプリンセス・クルーズに属する、乗客定員2706人の大型船。長崎の三菱重工業長崎造船所で2004年に造船され、2014年に日本発着クルーズの就航に伴い改装された。客船やサービスのクオリティの高さを保ちつつ、参加しやすいクルーズ代金のバランスが取られている、リピーターの人気が非常に高い客船だ。

 今回乗船したクルーズは、「日本の美 瀬戸内海・名城の地めぐりと韓国 9日間」。横浜を出港し、名古屋に寄港、瀬戸内海をクルージングして韓国の釜山に寄港。さらに長崎、熊本の八代に寄港して横浜に戻る行程だ。今回から数回にわたり、このクルーズ5日目の釜山から最終日の横浜までの様子をお伝えする。

 釜山は晴天。港に14時ごろ到着したダイヤモンド・プリンセスからは乗客の下船がはじまっていた。青空に映える白いダイヤモンド・プリンセスが非常に美しい。全長290mの客船は、船というより大型のホテルの棟がまるごと動いているような迫力がある。

 ダイヤモンド・プリンセスの乗客定員は2706人。この人数がスムーズに下船するため、下船時間はそれぞれ指定されている。入国審査を終えた乗客は、あらかじめ申し込んでいた現地でのツアーや、シャトルバスを利用して釜山の街中へ向かっていく。

のんびりした港に豪華な客船。前方左右にせり出す操舵室がシャープな印象。2014年に改装されたばかりで全体的に美しい。バルコニー付きの部屋の割合が多いのが特徴
ダイヤモンド・プリンセスの名前が前方の左右に表記されている
プリンセス・クルーズ共通のロゴ、「シーウィッチ(海の女神)」
客船2カ所に設けられた乗下船口から出入りする
寄港地により、客船が停泊できる港がない場合はテンダーボートで上陸する場合もある
下層のデッキ5、6には、バルコニーは無いものの窓を備えた部屋がある

使い勝手がよく、十分なスペースがある内側客室。そのまま使えるコンセント

 広い吹き抜けのアトリウム、多数あるエレベーターなど広い船内に圧倒されながら、今回宿泊した「内側」カテゴリの客室へ。客室の入り口には自分の名前が記載されていて、分かりやすい。

船内のエレべーターと階段。エレベーターはすぐ来るが混雑時は階段も便利
エレベーター内の表示は英語と日本語の両方があり便利
各フロアにはここがどのデッキかもしっかり表示
部屋のドア前には部屋番号と名前の記載があり分かりやすい

 この部屋は面積約16~17m2。シティホテルのツインぐらいの広さだろうか。窓はないが大きな鏡がうまく使われている。デスクとイスもあり、日本発着クルーズではデスク上にポットとお茶、ドライヤー、電話、冷蔵庫、テレビなどが一式備えつけられている。コンセントは日本の電化製品をそのまま差して使えて非常に便利。

 水回りは入り口近くにシャワールームと洗面台、トイレがまとめられている。タオル類は毎日こまめに交換され、1日2回清掃が入るためとても清潔だ。アメニティ類は部屋のカテゴリーによって種類は違うが、基本的なものは揃っている。

窓のない「内側」の客室。ツインルームで広さは16~17m2。ベッドはダブルにもできる
鏡が多用され狭さは感じない。テレビはベッドから見やすい高い場所にある
船内で身分証明証、部屋の鍵、清算のカードを兼ねる重要なクルーズカード
デスクの上には電気ポットから電話まで必要なものがコンパクトにまとまっている
ミニ冷蔵庫もあり飲み物を冷やしておける
日本の家電製品はコンセントにそのまま差して使える
テレビは船内情報や寄港地情報のほか、最新の映画もラインアップ
ワードローブのスペースは広めで荷物置き場に困らない

 ワードローブは広めだ。航海中に何度か設けられている「フォーマルデー」を含め、比較的長い滞在期間の服や荷物も収納しやすい。大きな鏡の中には棚とセキュリティボックス、救命胴衣などが収められている。

 部屋のドアは乗船時に渡される「クルーズカード」で解錠。部屋の掃除やいわゆる「起こさないでください」の札はカードのリーダー部分に差し込んで使用。部屋に果物を用意してほしいときや、翌日の朝食を部屋で食べたいときはそれぞれドアノブにかけておくと対応してくれる。

「結婚記念日」や「誕生日」などお祝いごとで乗船している部屋には、当日ドアの外側に飾り付けもされている。夫婦や家族で、特別な記念日に乗船するには確かに最適そうだ。

バスローブやタオル類は毎日交換される
この部屋にはハンドタオルやせっけん、ボディローションがあった。歯ブラシは持参
鏡の内側は金庫や救命胴衣
洗面所とトイレはシンプルながらとても清潔
シャワーブースはコンパクトだが必要十分
水量は問題なく、すぐお湯が出た
リンスインシャンプーとボディソープは備え付け
フルーツが欲しいときや、朝食を部屋でとりたいときは、備えつけの用紙に内容を指定、前日夜にドアノブにかけておく
部屋は指定しなくても1日2回程度掃除されるが、タグでの指定もできる
記念日の部屋にはさまざまな飾り付けが。フラワーアレンジメントのオーダーもできる

クルーズ料金に含まれる豪華な食事。メイン・ダイニングで食事を堪能

 部屋に備えつけられている救命胴衣を持ち、まずは乗客全員に義務付けられている緊急避難訓練へ。緊急時の対応方法をしっかり学んだあとはデッキへ。すでに、早めに戻ってデッキに出て夕景を楽しんでいる乗客もいた。

夕焼けが迫る釜山。乗船口目の前にはお土産物屋が出張してきていた

 その後、早めのディナーへ。ディナーはクルーズカードに指定された時間とメイン・ダイニングでとれるほか、時間に縛られないビュッフェレストランでも自由にとることができる。メイン・ダイニングでの食事は2回の入れ替え制で、毎日同じテーブルに同じ担当者が付く。毎日メニューは変わるので、ダイニングの入り口に提示される内容を確認して、メイン・ダイニングかビュッフェレストランかを選んでもよい。

船内には3層吹き抜けの豪華なアトリウムがある
生演奏を聞きながらゆったりできる
ディナーをとったメインダイニングの一つ「パシフィック・ムーン」
毎日その日のメニューがダイニングの入り口に提示される
日本語のメニューもあり、分かりやすい
ローストビーフをメインにした組み合わせの例。アルコールは別料金
パンは船内で焼き上げているとのことで、どこで食べても非常に美味しかった
ガーデンミックスグリーン、トレビス、キュウリのサラダ
ローストビーフ ヨークシャープディングとグレイビーソース添え
冷静スモークサーモンとザリガニ
チリアンシーバス、黒ムール貝、アサリのシーフードシチュー
フローズンチョコレート・プラリネ・トルテ
グランマの味コッコ-ヴァン
カレイのバター焼き
アルコールや有料のドリンクもある
ドランビュイ酒風味のスフレ

 ちなみに、ビュッフェレストランはもちろんのこと、メイン・ダイニングでの食事やアフタヌーン・ティーまでもクルーズ料金に含まれている。メイン・ダイニングでは、その日のメニューから好きなものを好きなだけ食べられる。毎日提供される和・洋の定番のメニューと、日替わりのメニューが複数用意されている。アルコール類は別料金だ。

 前菜からはじまり、パン、サラダ、主菜、デザート、コーヒー類まで種類は十分。日本語メニューが用意されているのでどんな料理かも分かりやすくオーダーにも困らない。毎日これが続くことに感動を覚えつつ、ゆっくり食事を楽しんだ。

メイン・ダイニングやラウンジが集まる下層をチェック

釜山を出港。ゆっくり離岸していった

 この日の最終乗船は20時。出港時間を過ぎ、船は港を離れた。入港・出港のタイミングというのはクルーズ旅での楽しみの一つで、この日も多くの乗客がデッキに出て出港の光景を楽しんでいた。クリスマスを思い出す、とてもカラフルな夜景がキレイだった。

 この日は残りの時間で船内の主な施設を把握することに。ダイヤモンド・プリンセスはデッキ4~デッキ18までが乗客専用エリアで、各デッキには「エメラルド」「ドルフィン」などの名称が付けられている。

まずは三菱重工長崎造船所で作られたことを表示するプレートを見て、船への親近感が高まった

 まずは、3層吹き抜けのきらびやかなアトリウムを中心としたフロアを見てまわる。「プラザ・デッキ5」には、乗船時に窓が見えた「海側」の部屋があるほか、ふたつのメイン・ダイニング、インターネットカフェ、絵画が並ぶ「アート・ギャラリー」、「図書館」などを備える。

「フィエスタ・デッキ6」は3つのメイン・ダイニングのほか、お土産物や日用品が購入できるショップ、宝飾品や化粧品などが並ぶ免税店、カジノ、シガーラウンジ、劇場で構成。

フィエスタ・デッキ6の劇場「プリンセス・シアター」
中は広々としているが、公演時は満席に
船内で唯一喫煙できる「シガー・ラウンジ」
フィエスタ・デッキ6のカジノ入口
スロットマシンが充実
寄港中はクローズ。航行中の夜や航海日など営業時間には制限がある
スロットなどはクルーズカードで支払いできる
ブラックジャックなどのカードゲームのテーブルも多数
日焼け止めなどの日用品や服、ダイヤモンド・プリンセスのグッズやお土産が販売されている「カリプソ・コーヴ」。アルコールの免税品は下船時に引き渡し

「プロムナード・デッキ7」は周囲をぐるりとデッキが囲むフロアで、客室はない。イベントが行われる各種のラウンジや、有料レストランなどが集められており、寄港のない航海日はこのフロアで過ごす時間も多い。

アトリウムではアクセサリなどの販売も
化粧品、ブランド物などの免税店もある
「フォトギャラリー」では船内や下船時で撮影した写真が並ぶ。ここから自分の写真を探して購入する

「エメラルド・デッキ8」から「アロハデッキ・12」までのデッキはおもに客室だけで構成されているフロアだ。船首から船尾までの移動には長い通路を行き来することになるため、乗船してしばらくは客船内のエレベーターの位置やラウンジへの最短ルートの把握のため、船内マップが手放せない。ただ、旅程も後半になると、乗客は慣れた様子でスムーズに移動していた。

スタジオで本格的な撮影ができる、デッキ16の「プラチナ・スタジオ」紹介コーナー
寄港地から送られたプレートがずらりと並ぶ一角
有料レストランの「海(Kai)寿司」。イタリアンの「サバティーニ」も並ぶ
ゆったりした雰囲気でお酒が楽しめるラウンジ「ホイールハウス・バー」
プロの弾き語りが聴ける「クルーナーズ・バー」
プロムナード・デッキ7船尾のダンスフロアを備える「クラブ・フュージョン」

ビュッフェレストランのほかプールやジムなどアクティブな施設が揃う上層

 客室から見て上階にあたるデッキ14~デッキ18までは、プールを中心としたアクティブなフロア。「リド・デッキ14」には、映画の上映もある大型ディスプレイ、屋外プール、広々とした屋内プールのほか、非常に広々としたビュッフェレストランがある。

 その上階、「サン・デッキ15」は、ジムやスパ日本式の大浴場「泉の湯」、キッズ向けの施設で構成。「スカイ・デッキ16」には、船尾にバーや大人専用のプールを備えたデッキスペースがある。「スカイ・デッキ17・18」は隠れ家のようなナイトクラブのほか、バスケなどができるスポーツコートが備えられている。

 これでもまだまだ網羅はできていないが、まずはおおまかなところを見て周り、この日は終了。遠くに見える釜山の夜景が美しい。

 船内の高級感と清潔感、スタッフの親切さが印象的で、全体的に居心地のよいスペースが広がる。クルーズ船の中でもリピーターが多い船というのもうなずける快適さだ。乗客はクルーズの期間や内容によって変わるようだが、このクルーズでは欧米人の割合が高く、日本人は3割程度だろうか。全体的にはシニアが多いが、若い夫婦や親子、友人同士、子供連れなどさまざまなグループが乗船していた。

 翌日は長崎への寄港日で、朝8時には港に到着する。16時半の最終乗船まで時間があるため、長崎の街中の観光と、軍艦島クルーズにトライしたい。

リド・デッキ14のビュッフェレストラン「ホライゾン・コート」。朝5時から夜11時まで食事ができる。毎日いろいろなテーマでビュッフェの内容が変わるので飽きない
室内プールの「カリプソ・プール」、プール脇にはジャグジーもある
プール脇には卓球台のセットもある
プール脇にある「アイスクリーム・バー」。ここももちろん無料。映画上映時はポップコーンも配布される
屋外の「ネプチューンズ・プール」。両脇にデッキが並び、夜は屋外で映画が楽しめる「ムービーズ・アンダー・ザ・スターズ」になる
プール脇にあるピザの専門店「プレーゴ」。これも無料。焼きたてでおいしい。この並びにはハンバーガーの「トライデント・グリル」もある
サン・デッキ15のここでも映画を見ながらドリンクやアルコールが飲める
サン・デッキ15の船首にまとめらているスパのエリア
美容院やネイルサロンも
奥には器具が充実した広々したジムスペース。航海中は景色を見ながら運動できる
ジム入り口でヨガなどプログラムの申し込みができる
ハイレベルなスパメニューが有料で受けられる「ロータス・スパ」のラウンジ
様々な種類のサウナを完備
長イスで岩盤浴ができる部屋も
スパの奥にある静かなプールと、その上階「スポーツ・デッキ16」にある、大人だけが入れる静かなエリア
スカイ・デッキ17、18の「スカイウォーカーズ・ナイトクラブ」
屋上でバスケが楽しめる「スポーツコート」
スポーツ・デッキ16の船尾にはバーやジャグジーが。港を離れる際の夜景がキレイだった

赤池淳子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。Watchシリーズでは西村敦子のペンネームでInternet Watchでのお得サイトの紹介や、家電 Watchでの製品レビュー等を執筆していた。現在は5歳男児の子育てに、仕事以上の忍耐力を試される日々を送る。