井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

紙きっぷは当日発券では遅い。超繁忙期を円滑に乗り切るコツ【2026年版】

東京駅の、在来線と東海道新幹線の境界にある中央乗り換え改札口で。繁忙期になると、ここは多くの利用者でごった返す。自動改札機でまごついたり、つっかかったりすれば、周囲から白い目で見られる場面もあり得よう

 1年前に「年末年始の駅で大荷物とベビーカー……エレベーターはどこ? 超繁忙期の移動をスムーズにするコツ」という記事を書いた。年末年始の恒例というのも妙な話だが、昨年の記事とは重複しないように注意しつつ、超繁忙期の移動を多少なりとも円滑にするために何ができるか、という話をしてみたい。

紙のきっぷは事前発券しておく

 だいぶチケットレスサービスが普及してきたとはいうものの、現時点ではまだ、ネット予約を利用して、紙のきっぷを発券してから乗車する場面は多い。発券できる場所が自宅や職場の近隣にない場合など、ついつい「乗車の当日に発券すれば」と考えそうになる。

 しかしそれは、超繁忙期にはリスク要因でしかない。発券に使用する指定席券売機に長蛇の列ができていて、発券できたときには乗車予定の列車は出発したあとでした、なんていうことになれば目も当てられない。

 理想はチケットレスサービスだが、紙のきっぷが必要になる場合には、多少の手間は惜しまずに事前発券しておくようにしたい。万一、乗り遅れが発生して後続の列車に変更したいと考えても、超繁忙期では、その「後続の列車」に空きがないことが多い。つまり逃げ道がないからだ。

ネット予約したきっぷの発券手段は指定席券売機が主
ある日の新大阪駅で。有人窓口に比べると、指定席券売機の方が空いているのはよくある光景だが、繁忙期になれば、こちらも混むだろう

自動改札機の通路に御用心

 有人改札であれば、どこの通路を通っても同じである。自動改札機が一般化したあとも、紙のきっぷ(磁気券)しかない時代には、やはりどこの通路を通っても同じだった。

 ところが、交通系ICカードが普及してきたあたりから、事情が変わってきた。調達にも維持管理にも経費と手間がかかる磁気券対応の自動改札機を減らして、「IC専用通路」を設ける場面が増えてきたからだ。

 逆に、磁気券専用の自動改札機というのは見かけないから、交通系ICを使用する分には、どこの通路を通っても同じである。しかし、紙のきっぷを持っていて、なんとなく人の流れについて行ってみたらIC専用通路でした、となると右往左往することになってしまう。そこで改めて別の通路に移動することになれば、周囲の人にも迷惑をかけてしまう。

 一部の通路に限定されているのは、クレジットカードのタッチ決済や、最近になって数が増えているQRチケットも同様。これもやはり、最初から見定めて対応通路を目指すようにしたいところ。構内が空いていればいいが、超繁忙期には人だらけだから影響が大きい。

これも東京駅の、在来線と東海道新幹線の境界にある中央乗り換え改札口。2024年末の時点では、頭上の発車標から「QR」と書かれた紙がぶら下がり、QRチケット対応通路の位置を示していた
同じ場所で2025年10月の撮影。紙をぶら下げるのはやめて、奥にある改札名称を表示する電光看板に、QR通路の所在を示す掲示と矢印が加えられた。正しい通路に誘導する観点からいうと、できれば、もっと手前で明示してほしいところではある
こちらは同じ東京駅の南乗り換え改札口を、新幹線側から。頭上に、一部の通路がIC専用になっていることを示す掲示がある

 IC専用通路にしろQR対応通路にしろタッチ決済対応通路にしろ、改札機の本体を見れば分かるし、多くの場合には床面にも標記がある。しかし超繁忙期の大混雑では、床面の標記なんて見えないし、改札機だって近くまで行かなければ区別がつかない。

 頭上に掲示があればいいのだが、それがないと、いささかめんどうなことになるのは否めない。鉄道事業者各社におかれましては、通路ごとの対応券種に関する掲示を頭上に用意していただきたいところである。

博多駅の在来線改札では床面に標記がある。4通路あるうち、左端はIC専用、左から2番目と3番目はIC・磁気券・QRチケレス、4番目はIC・磁気券・タッチ決済という違いがある。交通系ICならどこでも通れるが、それ以外は通路を間違えたくない
一ノ関駅の新幹線・在来線乗り換え改札。左端が有人通路、2番目がIC・磁気券、3番目と4番目がIC・磁気券・Qチケという違いがある

物販はキャッシュレスを駆使して迅速に

 食事や飲み物や土産物の購入など、駅の構内で物販を利用する場面はけっこうある。品物を選ぶ場面だけでなく、最後に支払を行なう場面でも、混雑するのは避けられない。

 それを迅速にこなそうとすれば、商品選びは即断即決、支払は可能な限り迅速に、ということになる。商品選びについては個人の好みや判断力に依存する部分が大きいので「コツ」も何もあったものではないが、支払については迅速に行なう手段がある。

 おそらく、交通系ICやクレジットカードのタッチ決済がもっとも速い。現金では、財布を出して支払をして、場合によっては釣り銭を受け取らなければならないから、それなりに手間がかかる。いわゆるコード決済も、いちいちスマホを引っ張り出さないといけない分だけ敏速性を欠きそうだ。

 その点、交通系ICの電子マネー機能やタッチ決済であれば、読み取り装置にピッとタッチさせるだけで完結するから話が早い。有人店舗に限らず、自動販売機でも同じことである。

東海道新幹線で、すっかりおなじみになったアイスの自動販売機。もちろん、ここでも交通系ICは通用する

小さな荷物をたくさん持つのはめんどうのもと

 超繁忙期に移動する人の多くは、着替えなどをはじめとする荷物に加えて、食事や飲み物、土産物など、いろいろ抱えることになりがちである。その際、小さな荷物を複数持つよりは、大きな荷物1つにまとめる方が好ましいのではないか。

 まず、小さな荷物がいくつもあると、忘れ物の原因になりやすい。また、棚に載せる場合でも、複数を積み上げることになるから、不安定になったり落下したりしやすい。第一、人間の手は最大でも2本しかないのだから、そこで持つことができる荷物の数には物理的な限界がある。

 ただ、だからといって大きなキャスター付きスーツケースを持ち歩くことになると、今度は荷物の置き場所という問題ができる。最近は大型荷物置場を設ける車両が増えているが、利用者が増えれば争奪戦は必至だ。

 となると、荷物の数を減らすだけでなく、コンパクトにまとめる工夫も不可欠といえる。これは、車内だけでなく、駅のホームやコンコースで、人混みのなかをできるだけスムーズに移動するためにも重要なポイント。それに、身軽になれば階段の上り下りがしやすいから、エスカレーターの混雑を避けやすい。

 また、降車駅に到着する時刻よりも少し早めに荷物をまとめて、何か置き去りにしていないかどうか確認するようお勧めしたい。デッキまで行ってから忘れ物に気付いて引き返そうとしても、後ろに人が並んでいる可能性が高いからだ。

ある日のこだま号で。これぐらい空いていれば荷棚にも余裕があるが、超繁忙期に荷棚がキャリーバッグで埋め尽くされるのは、よくある光景
客室端に設けた大型荷物置場の例(JR北海道の261系気動車)。それなりにキャパはあるが、全員が大荷物を置けるほどのスペースではないから、混雑すれば争奪戦は不可避