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長距離線の機内Wi-FiでYouTube/Netflix見放題の衝撃。ハワイアン航空のStarlinkは本当に速かった!

ハワイアン航空でオアフ島・ホノルルへ行ってきた

 7~8時間を越える長距離フライトで海外へ向かう際、航空会社はどんな基準で選ぶだろうか。

 いつもおなじみのエアライン、そのとき一番安い航空券、旅程に合わせやすいダイヤ……。今回、東京~ホノルルという海外旅行の定番路線をハワイアン航空で往復してきた。とあるサービスに衝撃を受けたので、その詳細をお伝えしたい。

機内でStarlinkが無料で使い放題の衝撃

 ハワイアン航空の東京~ホノルル線は、羽田から1日2便を運航している(関西発着も1日1便で運航中)。今回利用したのは、往路が羽田を夜20時過ぎに出発するHA864便、復路がホノルルを15時半過ぎ(現地時間)に出発するHA831便。現地を12時台に出発するHA863便も検討したが、ぎりぎりまでハワイに滞在できるHA831便を選んだ。

 機材は278席のエアバス A330-200型機(ビジネスクラス18席、エコノミークラス260席)。エコノミークラスは2-4-2配列(後部は2-3-2配列)のため窓側席でも通路に出やすく、一部に設定している「エクストラ・コンフォート」なら足元が広くなり、個別に電源コンセントなどさらに快適に過ごせるようになる。

 しかし今回利用してみて、ハワイアン航空の快適さを決定的にしているのは、機内Wi-Fiに搭載している衛星通信「Starlink(スターリンク)」だと確信した。

羽田空港 第3ターミナルから出発する
ドア横に目立つように貼り付けられたStarlinkのロゴ

 個人用モニターによる機内エンタテイメントは、日本公開前の最新の映画を見ることができたり、エアライン各社が就航している地域の特性を活かしたコンテンツを用意していたりと、機内ならではの楽しさがある一方、機内アナウンスがあると中断されてしまうし、モニターは基本的に固定されているので、自由な姿勢で見やすいポジションに動かすのは難しい。

 そんな事情もあって、スマートフォンやタブレットなど自前のスマートデバイスを持ち込んで機内を過ごす、というスタイルはすでに当たり前になっているが、ここで威力を発揮するのがStarlinkだ。

 低軌道衛星を使うことで高速・低遅延を実現するStarlinkは、従来の機内Wi-Fiでは扱えなかったYouTubeなどの動画ストリーミングサービスの再生が可能で、実際に今回の搭乗では(朝着だから往路は寝るべきなのに)YouTube見っぱなしで過ごしてしまった。

 帯域不足で映像がガビガビになったり途切れ途切れになったりすることもなく、地上で5G回線やフリーWi-Fiに接続しているときと遜色ない使い勝手を実現していた。もちろん普通にWebサイトを見ても、チャットで画像をやり取りしてもスムーズ。今回は試さなかったが、オンラインゲームも制限はかかっていないという。

 機内Wi-FiにStarlinkの導入を進めているエアラインはいくつかあり、エールフランスやカタール航空、ユナイテッド航空などが(一部)導入済みで、ハワイアン航空と同じグループのアラスカ航空を始め、ZIPAIR、大韓航空、エミレーツなど導入を表明しているエアラインもある。

 あと数年のうちにもっとメジャーなサービスになっていくと思われるが、ハワイアン航空の強みは「すでに導入済みであること」「マイレージ会員/非会員・搭乗クラスを問わず無料であること」だ。アプリをインストールしたり、メールアドレスを登録したりといった手間が一切ないのが本当に手軽で、1フライトで20~30ドルの有料なのにWebブラウザ/テキストベースのサービスのみ、というこれまでの体験が遠い過去のように感じられるほど衝撃を受けた。

往路はエコノミークラス。機材のエアバス A330-200型機のエコノミーは2-4-2配列(後部は2-3-2配列)なので、窓側席でも通路に出やすい
身長178cmの記者で膝元の余裕はこんな具合
復路は空港カウンターでアップグレードして、足元の広い「エクストラ・コンフォート」を利用した
上の写真と比較すると、膝まわりの余裕が分かりやすいはず
本フライトにおける真骨頂はやはり機内Wi-FiのStarlink
NetflixやPrimeビデオ、ディズニー+などのアイコンが並び、ストリーミングサービスを自由に利用できる。もちろんYouTubeも
あくまで「このフライトにおける数字」に過ぎないが、スピードテストでも非常に快適なスコアを示した
7時間半ほどのフライトでオアフ島が眼下に迫ってきた

現地の自然・文化との調和を目指すハワイアン航空の「Travel Pono」

 コロナ禍に人流が減ることで観光業が痛手を負った一方、はっきりと自然環境の回復が見られたハワイでは、以前からオーバーツーリズムで疲弊していた一部の地域で事前予約制・有料化・人数制限などの施策を採っている。また、こうした環境保全だけでなく、現地の文化やコミュニティを尊重して敬意を払いつつ旅をする、いわゆるレスポンシブルツーリズムについてもハワイは先進的な地域だ。

 ハワイアン航空でも「Travel Pono」を掲げ、職員自ら先頭に立って現地の自然と文化・コミュニティを守ることを呼びかけている。「ポノ(Pono)」はハワイ語で「調和・正しさ」を意味する言葉で、責任ある行動を取ることがハワイへの理解を深めることにもつながっていくという。

ハワイアン航空の「Travel Pono」

 例えば、YouTubeで公開しているTravel Ponoのビデオでは、ハワイアン航空のパイロットや客室乗務員が出演し、海洋生物との接し方や海で安全に楽しむコツ、安全なハイキングのためのアイディアなどを紹介しているほか、使い捨てプラスチックの削減や有害な成分を含まない日焼け止めなど、環境保存のための啓蒙について述べている。

 また、ネイティブハワイアンにとって重要な意味を持つ地域に立ち入らないこと、一般の民家・住居の近くでは配慮するなど、「ハワイでの旅行に際して注意深くあってほしい」と旅行者の姿勢を説いている。しかしビデオに目を通せば分かるが、これは決して難しく考える必要はなく、逆に日本において外国人にどう振る舞ってほしいかを想像すればすぐに答えにたどり着くことだ。

 同社はハワイ各島でのボランティア活動についても積極的だが、リピーターの多いハワイでは単なる観光・バカンスから一歩踏み込んで、「現地の生活に触れてみたい」「環境保全活動に参加してみたい」というニーズも少なくない。そんなボランティア活動を通じて、通常は立ち入ることのできない場所を訪問できる機会もあるという。

 ホノルルのあるオアフ島を例に取ると、北部の「ワイメア渓谷」には古代の礼拝所や寺院の遺跡が残るほか、タロイモの栽培や伝統的な武器作りなどを受け継ぐ人々が今も活動している。ここではそうした場所での外来種の除去、山の尾根での森林再生などが盛んだ。活動日などはWebサイトで確認できる。

ワイメア渓谷

 南東部の「マウナルア・ベイ」では、今から20年ほど前に魚の生息数の減少やサンゴ礁の損傷、水質汚染などが確認されたことを受けて、いち早く外来の藻類の除去やその堆肥転用、季節変動に強いサンゴの移植など、修復活動に取り組んでいる。

 東部の「ヘエイア」地区はかつて広大なタロイモ畑があり、1930年代まで一大産地になっていたという。そんな伝統を取り戻すべく、非営利文化団体「Kakoo Oiwi(カコオ オイヴィ)」が中心になって約160ヘクタール(約1.6km2)の農地を耕しており、除草・植栽・収穫・湿地での外来植物の除去・ハワイ在来種の植栽・水路の清掃といった活動が行なわれている

ヘエイアの非営利文化団体「Kakoo Oiwi(カコオ オイヴィ)」によるタロイモ畑の農地

 北西部の「ハレイワ」では、かつてハワイで盛んだったという汽水域の養魚池を復活させる試みが行なわれていて、地域の食卓に供する魚の養殖という“本来の役割”が再び脚光を浴びている。ハレイワの「Loko Ea(ロコ エア)」では外来種を除去して、ハワイ固有の魚や海藻が棲息できるように養魚地の復元活動の参加を受け付けている。

ハレイワの「Loko Ea(ロコ エア)」で養魚地の復元活動

 NPO法人の「Sustainable Coastlines Hawaii(サステナブル コーストラインズ ハワイ)」は、ハワイのビーチクリーンに取り組む代表的存在で、海岸清掃によって“海を美しく保つ”という意識を広める役割も担っている。わずか1日の活動で約2700kgのゴミを収集、約900kgの金属をリサイクルしたという実績を誇る。定期的な清掃イベントに参加することも、カイムキの事務所で清掃キットを受け取って、自分のペースで活動することもできる。詳細はWebサイトの説明が参考になるだろう。

 こうした文化や伝統に接する、という意味ではオアフだけでなく隣島を訪れるだけでもさまざまな気づきがあるはずだ。隣島のアクティビティについては、トラベル Watchでこれまで多くの記事を掲載している。本稿と合わせて参考にしてほしい。

ホノルル空港で出発を待つハワイアン航空の機体