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JR東日本、赤羽駅ホームの無人AIレジ店舗を公開。実店舗跡地での実証実験を10月17日から約2か月間実施

2018年10月16日 公開

2018年10月17日 オープン

JR東日本が赤羽駅のホーム上店舗でAIを活用した無人決済店舗の実証実験を開始する

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は10月17日、JR赤羽駅構内で、AIを活用した無人決済店舗の実証実験をスタートする。それに先立ち、10月16日に同店店舗を報道公開した。

 この実証実験は、JR東日本のオープンイノベーション型ビジネス創造活動「JR東日本スタートアッププログラム」の採択企業であるサインポストが開発したAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を活用したもの。

 店舗入り口でSuicaなどの交通系ICカードをかざして入店。店内では通常どおり購入したい商品を手に取り、決済ゾーンへ進むと、ディスプレイで手に取った商品名と合計金額が表示されるので、交通系ICカードで決済をする。決済完了後に出口ゲートが開く仕組みになっている。

お店の入り口でSuicaなどの交通系ICカードをかざすとドアが開いて入店できる。同時に入店できるのは3名まで
通常どおり品物を購入したい商品を手に取っていく。棚に戻したり、奥の方から商品を取ってもOK。ただ、乱れた陳列を元に戻す人がいないので、戻す場合は元あった場所に戻してほしいとのこと
決済ゾーンに行くと手に取った商品のリストと合計金額が表示されるのでSuicaをタッチ
レシートが出てくるので受け取る
レシートを受け取るとゲートが開いて店舗外へ出られる
JR東日本が赤羽駅で実証実験を開始したAIによる無人決済店舗

 この実証実験店舗は、赤羽駅5・6番ホーム上に設置。平日のみ10時~20時に営業する。商品は紀ノ国屋のベーカリーや飲料、お菓子など約140種類が並ぶ。実施期間は約2か月を予定している。

 こうした無人決済店舗の実証実験は2017年11月20日~26日に大宮駅西口イベントスペースで展開したことがある。その際には、「同時入店できる人数が1名」「商品は一番前のものを1つずつ取る必要があり、商品を棚に戻すことも不可」「決済は無人で行なうがイレギュラー対応のために出口に人が立っていた」といった課題があった。

 今回の赤羽駅の店舗は、「3名まで同時に入店可能」になったほか、「商品は後ろから取ってもよいし、2個同時に取ってもOK。元に戻しても、棚に戻したことを認識できる」ようになった。また、決済画面に「購入内容の変更」というメニューが用意され、利用者自身で修正することができるようになり、店舗内を完全に無人化している。

JR赤羽駅の5・6番ホームに設置されたAIを活用した無人決済の実証実験店舗。入り口にはオペレーションの方法を示したイラストが描かれている
入り口で交通系ICカードをタッチすると自動ドアが開く。ここは3名までという人数の確認や、決済手段を持っていることを確認するためのもの。入り口でタッチしたカードと、決済時のカードは異なっていても問題ないとのこと
店内には紀ノ国屋の商品約140点が並ぶ
主に商品の出し入れを認識するためのカメラが棚に設置されている。棚のカメラは約100台を設置しているという
天井には人の動きを認識することを主目的としたカメラ。こちらは16台のカメラを使用している
決済ゾーン。黒枠の中に入ると画面に購入内容や合計金額が自動的に表示される
内容を確認後、交通系ICカードをタッチして決済する。必要に応じて内容を自身で修正することもできる

 今回の実証実験店舗に関し、店舗の運営に携わるJR東日本、JR東日本スタートアップ、システム開発を担うサインポストの各担当者がインタビューに応じた。

 今回の実証実験に赤羽駅が選ばれたのは、元々KIOSK店舗があったことから「ゼロから作るよりも使いやすかった」ことが1点。そして、新聞・雑誌やタバコの売り上げ減少、コンビニエンスストアとの競争によってKIOSKなどの小型小売り店舗の売り上げが全般的に減少するなか、実際に過去に店舗があったところで実証実験を行なうことで、「無人化、省力化でビジネスが成り立つかの検証もできる」というビジネスモデルの実証実験も可能である点を挙げた。

 また、JR東日本は、「今後の労働力不足、人手不足を考えても、無人化、省力化はJR東日本としてやらなくてはいけない課題だと思っている」との認識も示し、「小型店舗の再生の一つの象徴的なモデルになるのではないかと考えている」とのこと。この赤羽駅のKIOSK店舗は10年ほど前に閉店し、環境の変化に合わせた新たな事業を行なおうとしていたものの、できていなかった店舗だという。「そういう店舗を、仮に無人化、省力化の技術を使って再生できるなら、ほかの小型店、あるいは人手不足を見据えた、小売店再生の一つのモデルになるのではないか」としている。

 こうした無人店舗の実用化、常設化が実現する時期については、JR東日本は「実用化の時期は『未定』が公式なコメント」としたうえで、「今後の人手不足や、お客さまをお待たせしないというサービス向上という視点、そして日本が進めるキャッシュレス化を考えると、スピードを上げた方がよいと思っている。できるだけ早くに実現したい」との考えを示している。

インタビューに応じた(左から)東日本旅客鉄道株式会社 本社事業創造本部 新事業・地域活性化部門 石川恵理子氏、JR東日本スタートアップ株式会社 代表取締役社長 柴田裕氏、サインポスト株式会社 部長代理 波川敏也氏

 実用にあたっては、運用面、システム面それぞれに越えるべきハードルもある。運用面では、物流や品出しなどは人手で行なっているほか、駅のホーム上での安全確保の観点などクリアする面がある。また、現時点では3名が同時入店可能になったが、お店の外に人が並ぶ可能性もある。システム的にはそうした運用面の課題をシステムに組み込んでいくことや、さらなる精度向上などが課題として挙げられている。

 システム的にはすべての行動をイメージセンサで認識しており、RFIDなどのタグは一切用いていない。そのうえで、今回は3名の行動を同時に認識して、手に取った商品の種類や数を判定する。人の認識については、店舗内では複数名いる人の誰が、どの商品を取ったかを認識するために個人レベルの認識を行なっているが、その情報は、個人情報の観点から保持はしないようにしているという。

 一方で、開発側が予期しない動きなども想定されるとしており、サインポストでは「新しい万引きの仕方のようなものが出てくるかも知れない。そこは実証実験を含めて、やってみないと分からない部分もあるので、今回チャレンジさせていただける環境をいただけたことは意義があると考えている」と、実際の店舗を活用した今回の実証実験を通じて、利用者の実際の動きを見て、次の対応を取っていく構え。

 2017年に実施した大宮駅の実証実験に比べると、同時対応できる人数の向上、品物の出し入れの認識、認識率の向上、実際に店舗として使われていた場所での実施といった点に違いがある。第1回で洗い出された実用化に向けた課題については今回の実証実験店舗でおおむね反映できているとし、JR東日本では「やれることはすべてやった。これから日本社会で無人AIレジを進めることを考えると、まさにここがスタート地点。まずは実証実験を踏まえて展開の可能性を探りたい」と話している