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シンガポール航空、ボーイング 787-10型機の世界初定期便スタート。日本発初便は「満席御礼」
記念セレモニーを関空で実施
2018年5月3日 16:50
- 2018年5月3日 運航開始
シンガポール航空は5月3日、ボーイング 787-10型機による世界初の定期便として、関空(関西国際空港)~シンガポール・チャンギ国際空港線での運航を開始した。同日、初便の運航を記念して出発搭乗口で記念式典が行なわれた。
シンガポール航空がローンチカスタマーとなったボーイング 787-10型機は、787-9型機のを5.5m延長したストレッチモデル。3月25日(現地時間)にボーイングの米サウスカロライナ州のチャールストン工場で初号機(登録記号:9V-SCA)が引き渡され、4月に入って2号機(登録記号:9V-SCB)が引き渡された。この2号機がシンガポールへ向かうフェリーフライトの途中、関空に立ち寄った際に機内の報道公開が行なわれている(関連記事「シンガポール航空、ボーイング 787-10型機を関空で報道公開。新開発のビジネスクラスとエコノミークラス搭載」)。シンガポール航空は同機を49機発注している。
シンガポール航空では、このボーイング 787-10型機をビジネスクラス36席、エコノミークラス301席の2クラス、計337席で運用する。同社が関空便で仕様していたエアバス A330-300型機が2クラス/285席だったのに対し約18%の増席となる。
同社はこのボーイング 787-10型機を日本路線に積極的に展開する計画。現在は2機を保有するが、5月中に新たに2機を受領する予定で、関空路線では今回導入したSQ619便/SQ618便に続き、夜間に関空を出発するSQ623便/SQ622便にも5月16日から導入。成田路線でも5月19日(成田発)からボーイング 787-10型機へ機材を変更する。さらに、2018年内に中部(セントレア)、福岡路線にも投入する計画となっている。同機の運航便は下記のとおり。
シンガポール航空の関空~シンガポール線
SQ619便:関空(10時55分)発~シンガポール(16時40分)着、5月3日発便から787-10型機での運航
SQ618便:シンガポール(01時25分)発~関空(09時05分)着、5月3日発便から787-10型機での運航
SQ623便:関空(23時25分)発~シンガポール(翌05時05分)着、5月16日発便から787-10型機による運航
SQ622便:シンガポール(13時55分)発~関空(21時35分)着、5月16日発便から787-10型機による運航
シンガポール航空の成田~シンガポール線
SQ637便:成田(11時10分)発~シンガポール(17時20分)着、5月19日発便から787-10型機での運航
SQ638便:シンガポール(23時55分)発~成田(翌08時00分)着、5月18日発便から787-10型機での運航
シートなどの機内プロダクトは、ボーイング 787-10型機用に新たに開発されたものを導入。36席のビジネスクラスは1-2-1の4アブレストで、全席通路へのダイレクトアクセスが可能なスタッガード配列を採用。フルフラット化が可能で、中央の2列部は、席が隣接している列と離れている列を交互に配置。中央2列が近い席ではディバイダー(仕切り)を閉じればプライベート感があり、開ければペアシートのような距離感といった使い分けができる。
シートはステリア・エアロスペース製で、ヘッドレストの周囲は遮音性の高いアルカンターラのファブリックを用いることで、静かな環境で休むことができる。シートモニターは18インチで、ユニバーサルAC電源、USB充電ポートを備える。
301席のエコノミークラスは3-3-3の9アブレスト。全席に11.6型のシートモニター、ユニバーサルAC電源(バルクヘッド座席以外は3席につき2個)、USB充電ポートを備えている。従来機材で備えていたフットレストを省くことで足下の空間に余裕を持たせているのも特徴となっている。
このほか、日本語対応が充実した機内エンタテイメントシステムや、機内Wi-Fiインターネット(パナソニック・アビオニクス製)なども備えている。より詳しいシートの仕様は先述の報道公開時のレポートに説明があるのでご覧いただきたい。
ちなみに、機内食についても就航を記念した特別メニューを提供する。ビジネスクラスでは、5月に京都伏見の山本本家「上撰 純米大吟醸 松の翠」を提供。初便となる5月3日運航便については、エコノミークラスでも松の翠を楽しめるという。また、エコノミークラスの和食メニューとして、京都の老舗料亭「菊乃井」の村田吉弘氏が考案した和食メニュー「鶏のしぎ焼き」を5月6月に提供する。機内食メニューも初便を記念した特別版が搭載されていた。
ボーイング 787-10型機の定期便初便となった、シンガポール発のSQ618便は、定刻よりもかなり早い、8時33分に41番スポットに到着。折り返しSQ619便となる同機の搭乗口前では、記念セレモニーが行なわれたほか、乗客に軽食やドリンクが振る舞われた。
また、初便を記念したアートケーキも披露。ボーイング 787-10型機や同社の乗務員、シンガポール、大阪それぞれの名所としてマリーナベイ・サンズと大阪城とサクラが象られており、多くの人が写真に収めていた。
セレモニーでは、シンガポール航空 コマーシャル担当エグゼクティブバイスプレジデント(副社長) のマック・スィー・ワー氏があいさつ。世界初のボーイング 787-10型機の定期便運航をスタートすることと併せ、「スクートを合わせるとボーイング 787型機ファミリー3機種すべてを運航する世界初の航空会社グループとなった。将来的には世界でもっとも多く787-10型機を運航する航空会社にもなる」と紹介。
初の就航地に日本が選ばれたことについては、「日本就航50周年を記念するとともに、長きわたる日本の皆さまの支援に感謝を込めて決定した」と説明した。また、セレモニー後の囲み取材では、「2019年のG20サミット、2025年の万博候補地として話題があることが分かっている地域なので、最初の就航地として大阪(関空)を選ぶのは自然なことだった」ともしている。
さらに、すでに就航日が決定している関空の1日2便、成田路線のほか、中部(セントレア)や福岡にも2018年中にボーイング 787-10型機への運航に変更することに言及。この日の搭乗客に向け、「当社のプレミアムサービスをお楽しみいただくとともに、この歴史的瞬間をカメラにたくさん収めていただければ」と呼びかけてあいさつを締めた。
ちなみに、セレモニー後に行なわれた囲み取材などでの話では、以前は圧倒的に日本発の日本人搭乗客が多かったが、昨今はインバウンド(訪日旅客)が急増。同氏は「日本市場に対してキャパシティ(供給座席数)を増やすのは当然の戦略だ」と話す。日本発旅客については、旅行代理店からの販売量がインターネット販売などを上回っているという。
また、このボーイング 787-10型機はプレミアムエコノミーなどがなく、座席数も同社の2エンジン機では最大規模の座席仕様となっている。この点について同氏は、「当社としてはプレミアムエコノミーは長距離、例えばシンガポールと欧米を結ぶ路線に適したものだと考えている。(同社がボーイング 787-10型機で想定している)6~7時間ほどの中距離ではビジネスクラスとエコノミークラスの2クラスがベストだと考える」と説明した。
ちなみに、同社が発表したニュースリリースなどでは、今回導入された機内プロダクトについては「20機」を対象とした投資であることが明記されているが、その後に導入される機材の仕様については、「導入時の需要などを考慮して決めるもの」とし、現時点では方向性なども未定としている。
セレモニーでは引き続き、来賓を代表して、関西エアポート 専務執行役員 最高商業責任者(航空担当)のグレゴリー・ジャメ氏が「シンガポール航空と引き続き親密な関係を築くとともに、シンガポールと日本のさらなる交流人口拡大、発展を祈念」とあいさつ。「より高く、世界に羽ばたくように」と祈りの言葉を贈った。
その後、主催者、来賓が集まって鏡開きを実施。「新井風味」による和装を身にまとってのダンスパフォーマンス、シンガポールの学校と1989年から音楽交流を続けている奈良県の帝塚山学園中学校・高等学校 弦楽部の高校2~3年生による演奏などが初便の祝福ムードを盛り上げた。
日本発初便となるSQ619便の搭乗客には、記念のコースターと、シンガポール航空のCA(客室乗務員)の制服に使われるバティック柄の布を使ってスタッフが手作りした花をプレゼント。さらに機内食提供時には、初便記念のオリジナルマカロンも配布される予定という。
同便は、事前の予約が100%となり、実際にも幼児1名を含む338名が搭乗する正真正銘の「満席」での運航。出発する同便を、新井風味のメンバー8名や多数の関係者が手を振ってお見送り。11時05分にスポットを離れ、11時32分にA(24L)滑走路から定期便として初めてのテイクオフ。運航乗務員2名、CA 13名、搭乗客338名を乗せてシンガポールへ旅立った。