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ANA、2017年3月期決算を発表。営業利益、経常利益とも過去最高

国際線旅客事業が全体を牽引。ピーチの連結化で国内LCC市場のシェアは2016年度で約52%に

2017年4月28日 発表

ANAホールディングスは4月28日、東京・霞が関の国土交通省において会見を開き、2017年3月期決算を発表した。写真左からANAホールディングス株式会社 財務企画・IR部リーダー 築館宏治氏、同社 執行役員 グループ経理・財務室長 福澤一郎氏、同社 グループ広報部長 髙柳直明氏

 ANAホールディングスは4月28日、東京・霞が関の国土交通省において会見を開き、2017年3月期決算と、2016~2020年度のANAグループ中期経営戦略について発表した。

 2017年3月期決算の発表は、ANAホールディングス 執行役員 グループ経理・財務室長の福澤一郎氏が担当した。

ANAホールディングスの連結経営成績

 マーケティング機能を担う「ANA X株式会社」の設立などで、連結経営成績の対象となる連結子会社は80社となる。

 まず、「売上高」は国際線旅客事業が好調ながら、円高の影響を受けて2016年3月期と比較して259億円のマイナスで1兆7652億円。「営業費用」は円高の影響や燃油価格の下落によって費用が減少したことに加え、事業規模を拡大するなかで費用抑制にも成功し、2016年3月期と比較して350億円のマイナスで1兆6197億円。

 これらの結果、営業利益は90億円プラスの1455億円、経常利益は96億円プラスの1403億円、親会社株主に帰属する当期純損益は206億円プラスの988億円となり、これらはグループにとって過去最高となった。

各事業ごとの内訳

 内訳は、国内線旅客事業ではサマーダイヤから羽田~宮古線を新規開設、関空~宮古線の再開、そのほか増便を実施するなど需要の取り込みを図る一方、需要に応じた各種割引運賃の設定などにより、旅客数は前期に比べて0.7%のプラス。一方で、低価格帯のプロモーション運賃が伸びたことや、他社との競合により単価は前期に比べて1.8%のマイナス。これらの結果、国内線の旅客収入は73億円マイナスの6783億円となった。

国内線旅客事業

 国際線旅客事業では、4月の成田~武漢線、9月の成田~プノンペン線を新規開設したほか、ウィンターダイヤから羽田~ニューヨーク/シカゴ/クアラルンプール線を新規開設、羽田空港の利便性を活用した需要の取り組みを図った。円高の影響や、燃油サーチャージの減少などにより、単価は前期に比べて10.2%マイナスになったが、海外発の訪日需要が引き続き堅調に推移したこと、日本発需要も好調であったことから、旅客数は前期と比べて11.6%プラスに。これらの結果、国際線の旅客収入は10億円プラスの5167億円となった

国際線旅客事業

 国際線貨物事業では、上期は単価面で伸び悩んだが、下期は旺盛な日本発、中国発の電子部品、自動車関連部品の需要を積極的に取り組んだことにより、輸送重量は前期に比べて17.7%プラス。一方で、今期から代理店向けの国際貨物販売手数料を廃止した影響により、約170億円のマイナス要因となった。これに加えて円高の影響もあり、国際線貨物の収入は218億円のマイナスとなった。

 以上により、航空事業全体の売上高は168億円のマイナスで1兆5363億円となった。

貨物事業

 全体を振り返ると、航空関連事業では、空港地上支援業務の受託増や、4月から新規連結会社を加えたことに伴い、325億円のプラスで2644億円。

 旅行事業では、パッケージツアーの集客は伸び悩み、国内の旅行は取り扱いが減少。また、テロの影響により上期を中心に欧州方面の海外旅行の取り扱いが減少したことから、67億円のマイナスで1606億円となった。

 商社事業では、機内販売をはじめとしたリテール事業、食品事業を中心に伸び悩んだことにより、35億円のマイナスで1367億円。

 以上により、連結経営成績における連結売上高は259億円のマイナス、トータルで1兆7652億円となった。

2016~2020年度のANAグループ中期経営戦略の「ローリング版2017」を発表

ANAホールディングスは同日、2016~2020年度のANAグループ中期経営戦略についても発表した。写真左からANAホールディングス株式会社 グループ経営戦略室 経営企画部長 峯口秀喜氏、同社 上席執行役員 グループ経営戦略室長 グローバル事業開発部長 芝田浩二氏、全日本空輸株式会社 企画室 企画部長 平澤寿一氏、ANAホールディングス株式会社 グループ広報部長 髙柳直明氏

 2016~2020年度のANAグループ中期経営戦略の発表は、ANAホールディングス 上席執行役員 グループ経営戦略室長 グローバル事業開発部長 芝田浩二氏が行なった。

 同社は2016年1月に中期経営戦略を策定しているが、1年が経過し、環境の変化を受けて、「ローリング版2017」としての発表となる。

 このローリング版での2017年度の大きなテーマは、2016年の環境の変化に対し、2020年の「成長ステージ」に向けて、「1.エアライン事業領域の拡大」「2.ノンエア事業の成長と加速」「3.攻めのスピード経営」が重要であるとした。

2016~2020年度ANAグループ中期経営戦略の「ローリング版2017」の位置付け

 2020年に向けた成長イメージについては、国内線はほぼ現状を維持する形になるものの、国際線は約140%の成長を見込んでいると説明。

 各事業の内訳として、LCC事業はピーチ(Peach Aviation)の連結化を果たし、ピーチとバニラエアのLCC2社のマーケットシェアは国内LCC市場において2016年度実績で約52%になっていると紹介。「2社のブランドを活用し、2020年に向けたLCC市場の成長におけるトップシェアを確実に獲得していきたい」と話した。

 既存の機材を活用した可能な範囲での新規開拓を進めていくが、新たな領域として中距離、この中距離は米国西海岸なども視野に入るレベルにおいて、検証も順次進めていくと意欲をみせた。

 バニラエアでは成田~奄美大島路線を運航しているが、奄美大島への経済効果が年間約42億円ともいわれ、「バニラ効果」と呼ばれていることに触れ、地方創生の観点からもバニラエア、ピーチともにLCC事業には大きな潜在力があると考えていると述べた。

 国際線旅客事業では、2020年に向けて成田、羽田双方で発着枠の拡大が見込まれるなか、これに向けて国際線ではエアバス A320neo型機、ボーイング 777-9X型機や787-10型機など、最新鋭機を順次導入する計画であり、エアバス A380型機は2019年にホノルル線に就航予定だが、導入に向けたハード・ソフト両面での準備も確実に進めていきたいとした。

 国内線旅客事業では、成長はほぼ横ばいを見込んでいるものの、高需要期における大型機材の稼働、低需要期における小型機の稼働と、需要に応じた効率の最大化を図る「ピタッとフリート」モデルを推進し、さらなる収益性の維持・向上を図っていくとした。

 エアライン事業の全体像としては、グループ全体での機材数が2016年度末の268機から、2020年度には約335機になる予定とのことで、フルサービスキャリアのANA、LCCのピーチとバニラエア、3つのブランドを活用して、国内線、国際線、短距離・中距離・長距離、ビジネス需要からプレジャー路線と、すべての需要を取り込んでいくと語った。

2020年に向けての各事業の成長イメージ

 ノンエア事業の売り上げはグループ全体の約2割、約4000億円強にあたるが、事業の好不調があるなかでも取捨選択、選択と集中を進めながら、ANAグループがもつ顧客データとICT技術との掛け合わせを行なうことで、新しい事業、新しい機会を作っていきたいとした。数値目標は、2017年度は2016年度と比較して増収、増益の計画を立てており、2020年度は売上高2兆1600億円、営業利益2000億円という、2016年1月29日発表時点の目標を据え置いて、引き続き取り組んでいきたいとした。

ANAグループがもつ顧客データとその分析力により、エアライン事業もノンエア事業もより成長させていくという
2020年度は売上高2兆1600億円、営業利益2000億円の目標を据えている