ニュース

ANA、2018年度第1四半期決算は増収減益。ボーイング 787型機欠航の影響旅客数は9月以降は4分の1以下に

欠航便を国際線、国内線に振り分け

2018年7月31日 発表

ANAホールディングスが2018年度第1四半期の連結業績を発表。会見する(左から)ANAホールディングス株式会社 財務企画・IR部 会計チーム リーダー 築舘宏治氏、同社 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長 福澤一郎氏、同社 広報・コーポレートブランド推進部長 髙柳直明氏

 ANAHD(ANAホールディングス)は7月31日、2018年度(2019年3月期)第1四半期の連結業績を発表した。前年度にピーチ(Peach Aviation)の連結子会社化に伴う特別利益があった影響などで増収減益となった。

 第1四半期の連結売上高は前年同期比7.3%増の4848億円と増収となる一方、燃油費が129億円増加したほか、中期経営計画に沿った航空機整備や人材投資など、安全と品質、サービスに関わる支出を行なったことによる営業費用増により、営業利益は同21.1%減の200億円、経常利益は同21.6%減の194億円、四半期純利益は同68.5%減の161億円の減益となった。

 ただし、営業利益、経常利益ともに前期に次いで過去2番目の利益水準であるほか、中期経営計画に沿ってCA(客室乗務員)の採用増や外部委託費、国内線Wi-Fi無料化などの安全や品質、人に対する投資を行ない、すべて計画内に収まっているとする。また、航空事業については社内計画よりも30億円ほど上振れしている状況だという。

2018年度(2019年3月期)第1四半期の連結実績
2018年度(2019年3月期)第1四半期のセグメント別実績

 その航空事業について、ANA国内線はゴールデンウィークの日並びのよさなどのプレジャー需要を確実に取り込んだことなどにより、旅客収入は前年同期比1.5%増の1568億円、旅客数は同3.0%増の1066万8000人、座席利用率は1.9pt増の66.4%と堅調な結果。

 国際線についても、日本発ビジネス需要、訪日需要が旺盛な中国路線が引き続き好調であることから、旅客収入は前年同期比12.0%増の1562億円、旅客数は同11.7%増の250万9000人、座席利用率は1.7pt増の75.3%となった。

2018年度(2019年3月期)第1四半期のANA国内線旅客事業実績
2018年度(2019年3月期)第1四半期のANA国際線旅客事業実績

 ピーチとバニラエアのLCC旅客収入は前年同期比9.2%増の211億円、旅客数は同8.7%増の199万7000人、座席利用率は1.0pt増の86.4%。増収の内訳は、ピーチが15億円増、バニラエアが2億円増となっている。

2018年度(2019年3月期)第1四半期のLCC事業実績

 また、貨物事業は北米・欧州向けの自動車関連部品、半導体部品などを中心に日本発海外向けの高単価貨物の需要が高く、前年同期比19%増の320億円の収入で、航空事業の売上増を牽引。なお、戦略的業務提携を結んでいるNCA(日本貨物航空)が整備記録改ざんなどで一時的に全機の運航を停止し、現在も2機のみで運航している状況となっているが、その影響についてはNCAの運航停止による顧客流入以上に、貨物需要の好調さからコードシェアによるNCAの貨物スペースが使えないことの影響の方が大きいとしており、第2四半期で1~2億円程度の減収を見ているという。

 マイレージ付帯収入や機内販売収入、整備受託収入などの航空事業収入は前年同期比7.8%増の507億円。航空関連事業は空港地上支援業務受託増などにより、売上高は前年同期比6.3%増の699億円、営業利益は同1.1%減の42億円となった。

 このほか、ANAセールスの旅行事業では、国内旅行は「ANAスカイホリデー」において沖縄方面を中心に集客が伸び悩んだことなどが影響して売り上げが前年同期を下まわった。一方、海外旅行の「ANAハローツアー」は、販売を強化しているハワイのほか、欧州の添乗員同行商品が好調に推移したことなどから前年を上まわる売り上げとなり、旅行事業全体の売上高は前年同期比0.7%減、2億円減の360億円となった。ただし、旅行システムの新導入などで費用が増加したことで、0億円の営業損失(7億円減益)となった。

 これらの第1四半期の実績は、は4月27日に発表した連結業績見通しのとおりにおおむね推移していることから見直しは行なわず、売上高2兆400億円、営業利益1650億円、経常利益1580億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1020億円のままとしている。

2019年3月期の連結業績見通し

ボーイング 787型機欠航は9月以降、影響旅客数大幅減に。国際線も一部欠航

 ボーイング 787型機に搭載しているロールスロイス製エンジンの点検整備に伴い、7月から国内線で欠航便が発生しているが、収入などについては第1四半期ではなく、第2四半期に影響が出ることになる。この影響の見通しとして、7~8月で35億円程度としており、国内線旅客収入で15億円、機材繰りのために影響が出る国際線の旅客収入で20億円程度を見込んでいる。また9月を含めた上期全体では最大で50億円程度の見込みとした。

 なお、現在は8月31日までの欠航便の情報が公開されているが(関連記事「ANA、ボーイング 787型機のエンジン点検による8月の欠航予定は378便。夏季繁忙期の羽田~伊丹線など予約受付開始」)、9月以降についての欠航便については、影響旅客数を最小限に留める方向で選定する方向性であることを明らかにした。

 具体的には、7~8月の欠航便は1日あたり17.5便、影響旅客数は同約2800名となっているが、9月以降は欠航便が1日あたり国内線約10便、国際線約5便。影響旅客数は国際線約300名、国内線約300名となる見込み。トータルで、欠航便は17.5便から約15便へと1割程度の減少だが、影響旅客数は2800名から600名へと4分の1以下になる。

 7~8月は繁忙期であったことに加え、9月以降については国際線を含めて予約状況を精査し、前後便への振り替えが可能な便など、代替手段を確保できる路線を中心に、欠航便を国内線、国際線で振り分けることで予約している旅客への影響を最小限に抑える。ただし、国内線、国際線ともに代替手段(振り替え便、提携他社便、新幹線など)を確保することを最優先するとしている。

 9月以降の欠航便情報については、事前の案内どおり8月9日までに告知する予定。10月28日からの冬期スケジュール以降については、エンジン点検整備による影響を含めた事業計画を行なうため、事業計画のなかで減便などはあるが、欠航はなくなる予定。旅客輸送量を示すASK(座席キロ、総座席数×輸送距離/km)は数%減る見通しだという。