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ANAHD、「攻めのスピード経営」による過去最高益で開催した第72回定時株主総会

終始穏やかな総会運営

2017年6月23日 開催

ANAホールディングス株式会社の第72回定時株主総会が開催

 ANAHD(ANAホールディングス)は6月23日、都内で第72回定時株主総会を開催した。議長はANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏が務め、株主の出席は前期から472名減って2111名。議決権を行使した株主は15万8576名だった。

 総会の冒頭、株主の理解を促すために映像を交えて紹介された2016年度の事業報告と2016年~2020年度の中期経営戦略(ローリング版2017)については、すでに本誌でもお伝えしているとおり。営業利益・経常利益とも過去最高で、後者は前期比7.4%増の1403億円であった。経営戦略では、「攻めのスピード経営」を掲げて2020年度に売上高2兆1600億円を目指すことなどが示された。

 また決議に先立ち、4月に株式を追加取得して連結子会社となったピーチ(Peach Aviation)についてその狙いと意義を説明した。そのあと登壇したピーチ 代表取締役CEOの井上慎一氏は、20代~30代の女性客が多く、韓国や台湾など近距離のアジア圏で週末に女子会を開くなど、「こちらが思ってもいなかった使い方をしてもらっている」と同社の独自性をアピールし、さらに磨きをかけていくと話した。

 総会に上程された議題は、普通株式1株につき配当を6円とする件(第1号議案)、全国証券取引所が取り組んでいる株式の売買単位統一に合わせて、単元株式数を現在の1000株から100株とする(第2号議案)、第2号議案のために定款を一部変更する(第3号議案)、取締役10名の選任(第4号議案)、監査役2名の選任(第5号議案)の5つ。

 質疑応答の前に、事前に提出された質疑4通についての回答が行なわれ、その後12名が発言した。以下、代表的な質疑応答を紹介するが、議事は終始穏やかに進行した。

 海外旅行商品の「ANAハローツアー」を愛好しているという株主からは、旅行事業の売上高減少はラインアップ不足が原因ではないかという質問が寄せられた。これについては4月から改革を進めており、添乗員が同行する商品の店頭販売を休止し、電話やWeb経由での販売に力を入れていくとしたが、Webサイトの見やすさには改善の余地が残ると課題を挙げた。

 2014年から取り組んでいるMPL訓練について、パイロット(運航乗務員)の技量不足を心配する声に対しては、機長に万一の事態が起こっても副操縦士1人で運航・着陸できるだけの技量は備えており、安心して乗ってほしいと説明した。

 女性が活躍する場を設けているかという質問については、女性の登用がグループの品質を支える鍵になっていると回答し、2014年には「ポジティブアクション宣言」として、女性役員を2名以上(達成済み)、女性管理職比率を15%以上(現在13%)、総合職・CA(客室乗務員)における女性管理職比率を30%以上(現在20%台)を目指していると、具体的な数値目標を紹介した。

 三菱航空機のMRJ導入が遅れていることについては、2020年半ばに初号機がデリバリーされる予定であるとしたうえで、ボーイング 737-500型機の退役延長や4機の737-800型機のリース、ボンバルディア DHC-8-Q400型機の追加などで対策していると述べた。

 株主優待券がハイシーズンに利用できないことがあり、魅力が足りないという指摘については、2016年6月搭乗分から夏期や年末年始など一部の期間で制限を始めていると説明し、株主優待割引の利用が増えており、ハイシーズンに利益を確保するためやむを得ない措置と理解を求めた。

 他社と比べて配当性向が低い、40%くらいにすべきという要望については、当期は21.3%で1株6円だが、2013年度の1株3円から毎年1円ずつ増やしている現状を説明し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた投資が近い将来の発展につながると説明した。

 パイロットの養成と確保をどう考えているかという問いに対しては、航空会社にとって中長期的なリソースは機材とパイロットであるとして、航空大学校や養成コースを持っている大学、すでにライセンスを持っている外国人、元自衛官などの採用を行なっていると回答。また、ライセンス保有者向けのシミュレータ訓練会社panda Flight Academyを設立したことも紹介した。

 富山から来たという男性が地方路線の縮小について問いただしたところ、非常に大きな課題という認識を示した一方、長い目で見ると大きな決断をする可能性があるとさらなる縮小を示唆した。

 バゲージクレームでの待ち時間を嫌って機内持ち込み手荷物が大きくなり、結果その収納に時間がかかって通路を塞ぎ、搭乗が進まないという指摘に対しては、問題点はかなり以前から認識しているが、空港を含む構造上の問題で、大変難しいと回答。しかし、1分1秒でも時間短縮すべく努力を続けていると話した。

 なお、上程された議題はすべて原案どおり可決され、総会は閉幕した。