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ANA、2017年度(2018年3月期)連結決算は3期連続過去最高を更新する増収増益

2018年度は増収予想も、「攻め」の投資で前期並みの経常利益を想定

2018年4月27日 発表

ANAHDが2017年度(2018年3月期)決算を発表。中央が説明にあたったANAホールディングス株式会社 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長 福澤一郎氏。左は同 財務企画・IR部 会計チーム リーダー 築舘宏治氏、右は同 グループ広報部長 髙柳直明氏

 ANAHD(ANAホールディングス)は4月27日、ANAグループの2017年度(2018年3月期)連結決算を発表した。グループ連結売上高は前年比11.7%増の1兆9717億円、営業利益は同13%増の1645億円、経常利益は同14.4%増の1606億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同45.6%増の1438億円の増収増益となり、各利益については3期連続で過去最高を更新する決算となった。

 ANA(全日本空輸)の国内線、国際線、今期から連結子会社となったピーチ(Peach Aviation)、バニラエア、国際線貨物などの航空事業については、売上高、営業利益ともに増加。

 ANAの国内線旅客収入は前年比1.7%増の6897億円、旅客数は同2.8%増の4415万人、座席利用率は2.9pt上昇の68.9%。各種割引運賃の柔軟な設定による需要喚起や、6月からの中部~宮古線就航、冬期スケジュールからの羽田~広島線の最終時間帯増便などの需要動向に応じた路線構成を、増収の理由に挙げた。

 ANAの国際線旅客収入は、前年比15.6%増の5974億円、旅客数は同6.8%増の974万人、座席利用率は0.5pt上昇の76.3%。日本発のビジネス需要や、8月以降の中国路線の訪日需要などが好調。単価も前年より8.2%増加したという。

 LCC事業では、2017年度から連結子会社化したピーチが、売上高が546億円、営業利益が59億円。運航乗務員不足による影響で若干の減益となった。バニラエアは売上高329億円、営業利益8億円と黒字に転じた。

 国際線貨物事業は、日本発欧米向けの自動車産業部品、中国向けの半導体・電子部品などの需要を取り込み、輸送重量、単価ともに向上。前年比26.5%増の1180億円となった。

 このほか、航空関連事業は地上ハンドリングや整備などの業務受託増加により増収、旅行事業はハワイの取り扱いが増える一方で国内旅行のパンフレット商品が伸び悩んだことで減収となり、前年並みの営業利益となった。商社事業は空港の免税店販売の増加などで増収となっている。

ANAホールディングス株式会社 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長 福澤一郎氏

 2018年度については、2月に発表した中期経営戦略の初年度となり、2017年度に引き続き経営基盤を固める年の位置付け。2019年度以降の成長ステージに向けた備えを行なう年であるとし、売上高は2017年度比682億円増の2兆400億円、営業利益は同4億円増の1650億円、経常利益は同26億円減の1580億円、純利益は同418億円減の1020億円を見込む。

 増収減益の予想となる点については、安全、サービス、人への投資として人件費や外部委託、減価償却費などの費目が中心。フリーキャッシュフローでも450億円のマイナスを見込んでおり、説明にあたったANAHD 執行役員 グループ経理・財務室長 兼 財務企画・IR部長の福澤一郎氏は、「中期経営計画でも出したとおり初年度は投資が多く、経営として理解したうえで攻めのキャッシュフロー」「先行してコストがかかる局面だが、将来に向けての成長のために、いまかけるべきコストと判断。重要な経営資源になると思うものには積極的に投資する」と話した。

 2017年度に好調だった貨物事業は、ANAのネットワークを活かしたベリー(旅客機の貨物スペースでの輸送)を含めて速報値では黒字化になるとのことで、社内の士気も上がっているという。中期経営計画でも触れられ、3月23日に発表があったとおり、大型貨物機としてボーイング 777F型機を2019年度から導入することも決定している。現在、大型貨物機についてはチャーター機で対応し、2017年度はチャーター収入で8億円程度だが、これを2018年度には約60億円弱まで伸ばす計画で、福澤氏は「米中貿易などの懸念材料はあるが商材が違うので直接影響は受けない。注視しながら攻めるところは攻めたい」と積極的な姿勢を示した。

 また、LCC事業については、2019年に両社が合併することについては既報のとおりだが、統合プロセスで生じる費用として、「保守的な数字として」と前置きしたうえで「2018年度は移転費用などの諸々を加味して20億円程度を見込んでいる」と説明。2018年度はピーチが売上高640億円、営業利益50億円、バニラがそれぞれ360億円、10億円の規模を想定。ピーチは減益予想となるが、これは航空機のリース返却に伴って発生するコストを織り込んでいるという。