旅レポ

中国返還20周年を控える香港のいま(その2)

4番目に大きい長洲島へ行ってみた。饅頭節に海産物豊富の島

長洲島にある古いお寺である玉虚宮

 香港は大小さまざまな島で構成されており、最大の大嶼島(ランタオ島)、2番目に大きい香港島が主要なエリアとなっているが、全部で約260の島々があるそうで、その中には観光のできる島もある。香港政府観光局が主催したプレスツアーでは、その中で長洲島(チュンチャウ島)へ訪問したので紹介したい。

 長洲島は、香港では4番目に大きい島とされる。香港の多くの島は無人島だが、長洲島は有人であり、香港島から船でアクセスできる。香港島北部にあるフェリー乗り場から乗船し、高速船では35~40分ほどで着く。フェリー乗り場は、スターフェリーも出港する中環碼頭(Central Pier)の5号乗り場。普通船と高速船の2種類があり、どちらも長洲島に直行するが、普通船では時間がかかるので、高速船を利用した方がよいようだ。価格は普通船の普通船室が13.2香港ドル(約185円、1香港ドル=14円で換算)、高速船が25.8香港ドル(約362円)だった(日曜と祝日は高くなる)。

香港島の中環にあるフェリー乗り場セントラルピア。5号乗り場が長洲島行き
乗船する高速船。2階建てで下層も上層も値段は同じだが、船外には出られない。普通船は乗船中に船外に出られるらしい

 長洲島は基本的に漁業の島だが、旧暦の4月8日(毎年4月~5月頃)に開催される「長洲饅頭節」が有名。14mの竹で編んだタワーに大量の饅頭を取り付け、そこに若者がよじ登り、ひたすら饅頭を取って数を競うというもの。より高いところの饅頭を取った人の方がよいとされるため、見た目にも迫力があってたいへん盛り上がるそうだ。ちなみに、昔は本物の饅頭を使っていたそうだが、最近はプラスチック製になっているという。

漁業の街らしく、港には船が沢山停泊している。フェリー乗り場は島の西側にある
フェリー乗り場前のメインストリート。ちなみにマクドナルドの看板が見えるが、饅頭節の時期のみ、オリジナルのメニューも出すそうだ

 祭り自体は、正式には「長洲太平清ショウ(酉へんに焦)」(Cheung Chau Bun Festival)と呼ばれ、仮装した子供の行列などが日中から行なわれているが、メインイベントは深夜にまでおよぶ競争だ。

港の風景

 いずれにしても今回は祭りの時期ではないため、その時ほどのにぎわいはない。もともとあまり外国人観光客は多くはないそうだが、高速船ですぐにアクセスできるため、海鮮料理を食べに来る香港人が多い、という話だった。船代を出して食事をしても、お釣りが出るほどレストランが安い、ということらしい。

 フェリー乗り場のあるメインの通りは、確かにレストランが建ち並んでいて、海産物をアピールしている店が多い。実際、エビ、カニ、貝と、さまざまな料理を頼んでみても、いずれも中心部よりも安いそうだ。

 今回、昼食のレストランとして選んだのは、メインの通り沿いにある「興楽菜館」。テラスでの食事もできて、季候のよいタイミングであれば気持ちよさそう。周囲には似たようなレストランが並ぶので、気に入ったところに入るとよいだろう。

メインの通り沿いのレストランと同じならびには魚屋さんも
興楽菜館

 いわゆる香港のレストランらしく、最初にお茶とタライが出てきて、食器をそれで洗うことができる。新しいレストランではあまり見られないが、古いレストランだと、取り皿と箸、コップに続いて注文する前にお茶とタライが出されることがある。そうしたら、コップに熱々のお茶を注いで箸やレンゲを入れてジャブジャブしたり、お皿にお茶を入れてタライにお茶を捨てる、といった“洗い物”を行なう習慣がある。

洗い方に特に作法はないようだが、コップにお茶を入れてその中で箸とレンゲをジャブジャブ洗うなど、基本的には豪快。洗い終わったお茶はタライに捨て、改めてグラスにお茶を注いで飲む

 タライとお茶が出てきたからといって別段何もしなくてもいいし、タライが出てこなければやる必要もない。店で洗い物をしていないというわけではないが、習慣的な部分なので、興味があれば試してみるといい。

 さまざまな料理がメニューにはあるが、海産物を中心に、揚げ物から炒め物まで、どれも美味しい。エビやシャコ貝、カニなどは、店にあるのは小ぶりなものだそうだが、大きいものを頼んでシェアしたいというと、そばの魚屋から買ってきて調理してくれるらしい。それには店員とのコミニュケーションが必要になる。とはいえ、普通にメニューから選んだものでも、どれも味は濃いめだがうまい。

麺類、エビどちらも美味しい
野菜炒めまでどれも美味しい
大ぶりのシャコは別途魚屋から仕入れてもらったもの
カニの揚げ物はピリ辛でビールが進みそうな味
帆立もたっぷり
中国料理はやはり大人数でシェアしながら食べると、色々な種類を楽しめる

 満腹になるまで頼んで1人3000円しないレベルだったので、確かに安い。食事の質と量を考えれば、3000円以下で満腹まで海産物を食べられるのはよい。

 食後は、島内の散歩もおすすめ。それほど大きな島ではなく、半日もあれば主要な場所は見てまわれる。レンタサイクルもあるので、それを使ってもよい。島内にはガソリンスタンドがないそうで、緊急車両を除いて基本的にガソリンを使った自動車やバイクは走っていないので、信号もない。狭い路地に建物が入り組んでいるので、車やバイクの利用はそもそも想定されていないようだ。

 町並みは古い香港というイメージで情緒があり、あいにくの雨模様でも雰囲気がある。香港内の海水浴場としても人気で、歩けばすぐに砂浜にも行けるので、晴れていれば海岸沿いの散歩もいいだろう。

 古い町並みだけでなく、若い人が経営する新しい店も増えているようで、昔ながらのレストランに加えて、オシャレなカフェや雑貨屋もあって、新旧が入り交じった街を楽しめる。

 例えば雑貨屋の「小島手製産物 島中坊研」は、長洲島出身のSteven ChoiさんがパートナーのAmyさんと製作したバッグや小物、ほかのアーティストから買い付けた小物を販売しており、「島で子供の頃に遊んだ思い出をヒントに」(Choiさん)デザインしたバッグなど、独特なデザインの商品を販売している。基本的に2人で製作しているが、企業などから大量発注があった場合は、島のご婦人方に縫製などで協力してもらっているそうだ。

少し歩くとすぐに東側の海岸線に出られる
その道沿いにある島中坊研
左がSteven Choiさん
Choiさんがデザインしたバッグも販売されている
各種雑貨もあり、セレクトショップ的に日本の商品も販売されているようだ

 ほかにもカフェレストランの「赤點(RedPoint)」、美容室の「RED HAIR」といった、新しいシャレた店構えの店があって、古い町並みにアクセントを添えている。建物自体が新しくなっているわけではないので、新旧が入り交じった雰囲気も面白い。

オシャレなカフェや美容室も
昔ながらの店も多い

 古くからある食堂や、饅頭節の饅頭を作る「郭錦記餅店」といった地元に根付いた店ももちろん健在で、色々なスタンスで楽しめる島という印象だ。

饅頭節の饅頭。3種類の味があり、1個8香港ドル

 夏は海岸まで出て海水浴も楽しめるし、香港の中心地での観光の合間に、ちょっと船旅と食事に来る、という感覚で気楽に訪問できるのもいい。もちろん、饅頭節を目当てに来てもいいだろう。香港観光に慣れた人でも、意外にまだ訪れたことがないという長洲島。ちょっと普段と違う香港を堪能しに訪れてみても面白いかもしれない。

200年以上の歴史を誇る玉虚宮は、フェリー乗り場からほど近くにある。清朝時代の建立だが、宋朝時代の鉄剣があるなど、歴史的なみどころもあるそうだ

小山安博