旅レポ

ハロン湾に浮かぶクルーズ船で一夜を明かす悠々トリップ。ハノイ観光の定番にスパイス

いざ、世界遺産・ハロン湾へ。クルーズ船の上で1泊するツアーに参加した

 ベトナム航空とハノイ観光局が開催したFAMツアー(視察・研修ツアー)レポートの続編。ハノイ観光の定番スポットであり、ベトナムに7か所ある世界遺産の一つでもある「ハロン湾」での滞在を取り上げる。

 1994年にユネスコの世界自然遺産に登録されたハロン湾。大小の岩礁や島が点在し、自然の造形美を堪能できるスポットとして人気が高い。空港からハノイへ直行するものも含め、多くの現地ツアーが実施されているハノイ観光の目玉の一つでもある。

 ただ、ハノイからはクルマ(バス)で片道4時間~4時間半ほどかかる。仮に日帰りで行こうとすると往復で8~9時間を見る必要があり、朝早く出て、夜遅くに帰ってくるとしても、現地に滞在できる時間は数時間。ハロン湾観光は船に乗って沖に出るので、見どころを1周まわって終わり、といったことになってしまう。そのため現地ツアーでも、ハロン湾近くのホテルに1泊するものが多いという。

 しかし今回は、「クルーズ船の上で1泊」というプラン。バスでハノイからハロン湾の港(フェリーターミナル)へ行き、そこで船に乗ったら翌日まで湾の上。翌日のお昼ごろに地上に戻ってハノイへ帰るという、時間の使い方だけ見ても贅沢な内容だ。

 ちなみに、2018年9月1日にハイフォン~ハロン間の高速道路が開通。すでに開通していたハノイ~ハイフォン間と合わせ、ハノイ~ハロン間が高速道路で結ばれることになった。この道路を使うと2時間半ほどでアクセスできるとのことで、日帰りでも、もっとハロン湾を深掘りできるツアーが登場する可能性はある。一方、ツアー催行側としては高速道路の料金がコスト高になるとの見方があり、どちらのルートが主流になるかは量りかねているようだ。

 ともあれ、記者が訪問したのは8月で、開通のほんの少し前。ほんの少しであっても高速道路がつながっていないことに変わりはなく、いわゆる従来のルートを使い、4時間ほどバスに揺られてハロン湾へ向かうことになった。

 道中は寝て過ごすのもよいのだが、車窓をじっくり見て過ごすことをお勧めしたい。昔から変わらないのであろう畑や水田、フランス統治時代の名残りのような欧州風の建物、畑の隅に建つベトナム戦争の戦死者のお墓、そして日本や韓国の企業が建てた工場など、ベトナムという国の歩みを短い時間で感じることができる。

 そんなことを考えながらバスに揺られていると、途中でトイレ休憩としてお土産物屋さんに立ち寄り。ツアーでは定番のルートらしく、ドライバーの休息も兼ねて長めの休憩時間がとられる。

 ここには、いろいろなお土産物が並んでいる。復路でも別のお土産物屋さんに寄るので、ハノイからの現地ツアーでお土産を買うなら復路の方が便利だろう。往路では(結局買わなかったのだが)湾上で過ごすことを考えてビーチサンダルやノンラー(笠の帽子)を買うかどうか悩んだ。結果的にビーチサンダルはあった方がよかった、という思いが残ったので、もし持参していなかったらこういう場所で調達するのもありだ。

ハノイからハロン湾へと向かう車窓にはベトナムの今と昔がぎゅっと詰まっていた
ドライバーの休息を兼ねてお土産物屋さんに立ち寄り

 ということで、予定どおり4時間ちょっとかかってハロン湾の港に到着。利用したのは、Paradise Vietnam(パラダイス・ベトナム)が展開する「Paradise Cruise(パラダイス・クルーズ)」だ。いくつかの船を有しており、今回乗ったのは、一番新しい「Paradise Elegance(パラダイス・エレガンス)」というクルーズ船。

 31室の客室があり、すべてバルコニーまたはテラスを備えている。総トン数は資料にないが、おそらく1000トンあるかないかというサイズでクルーズ船としては小型。しかし内装は豪華で、距離は短いものの船旅を満喫できる。

今回乗船したParadise Elegance(パラダイス・エレガンス)

 船内や行程については追々記していくとして、まずはチェックイン。Paradise Vietnamが運営するホテルのロビーで手続きを行なう。ここで、乗る船を示すゴムバンドと、客室のカードキーが渡される。

 その後は電動カートに乗ってターミナルへ移動。ターミナルにずらっと並ぶ船を見ると、否が応でも期待が高まってくる。アオザイを来たスタッフや、花吹雪の出迎えを受けて、いよいよ乗船。乗船後はレストランでウェルカムドリンクや、アオザイを来たスタッフによるダンス、スタッフのウェルカムスピーチと、歓迎の気持ちが伝わってくるイベントが続く。

Paradise Cruisesの発着ターミナル

Paradise Vietnamが運営するホテルのロビーで、Paradise Eleganceにチェックイン
乗船に際して、船の記号が書かれたゴムバンドを着ける
客室のカードキーもチェックイン時に渡される
チェックインした場所から港のターミナルまでカートに乗って移動
Paradise Cruiseのターミナルに並ぶ多数の船
アオザイ姿のスタッフがお出迎え
乗船の瞬間、頭上から花吹雪が
ウェルカムドリンクに……
ウェルカムダンス。歓待が続く
スタッフによるあいさつ。そのあとで緊急脱出方法の説明などが行なわれる

 そんな歓待を受けている間に船は出港。最初の目的地まで30~40分ほどの時間があり、その間にビュッフェ形式のランチが用意される。客室に行って身支度もしたいし、ハロン湾に向かう船からの眺めも堪能したいしと、意外に慌ただしい。

 記者はとりあえずハロン湾の写真を何枚か撮ったのちに、客室へと向かった。客室構成は、デラックス・バルコニー・キャビンが14室、エグゼクティブ・バルコニー・キャビンが13室と、31室中のほとんどをこの2タイプが占めている。あとはエレガンス・バルコニー・スイート、キャプテンズビュー・テラス・スイートというスイートルームが2室ずつとなる。

 デラックス・バルコニー・キャビンとエグゼクティブ・バルコニー・キャビンは船の左右舷に沿って並ぶ部屋で、内装の作りは同一。違いはメインデッキ(1階)にあるか、アッパーデッキ(2階)にあるかだけの違いだ。それぞれにツインベッドタイプとダブルベッドタイプが用意されている。

 25m2のスペースに大きなダブルベッドが置かれているので、ややコンパクトな部屋に感じるものの、木目を活かしたデザインに高級感がある。洗面台、トイレ、シャワーも部屋ごとにそれぞれ用意されており、トイレはもちろん水洗。洗面台やシャワーの水圧が低くて使いにくいといったこともなく、地上のホテルと比べてなんの違和感もなく過ごせる。

 とくにうれしいのはシャワーの存在で、1泊2日の間にさまざまなアクティビティがあり、屋内と屋外を行き来する機会が多い。どうしても体がベトベトしがちなので、部屋に戻って、気軽にシャワーを使えるのは本当にありがたかった。

 このほか船内施設としては、3階相当の部分がレストランとピアノバー、4階相当の部分が屋外デッキになっている。

客室。ダブルベッドタイプのエグゼクティブ・バルコニー・キャビン
ベッドサイドのコンセントやテレビを備えるなど地上のホテル並みの設備
洗面台やシャワールーム。シャワーが各部屋に備わっているのは潮風が吹く船旅にはありがたい
アメニティは歯ブラシ、石けん、シャンプー、シャワージェルを備えていた。ガウンも用意されていて便利
全客室にバルコニーまたはテラスを備えている
エントランス
エントランスに先に伸びるメインデッキの通路
船内に4室あるスパ
夜はピアノ演奏やシンガーによる歌声も楽しめるバー
レストラン。1日目の昼食と夕食、2日目の朝食が付いており、すべてこのレストランでいただく
デッキ

 ランチをいただきつつ、デッキに出てみた。慌ただしいなかで、うっかり見逃すところだったが、ネットや雑誌で見たことがあるようなハロン湾の風景が、はやくも目の前に広がっていた。出港から20~30分ほど。岩礁が林立する様子を見られるエリアまでの距離がこれほど近かったとは。

 ちなみに、船が出港したのは12時30分ごろだったのだが、同時間帯に出港する船は多いようで、同じ航路を目指して多くの船が集まってきている。その様子はさながらポジション争いに繰り出す漁船のよう。とはいえ、そこは観光船。激しい先陣争いはなく、気が付けば列を成して整然と進んでいく。

 そうして10分も経つと、たくさんの商品を積んだ小舟が近づいてくる。ハロン湾名物(!?)の売り子さんだ。バルコニーに出ると必ず声を掛けられると思ってよい。押し売りに弱い性格なので「アッパーデッキでよかった~」と心から思ったことを告白しておくが、アッパーデッキとも商品やお金のやり取りができるよう、柄の長いタモが小舟に積んである。

ビュッフェ形式で提供されるランチ。お寿司があったのに驚き、日本風なお寿司の味わいにまた驚いた(つまり美味しかった)
出港から30分もするとハロン湾らしい風景が広がる
美しい風景とともに、観光船をはじめとする多数の船がハロン湾の奥へと進む姿も面白い
ハロン湾名物(!?)の船の売り子さん。凪いだ湾とはいえ手漕ぎで自由自在に動きまわるプロの技も見どころ

鍾乳洞やカヤック体験、餃子作りなどアクティビティが目白押し(1日目だけで)

 さて、いよいよ最初の目的地である「サン・ソット・ケーブ(Sung Sot Cave)」が近づいてきた。上陸に際しては、Paradise Eleganceからテンダーボートに乗り換えて移動。ライフジャケットの装備が必須だ。

 ちなみに、Paradise Elegenceの1泊2日ツアーには、ハロン湾への入場料やサン・ソット・ケーブやそのほかの島への上陸料も含まれている。今回は、上陸時にガイドさんからチケットを渡されて入島。島を出るときに再びチケットを回収という仕組みだった。目視による人数とチケット枚数のダブルチェックにより、島に居残る人がいないようにしている。

 このサン・ソット・ケーブは、その名のとおり洞窟のある島。洞窟といっても鍾乳洞で、長い時間をかけて作られた不思議な造形の岩を見ることができる。ハロン湾の岩礁や島は外から見ても“奇岩”といえるものばかりだが、中も“奇岩”というわけだ。

 実はこの散策は少し体力がいる。島に入ったら、いきなり急角度の上り階段が待ち受けており、そこを登り。そして洞窟に入るために階段を下りる。洞窟内をぐるっとまわったあと、再び急角度の階段を上がって、帰るために急降下、といった具合だ。

 それぞれの階段を上りきったところは展望台になっていて、入り江になっているサン・ソット・ケーブを俯瞰することができる。この眺めだけでも清涼剤だし、想像いただけると思うが洞窟内も涼しい。寒暖差に弱い人は1枚羽織れる上着を用意しておいた方がよいかも知れないが、気持ちのよい時間を過ごせる場所だ。

最初の目的地への移動に向けてテンダーボートに移乗。ライフジャケットは欠かせない
「サン・ソット・ケーブ(Sung Sot Cave)」へ
サン・ソット・ケーブではいきなり急階段を登ることに……
そこには美しい風景が待っていた!
今度は下って洞窟の中へ。鍾乳洞らしい奇岩が並ぶ。ヒンヤリした空気も心地よい
洞窟を抜けるときは再び階段を上がって展望台へ
展望台から洞窟を見た様子
こちらもなかなかの風景だったが、個人的には最初の展望台の眺めの方が好み
再び階段を下りてテンダーボートが待つ出口へ
テンダーボートに乗って母船であるParadise Eleganceへと帰る

 Paradise Eleganceに戻り、再び船は動き出す。次は、シーカヤックの体験だ。これはオプションで、カヤック1台につき20ドル(約2300円、1ドル=約115円換算)。1名乗りでも、2名乗りでも20ドルなので、一緒に参加する仲間がいれば1人あたり10ドルということになる。

 いうまでもなく、これも体力がいる。正直ちょっと驚いたのだが、なんのレクチャーもなく、いきなりカヤックに乗って海へ繰り出すことに。移動できる範囲の仕切りはあるのかないのか分からず、少なくとも目の前に広がるエリアは制限がないように見える。時間だけは決められているので、戻るのに要する時間だけは意識する必要があったが、とにかく自由度が高い。

「カヤック初体験なんですけど……」とか、「繰り出した先でなにかあったときはどうしたら……」とか、不安の方が大きいまま繰り出した(投げ出されたといった方がよいかもしれない)のだが、一度海に出てしまえば、ひたすら楽しい。

 この自由度の高さから岩礁には間近に迫れ、水面スレスレからの視点で、そびえ立つ岩礁を望むことができる。当初の不安はどこへやら。「泳ぐよりは簡単かな」と思うと、この眺めを楽しめるカヤック体験は最高の贅沢かもしれない。

 ちなみに、このアクティビティに参加する気がない人もヒマを持てあますことはない。カヤック乗り場は真珠の養殖をやっていて、博物館とショップのようになっているので、きれいな真珠を眺めつつお土産を買うのも一つの手だ。さらに、Paradise Eleganceにアフタヌーンティーも用意されているらしい(記者はカヤックに参加したので実物を見ていない)ので、もっと優雅に過ごすこともできるそうだ。

なんのレクチャーもなくカヤックで自由の海へ。間近に迫る岩礁を、低い視点から見上げるように楽しめる

 ここまで、船の出港から4時間強。そこから1時間ほどのインターバルをおいて、次のアクティビティ「クッキングデモンストレーション」がデッキではじまる。その名のとおり料理の実演で、乗客も参加できるワークショップスタイルになっている。

 今回作ったのは「揚げ春巻き(Fried Spring Roll)」。ベトナムというと生春巻きのイメージが強いが、実は揚げ春巻きも多く、特に北部では揚げ春巻きの方が主流だという。

 デモンストレーションは、使用する食材を紹介して混ぜ合わせ、皮への巻き方を紹介。皮に巻く作業を乗客も参加して楽しむことができる。それを実際にその場で揚げて、乗客に提供。ディナー前のちょっとした腹ごなしになる。

 このクッキングデモは、ちょうど日が暮れていくころに行なわれたので、屋外のデッキで沈みゆく夕陽を見ながら楽しむのもよい。この日は低い雲があったのできれいな夕陽は見られなかったが、それでも赤く焼けていく空を見たり、気が付くと周囲を船に囲まれていたりと、時間とともに移りゆく変化を楽しめた。ここは夜の停泊地で、周囲の船も、同様にハロン湾で一夜を過ごす仲間だった。

「揚げ春巻き」を作るクッキングデモンストレーション兼ワークショップ。手と舌に旅の思い出が残る
日が暮れて空の色が変わっていく
気が付くと周囲にはライトを灯した多数の船
船から遠方に望む夜景。「吊り橋と観覧車が並んでてお台場みたい」と思ったが、あとで調べたらこの橋は「バイチャイ橋」という斜張橋だったので、「横浜みたい」に考えを改めた

 このあとは、再び1時間ほどの間をおいて、本当のディナーが待っている。メニューは東洋料理、西洋料理にそれぞれ前菜3種、スープ1種、メイン5~6種、デザート3種から選べる本格的なコース料理だ。しかも前菜は東洋料理、メインは西洋料理のように組み合わせることもできる。

 記者は前菜とサイドディッシュを西洋料理から、スープとメイン、デザートを東洋料理からチョイス。

前菜:「Smoked salmon served with black caviar」(西洋料理)
スープ:「Sweet corn and chicken soup」(東洋料理)
メイン料理:「Grilled Halong fish fillet with local herbs, roasted peanuts, mint, coriander, rice crackers and dipping sauce, served with fresh rice noodles」(東洋料理)
サイドディッシュ:「Mashed potatoes」(西洋料理)
デザート:「Deep-fried banana with caramel syrup and ice cream」(東洋料理)

 特に印象に残ったのはメイン料理。英語のメニュー名を見て、シーフードを使ったフォーみたいな料理をイメージして頼んだが、予想を裏切る「春巻き」に近い料理。お皿を出されたあと一瞬きょとんとしてしまったが、そこはウェイターさんが作り方を教えてくれて一安心。スパイスを効かせた魚は単品で食べても美味しく、ベトナムらしい料理を味わえて大満足だ。

ディナーをいただくころ、バーでは生歌のパフォーマンスが始まった
レストランはディナーのセッティング
前菜の「Smoked salmon served with black caviar」
東洋料理メニューのスープ「Sweet corn and chicken soup」
見た目がきれいだったので撮らせてもらった西洋料理のスープ「Broccoli and spring potato soup」
メイン料理は「Grilled Halong fish fillet with local herbs, roasted peanuts, mint, coriander, rice crackers and dipping sauce, served with fresh rice noodles」。魚やライスヌードル、野菜などを皮を巻いて楽しむ生春巻き風の料理
デザートに選んだ「Deep-fried banana with caramel syrup and ice cream」

 ディナーのあとは朝まで自由時間。この間にイカ釣りを楽しむこともできたのだが……釣果についてはノーコメントとしておきたい。1時間ほど粘ったころ、ガイドさんが「いま(8月下旬)はイカのシーズンじゃない」とぼそっと口にしたのを耳にして撤収した。

ディナー後には船尾でイカ釣りに挑戦できる。「イカ釣りを楽しめる」と表現しないことで釣果報告に代えさせていただきたい

一夜を過ごしたからこそ楽しめるハロン湾の夜明けで2日目がスタート

ハロン湾の夜明け

 翌朝、ちょっと気合いを入れて5時少し前にデッキへ。朝焼けを見るためだ。ハロン湾のど真ん中から夜明けを楽しむには、ハロン湾のど真ん中で夜を過ごすしかない。Paradise Eleganceのアクティビティメニューにあるわけではないが、1泊をしたからこそ絶対に参加したい1種のアクティビティだ。

 残念ながら、前夜同様に低い雲が立ちこめていたので、いわゆるご来光のように岩礁から昇る太陽を望むことはできなかったのだが、陽が昇るに連れて変わる空の色と、それを写し取ったような水面がとても美しく、マジックアワーの時間が過ぎたあともデッキを離れることができないほど引きつけられてしまった。

空の色の移ろいを楽しめる朝のハロン湾

 そして、夜が明けたら太極拳だ。これもParadise Eleganceのアクティビティの1つ。6時30分スタートなので、気分はまさにラジオ体操といったところ。

 Paradise Eleganceのアクティビティらしさなのか、時間なると先生が現われて、いきなり太極拳の動きをスタート。要は「真似ろ」ということらしいが、「真似ろ」の一言も語らず黙々と動く先生。背中を見て育つしかない参加者なのだが、次第に呼吸に一体感が出てきたのは気のせいだろうか。楽しいというより、不思議な時間が流れる朝のひとときだった。

朝一番の太極拳
先生は一言も口にせず、ただただ背中で語り続けた

 このあとは、ベーカリーやコーヒーなどの軽食(本格的な朝食は後ほど)をいただき、次のアクティビティへ。続いては、ソビエト連邦の宇宙飛行士「ゲルマン・チトフ」の名を冠する、「Ti Top Island(チトフ島)」への上陸だ。先述したサン・ソット・ケーブと同じく、テンダーボートに乗って島へ移動し、ガイドさんから渡されるチケットを手に島に入る。

 この島で楽しめる体験は2つ。1つは山の上に登ってハロン湾の絶景を望むもの。もう1つはビーチだ。

 前者は結構ハードで、400段以上ある急角度の階段をひたすら登っていく。普通のペースだと片道で15分ぐらいかかる。旅程上、上陸していられる時間は50分ほどなので、ほとんどの時間を階段の上り下りに費やすことになるので注意が必要だ。

 ハードなアクティビティはご勘弁……という人はビーチでのんびり過ごすのがお勧め。海の透明度が高く、近くを小魚が泳いでいて足を浸けるだけでも気持ちよい。季節にもよるだろうが適度な湿気のおかげで陽射しが極端に強くないのもうれしいところ。お肌が気になる人は日陰に置かれたチェアで過ごすのもよいだろう。

「Ti Top Island(チトフ島)」へ。ソ連の宇宙飛行士「ゲルマン・チトフ」の名を冠しており、島の入り口に石像も建てられている
400段を超える階段を上がって展望台へ
展望台からの眺め
ビーチでのんびりと過ごすこともできる

 ちなみに、このチトフ島への上陸でアクティビティは最後。船に戻れば朝食が待っており、そのまま下船の準備をするよう促される。チトフ島から船に戻ったあとは1時間半ほど余裕があり、その間に朝食を食べて、風景を眺めていても、1泊2日で広げた荷物を片付けるには十分な時間だ。

 朝食はビュッフェ形式で並ぶメニューのほかに、エッグベネディクトやフォーなどを好みに応じてオーダーすることができる。これも追加料金は不要なので気軽に頼もう。

 そして、往路同様に同じ時間帯に戻る多くの船とともに港へ。その間の風景も美しく、ハロン湾らしさを感じられるので屋内に閉じこもっているのはもったいない。

朝食。写真右のフォーはチキンとビーフの2種類から選べる。ほかにもエッグベネディクト、スクランブルエッグ、オムレツなど、個別にオーダーが可能
朝食後は下船の準備。もちろんその間も船は、ハロン湾の美しい風景のなかを進む
港へ

 冷静に振り返ってみると、急な階段を上り下りしたり、初体験でなにも分からないままカヤックで繰り出したりと、結構ハードな1泊2日。優雅なクルーズ旅とはいえないのではないかと思うのだが、意外なほどハードだった印象は残っておらず、むしろのんびりと流れる時間を楽しむことができたように思う。1泊することで1日目、2日目それぞれの移動距離そのものは短く、おそらく心にも時間にも余裕があったのだろう。

 もう一つ印象に残ったのは、長時間にわたって船に乗っていると、地上に戻ったときにも揺れているような感覚が残ることがあるが、それがまったくなかったこと。まわりを見ても、“頭がグルグルする~”的な仕草をしている人がおらず、Paradise Eleganceは非常に安定した船なのだろうと感じられた。

 そんなParadise Eleganceの1泊2日クルーズツアーの代金はシーズンにより異なるものの、ローシーズンなら450ドル(約5万2000円)ほどから。リーズナブルと言うには高額だが、地上でも1泊だけ高級ホテルに泊まるというのはよくあることで、同様の考え方を当てはめてみると、代金に含まれるアクティビティが充実しているし、船の上で1泊という体験もできるとあって、代金以上の贅沢な時間を過ごせたように思う。

 ハロン湾は定番の観光地だが、その定番にひと味加えられるクルーズ船での1泊ツアー。お勧めだ。

今回乗船したParadise Eleganceの同型船

 さて、本レポートの最終回となる次回は、旅の拠点でもあるハノイ中心部に近い観光スポットや、地元で愛されているというグルメスポットを紹介したい。

編集部:多和田新也