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ベトナム航空とハノイ観光局、歴史と文化が豊かなハノイをアピール。観光局Webサイトの日本語化など日本人向けサービス強化

2018年8月24日(現地時間)実施

日本の旅行代理店とメディアを対象にしたハノイ観光局とベトナム航空によるFAMトリップが行なわれ、その最終日に地元旅行関係業者とのミーティング開かれた

 ベトナム航空とハノイ観光局は、8月20日~25日の日程で旅行代理店やメディアを対象に、ハノイとその周辺のFAMトリップ(視察・研修ツアー)を実施した。このFAMトリップの現地最終日となる8月24日には、ハノイ中心部にあるホテル、Pullman Hanoiにおいてホテルやランドオペレータらと、日本の旅行代理店が集まるミーティングを開催。両者のマッチングの場となったほか、各代表者によるスピーチが行なわれた。

 このFAMトリップは、ハノイ中心部やハノイ郊外、ハロン湾といった、ハノイとその周辺の観光地を巡るもので、旅行代理店に向けては旅行商品造成の一助に、メディアに向けては日本での情報提供を期待して実施したもの。本稿では、そのFAMトリップを受けて行なわれた最終日のミーティングの情報をお伝えする。FAMトリップで巡ったハノイとその周辺の観光地については別記事でお伝えする予定だ。

ミーティングではハノイ音楽大学による演奏が披露された
独特な音色を奏でる伝統楽器によるパフォーマンス

 ミーティングでは、ハノイ現地の旅行関係業者17社が机を並べ、日本の旅行代理店関係者への売り込みを図った。例えば、ホテルでは会場となったPullman Hanoiのほか、Hotel Nikko Hanoi、Sheraton Hanoiが参加。このほかは現地ツアーオペレータが中心となっており、旅行代理店が自社パッケージツアーなどに組み込むだけでなく、個人でも申し込み可能な半日から1~2泊程度の現地ツアーなどを紹介していた。

 例えば、AIC Travel(AIC TravelのFacebookページ)ではハノイ・ノイバイ国際空港を発着地とするベトナム北部4日間の現地ツアーを、地上移動費とホテル代込みで1名199ドル(約2万5000円、1ドル=約125円換算)で提供するなど、現地法人ならではの低価格を売りにしている。このほか中部や南部でもそれぞれツアーを提供しており、予約は電話のみとのことだが個人での申し込みも受け入れている。

 このほか、Wendy Tourのブランドで現地ツアーを提供するS.M.I. Travelや、SKETCH TRAVELでは、日本語Webサイトを用意。Wendy Tourではセスナを使ってノイバイ空港から40分程度でハロン湾へ行き、現地から陸路で帰るといったプランも300~400ドル程度(約3万7500円~5万円)で提供するなど、ユニークなツアーをそろえている。

日本の旅行代理店と、現地の旅行関係業者とのマッチングの席には現地から17業者が参加
日本人の個人旅行者も参加できる現地ツアーも。こちらはAIC Travelのツアー。電話受付のみだが日本人スタッフも在籍している
SKETCH TRAVELは日本語Webサイトも用意しており、オンラインで予約可能

ハノイの見どころやユニークなツアーを紹介。日本の旅行業者からは課題も提示

 このミーティングでは、ベトナム側、日本側のそれぞれの代表者によるスピーチも行なわれた。

 最初に登壇したハノイ観光局 局長(General Director, Hanoi Department of Tourism)のチャン・ドゥック・ハイ(Tran Duc Hai)氏は、ハノイについて「ベトナムの首都であり1000年以上の歴史がある街。また、ベトナムの行政、文化、教育、医学、科学、経済の中心地で、魅力な観光資源、サービスを取りそろえている」と紹介。

 ユネスコの世界文化遺産に登録されているタンロン遺跡や、無形文化遺産のフードンのほこらやゾン祭りなど、歴史や文化に関する観光地のほか、郊外のゴルフ場や市街地のショッピングモールなどの近代的な施設などを紹介し、「近代的な都市になっているが、昔の美しさや古い都が存在しており、緑や湖、古い家、おもてなし……観光客がハノイに来たときはそれらの面白い体験ができると思う」とアピールした。

 観光サービスとしては、269名の日本語対応ガイドを含む多数のガイドが登録されているほか、先述のような旅行会社などが多数存在しており、ホテルについても域内に約3500ホテルがあるという。交通インフラも空港、高速道路、鉄道の整備が進んでおり、玄関口となるハノイ・ノイバイ国際空港は40か国以上と直行便が結ばれ、年間で国際線は1万6000便以上、国内線は年間2万3000便以上。「訪問客はさまざまな手段で観光地へ行ける」と話した。

 ちなみに、ハノイへの海外からの観光客数は、2015年から2017年にかけての伸び率が18%増となっており、2018年1月~7月については前年同期比で23%増になっているという。日本からハノイへは2017年で約29万人。前年比22%増加していると紹介した。

ハノイ観光局 局長(General Director, Hanoi Department of Tourism) チャン・ドゥック・ハイ(Tran Duc Hai)氏
ハイ氏のスピーチ後にはハノイのプロモーションビデオを上映

 続いて、ベトナム航空 Deputy Director, Marketing & Sales Departmentのグエン・ミン・タム(Nguyen Minh Tam)氏が登壇。ベトナム航空の日本路線が2018年に25周年を迎えたことに触れたのち、「現在は週に平均70便、東京(羽田/成田)、福岡、名古屋(セントレア)、大阪(関空)の4都市5空港へ飛んでいる」と紹介したのに続き、「2018年10月28日には大阪(関空)~ダナンに就航し、週7便運航することになっている」と新路線を紹介。

 加えて、エアバス A350-900型機、ボーイング 787-9型機といった2つの最新鋭機を運航する世界でも数少ない航空会社であることや、ANA(全日本空輸)との連携により日本国内線との乗り継ぎも便利であること、顧客サービス向上に努めたことでさまざまなアワードを受賞していることを紹介。英スカイトラックスの格付けでは3年連続で4スターを獲得している。

ベトナム航空 Deputy Director, Marketing & Sales Department グエン・ミン・タム(Nguyen Minh Tam)氏
ベトナム航空の機内サービスや、獲得したアワードを紹介するビデオ
こちらは子供の空想をテーマに、ベトナム全国の主要観光地を紹介するビデオ

 次に、ハノイの旅行業者からユニークなツアーの紹介が行なわれた。旅行会社を代表してマイクを手にしたDirector of Hanoitouristのフォン・クアン・タン(Phung Quang Thang)氏が紹介したのは、OpenSEA Travel Agencyが提供している「Hanoi's secrets with film cameras」というハノイ市内の半日ツアー。

 タン氏はキヤノンのフィルムカメラ「AE-1 Program」を手に、「フィルムを使っている古いカメラでハノイの街を撮れる4~5時間のツアー」と紹介。日本語を話せるガイドも在籍しており、そのガイドの案内で分かりにくいハノイの奥の奥へ入っていけることや、フィルムカメラを使った面白い写真を撮影できることを紹介。

 ツアーでは、そうしたカメラのレクチャーから始まり、古いカフェでスイーツを楽しむ時間なども設けられ、最後にはフィルムを現像することもできる。代金は90ドル(約1万1250円)で、3か月間で39件の予約を受け付けたという。

Hanoi's secrets with film cameras

Webサイト: Hanoitourist(英文)OpenSEA Travel AgencyのFacebookページ(英文、ベトナム語)

Director of Hanoitourist フォン・クアン・タン(Phung Quang Thang)氏
日本語ガイドの案内により、フィルムカメラで撮影しながら、ガイド付きツアーならではのハノイ観光を楽しめる「Hanoi's secrets with film cameras」
Hanoitouristのテーブルには、ミノルタ「SR-T101」、アサヒペンタックス「SPF(Spotmatic F)」、オリンパス「OM10」、キヤノン「AE-1 Program」といったフィルムカメラが並べられた

 続いては、ミーティング会場となったPullman HanoiのGeneral Manager、サイモン・リンドリスバッハ(Simon Rindlisbacher)氏があいさつ。ハノイ中心部のさまざまなスポットへ行きやすい立地のよさを語ったうえで、同ホテルの特徴をビデオで紹介した。

Pullman Hanoi General Manager サイモン・リンドリスバッハ(Simon Rindlisbacher)氏
Pullman Hanoiのプロモーションビデオ

 最後に、日本から参加した旅行代理店を代表し、JTB 海外仕入商品事業部の荒氏が登壇。同氏が所属するチームのデータとして、2018年の上半期はベトナムへの送客が前年を若干下まわり、特にハノイについてはベトナム全体の落ち込みよりさらに減っていることについて「至急の対策が必要」との見解を示す一方、「逆にダナンへの集中が顕著で、ここ数年で開発も急激に進み、アジアのビーチリゾートとしての地位を一気に獲得してきた。インターナショナル系の新しいホテルのオープンが目立ち、それに伴う航空便の臨時便、チャーター便も多くなっている」と、日本から見たベトナムの旅行事情を紹介した。

 そのうえで、今回のFAMトリップを通じて感じたベトナムやハノイに対する要望を4点挙げた。

 まず求めたのは、渋滞対策や交通ルールの遵守についての改善と、それに必要なインフラ整備だ。「渋滞によって行きたい場所に行けない、時間どおりに進まないのは、旅行会社としても、お客さまにとっても大きな弊害。また交通ルールが守られていない現状においては、日本の旅行客にとって極めて危険な状況だと考えている」と指摘。日本人はとくにこうした点に敏感で、フラストレーションが溜まりがちなことから、リピーターとなってもらううえでも根本的な改善が必要であるとした。

 2点目は2015年から実施している再入国ルールについて改善を求めた。これはベトナム出国後、30日以内に再入国する際には有償のビザが必要となる規則で、ラオス、カンボジアなどの国をまたいだ周遊旅行の際に問題となる。荒氏は「ベトナム旅行の阻害要因になっているように思われる」と指摘し、撤廃を望んだ。

 3点目は物価上昇について。ベトナム全体で地上交通費の高騰が顕著になっているとのことで、今後、旅行代金を値上がりせざるを得ない状況になる可能性を指摘した。

 4点目は観光局の日本開設。現在は駐日ベトナム大使館が情報発信を行なっているが、旅行代理店の視点でも「ベトナム現地の情報がつかみにくく、JTBはベトナムに事務所を構えているものの情報の伝達は遅い」との実感があるという。「最新情報をもっと発信していかなければリピーターも伸ばせない」と話し、メディアなども使った情報発信の強化を求めた。

 荒氏は最後に、「近年、日越関係は官民親密となり、日本において東南アジアの重要なパートナーとして認識されている。日越友好45周年にあたる2018年は、より強固で持続的な関係を築くよい機会で、旅行造成を通じて関係強化に取り組んでいる。これからもベトナム、ハノイへの送客を強化するよう努めることで友好機運を高め、両国関係の発展に貢献できるよう努力したい」とし、あいさつを締めた。

「観光情報Webサイトは早急に日本語対応する」。ハノイ観光局 局長にインタビュー

ハノイ観光局 局長のチャン・ドゥック・ハイ氏

 最後に、ミーティング後にハノイ観光局 局長のチャン・ドゥック・ハイ氏に話を聞くことができたので、その内容を紹介する。

――とくに日本人にアピールしていきたいポイントは?

ハイ氏:ハノイは1000年以上の歴史ある街であり、さまざまな文化を持つことをアピールしたい。FAMトリップでも巡った、タンロン遺跡は52代の王様が在位した時代の遺跡。また、ベトナム国内には多くの伝統的な専業村(小さな規模の専業企業や手工業を営む家庭が集まったエリア)があるが、その多くがハノイ周辺に集まっている。そうした文化的な観光資源が多い。

――日本人に来てもらうための課題や改善点は?

ハイ氏:メディアなどを通じた広報活動が足りていないので、もっとアピールしたい。また、日本人に対しては安全第一、セキュリティを大切に考えているが、ハノイは安全な街。一方で旅行客へのサービスの品質を高めるために、さまざまな改善をしている。例えば、インフラ環境を改善しているし、観光地のスタッフのサービス改善にも努めている。

 日本とベトナムの友好関係のおかげで日本人観光客も多く訪れている。現在は30万人ぐらいで、この数はまだまだ少ない。日本人の興味がベトナムに向いているので、もっと強化しないといけない。今回のFAMトリップやミーティングもそのためのものだ。

――ツーリズムEXPOジャパンに毎年出展しているが、今年はどのようなブースを展開するか?

ハイ氏:ベトナム各地の情報を含めて紹介する予定だ。ハノイは首都なので全土の情報を提供する責任がある。ベトナム各地方はハノイのため、ハノイは各地方のためにと協力している。観光客のニーズがさまざまななので、地方やベトナム国外とハノイをつないで観光してもらうことも考えて協力していく。

――日本人に伝えたいことは?

ハイ氏:ハノイ観光局のWebサイト(Hanoi Tourism Department)では、カテゴリ分けした観光地の情報のほか、現地のランドオペレータ、ホテルや現地ガイドの情報をまとめて掲載している。事業認定証のPDFなども表示できる。信用できる情報なので、ぜひ見てほしい。今はベトナム語と英語しかないが、できるだけ早く日本語を含む6か国語に対応する予定だ。

英語とベトナム語で情報提供するハノイ観光局のWebサイト。業者やガイドの登録証や認定証のコピーも参照でき、「信頼できる情報なのでぜひ見てほしい」と紹介。日本語化にも早急に取り組むとした
ハノイ観光局 局長のチャン・ドゥック・ハイ氏。背にするのはハノイ旧市街の中心部にある主要観光スポット「ホアンキエム湖」の夜景