ハイエースキャンパーが主流だったキャンピングカー業界に変化が訪れ、選ぶ楽しみが増した。そのため出展者も来場者も熱量が高まった開催に 日本最大規模のキャンピングカーイベントとして知られる「ジャパンキャンピングカーショー」。今年は1月31日~2月3日に幕張メッセ国際展示場(千葉市美浜区)で開催された。
国内のキャンピングカーの販売売上総額は増加傾向にあり、2024年は新車・中古車合計で過去最高の1126億円(対前年比107%)。ここ10年で約4倍となり、市場規模は急激に拡大しているとのことだ。
その人気を支えているのが業界団体「日本RV協会」(JRVA)で、全国で開催しているキャンピングカーイベントでは、実車を直接見られるだけでなく、特徴である室内の作りも実際に乗り込んで居心地を確かめることができるため、毎回多くの来場者が訪れる催しになっている。
ジャパンキャンピングカーショー2025では「GO RVing」というテーマのもと、全国から最新モデル、人気モデルを史上最多の423台(出展者数183社)展示した 人気アニメ「ゆるキャン△ SEASON3」ラッピングキャンパー「ゆるキャン△ピングカーmkII」も展示していた この車両は各地のイベントを回っているので今後も見かける機会はある。稼動スケジュールはWebサイトで確認できる ハイエースキャンパー一強時代が終わった?
日本のキャンピングカー市場は、「バンコンバージョン」(バンコン)というワンボックスカーをベースにしたモデルが人気になっている。日本にはワンボックス貨物車として圧倒的な人気を持つトヨタの「ハイエース」があることが大きな要因で、実際、例年のジャパンキャンピングカーショーではハイエースをベースにしたモデルが多く展示されていた。
グリーンハンズが展示していた「Lot」(ロット)。ハイエースのナローボディ&ロールーフ車がベース 大人の男性が好む「隠れ家的」なテイストでまとめられたインテリア。アウトドア趣味を楽しむためのベース基地といったところ ふたが開いている部分は冷蔵庫。その横にはシンクがある(ふたが閉まった状態)。エアコンも装備しており、筐体をブラックに塗装して、インテリアの雰囲気に合わせている キャンパー鹿児島が製造して、スーパーオートバックスかしわ沼間南とスーパーオートバックス市川で販売している、ペットと旅するキャンピングカー「Wander AR」(ワンダーエーアール) ツメのひっかきにも強い生地を使ったシートやマットを使い、スイッチ類もペットが触れて誤作動しないようカバーしている。車載用クーラー、サブバッテリー、インバーター、走行充電システムなどを装備 シンクはないが外で遊んでいたペットの足を洗うための浄水タンクを装備している ところが現在、トヨタではハイエースの受注を停止していて納期未定の状態が続いている。そのためハイエースキャンパーを新車購入しても、いつ納車されるのか分からないのだ。
こうした状況から、最近は同じくワンボックス貨物車の人気車である日産「キャラバン」がベースに選ばれるようになってきた。また「違う車種」に目を向けることで、これまで気がつかなかったほかの車種の魅力が見えてくるなど、ハイエース一強から選択肢が分かれたことで、キャンピングカー選びがより楽しくなってきている。
GORDON MILLER MOTORS(ゴードンミラー・モータース)もキャラバンベースのキャンピングカー「GMLVAN V-02」を新たにラインアップした 室内の作りはハイエースベースのV-01と同じだが、内装はユーザーの声を聞いて年々ブラッシュアップしているので使い勝手は向上しているという オリジナルのフェイスデザイン。グリルやライトまわりの変更に顔全体のイメージを合わせるため、純正バンパー上からかぶせるバンパーカバーも装着。運転支援の機能も問題なく機能する 日産もブースを展開。キャラバンをベースに「くつろぎの空間を提供する」という視点で製作された「キャラバンMYROOM」を展示していた インテリアは木目調パネルと日産がMYROOM用に開発した「2 in 1シート」で構成。2 in 1シートは、走行時は前向き、目的地に着いてくつろぐ際には反転してリビングルームモードになる ベッドは折りたたみ式が標準仕様。ほかに右側壁面に跳ね上げて固定するタイプをオプションで選べる。写真は跳ね上げベッド仕様。ダンパーが効いているのでロックを外して展開する際もゆっくりで安全 アネックス キャンピングカーの「UTONE(ウトネ)300」もキャラバンベース。こちらはインテリアの素材カラーをブラックにして、素材自体のグレードも高めたブラックラインという仕様 ベースは日本の道路事情にあう標準ボディのキャラバン5ドア DXノーマルルーフ。2WD、4WD両方に対応 2段ベッドを採用しているので窮屈にならず4人で就寝できる。2人であればワンランク上のサイズ並みのフリースペースが取れる 会場のキャンピングカーをチェック
ここからは筆者が注目したキャンピングカーを紹介していこう。まずはハイエースキャンパーの代わりとして期待されているフィアット プロフェッショナルの「DUCATO」(デュカト)をベースとしたモデルだ。
デュカトは欧州市場では日本のハイエース、キャラバンのような存在で、ベースの状態では運転席、助手席があるくらいで、車内はなにも付いていない。完全に荷物積載用の作りのため、キャンピングカーへの架装がしやすいのだ。また、全高が2525mmと高いので、内装を作った状態でも成人男性がまっすぐ立っても頭の上には余裕があり、装備面だけでなく生活空間としての快適度も高い。
そんなデュカトには2種類のボディタイプがあり、1つは「L2H2」というグレードで全長は5410mm、全幅は2100mm。そして「L3H2」は全長が5995mm、全幅が2150mmとなる。
ハイエンド仕様のハイエースキャンパーでベース車となる「スーパーロング・ワイドボディ」のサイズは全長が5380mm、全幅が1880mmなので、デュカトのL2H2であれば取り回しにそれほど差はない。それでいて室内幅が少し広いのと天井を高くできるというメリットもある。
なお、デュカトの正規輸入元であるステランティス・ジャパンはフィアット プロフェッショナルブランドの正規ディーラーとして国内の有力キャンピングカービルダー企業と契約している。キャンピングカーという架装車に正規ディーラー車としての信頼感を持たせる展開をし、輸入車キャンパーを初めて買うユーザーが選びやすい環境を作っているのだ。こうした面から、ハイエースキャンパーからの乗り換えも増えているという。
四国の岡モータースが発売する「グランボックスL3」。このモデルはデュカト L3H2がベース 大型のバンコンでは1000万円超えのクルマも多いなか、958万円のプライス。前席が回転するのはデュカトの標準機能 トイレや物置にも使うスペースをカーテンで仕切ることで、非使用時の空間を有効に使えるレイアウト。ベッドは壁側に折り畳める 自動車用ショックアブソーバーで有名なカヤバが立ち上げたキャンピングカー事業。デュカト L3H2をベースにした「VILLATOR」(ヴィラトール)。「別荘を持ち運ぶ」というテーマで装備はハイグレード。走りのよさも追求している 落ち着いたリビングルーム。テーブルを下げ、シート間にパーツを追加するとベッドルームになる。後方には折りたたみ式のデッキまで装備する 純正シートは日本人の体型に合わない面があるので、日本のスポーツシートメーカー「ブリッド」とコラボして最適なシートを開発、装備している ホワイトハウスキャンパーの「WHC/D」は大人の遊び心と想像力を刺激する秘密基地というコンセプトの車両。十分な装備を持ちつつ車両価格は931万1400円(税別)に抑えている 内装なしのベース車での販売もしている。価格は580万円~ 荷室スペースの長さが1900mmもあるので2列目シートを出したまま大人がゆったり寝ることもできる。ロング仕様のL3H2なら荷室は2500mmに ソロユーザーが注目のNV200バネットなど、そのほかの注目車
ハイエースやキャラバンの標準ボディでも全長は4695mmあり、狭い道などの取り回しでは大きさを感じることもある。また、エンジンがシート下にあるので運転席が高い位置になっているのため、どうしても乗り降りしにくい面もある。
そこで、それほど広さを必要としないユーザーに注目されているのが日産「NV200バネット」。納期もそれほど長くないうえ、装備が豪華になることで車両価格がどんどん上がっていったハイエースキャンパーより手頃な価格帯であることも、人気を押し上げる力になっている。
そしてビルダー側もニーズに応えるためNV200バネットを使用したキャンパーの製作に力が入っていて、会場には個性のあるNV200バネットキャンパーが展示されていた。ちなみにNV200バネットは全長が4400mm(4WDは4410mm)、全幅が1695mm、全高は1860mm(4WDは1870mm)と一回りコンパクトなサイズだ。
日産ブースに展示されていた「NV200バネットMYROOM」。前出の「キャラバンMYROOM」と同じく居心地のいい部屋を持ち出すというコンセプトのクルマ。車中泊やクルマをテント代わりに使うようなオートキャンプでも便利 2列目シートは2走行中は前向きのドライブシート。リビングルームモードでは後ろ向きぼソファ。さらにベッドに展開できる。背面と座面は表裏でクッションを変えていて、ドライブモードとベッドでは硬め、ソファではソフトな座り心地となる ベッドルームにした状態。ベッド長は1840mm、幅は1200mm、ベッド上スペースは955mm。ベッド下には高さ258mmある。床面の幅は1050mm、長さは1065mm。カーテンは遮光タイプでプリーツの山同士を重ねて合わせるので隙間なく閉められる トイファクトリーの「CRAFTPLUS DESIGN NV200」。展示車の仕様で575万9160円 セカンドシートを片側だけ畳む展開もできる。ベッドとシートの両方がある居住スペースは快適な車中泊ができると思う 大抵の車両では前席がノーマルであることが多いが、こちらは居室スペースとイメージの合うシートカバーなどを標準で装備している トライスターインターナショナルのタウンエースバンGLベースの「MONOBOX T-01」。タウンエース系はNV200バネットと同クラスでこちらも人気が高い。室内にベッド展開もできるがルーフテントを載せることでリビングルームとベッドルームを完全に分けた展示をしていた こちらのモデルは車両持ち込みの仮装にも対応し、中古車ベースで車両込みでのオーダーもできる シートカバーの色は6色から選べるので(すべてヴィンテージ風でウッドパネルに合う色)、自分好みにカスタマイズできる ホワイトハウスキャンパーは発売されたばかりのホンダ「フリード」をベースにしたキャンパーを複数台展示。こちらはベッドキットとテーブルを中心としたベーシックなモデル ベースモデルはサブバッテリー、外部電源、FFヒーター、サイドオーニングを装備。ベッドキットはオプション。1900mm弱までの身長なら寝ることができる ポップアップルーフを装備した仕様。注目すべきはポップアップルーフにルーフレールがついたこと。キャリアを搭載できるようになった 前席は回転するのでリビングルームのときも便利だし、座面をベッドの一部とすると縦方向に余裕ができる M・Y・Sミスティックの「ファー」。ベースはカローラ フィールダー。スタートパッケージだとクッションマット、室内LED照明〔ポータブル電源仕様)、専用家具、専用配線付きでパック価格は39万8200円。車両持ち込みの対応 もともとのシートアレンジの都合、クッション面は平らにならないが、足を伸ばして寝られるのはやはり楽 リチウムイオンバッテリー装備の上位パッケージにはオプションでルーフエアコンも装備できる。エアコンを付けてもミニバンタイプより全高が低い 普通免許で引ける軽キャンピングトレーラーの「CORO」(コロ)。シェルはFRPのほかパネルにアルミも使うので軽量。話題のジムニー ノマドなどで牽引すると似合いそう ベッドは1800mm×1310mm。リビングルームモードではソファがコの字で展開し、ソファ下は収納スペース ハイゼットトラックがベースに居室部分を架装した「座座」(ザザ)。製作したのはキャンパー鹿児島。お台場にある「グランキャンパー東京」で見ることができる 壁は無垢エア・ウオッシュ・フローリング(ひのき)を使用 畳敷きの室内長は1950mm。就寝人数は2名。エアコンはオプションで装備できる 岡モータースのN-VAN e:ベースのキャンピングカー「ミニチュアシマウザーCP」 ポータブルバッテリーを積むことでクルマへ給電もできるし、クルマからポータブルバッテリーへの充電もできる 標準装備で3名が就寝できるベッドが付く。12Vクーラーも装備。フロアは強度のある板張り 三島ダイハツの新作「クオッカ ライク」。こちらも高い位置にベッドを設置することで、縦に広さのある空間が活かされる作り 縦型のエアコンを装備。スペースに限りがある軽バンにはぴったりの装備 使い勝手がよさそうなインテリア。女性ユーザーのことも考えてデザインしているとのこと