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トヨタ紡織、乗客属性にあわせてARや立体音響で観光情報を提供する「ムークス ライド」。ニアミーと日の丸リムジンの車両で実証実験

2025年1月23日 発表

トヨタ紡織が開始するコンテンツ体験支援システムを搭載した車両

 トヨタ紡織は、コンテンツ体験支援システム「MOOX-RIDE」(ムークス ライド)の実証実験を開始した。

 ムークス ライドは車両の位置情報や乗客の属性に基づいて走行ルート周辺の施設や観光スポットなどの情報、広告といったさまざまなコンテンツを提供するもので、移動の楽しさや快適性を向上させるという。本システムは将来の自動運転社会を見据えたもので、車両の位置情報と連動させることにより「その場所を走ることでしか体験できない」コンテンツ体験を可能にするもの。

 2020年から開発をスタートし、2021年に愛・地球博記念公園(モリコロパーク、愛知県長久手市)において、自動運転車両「MOOX」に搭載して実証実験を行なったほか、2022年には立体音響やAR技術を搭載するなどバージョンアップしたシステムを燃料電池バス「FCコースター」に搭載。2023年にはセントレア周辺の一般道において実証実験を重ねるなど、実用化に向けた取り組みが行なわれている。

 今回は実用化に向けた歩みを一歩進めたもので、ハイヤー事業を展開する日の丸リムジンおよびライドシェアサービスを展開するNearMe(ニアミー)が運行する送迎車両に搭載。前者は「観光、ビジネス目的の国内外VIP向け空港送迎」、後者は「海外からの観光客やビジネス利用客向けのライドシェアによる空港送迎」をターゲットと想定し、東京都内およびその近郊において実際に乗客を乗せて実証を行なう。

 試乗を前に、トヨタ紡織 経営企画部 戦略推進室 未来事業推進グループ 主査 空間ビジョニアリング部 主査(兼)の山内克仁氏、NearMe 代表取締役社長の高原幸一郎氏、日の丸リムジン 代表取締役社長の富田和宏氏が出席したプレゼンテーションを実施した。

トヨタ紡織株式会社 経営企画部 戦略推進室 未来事業推進グループ 主査 空間ビジョニアリング部 主査(兼) 山内克仁氏(中央)、株式会社NearMe 代表取締役社長 高原幸一郎氏(右)、株式会社日の丸リムジン 代表取締役社長 富田和宏氏(左)

 山内氏はムークス ライドについて、「今までの移動は目的地にたどり着くための手段だったが、その移動自体を1つのイベントにしたい」という考えからスタートし、「その場所を走ることでしか感じることができない新しいコンテンツ体験」を提供することを目的にしていると説明した。

 そのため衛星と車両加速度から車両位置を推定するとともに、事前の予約情報から乗客の年齢や性別、国籍といったおおまかな属性を取得。定期的にサーバーと通信して情報を更新することにより、車両位置と連動したコンテンツや乗客が興味を持ちそうな情報を提供するという。情報の提供に関しても単純にディスプレイに映像を出すだけでなく、立体音響による視線の誘導やサイドウィンドウを使ってAR技術により情報を重ねて出すほか、立体音響、シート振動、照明などを一括で統合制御することが可能だという。

 続いてニアミーの高原氏は、ドライバー不足やインバウンドの急増など移動における課題が深刻化していると述べ、タクシーなら1台で1組しか乗らないところをライドシェアなら何組も運べることから、移動全体の需要をなめらかにしていくことができると説明。そうしたなかで今回の車両を導入することで快適な移動体験を実現できるとした。

 日の丸リムジンの富田氏は、昨今のインバウンド需要の増加により、利用者へのおもてなしが大きな課題になっているという。「クルマのなかでこういったシステムを使いながら、幅広い情報、本人が知らなかったような情報に出会って、より日本を楽しんでいただければと考えている」と述べた。

“シェア乗り”の快適性を高めるプライベート空間を演出

 ライドシェアでは属性の異なる乗客が乗り合わせることから、快適なシェア乗りのため、人目が気にならないプライベートな空間の提供を目指す。

 ベース車両はトヨタ「ハイエース」の特装車「Fine Tech Tourer」(ファインテックツアラー)。この車両はスーパーロング×ハイルーフを持つ10人乗りハイエースワゴンをベースに、2列目・3列目を「リラックスキャプテンシート」に変更したモデル。

 同シートは最大830mm(2列目)のロングスライドがウリになっているが、それを封印し左右で互い違いになるようにセットすることで後席へのアクセスを確保。ルート中の乗り降りがあるシェア乗り車両ならではの工夫だ。

 中央に24インチのメインディスプレイを装着するほか、それぞれの乗員向けに12.7インチのパーソナルディスプレイとともに、プライベート感を高めるプライバシーシェードや専用スピーカーが備えられており、乗客の属性に合わせた情報提供を行なう。

主な運行ルート: 羽田空港/成田空港~東京都内
運行開始時期: 2025年1月23日~(期間未定)

ニアミーが運航する車両。利用料金は通常と同一で指定は不可とのこと
中央に24インチの大型ディスプレイを配置
2列目、3列目にはリラックスキャプテンシートを配置し4名乗車が可能。4列目にも4名分のシートがあるが通常は使用しない
ヘッドレストまわりにプライバシーシェード他席への音漏れを防ぐ専用スピーカーを用意
各席にスマホなどの充電用ケーブルを用意。出力は2A
リラックスキャプテンシートを互い違いに配置することで後席への移動がスムーズ
ログインすることでパーソナルディスプレイに専用情報を表示。表示は4か国語に対応
メインディスプレイにはルートを表示
走行位置をもとにルート周辺のスポットを案内
到着時間を案内

VIP向け空港送迎を想定したラグジュアリーな空間を実現

 日の丸リムジンにおいては利用者を国内外のエグゼクティブと想定することから、「プライベートなリラックス時間にスパイス情報を提供」することを重視。4か国語に対応したバーチャルガイドによるルート上の観光スポットや宿泊ホテルの案内、さらに東京の歴史などまで紹介するオリジナルコンテンツを搭載する。

 車両は6人乗りのトヨタ「アルファード」をベースに24インチのメインディスプレイのほか、12.7インチのパーソナルディスプレイを配置する。ライドシェアの車両と異なり同一グループでの乗車となることから案内される情報は各席で同じものとなる。

主な運行ルート: 羽田空港~東京都内
運行開始時期: 2025年2月中旬~(期間未定)

同社が保有する約240台のうち半数がトヨタアルファードでそのうちの1台がこの車両になる
中央にメインディスプレイ、左右にパーソナルディスプレイが備わる
シートは純正のキャプテンタイプ
パーソナルディスプレイでは表示を4か国語で切り替え可能
ルートの説明
東京の情報
ルート周辺の観光スポット案内
東京の歴史を紹介