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ANA国際線の新シート紹介。ファーストクラスのシートモニターは4K対応43インチ。ビジネスクラスは後ろ向き席採用で約1.3倍の広さに
2019年7月11日 21:44
- 2019年7月11日 発表
- 2019年8月2日から導入
ANA(全日本空輸)は7月11日、長距離国際線の主力機であるボーイング 777-300ER型機の機内に、約9年ぶりとなる新シートを導入することを発表した。本稿では、機内の様子とともに、ファーストクラス、ビジネスクラスを中心にシートの詳細を紹介する。
発表会のレポート(関連記事「ANA、国際線フラッグシップ機のシート刷新。監修の隈研吾氏『優しくてくつろげる空間を体験して』」)でもお伝えしたとおり、建築家の隈研吾氏の総合監修、イギリスのデザインコンサルティング会社であるアキュメン(acumen)が機内空間デザインに携わり、ANA代表取締役社長の平子裕志氏が「洗練さと日本の美を兼ね備えて最上級のくつろぎ空間」と自信を見せる機内デザインを創出した。
発表会では特に「プライバシーの向上」「日本らしさ」といった点が強調され、それらが主にファーストクラスの「The Suite」、ビジネスクラスの「The Room」に表われている。
座席数はファーストクラス8席、ビジネスクラス64席、プレミアムエコノミー24席、エコノミークラス116席の計212席。新仕様第1号機は登録記号「JA795A」の機体で、8月2日の羽田空港~ロンドン・ヒースロー国際空港線(NH211便)で運航を開始する。
引き戸で完全な個室感。4K対応の43インチモニターを各席に装備
「空の上でもホテルで過ごすような時間」をコンセプトに「The Suite」と名付けられたファーストクラス。シートはジャムコ製で、細部に違いはあるものの、全体の構造は先に就航したエアバス A380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ:空飛ぶウミガメ)」で採用されていたものと同じ(関連記事「ANA A380型機のファーストクラスはドアが閉まる個室型シート。ベッド、収納、トイレも広々」参照)。
シートは個室状で、各席に引き戸を設けているのが特徴。シートを覆う壁は木目調を中心としており、隈氏らしい日本風デザインとなっている。ちなみに隈氏によると、引き戸は「現代から見てもよくできた技法で、(開け閉めしても)まわりの空間を邪魔せず、隣で寝ている人の邪魔にもならず静か」といった魅力があるという。
さらに目を引くのは各席に装備されたシートモニターで、パナソニック製の4K対応43インチモニターを搭載。座席の横幅一杯を使った大きなモニターで、個人用モニターとしては世界初の4K対応品の導入だという。また、HDMI入力を備えており、自身のデバイスの出力を4K/43インチモニターに映し出すこともできる。
収納スペースもシートモニターの前、シートの脇に設けられているほか、壁にマガジンラックやハンガーラックも備える。先述のHDMI入力や電源類もこの収納スペース内にあり、110VのユニバーサルAC電源と、USBポート×2個を備えている。
また、ファーストクラス、ビジネスクラスでは「眠りにこだわった技術、設備」も装備。寝具は西川の研究機関である日本睡眠科学研究所が開発している「Sleep Tech」技術をベースとしたもので、効率的に体圧を分散する特殊立体構造ウレタンなや、保湿力を向上させた羽毛布団などを採用。さらに、パナソニックの監修により、読書灯、食事灯の位置や色を最適化するとともに、睡眠時や起床時に適した明かりが点灯する「ウェイクアップモード」を搭載することで、眠りと目覚めを快適にしたという。
このほかのビジネスクラスとの共通点としては、温水洗浄便座付きのラバトリーであることや、電動式のシェードを備えることが挙げられる。電動式シェードは蛇腹のようなデザインで、うっすらと透けるような和紙の雰囲気を感じられるもので、このあたりにも日本らしさを感じることができる。
後ろ向き席の採用で1人あたり面積は約1.3倍に。ビジネスクラス「The Room」
「まるで自宅にいるかのようにお過ごしいただきたい」との思いが込められたビジネスクラス「The Room」は、過去のANAの機材では類似のシートがない新たなもの。これまで国際線ビジネスクラスで仕様されていたBUSINESS STAGGERED(ビジネス・スタッガード)は、1列ごとに左右の位置をずらすことで全席通路アクセス可能としたのが特徴だったが、The Roomは全席に扉を設けることでプライバシーを意識したものとなった。
また、大きな特徴として「後ろ向き席」の採用が挙げられる。具体的には偶数列が進行方向前向き、奇数列が後ろ向きの席となっており、それぞれのサイドテーブルの下に向かいの席のフットレスト(オットマン)をレイアウトすることで、従来席に比べて約1.3倍の広さになったという。また、シート幅が平均で約2倍となった。
扉は引き戸状になっており、横スライド、縦スライドを組み合わせたもの。閉める時は座席側から電動、開けるときは手動となるので座席側からも通路側かも開けられる。緊急時の対応などを考えると理に適っている。中央の2列席にはパーティションがあり、閉めればプライバシー、開ければペアシートのように利用できる。
シートのコントローラはサイドテーブルの下部に埋め込まれており、ファーストクラス同様に前後に動かすだけで座位~フラットを操作できるダイヤル状のコントローラも装備。寝具はファーストクラス同様に西川製だ。
シートモニターは同じく4K対応。サイズは24インチで、現在のビジネスクラスで採用している17インチから大型化した。
シートテーブルは、横に広いシートスペースに合わせ、手前に引き出してから横に展開する構造。横方向に折りたたむだけで通路へアクセスできるうえ、前後の動きはフリーストップで位置調整が柔軟なので、テーブルのうえにノートPCやタブレットなどを置きっぱなしにするような利用スタイルでも使いやすくなった。
電源はサイドテーブル状にある収納ボックス内に装備。HDMI入力、USB電源、ユニバーサルAC電源を備え、電源などがある部分だけを開けられる構造になっている。また、シートの脇にもUSB電源を1つ備えているので、USB電源は各席に2個ずつ備えることになる。
ボーイング 787-10型機と同じシートを採用したプレミアムエコノミーとエコノミークラス
プレミアムエコノミーとエコノミークラスについては、ボーイング 777-300ER型機では初採用となるが、すでにボーイング 787-10型機で採用したものと同じシートになった(関連記事「ANA、4月26日に就航するボーイング 787最長胴モデル『ボーイング 787-10』型機を公開。プレエコとエコノミーは新シート採用」参照)。
シートは隣通しでデザインが異なるファブリックを採用。プレミアムエコノミーは2-4-2の8アブレスト、エコノミークラスは3-4-3の10アブレストで、後方39列目以降は窓側は2席ずつとなる。
シートは関連記事にもあるとおり、プレミアムエコノミーは15.6インチ、エコノミーは13.3インチのモニターを備え、6-wayヘッドレストを採用。各席にAC電源とUSB電源を装備。特にエコノミークラスは最前列を除き、シートポケット近くの抜き差ししやすい位置にACコンセントを備えるレイアウトが大きな特徴となっている。