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ANA国内線の新777に乗ってみた。プライバシーの高さや電源の使い勝手が魅力のプレミアムクラス
2019年11月18日 15:24
- 2019年11月16日 就航
ANA(全日本空輸)は11月16日、全席にAC電源やUSB電源、シートモニターを搭載する新客室仕様のボーイング 777-200型機を国内線に就航した。同日の羽田~新千歳線で同機による運航便に搭乗したので、その利用感などをお伝えする。
ANAが国内線に導入する新仕様のボーイング 777-200型機については、関連記事「ANA、全席にシートモニターや電源装備の国内線ボーイング 777-200型機を公開。11月16日就航」で紹介しているとおり。プレミアムクラス、普通席ともに全席にシートモニター、AC電源、USB電源を搭載するほか、プレミアムクラスを従来仕様から増席し、プレミアムクラス28席、普通席364席としている点などが特徴となっている。時刻表などでは従来仕様機が「772」、新仕様機が「722」と表記される。
特に国内線向け機材へのシートモニターや電源の搭載に関しては、ANAではエアバス A321neo型機に搭載していたが、大型機への搭載は初めて。機内でコンテンツを楽しむWi-Fiサービスや、無料のインターネット接続サービスと合わせ、機内での滞在環境に変化を生みそうだ。
そんな、ANAの新ボーイング 777-200型機の就航初日に早速搭乗してみた。同機材は当面、羽田を発着する福岡線、伊丹線、新千歳(札幌)線に利用されている(文末参照)。今回搭乗したのは羽田~新千歳線の往復で、往路で普通席、復路でプレミアムクラスを利用した。
時系列は前後するが、本稿ではまずプレミアムクラスに搭乗した感想をお伝えしたい。
プレミアムクラスでは、ウール100%のブランケット、スリッパ、ヘッドフォンが座席に配布されているほか、夜便(17時以降出発便)では夕食が供される。このあたりのサービスは従来どおりだ。
その新シートのポイントの一つであるプライベートスペース感については、適度に守られているという印象を受けた。それほど大きなディバイダ(パーティション)ではなく、しかも固定されているのがこのシートの特徴となる。
周囲では、隣席同士でディバイダ越しに会話をする利用者も見受けられ、そこまで席と席の間を隔てる存在にはなっていない。そのため、普通にしていると隣の人の存在ははっきりと感じる。
ただ、プライバシーを守る壁としてはしっかり機能している。例えばスマホやノートPCを使っていてチラ見されることへの意識を弱められるのがありがたいところで、特にリクライニングをして上半身の位置が低くなることで、ディバイダの効果が高まる。また、隣席がリクライニングせずに自分だけがリクライニングをしていると、上の位置から見られるような感覚も起こりがちだが、これはヘッドレストの脇にある固定されたガードが遮ってくれる。このあたりは上手く作られていると感じられた。
シートまわりは座面の広さやシートピッチはプレミアムクラスらしい余裕がある。シートはソファというよりは、ビジネスチェアのようなクッション感で、ごつごつせずに自然な体制で座れる椅子という印象。一方でヘッドレストは柔らかく、上下位置や左右の角度を調整できるので、頭を預けてくつろげる。
また、収納スペースの余裕もありがたかった。マチの広いシートポケットや、アームレスト下の小物入れが便利。小物入れは、AC電源/USB電源脇にあるが、電源を利用していてもペットボトルを入れられるほどで、十分なスペースが取られている。
シートモニターは15.6インチで、シートピッチが広いのでこのぐらいの大きさは必要になるな、と妥当性を感じるサイズだ。タッチ操作にも対応しているが、モニターまでの距離があるので、全席に備える手元のコントローラを利用することが多くなるだろう。
コントローラは、上部がノートPCのタッチパッド/トラックパッドのようになっており、表面をなぞるようにして機内エンタテイメントシステム画面上に表示されるカーソルを操作、パッド部分を押し込むようにして決定(マウス操作でいう左クリック)する、MacBookのような操作方法となっている。再生や一時停止、音量や頭上の読書灯、客室乗務員呼び出しなどは単独でピクトグラムを用いたボタンが用意されており、わりと直感的に操作できる実用的なデザインだ。
わりと、と書いたのは、“決定”の操作がタップに対応しておらず、パッド部分を押し込むという物理スイッチになっている点で、タッチ操作が一般的となった状況では唯一非直感的に思えたところだ。そして、この点は説明不足のように感じた。シートポケットのリーフレットはボーイング 777-200型機(と導入予定のボーイング 787型機新仕様)に対応したものだが、“パッド部分を押して(機内エンタテイメントシステムを)スタートする”といった主旨の説明があるので、これを読めば、この操作方法に気付くことはできる。
そのほかのボタンを含めたコントローラの詳しい説明については動画コンテンツとして提供されており、シートモニターで確認することになる。このコンテンツを見ようと思う人はコントローラの操作に戸惑っている人だろうと思うのだが、機内エンタテイメントシステムを操作するコントローラの説明を見るために、身を乗り出して画面のタッチ操作をするのはちょっと空しい。この説明コンテンツも静止画をベースに多言語対応したもので、個人的に最も非直感的だと感じた“パッドを押して決定”という操作については説明がなかったのも気になった。
一方、シートモニターそのものについては、角度がよく考えられているのは好印象を受けた。最初、普通に着座したときは、自身の視点に対して、やや下向きの角度になっているように感じるが、前席がリクライニングせず、自分のみがフルリクライニングした状態でピッタリ正対するようになった。
このシートモニターは(初期状態から)上方向へチルト角を大きく調整できる仕組みとなっており、前席リクライニングなし&自席フルリクライニングの状態がもっともモニターを下を向けるべき状態となるので、初期の角度をその状態でベストと感じるよう設計したのだろう。あとは前席と自席のリクライニング角に合わせて、モニターを上向きに調整してベストな角度にしてください、というわけで、ここもうまくできていると感じた部分だ。
なお、シートモニターで利用できる機内エンタテイメントサービスについては、別記事で触れる予定だ。
電源はAC電源、USB電源ともにアームレスト内側の前方にあり、使い勝手がよい。完全なパーソナルスペース内にあるので、ほかの人に気兼ねなく利用できるのが気楽だ。
シートテーブルはそれほど大きくないが、12.5型のノートPCとドリンクを一緒に置け、実用的な広さは確保しているように感じされた。内覧会の説明では軽くすることで出し入れをしやすくしているとのことだったが、確かに軽いのは魅力で、取り出しやすい。
テーブルは前後に移動するが、想像していたよりも前へスライドすることができなかった。やや窮屈に感じるのであるが、通路側席では窓側席の人が通路へアクセスする際に壁になりにくいのは利点にもなるだろう。また、ノートPCを広げる際にドリンクと一緒に置けるサイズであることは前述のとおりだが、片持ちなのでどうしても支点の反対側にはたわみがある。
ノートPCを使う際の距離感と、この片持ち構造のテーブルであることを合わせて考えると、個人的にはノートPCはひざ上で使って、アームレストに収納されたサイドテーブルを活用するのがよいのではないかと思う。以前は、アームレストの上にカクテルテーブルのスペースを設ける機材などもあったが、本機材は収納式のサイドテーブルなどで、利用するときに隣席に気を遣わないのもありがたいところだ。
最後に、プレミアムクラスならではの機内食も紹介しておきたい。プレミアムクラスでは19時以降出発便で夕食が供され、11月の新千歳発便では、「よし邑」(東京都板橋区蓮根)とのコラボレーションメニューが用意されている。
メニューは赤魚の煮付けをメインに、秋刀魚の幽庵焼きや栗の甘露煮、紅葉麩、鮭きのこご飯など、秋の味覚と香りが口のなかに広がり、見た目にも秋らしい料理だ。この日は、小雪がちらつく新千歳空港からの出発だったので、秋の終わりを感じながら美味しくいただいた。
ANA国内線新シート搭載機の運航スケジュール
2019年11月16日~30日、12月27日~31日
ANA243便: 羽田(08時20分)発~福岡(10時15分)着
ANA250便: 福岡(11時20分)発~羽田(13時00分)着
ANA27便: 羽田(14時00分)発~伊丹(15時05分)着
ANA32便: 伊丹(16時00分)発~羽田(17時10分)着
ANA75便: 羽田(18時00分)発~新千歳(19時35分)着
ANA82便: 新千歳(20時30分)発~羽田(22時10分)着
2019年12月1日~26日
ANA241便: 羽田(07時25分)発~福岡(09時30分)着
ANA248便: 福岡(10時20分)発~羽田(11時55分)着
ANA65便: 羽田(13時00分)発~新千歳(14時35分)着
ANA68便: 新千歳(15時30分)発~羽田(17時10分)着
ANA75便: 羽田(18時00分)発~新千歳(19時35分)着
ANA82便: 新千歳(20時30分)発~羽田(22時10分)着