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当選倍率100倍超えの「ANA機内食総選挙2019」試食会開催。東西の「ご当地丼」4品が2020年3月からエコノミークラスに順次登場

2019年12月7日/8日 試食/機内食工場見学会開催

ANAが10月に投票を募った「機内食総選挙2019」。その試食会と機内食工場見学会が、ANAケータリングサービス川崎工場で行なわれた

 ANA(全日本空輸)は12月7日と8日の両日、10月に投票を募った「機内食総選挙2019」の試食/機内食工場見学会を、ANAケータリングサービス川崎工場で実施した。

 機内食総選挙は、「お客様と共に創る機内食」をコンセプトに、2013年から行なわれているもので、複数の候補メニューから食べたいメニューに投票し、上位のメニューを実際に国際線プレミアムエコノミー/エコノミークラスの日本発便で提供するというもの。2013年からスタートし、2019年で7回目を迎えた。

 2019年は日本全国の「ご当地丼」をテーマに、「東の陣」「西の陣」の二部制で展開。東日本エリア、西日本エリアにゆかりのある各5種類のご当地丼を候補メニューに投票を募った。

「東の陣」にエントリーしたご当地丼
「西の陣」にエントリーしたご当地丼

エントリーした東西各5種類の「ご当地丼」

※商品説明はANAによるもの。

東の陣(北海道・東海・北陸・関東甲信・東海エリア)

「ザンギ丼」 (北海道)
 生姜とニンニクでしっかり味付けされた鶏のから揚げに甘酸っぱいタレをかけ、丼にしました。ごはんにはヘルシーな押し麦を混ぜ、塩昆布で和えたキャベツをごはんの上に敷くことで、味のバランスを整え、食感のアクセントをつけました。

「さんま蒲焼き丼」 (東北)
 さんまの蒲焼きに甘辛く香ばしいタレをかけ、丼にしました。ごはんの上に敷かれたきんぴらごぼうと、そぼろ状の卵焼きがさんまの蒲焼きと相性抜群です。山椒を少しふりかけ、本格的な味わいを出しました。

「焼き鯖丼」 (北陸)
 焼き鯖と寿司飯の一体感を楽しめる焼き鯖寿司を丼にアレンジしました。鯖の味付けは、酒・みりん・醤油の漬けダレで下味を付けてから焼く「幽庵焼き」で仕上げました。ごはんの上にはガリと刻み海苔を敷いて、さっぱりとした味わいに調整しました。

「マグロカツ丼」 (関東甲信)
 柔らかな食感のマグロカツに酸味を効かせたソースをかけ、丼にしました。ソースの隠し味にケチャップを使用したり、紅生姜を添えたりと、酸味をアクセントにすることで、飽きのこない味に仕上げました。

「味噌カツ丼」 (東海)
 豚ヒレ肉のカツに味噌ダレ仕立てのソースをかけ、丼にしました。つけあわせにはお肉によく合うキャベツに加え、なす、パプリカ、ズッキーニといった野菜を使用しました。味噌ダレのベースは赤味噌で、練りゴマを加えることでコクを出しています。

「ザンギ丼」(北海道)
「さんま蒲焼き丼」(東北)
「焼き鯖丼」(北陸)
「マグロカツ丼」(関東甲信)
「味噌カツ丼」(東海)

西の陣(近畿・中国・四国・九州・沖縄エリア

「衣笠丼」 (近畿)
 衣笠丼とは甘辛く炊いた油揚げと青ネギを卵でとじ、ご飯に乗せた京都のご当地丼です。アレンジとして鶏肉を加え、メインディッシュとしてご満足いただけるように工夫しました。白醤油を使用し、素材の色を生かしながら、旨味を引き立たせています。

「デミカツ丼」 (中国)
 ご飯の上にキャベツと豚カツを盛り、コトコト煮込んだデミグラスソースをかけた丼です。デミグラスソースには中濃ソースとトマトケチャップのベースに醤油を加え、深みのある味わいに仕上げました。また丼全体のバランスを考え、野菜を添えました。

「なるこ丼」 (四国)
 なるこ丼は生姜を使った香り豊かなご飯に、赤パプリカ、なす、ししとうなど彩り鮮やかな野菜を盛り付けた丼です。食べごたえやバランスを考慮し、アレンジとして甘辛く味付けした鶏肉を加えました。

「チキン南蛮丼」 (九州)
 衣につつまれた鶏肉に、甘酢ソースとタルタルソースをかけた宮崎名物のチキン南蛮を丼にアレンジしました。タルタルソースにはオニオンピクルスを、甘酢ダレには少しだけスパイスとして唐辛子を使用しています。

「タコライス丼」 (沖縄)
 メキシコ料理のタコスの具材をご飯に乗せた沖縄生まれのスパイシーな丼です。香ばしく炒めた牛ひき肉がピリ辛に味付けされ、スパイスの風味とチーズの甘さが楽しめます。お肉と相性が良いキャベツ、インゲン、なす、アボカドや卵も添えました。

「衣笠丼」(近畿)
「デミカツ丼」(中国)
「なるこ丼」(四国)
「チキン南蛮丼」(九州)
「タコライス丼」(沖縄)

上位4メニューは「ザンギ丼」「味噌カツ丼」「チキン南蛮丼」「デミカツ丼」

 投票は東の陣が10月8日~17日、西の陣が10月18日~27日に行なわれ、総得票数は3万6330票。東の陣からは、5025票を獲得した「ザンギ丼」と、4751票を獲得した「味噌カツ丼」。西の陣からは4419票を獲得した「チキン南蛮丼」と、4199票を獲得した「デミカツ丼」がそれぞれ選ばれる結果となった。

東の陣で得票数1位の「ザンギ丼」(北海道)
東の陣で得票数2位の「味噌カツ丼」(東海)
西の陣で得票数1位の「チキン南蛮丼」(九州)
西の陣で得票数2位の「デミカツ丼」(中国)

工場見学や当選4品を堪能できる「試食会」。参加希望は9000名を超える

 この機内食総選挙での「試食/機内食工場見学会」も恒例化している。総選挙に投票し、参加を希望した人のなかから2日間、各日40名ずつを招待するもので、2019年は12月7日と8日に実施。

 機内食総選挙の責任者を務める、ANA CEマネジメント室 商品企画部の西村健氏は「機内サービス全般を担当しているが、とりわけ国際線のエコノミークラスの食事は気をもんでいろいろ企画している。席数も多く、いろいろな方がお乗りになられる。年齢の幅も広く、先日ラグビーワールドカップがあったが、2020年はオリンピック・パラリンピックがあり、さまざまな国籍の方がお乗りになるので、どのようなテイスト、食感、味付けが合うのか、日々考えさせていただいている」と、機内食総選挙の対象となっている国際線エコノミークラスの機内食について、開発の背景を紹介。

 試食/見学会については、「いろいろなレポートやSNSのコメント欄などを毎日見るようにしているが、このような場でお客さまに間近に聞くのが一番勉強になるし、真のマーケティングだと思っているので、ぜひ教えていただきたい、叱咤激励……お褒めもあればうれしい。手作りの会なので行き届かないところもあるかもしれないが、ゆるりと、ワイワイガヤガヤ楽しんでいただければ」と、あいさつし、来場者を歓迎した。

 今回の試食/見学会への参加希望者は9438名の応募があったといい、倍率はおよそ118倍。選ばれた参加者も東北から中国地方まで全国各地から来場しているそうで、西村氏も機内食総選挙の認知度や話題性の向上に手応えを感じているという。

全日本空輸株式会社 CEマネジメント室 商品企画部 西村健氏
機内食総選挙2019 試食/見学会
写真撮影などを楽しめるよう、エントリー10品の機内食が並べられた

機内食工場見学や「The Room」のVR体験。試食会ではシェフに直接質問も

 試食/機内食工場見学会では、まず大きく2班に分かれ、順に機内工場見学へ。片方の班が機内工場見学をしている間は、ANAケータリングサービスの紹介ビデオの上映や、国際線長距離路線に新たに導入されたビジネスクラス「The Room」のVR体験などを楽しめる時間が設けられた。

 工場見学は、衛生面、保安面を守ったうえで、全員が衛生服を着用。サニタリーエリアでホコリの除去や手洗いなどを済ませて工場内へ。野菜、肉、魚と食材別に準備を行なうディッシュアップエリアから、和洋など複数に分かれたキッチンをガラス越しに見学。

 そして、盛り付けやトレイへ各料理を並べたうえでのカートへの搭載の様子などを見学。カートへの搭載では、ちょうどホノルル便の準備が進められており、ほかの国際線とは異なるデザインのトレーマットや、billsとコラボレーションしているドリンククーポン券の紹介などもあった。

 作業の流れのとおり、次は機内食を搭載したカートをフードローダーへ積載するエリアへ。ここでは実際にフードローダーへ乗り込むこともでき、そこから外を見せてもらえるサービスも。下層階が到着エリア、上層階が出発エリアと分けられ、製造された機内食は上層階から積み込んで、羽田空港へ20分ほどかけて運ばれることなどが説明された。

サニタリーエリアでの手洗いの説明
盛り付けエリアなどにも立ち入るので、衛生服は頭巾やアンクルバンドなども着ける重装備なもの
まずは食材を準備するエリアから順に説明
キッチンをガラス越しに見学
盛り付けの様子
カートへ搭載するコーナーへ
ホノルル線の機内食をトレイに配置する様子を見学
フードローダーの車内へ。フードローダーからの眺めが披露され、上層階から作られた機内食が出発することなどが説明された
機内食工場見学は2班に分けて、待機中はANAケータリングサービスを紹介するビデオの上映や、国際線長距離路線に導入されたビジネスクラス「The Room」をVR体験できる時間が設けられた

 その後、いよいよ試食会へ。試食は機内食提供が決まった「ザンギ丼」「味噌カツ丼」「チキン南蛮丼」「デミカツ丼」の4品から参加者が希望するメニューを提供。機内さながらにCA(客室乗務員)が配膳しつつ、そこに機内食を考案したシェフも参加。試食中もCAやシェフ、ANAケータリングサービスのスタッフらが各テーブルをまわり、参加者からの質問に答えたり、意見交換を行なったりしている。

 また、これは記者個人の感想だが、2018年の試食/機内食工場見学会に比べて、テーブル内での参加者同士の交流が活発な印象を受けた。それは、試食会に続いて行なわれたクイズ大会の盛り上がりにもつながったように思う。

 クイズは担当者によると今年は少し趣向を変えたとのことで、2018年は工場見学で得た情報を元に答えるトリビアクイズだったが、2019年は「ANAケータリングサービスで1日に作られる機内食の数は?」「フードローダーの保有台数は?」「公式キャラクターの名前は?」「特別食の種類は?」「写真に提示された特別食は?」といった推理力が試される問題に。1分間の思考時間で参加者が話し合って答えを導きだす楽しげな雰囲気が広がっていた。

 そして、全問正解こそ出なかったものの、全5問中4問正解が4チームというハイレベルな結果に。最後はじゃんけんで上位3チームが決定し、1位のチームにはエアバス A380型機「FLYING HONU」のモデルプレーン、2位のチームにはANAケータリングサービスの外販ブランド「FINDELISH(ファインデリッシュ)」のカレーセット、3位のチームには2020年のANA卓上カレンダーが贈られた。また、そのほかのチームにもFINDELISHのフィナンシェセットが贈られたほか、帰宅の際にはタンブラーなどのお土産が手渡された。

和食の荻原幸子シェフからメニューの説明。味噌カツ丼は「ソースに白ごまペーストを入れてコクを出している」などの工夫を紹介
洋食の末辰也シェフからメニューの説明。デミカツ丼は「オリジナルのデミグラスソース」などの説明を行なった
CAやシェフと歓談しながらの試食会
推理力が試されたクイズ大会
1位~3位のチームにプレゼントが贈られた

 イベントの最後には洋食を担当する末辰也シェフがあいさつし、「機内食のシェフは、お客さまの顔を拝見しながら料理する機会がなく、このようなイベントは我々にとっても貴重な機会」と来場にお礼を述べて会を締めた。

 今回、洋食のチームを代表して末辰也シェフ、和食を代表して荻原幸子シェフがイベントに登場。2018年も機内食総選挙のメニュー考案に携わったという。今回、「丼」という和食メニューがテーマだが、洋食のチームが「ザンギ丼」「デミカツ丼」「チキン南蛮丼」「タコライス丼」の4品、ほかの6品を和食のチームが考案しているそうだ。

洋食を担当するの末辰也シェフ(左)と、和食を担当する荻原幸子シェフ(右)

 今回の結果について末シェフは「順当にお肉が残ったな、という印象。2018年のカレーもお肉やボリューム感のある物が選ばれたので」との感想。荻原シェフも「和食は盛んをいろいろ開発したが、皆さんお肉を選ばれた。お腹が減った状態で見たらお肉が人気なんだろうなと思った」と、ある程度、予想に近い結果になった様子。

 今回のご当地丼のテーマについて末シェフは「ご飯の上に具が乗る、というスタイルは変わらない。(エコノミークラスでは)鶏肉を使うことが多いが、そのなかで、これだけの数を開発するのは大変だった」(末シェフ)、「魚の丼は海鮮丼が多くて、温かい魚の丼は難しい。蒲焼きにするなどしたものの、やっぱりお肉が強くて……(笑)」(荻原シェフ)と、いろいろな苦労があったようだ。

 ご当地丼の考案にあたっては、食材や調理方法などを定義付けをしている丼を選ばないようにするなどの気を遣っているという。また、荻原シェフは「現地の方が食べて『違う』とならないよう、衣笠丼では京風の味付けにするなど、アレンジしつつも気を遣った」と話し、末シェフも「今回、(ご当地丼の)県の出身者が召し上がって感想を聞くのが怖かった(笑)」と、“地域の味”を出すよう気を遣ったという。

 そうした、肉をメインに使ったご当地丼がエコノミークラスで提供されることになるが、「一度冷やして、機内で温め直すことになるので、今回のザンギ丼であれば下味を付けるときに塩麹で揉む工程を入れている」(末シェフ)、「お肉が堅くなってしまうので、ヒレ肉の下処理の段階で穴を開けて筋切りをしっかりする。普段の料理でも赤身だと堅くなりがちなのでバラ肉を選ぶことが多い」(荻原シェフ)といった工夫をしている。

 今回の機内食総選挙で選ばれた「ザンギ丼」「味噌カツ丼」「チキン南蛮丼」「デミカツ丼」の4メニューは、2020年3月から約1年間、日本発の国際線プレミアムエコノミー/エコノミークラスで提供することになる。提供路線などの詳細は2020年2月ごろに発表の予定だ。